悪魔学校バビルスの教師であり、一年のクラスの一つである『問題児クラス』の担任であるナベリウス・カルエゴは『問題児クラス』の教室にて朝のホームルームを徹底的に入間に弄り倒されながらも終え、現在は職員室で職務に励んでいた。
「入間め、精々良い気になっていろ。私を散々どころか限度など二度も三度も……十度すらも超えてコケにした事を後悔すらさせずに、断末魔の叫びを上げさせながら地獄の底の果てまで落としきる勢いで苦しめてくれるわ」
陰鬱に笑いながら、自分の心身に多大なダメージを与えてきた入間に対しての仕打ちを考えるカルエゴ。彼にとって入間は最早、サリバンとオペラ以上であり、カルエゴの生において最大の敵であり、憎き怨敵であり、宿敵……どんな言葉でも表現しきれない程の『敵』となっていた。
しかし、カルエゴは知らない。入間のカルエゴに対しての
そして、カルエゴが入間への仕打ちを考えながらも仕事をしている時……。
「カルエゴ先生、貴方は本当に凄いですねっ!!」
「……はい? な、何がですか?」
教師の一人に突如、声をかけられたので戸惑いながら用件を問うと……。
「何って……カルエゴ先生が担当する『問題児クラス』の生徒の事ですよ。正直、授業中、なにかやらかすんじゃあないかって警戒していたんですが、実に模範的な生徒と言える態度で授業を受けてくれましたよ。それに特に入間君……」
「……い、入間が何か?」
問題児クラスに授業をしたという教師の態度に混乱であり、違和感、不穏も不穏なものを覚えながら入間の名が出たので警戒しつつ、聞いてみれば……。
「『先生、僕達カルエゴ先生の厳粛的な教育態度のお蔭で生まれ変わったんです。だから、カルエゴ先生の名に泥を塗らないよう、カルエゴ先生の生徒として誇らしい生徒であるように頑張ります。そして、『問題児クラス』と言う名すら払拭して『超優等生クラス』と呼ばれるようになるくらい、真面目にそして厳粛に学業に励みますのでよろしくお願いします。だって俺たち『問題児クラス』はカルエゴ先生の事が『大好きですからー』って入間君を代表してクラスの皆が言ってましたよ。いやー、慕われてますね、カルエゴ先生』」
そう、カルエゴに『問題児クラス』は授業態度は真面目で特に入間は素晴らしいし、カルエゴを慕っているのが伝わってきたと言う教師に「(全然、違います)」や「(入間は『問題児クラス』の中で問題児の中の問題児で王、邪悪の権化です)」とか反論しながらも「(入間め、絶対にロクでも無い事をしようとしているな)」と確信していた。
そして、次々に『問題児クラス』の授業を務めた教師は先の教師と同じく、『問題児クラス』の授業態度は素晴らしく、その中でも抜きんでて入間は素晴らしくそして、彼も生徒達も全員がカルエゴを慕っていると伝えて早くも『問題児クラス』を改善したのかとカルエゴの手腕を絶賛した。
「(な、なんだ……一体、何をしようというのだ入間ぁぁぁぁぁっ!!)」
その度にカルエゴの中で入間に対する不信感や警戒度は鰻登りに上がり続け、自分の担当のクラスと自分が教師から褒められているにも関わらず、逆にストレスになっていくというカルエゴの中で一種のパラダイムシフトすら起きていた。
ともかく、そうして一日の授業が終わりカルエゴは『問題児クラス』の教室で再びホームルームを入間を警戒しながら、行っていた。
「良し、以上で今日は終わりだ。さっさと帰って明日も厳粛に学業に励むように」
「あれ、先生? カルエゴせんせーい」
ホームルーム中、手を上げながら声をかけてくる入間をとにかく無視しながらカルエゴはさっさとホームルームを終えようとしていた。
「帰れ、とにかく帰れ。寄り道は絶対にしないようにな」
「困ったな聞こえないのかー、これはカルエゴ先生は教師としてちゃんとやれないって事で理事長である爺さんとついでにオペラさんに報告するのと後は魔界中にカルエゴ先生のある事無い事、特にない事を出来る限り脚色して……「だああっ、なんで貴様はそう、やる事が一々、悪質なのだ!!」」
しかし、入間はカルエゴが無視するならばと対策を口に出す事で無視できないようにし、そしてカルエゴは仕方なく入間に言いたい事があるなら言ってみろと問う。
「いや、カルエゴ先生。俺たちに対して何か言う事を忘れてるなって」
「……何をだ?」
「もうー、やだなぁカルエゴ先生。とぼけちゃってぇ……俺たちはちゃんと今日の授業、先生の言いつけ通りに『
「っ、なっ!? き、貴様……そ、そのためだけに」
入間の言葉で教師たちがカルエゴを、『問題児クラス』を絶賛するようにした意図を完全に理解した。カルエゴにとっては『問題児クラス』の生徒、特に入間を褒めるのはある種、屈辱的である。
しかし、それを入間はやらせようと確実にカルエゴにとっての嫌がらせを手の込んだ方法を持って仕掛けてきたのだとカルエゴは悟ったのだ。
「勿論、授業中問題を起こさないのも厳粛に学業に励むのも当たり前ではありますよ。でも、こういうのって最初が肝心じゃあないですか。先生が褒めてくれたら、俺たちはこれからも先生にとって誇らしく、相応しい生徒として頑張れるのになぁ」
「……うぐ、こ、この……良くもまぁ、抜け抜けとそれとど、どこまで白々しく、図々しいのだ」
