疼らく境界   作:熾烈

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 ふぅ。意外と大変な虹創作。二次か、、、


八話 痛覚残留/3

 

 7月24日。

 雲一つない蒼天が、分厚い鉛のような雲に覆われる様子を眺めていた。

 

 「ええ、そうです。その事故の事なんです。······ああ、やっぱり接触事故を起こす前に死亡していた、と。死因は絞殺ですか?違うことはないでしょう。 首がねじ切られているのなら、それは絞殺ですわ。強さの加減はまた別の問題です。 そちらの見解はどうなってます?やはり接触事故扱いですか。そうでしょうね、車の中には被害者しかいなかった。 走る密室なんて、どんな名探偵でも解決できませんもの。いえ、これだけ教えていただければ十分です。

 どうもすみません。 このお礼は必ずいたしますわ、秋巳刑事」

 

 とっても優しい橙子の声を片耳に、窓辺でわたしはうつらうつらしている。対称に式は怒りを顕にしている。

 

 「ほらみろ、今度こそ無関係の殺しだろ」

 怒気が滲み出る声で言う。

 

 「………彼女は橋にいるわ。雨に洗われたいのでしょうね。橙子、あの建設中の大きな橋、浅上グループのものよ。何か持ってない?」

 浅上藤乃の居場所を伝える。

 

 「はぁ、何も言わん。

 ほら、持って行け」

 

 橙子は机から数枚のカードを取り出し、式に放り投げた。

 「・・・・・・なんだこれ。 浅上グループの身分証明書? この荒耶宗蓮って」

 

 三枚のカードは、全て浅上建設が関わっている工事中の施設への入場許可証だ。電磁ロックになっているのか、カードの端には磁気判別のストライプがある。

 

 「その名は私の知人だ。 適当な名前が思いつかなくてね、依頼人に身分証明書を作らせる時に使ったんだ。ま、そんな事はどうでもいい。面倒だから黒桐が帰ってくる前にやってしまえ」

 

 式は橙子を睨む。普段うつろな式の目は、こうなるとナイフのように鋭い。

  式は何も言わずに踵を返した。 式は別段急ぐ風でもなく、いつも通りの流麗な足取りで事務所から消えていった。

 

 ふたりになって橙子は窓の外へと視線を移す。

 「黒桐は間に合わなかったか。さて。嵐が来るのが先か、嵐が起こるのが先か。

 ひとりでは返り討ちにあうかもしれないぞ、両儀」

 

 誰にでもなく、魔術師は呟いた。

 

 

◇◇◇

 

 

 「ところで始紀。お前はいいのか?」

 「………正直、身体が疼いて仕方ないわ。でも、これは彼女の問題だから。

 そうね、聖堂教会にでも入ろうかしら。代行者もいいわね」

 これは両儀式の物語。彼女のレールが敷かれている。荒耶宗蓮は彼女の糧となる。別にわたしが介入しても良いが、式の成長の障害になりうる可能性は否定出来ない。

 だが今、そんな事はどうでもいい。時の流れるままにする。

 

 「それは冗談でも止めて欲しいのだが………」

 「ふふ、貴女を一生追いかけて捕まえるわぁ」

 「…………きみは、もしかして、そっちの気があるのか?」

 

 冷や汗を流しながら橙子は、冗談で話しを変えようとした。

 「・・・・・・」

 対する答えは沈黙。やはり根本的なところは男なのだから。

 「……さあね。でも根源に繋がる可能性がある身体、陰陽を、両儀を満たしているはずなのだからね」

 

 「なるほどね。しかしそうであれば始紀、お前は男ではないのか?」

 「……………わからない。わからないのよ。

 ………………………そのうち知ることが出来るかもしれない。

 もしかしたら、根源は、わたしに陽を、式に陰を与えようとしたのか、考えてもしょうがないわね」

 

 

 

 時は経ち、いつの間に降っていた雨は、バケツをひっくり返したかのように降り注ぐ大雨に変わっていた。窓に叩き付ける雨風の音が鬱陶しい。

 

 「そういえば始紀、前に言ったよな。外からの痛みでは無いなら、内側なのかもしれないと」

 「確かに言ったわ」

 「その事なんだか、どうやらお前が正しかったようだ」

 

 橙子が口を開きかけたとき、扉が開いた。

 

 

 「早いな。まだ一日しか経っていないぞ」

 

「台風が来るっていうんで、交通機関が麻痺する前に帰ってきたんです」

 入ってきたのは幹也だ。

 

 そうか、と難しい顔をして頷く。

 「橙子さん 浅上藤乃についてですけど、 彼女は後天的な無痛症です。 四歳までは普通の体質だった」

 「そうか、知っていたぞ」

 橙子の無慈悲な宣告。

 「え……」

 

 かわいそうな幹也。犯人はわたしだが。

 

 気を取り直して彼は説明を続けるのだった。

 

 

 

 「そろそろ、かな。お迎えに行こうかしら?」

 と、席を立つと幹也が、馬鹿野郎と滅多に口にしない暴言を吐いて、飛び出していった。

 橙子はやれやれと(かぶり)を振った。

 

 

 

 雨は大分収まったが、なお降り続く。

 

 

 




 なんか、更新がまばらになっいる気がする。
 今後もよろしくお願いします。
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