取り敢えず復学したが、年明けに少し行った程度で退学した。馴染む事が出来なかったからだ。
それはともかく。
今は六月。梅雨のじめっとした空気の中お散歩をしている。向かっている先は、観布病院。
そう、何を隠そうあの女。両儀式が目を覚ます時期なのだ。
病院に着いた。
受付に行き、面会をしたいと告げる。
「両儀式の病室はどこですか?」
「ちょっと待って下さい。
ーーーすみません。今面会が出来なくて。」
「……え」
まさかの面会謝絶。聞くと家族も面会が難しいらしい。警備もがちがちに硬いとか。
じめじめした空気の中、気分もどんよりして、キノコが生えてきそうだ。
その時、意気消沈している私に幸運がが舞い降りた。
視界の端にちらついた燻んだ赤色の髪。私の脇を通り過ぎて病院内に入っていく。
それを見て沈んでいた気分は一気に回復した。ルンルンで彼女を尾行して行く。気配を消すのは得意だ。何故か家の道場で武術から剣術、暗殺術まで叩き込まれたから。
燻んだ赤色の女性はエレベーターに乗り上へ行く。そして、廊下をしばらく歩き、ひとつの部屋に入っていった。名札は両儀式。
▽
しばらくして先程の女性が出てきた。帰って行くのを見た後、その病室に入った。
「なんだ、忘れ物か?」
彼女、両儀式が聞いてくる。さっきの女性と間違えたのだろう。
「いいや、残念だけど違う。貴女の顔を見にきたの」
「…今度は誰だよ」
うんざりした様子で聞いてくる。
「そうだな、わたしは貴女に近しい何か。わたしでもよくわからない。でも、貴女とわたしは初対面ではないはず。あの場所で会っているから」
「……は? 」
よく理解出来ないという顔。
「覚えてないの? あの意味が意味を為さない世界、気が狂いそうな世界、死の中で」
「……お前も、視えているのか?」
「ええ、視えているわ」
それきり会話は途切れて、しんと静寂が部屋を支配した。
「今日は会えてよかったわ。
目を潰そうとか、自殺とか考えないでね。………彼の、織の願いでもあるんだから」
「……さっきの奴と同じこと言うんだな」
顔を少ししかめながら式が言った。
「これ、わたしの連絡先。気が向いたら電話して」
そう言って側の机に置いた。
そして、わたしはさようならと言い、踵を返してこの部屋を去った。
◇
Side shiki
魔術師を名乗る変な奴が出て行ったと思ったら、また扉が開いた。忘れ物をしたのだろうか。
「なんだ、忘れ物か?」
「いいや、残念だけど違う。貴女の顔を見にきたの」
その声は先程の女と違う声だった。幼さの少し残る自分と同じぐらいの女。
「いいや、残念だけど違う。貴女の顔を見にきたの]
「…今度は誰だよ」
さっきの来客といい少し疲れている。いま、自分はかなり不機嫌だ。しかし次の言葉でそんなのも吹き飛んだ・
「そうだな、わたしは貴女に近しい何か。わたしでもよくわからない。でも、貴女とわたしは初対面ではないはず。あの場所で会っているから」
「……は? 」
一瞬、意味が解らなかった。そいつは話を進めていく。
「覚えてないの? あの意味が意味を為さない世界、気が狂いそうな世界、死の中で」
死の中。…思い出すだけで気分が悪くなる。あそこに繋がっているこの目も、耐えられない。
どのくらいたっただろう。気づけば口がうごいていた。
「……お前も、視えているのか?」
「ええ、視えているわ」
そいつは見えていると言う。そのくせそんなにも平気でいられている。怒りか、妬みか、呆れか分からなくて、ぐちゃぐちゃになった。
「今日は会えてよかったわ。
目を潰そうとか、自殺とか考えないでね。………彼の、識の願いでもあるんだから」
話す事がなくなったのか、そいつは帰るらしい。そして憎たらしくも、さっき来た魔術師と同じことを言う。
「……さっきの奴と同じこと言うんだな」
そいつは自分が空っぽになる前、ここに入っていた識のことを知っているらしい。多分、あの場所で合っていたのは本当。
「これ、わたしの連絡先。気が向いたら電話して」
部屋を出る前、そいつは丁寧に連絡先まで置いていった。
静かになったら病室。式は同じ目を持つ彼女のことを思い出していた。
「そういえば名前、聞かなかったな」
◇
Side Unknown
「ああ、もしもし? 私だ。ちょと調べて欲しいのがあるんだ。
なに、式の事は任せておけ。その間お前に仕事をしてもらうだけだ。休日出勤だあ? ともかく、明日事務所に来てくれ。そこで伝える。じゃあな」
今後とも宜しくお願いします。
ふと、疑問に思ったのですが、空の境界ssって今流行ってるんですか?