入間の仰々しく、わざとらしい態度たっぷりな言葉にカルエゴは追い詰められてゆく。
「それとですね、先生。バビルス教師心得って素晴らしいと思うんです……『教師たる者、いかなる理由があろうとも厳粛に生徒を評価すべし』ってこの
因みにバビルス教師心得の作者は何を隠そう、ナベリウス・カルエゴである。
「ぎ、き、貴様……そ、そんな事まで……き、貴様はその優秀さをちゃんとしたところで発揮できんのか……」
カルエゴは自分を弄り倒すためだけに用意周到な手を次々と仕掛けてくる入間に最早ドン引きすらしていた。
「ほらほら、どうしたんですか先生? 俺はただ、結果を示したからそちらも結果を出してくださいって、それも褒め言葉くれたらそれで良いって言っているんですよ」
「う……ぐ、だ、誰が……」
「えー、酷い。俺たちはちゃんと担任である先生に敬意をしっかりと表して他の教師にそれが伝わるようにまでしたのに。先生はやらせるだけ、やらせておいて自分は俺たちの敬意に応えてくれないって言うんですか。なんて教師だ、幻滅しました。こうなったらもうグレる事にしますね。そして、『問題児』の名の如く、これからは授業中、授業崩壊はおろか、学校崩壊レベルになる大問題をやらかしまくりますね。あーあ、これもカルエゴ先生がチンケな見栄を張って、褒め言葉の一つもくれないせいだ。と言う訳で皆……「あああああああっ!!」」
入間のどこまでも容赦ない畳かけであり、言いたい放題、やりたい放題な所業にカルエゴは教壇に両拳を叩きつけながら封じ……。
「い……う、ぐ……い、良いだろう。お……お前……たち……良く私の言い付けを守り、厳粛に授業に臨んだな。教師たちからもお褒めの言葉を沢山頂いたぞ。これからもその調子で授業に励め……これで満足かぁぁぁっ!!」
カルエゴは激怒に身を震わせ、両拳を血の滲む程に握り締めながら凄く不快であり、嫌そうにしながら褒め言葉を入間達に対して吐き捨てる。
それに対し、入間は……。
「偉い、流石はカルエゴ先生。俺が敬意を表する教師の中の教師、そして教師の鑑でバビルス一の教師……そうです、やっぱりこうした事が教師と生徒の信頼に繋がるんです。任せてください、先生。これからもちゃんと先生の信頼に俺たちは応えます。だって俺たちは先生の事が……」
『大好きですからぁぁぁぁっ!!』
入間が拍手しながら頷き、カルエゴを絶賛する間、他の生徒も皆が入間に合わせてカルエゴに絶賛の声と拍手を送りながら最後には全員で宣言する。
そして、更に……。
「見た? 爺さん、オペラさん……二人の言った通り、カルエゴ先生はとても素晴らしい先生だ」
『全くもってその通りっ!!』
入間が扉へと目を向け、呼びかけると扉を開けてサリバンとオペラが教室に入る。入間が事前に連絡する事で示し合せ、外で待機させていたのだ。
「……は?」
突然の事態に怒りも何もかも吹っ飛んで激しく混乱するカルエゴ。
「いやー、カルエゴ君。生徒に厳しいだけでなく、ちゃんと褒めることが出来るって僕は信じてたよ。本当に良かった」
「素直に褒められないというのはまだまだですが、褒めることが出来ただけ、及第点でしょう。ふふ、カルエゴ君も成長しましたね……先輩として嬉しく思います」
「……は、あ……?」
サリバンとオペラに詰め寄られ、手を握られながら褒められるカルエゴは未だ、混乱中……。
「おお、流石は最新機器……良く撮れているな」
その中、入間は教室内に仕掛けていたビデオカメラやス魔ホを取り出すとカルエゴが褒め言葉をかける先程までの事が録画、あるいは録音しているのを確認して満足する。
この本当にやりたい放題であり、容赦という言葉すら超えたカルエゴ弄りに……。
「入間様の知略と用意周到な手口にこのアリス、心底感服しました」
「入間ち、策略家だねー」
アリスとクララは絶賛し……。
『(絶対に入間君には逆らわないし、敵に回さないようにしようっ!!)』とクラスメイト全員は誓った。
そして、カルエゴは……。
「(私の認識があ、甘かった……い、入間は……奴こそは……)」
入間に対して敵という言葉すら生温い恐ろしき者である事を悟り……。
「ぐふっ!!」
ストレスが許容できない物に達し、とうとう吐血しながら倒れ伏す。
「先生っ!! ああ、まさか倒れる程に身を粉にして教師として務めていたなんて本当に敬意を表するに値する教師だ。直ぐに保健室に連れて行きますね」
倒れ伏しているカルエゴに入間は呼びかけながら、アリスとクララと共にカルエゴを保健室まで運び、更に……。
「え、わ、わわ……私がカルエゴ先生の看病をっ!?」
「はい、きっと先生みたいな美人に看病されたら、カルエゴ先生は喜びますよ。それにお二人はとてもお似合いだと思いますし……保健室の先生には話は通しておきましたから」
カルエゴに憧れ及び密かな好意を抱いているモラクス・モモノキにカルエゴの看病を任せるために話しかけた。
「……そ、その、ありがとう」
「どういたしまして」
モラクスは入間に礼を言いながら、カルエゴを看病するためにすぐさま保健室へと向かい、そんなモラクスへと入間は手を振って見送る。
「(カルエゴ先生、ちゃんとフォローしましたからね)」
使い魔の主として、そして生徒として自分が出来るカルエゴにとって一番のフォローを考えた上で入間はちゃんとしたのであった……。