時間が過ぎるというのはあっという間だ。そう、今日はバビルス学園において一年生最終表現行事である『音楽祭』が行われるのだ。
そして、音楽祭の審査を担当するのは……。
「今年の一年生にはとんでもない音楽の才能を有する者がいると聞いている。然り」
小さい身体に頭の上に大きな兎耳、その下に二つの耳、そして兎を連想させるような見た目の女性悪魔たるメーメーが居た。
彼女は魔ーケストラの『ダンテ組』を束ねる実力者であり、6km先の木の葉が落ちる音さえ聴き取る聴力を有する『多耳族』の一人。
多耳族は聴力は優れているが、保有魔力も魔術の際も体術の際も乏しいので他者の助けを必要とする一族だ。だが、メーメーは自立していて、多耳族において英雄なのである。
「コンコン、アクドルの原石がどれだけいるやら(イルマ、クロム楽しみにしているぞ)」
審査員の二人目はイルマとケロリがアクドルとして活躍している事務所の女社長である狐を連想させるキュパ。
彼女は入間とケロリがどういうものを披露するのか特に楽しみにしていた。
そして、三人目の審査員は……。
「おサリーーーーーーーー!!」
額に角、黒髪だが後ろの髪は伸ばし過ぎて丸まるほどの長さ、成人悪魔と比べても長身であり、色気のある男で胸元が開いたスーツを着た者が叫ぶ。
彼は元13冠の一人であり、魔王デルキラとの大演奏会で敵軍を666時間足止めしたという伝説を有する音魔のアムドゥスキアス・ポロである。
因みにおサリというのはサリバンの事である。
サリバンがデルキラに仕えていた時からの仲でもあり、隙あらばデルキラに愛を込めて抱き着こうとするアムドゥスキアスをサリバンは良く抑えていた。
「全く。相変わらず、声が大きいよねポロ君は」
「来たわね、おサリ」
自分を呼んだポロにサリバンは応じる。
「そうそう、今日の音楽祭は孫が出るんだ」
「あら、そうなの。それは楽しみね……孫っ!?」
サリバンの言葉に途中で引っ掛かり、驚愕した。
「ちょっと待ちなさいよ、孫っておかしいでしょ。あんた結婚して無いじゃない。間はどうしたの、間は!?」
「そこはちょっと裏技で」
「あんた、ま、まさかデルキラ様との子じゃないでしょうねぇぇぇっ!!」
「そんなわけないでしょ、どーやんのさ」
「アンタならやりかねないでしょうがぁっ!!」
「無茶にも程があるよ」
とまあ、長年からの関係を感じさせるやり取りをする。基本、ポロは凄いテンションの切り替えやら声が大きいので『(相変わらずうるさいなー)』とサリバンは内心、思ったりしていた。
「私の音は全てあの方で出来てる。だから私はアンタに会いに来たの……」
ポロはふとサリバンに触れながら……。
「何故、『王の教室』を開けたの?」
威圧感や怒りを放ちながら、ポロは問い質す。
「事と次第によっては弾き殺すわよ、あんた」
次には殺意すら混じった。
「大体、どこの馬鹿が使ってんのよー」
「問題児クラス、私のクラスですよ……そして開けた張本人こそはサリバン様の孫であるイルマです」
カルエゴがポロへと言った。
「色々と破天荒な事をやらかしますが、正当な手順で教室は開けています」
「か、カルエゴちゃーんっ!! やっだぁ、相変わらずおキャワー、あー、若い良い男のスメルー!!」
「うぐおぉっ!!」
ポロに気に入られているカルエゴは抱きつかれてしまう。
「カルエゴ君、そのまま生贄、お世話よろしく」
「こんの、アホ理事長ーっ!!」
そして、しれっとサリバンはカルエゴを生贄にした。
そうして、カルエゴはポロに抱えられながら、『王の間』へと行く事になり……。
「初めまして、アムドゥスキアス・ポロ様……そして、ようこそ我らが問題児クラスの教室である『王の教室』へ」
玉座に足と腕を組んで座っている入間がポロへと不敵に笑いながら言い……。
「っ!?」
ポロは入間の全てに衝撃を受けたかと思えば、ゆっくりカルエゴを下ろし……。
「………………き」
ゆっくりと震えながら何か、呟いたかと思えば……。
「好きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「うおおおおおっ!?」
ポロは勢い良く入間へと飛び込み、そのまま抱き着いた。
全く予想だにしていなかったので入間はされるがままになってしまった。
『イルマくーんっ!?』
問題児クラスの者たちはいきなりの事、そして入間が食べられそうな事態に驚愕。
「(ふふ、ざまあみろ)」
カルエゴは入間に対し、愉悦を感じるのであった……。