誕生日――それは人が生まれた日を祝う誕生日であり、基本的にはめでたい日で誰にとっても喜ぶべき日である。
だが入間こと鈴木入間にとっては大嫌いな日であり、やがてはどうでもいいと思うようになった日だ。
何故なら1歳で立てるようになってから、屑の両親によって働かされてきたからである。だから、誕生日を祝われた事は無い。
子供の時は他の人が誕生日で嬉しそうにするのを見て妬ましく思ったし、それを自覚した時には八つ当たりや逆恨みだからと自分をなさけなく思ったりした。
そうして次第に誕生日に対して無関心となっていったのである。
故に自分の誕生日である10月4日となっても何のアクションもしなかったし、誕生日を思い出しても無関心だったのだ。
しかし……。
「イルマ様、おはようございます」
「挨拶しながら目隠ししないでくれます?」
朝起きたら、急にオペラに挨拶されながら目隠しをされ、どこかに運ばれたかと思うと色々と身支度を器用に整えられたりして……。
「なんだ、サバトかなんかか……」
魔界の建築業を担当するアガレス家が建造したがブリアン礼拝堂の中で仮装させられた入間は椅子に座り、その周囲を仮装した『問題児クラス』のクラスメートにバラムとオリアスとロビン、アメリ、スモーク、エイコ、ナフラ、アムリリスにライム、バチコにアムドゥスキアスがハウェヤーと言いながら、回っていく。
これは魔界における誕生日会である『降魔の儀』だ。
それはさながら自分の命の灯火を移すかのように見える。
ともかく、そうして参列者は主役に対し捧げもの、つまりはプレゼントを渡しながら、生まれた事に対して感謝するのだ。
「あれ、カルエゴ君がいませんね」
「忙しいとか、何とか……」
「では、失礼して……」
オペラがバラムに問いかけると来ないという返答があったので入間の手を取って召喚シールを貼り、カルエゴをモフエゴ状態で召喚した。
「イルっ「ああ、呼んだのは私ですよ。主役の手を煩わすなんて本当にカルエゴ君は……。生徒の降魔の儀ですよ、厳粛に祝いなさい」厳粛に祝うってなんだ……」
ともかく、降魔の儀は始まり……。
「しかし、イルマ君ならむしろ、降魔の儀とかはアピールするタイプだと思うんだけど、どうしたの?」
リードが今までの入間の性格なら積極的に祝ってもらうようにする筈なのに、スルーした事に疑問を抱き、入間に問いかけた。
「今まで、まともに祝ってもらった事無かったからな……そうか、誕生日を祝ってもらうってこんなに良いものだったんだな……っ、めっちゃ嬉しい……」
入間はリードの質問に答えると感極まって涙を流す。
『っ!!』
そんな入間に庇護欲を擽られたクララにケロリ、エリザベッタ、エイコ、アメリ、スモーク、ナフラにアムリリスとライム、バチコがそれぞれ抱き締めた。
入間は心の底では願っていた誕生日を祝ってもらいたいというそれが叶って本当にとても喜んだ。
「……どこへ行くの、オペラ」
「ちょっと人間界に」
「駄目だよ……僕も思うところはあるけど、我慢してるんだから」
「しかし、あんなに誕生日を喜ぶという事はつまり……」
「だったら、僕たちが今まで以上に入間君を幸せにすれば良い。でしょ?」
「……はい」
『降魔の儀』の最中、オペラとサリバンはそんなやり取りを交わしたりしていた。
ともかく、入間はかなり遅れているとはいえ、15歳になった誕生日を幸せな気分で魔界の悪魔たちに祝ってもらえ、大嫌いであった誕生日が大好きとなったのであった……。