ただ物語をなぞっても面白くならないしね。
紀行を始めに向かって遡る。
夢はいつも、途中で終わってしまう。遡っても、遡っても、何かに繋がれているように、現在に引っ張られて、連れ戻されてしまう。
あと少し先、遥か先まで行けたのに・・・・・・
目を開けると、わたしの顔があった。
否、私の顔ではなく両儀式の顔だった。
「起きたのか。………こいつはいつまで寝ている気だ?」
いつの間にか、伽藍の堂で寝てしまったようだ。日付は寝た日から2週が経とうとしている。
隣のソファーでは幹也が寝ている。彼はわたしが寝た時には既に眠っていた。
式は彼が起きなくてイライラしているようだ。
「・・・・・始紀、何処へ行っていた?」
橙子が聞いてきた。彼と同じ状態だと思ったらしい。
「・・・・・・・・・遠く、遠く、遥か向こうへ行こうとした。遡って、遡って、遡る途中まで行った。でも、先に行けなかった」
寝起きで、霞む思考の中答える。
「・・・・・・」
橙子が黙り考え始める。その間、始紀は欠伸をしてソファーから立ち上がる。
そうか、もうこんな時期だったか。カレンダーを見れば既に8月下旬。
「じゃあわたしは帰るわね」
と言い残し、ここを出た。
涼しい風が襲ってくる。霞んでいた思考はそれでも晴れない。
足を動かす。帰路につかず、その足は何処へ行くのか。
気付けばとある路地にいた。見覚えがある。
あの冬の夜、偶然出会った屍鬼。灰になって消えたのだろうか、そこには何もなかった。
そして、気が付けばそこはわたしが倒れた場所だ。
事故注意の看板が置いてある。わたしの家の目の前の道。
空を仰ぎ見ると、真っ青な蒼穹が広がっている。吸い込まれそうな程透き通っていて、目がおかしくなりそう。
「痛い」
首が疲れてしまったので、目線を戻す。
「おい」
後ろから声をかけられた。
「・・・・・・橙子、どうしたの?」
そこにいたのは橙子だった。
「いやなに、心ここに在らずな様だったのでな、車に引かれてないか心配になった訳だ」
「驚いた、貴女が心配した? ・・・・・・・そんなこともあるのね」
橙子はムッとして
「私でも従業員の面倒ぐらいみるさ」
「給料は?」
「うっ・・・・・」
痛い所を突かれた彼女は苦い顔をする。
「とにかくだな、黒桐の奴なら寝ている理由は解るが、お前の方だ。お前は2週間も眠っていたわけだ。気にはなるだろう」
「そんな話をするまで、ここにやって来たの?」
事務所でそういう話しはして欲しかった。
「そんな嫌そうにするな。その話しがしたい訳ではない。・・・・・いや、聞きたいことはあるが、最初に言った通り、少し心配になっただけだ。気にするな」
と、少々早口でまくし立てた。橙子も自分の柄でもないことを言っている自覚があるのだろう。
わたしは、彼女をポカンと見つめた。
「・・・・・・・・・貴女、本当に蒼崎橙子なの?」
「失礼だな、おい」
◇◇◇
柊始紀はどうして死んだのだろう? わたしの身代わりにまでなって。
わたしは彼女に出来たもう一つの人格。主人格は彼女であったのに、副人格のわたしに鉢がまわってきたのか。
カワラナイ、カワラナイことだらけ。
彼女は何お思っていたのだろうか?
「どうしてお前は死んだんだ?」
口から出た呟きは、誰かに届くこともなく宙に溶けていった。
読者の皆様、今後も宜しくお願いします。
絶賛迷子中です。ストーリーのアイディアが思い浮かびません。
なにか、「こういうのが良い」などリクエストがありましたらお教え下さい。