疼らく境界   作:熾烈

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 面白い文章って何。


二話

 

 死とは、根源とは? いくら知識で、前世の知識で知っているとしても、想像出来ないだろう。とはいえ死は一度経験したが。それでも、この世界での死は初めてだ。

 

 両儀式と違って、両儀という一つの器に式と識がいない自分はどうなるのか。

 

 不安で不安で、怖くて恐くて、どうにかなってしまう。

 

 

 ここは死の中。モノの終着点。暗くて、底がない。堕ちていく感覚。でも堕ちている訳ではない。 光が無い。何も無い。意味も無い。

 

 無という言葉でさえ、おそらくはありえまい。

 

 形容なんて出来ない「  」の中で沈んでいく。

 

 

 ずっと遠くを見つめても、何も見えない。

 それでも、とても穏やかで、満ち足りている。

 意味がなく、ただ完璧に「ある」だけなんだ。

 

 ここは死の中。

 

 死者しか到達できない場所。生者では観測できない世界。

 

 なのに、私()()だけが生きてるなんて────

 

 

 

 気が、狂いそうだ。

 

 

 

 

 

 二年昏睡

 

 深い眠りから覚めるような感覚だった。ゆっくりと意識が明瞭になって行き、重い瞼を揚げる。

 

 そこに広がるのは凶々しくも清麗な線。

 ひび割れたこの世界は、あまりに脆く儚い。この世界にいることが不思議なぐらい。

 

 

 目が覚めたことで、看護師が来てさらに医者が来た。診察、精密検査やらやっていく。話なんて聞き流していた。

 

 

 結局、異常無しとなった。ただ肉体に、髪が伸びる以外の変化が無かった事は医者もお手上げのようだったが。

 

 

 家族は変に気を使って接することはなく、普通にいる。居づらくなること無い家だった。それでも、私はそれを押し切って一人暮らしをすると言った。

 

 

 はぁ、と引っ越した部屋でため息をついた。

 

 知っているとは言え、「 」に触れて、死が視えてしまった自分は今、生きている実感が無い。

 

 こんな感覚、耐えられそうにない。そこに本能の様なものが「殺せ」と囁く。気を抜くと壊れてしまいそう。

 

 ならば、両儀式と同じく殺すことで生の実感を得れば、両方を満たせるはずだと思った。

 

 でも、殺人なんてそうそう出来る訳ないし、そんな環境や、場面に出くわすことなど少ないだろう。今後の事を考えても、蒼崎橙子に会えたなら、非常識に身を落とすのには最適ではありそうだ。

 

 人殺しが出来そうだし。

 

 

 ここで問題がある。

 どうやって彼女たちを探すかだ。

 

 しかしこれといって良い案が今日は見つからなくて、諦めて寝ることにした。

 

 「……はぁ」

 また、ため息を一つして今日は終わった。

 

 

 

 夢を見た。

 

 いつか視た場所に似た空間を、墜ちている。

 

 落ちる先には糸のようなものがあって、その糸に沿って墜ちていく。

 

 沢山の糸があった。

 

 

 いくつもの糸が、墜ちて行く度に合わさり、一本に纏まって行く。

 

 全ての糸が一つになったらどうなるのだろうか?

 

 先へ、先へ、と行きたくなる。

 

 

 

 でも、それは果てしなく、遥か遠くにあった。

 

 




 導入は詰まらないでしょう。

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