魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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十三入

 悪魔学校の名門であるバビルスの学年は全6学年であり、在校生としては全666名の悪魔が生徒として通っている。数多の学生たる悪魔が共存する学内の秩序を保つのは教師だけでは不可能だ。

 

 よって生徒の立場から学園の秩序を保ち、監督する者達が現れた。

 

 それこそが高潔にして冷血、悪魔のエリートである生徒会である。

 

「ふおおおおっ!! これがアメリ会長が『窓ガラスを割るぐらいなら、壁ぐらい壊せ』と実際に壊してみせた壁跡っ!! これは是非ともバビルスの宝として後世に残さねばならないなりぃっ!! 隊員たちよ、それが(こち)ら、アメリ会長親衛隊の使命であり、野望っ!!そうなりなぁっ!!」

 

「おおおぉぉっ!!」

 

 現在は放課後――校内のとある場所で大きく穴が開いた壁の前で生徒会の長であるアザゼル・アメリの親衛隊隊長を自称する黒髪であり、前髪をオールバックにしていて眼鏡をかけた2年のエリゴス・シネルと彼の同士であり、それぞれアメリの親衛隊を自称する数名の悪魔たちが使命感に燃えながら、叫びを上げた。

 

「そんなくだらねぇ事を使命や野望にするな……」

 

『へぼあああっ!!』

 

 アメリの自称親衛隊に対し、入間は『悪食の指輪』から『指輪の化身』とも呼ぶべき悪霊を思わせるような姿の黒い靄を放った。黒い靄は親衛隊に対して適当に頬をひっぱたく事で接触し、彼らの魔力を奪い取る事で地に倒れさせた。

 

 サリバンの魔力を使って交流をしようとやってみたら、出来たので第二の使い魔の如く入間は『悪食の指輪』を使役しているのである。

 

「ちょっとは腹が膨れたか?」

 

 入間は戻って来た化身に呼びかけると化身は頷いた。その化身の頭を撫でながら「良し良し、じゃあ戻って良いぞ」と入間は言うと化身は指輪の中へと引っ込む。

 

「それじゃあ、この邪魔な奴らを適当に縛ってそこらへんに捨てるぞアリス、クララ」

 

「はい、入間様」

 

「ラジャッ!!」

 

 そうして親衛隊を入間はアリスとクララと共に拘束して、本当に隅の方に放り捨てて放置すると破壊された壁跡まで戻った。

 

「これで壁もそこの割れた窓も修理できるし、手伝うよ」

 

「ああ、すまねぇな入間君たち。本当に助かる」

 

 入間は親衛隊が集っていたせいで穴の空いた壁もそして、壁を壊した当人であるアメリたち生徒会が来るまでに暴れていた生徒が壊した窓を修理できずに困り果てていた用務員へと呼びかける。

 

 因みにだが、親の影響あって本質的に面倒見が良く、お人好しな入間はバビルスに来てから何度か用務員たちの手伝いをしており、それなりに交流は深かった。

 

 

 

「いやいや、こっちだって用務員さんたちの仕事あって快適に学校生活が出来るんだから手伝いは当然の事だよ」

 

「入間様の優しさは全くもって素晴らしいです」

 

「うん、私も優しい入間ちは大好き」

 

 苦笑する入間にアリスもクララも絶賛しつつ、用務員と共に作業に取り掛かる。

 

「それにしても、窓を割るの防いだならそれで良いのになんで、態々壁壊したんだろうな生徒会長は……その場の雰囲気とかノリか?」

 

「どうでしょう、でも悪魔らしくて良いと思いますよ」

 

「大胆で格好良いね」

 

 話だけ聞いた生徒会長の行いに訝しむ入間に対し、アリスとクララは逆に素晴らしいと評する。こればかりは人間と悪魔の価値観の違いを入間は実感せざるを得ない。

 

「用務員さんにも迷惑はかかるんだから、なるべく学校は壊さない方向にしてほしいもんだ」

 

 入間はそう、溜息を吐きながら呟くのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪魔学校バビルスにおいて生徒会の長を務めるのは長身であり、長い赤髪で頭上は角の如くとなっていて、後ろに流れている髪のうち、両側は独特な巻き上げ状となっているという特徴のある髪型。見目麗しく正に女傑と評するのが正しい容姿の女性悪魔こそアザゼル・アメリだ。

 

 余談だがアメリの父は『13冠』の一人であり、この魔界にて魔関署警備長を務めていて日々、魔界の治安維持に励んでいる悪魔でそんな父をアメリは尊敬していて、将来的には父の仕事を手伝う事がアメリの『夢』である。

 

 生徒会長として学園の秩序を保っている彼女だが、しかし、そんな彼女には一つの秘密であり、趣味があった。

 

 

「くしゅん……む、誰か噂でもしているのか?」

 

 その趣味に没頭している最中、くしゃみをしてしまうアメリ。噂をされる心当たりは多いので気にはせず……。

 

「それにしても、この禁書はなんと凄まじいのだ。読めば読む程に魅入ってしまう」

 

 アメリが禁書と言いながら、夢中になっているのは人間界の物であり、書物。

 

 実際の所は漫画で人気の学園ラブコメの『初恋メモリー』である。

 

 因みにだが、アメリは人間界の字は分からないので絵だけを見ている。

 

 そうして、読みふけっている内に夕方近く……。

 

 

 

 

「おお……もう、こんな時間か……やはり、禁書は恐ろしい」

 

 窓を見て、大分時間が経過しているのを見てアメリは取りあえず、今まで読みふけっていた『初恋メモリー』を懐に仕舞いながら、生徒会室を出て廊下内を歩いていた。

 

 そしてふと、角を抜けた瞬間に人影が見え……。

 

「(しま、ぶ、ぶつか)……え、お、おおっ?」

 

「失礼」

 

 角を抜けた直後に人影を捉えたのでぶつかると思ったがまるですり抜けるかのようにその人影は接触を回避しつつ、謝って来る。

 

 それに一瞬、戸惑いながら……。

 

「ま、待てっ!!」

 

 とにもかくにも本来ならぶつかっていたので謝るためにアメリはその後ろ姿へ声をかけたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 用務員の仕事を手伝って窓と壁の修理をした入間はそのまま、ついでとばかりに他の用務員の仕事を手伝うと大分時間が経過していたのでアリスとクララを先に帰らせ、自分は清掃道具の片付けのために廊下を歩いていた。

 

 そして、角の方を歩く中で危機を感知したので用心し、そして人影が見えた瞬間に身体の芯をずらす事で本来ならあり得ない隙間を通ると言う回避の技術をもって角の先で接触する筈だった者とのそれをやり過ごした。

 

 謝りつつ、そのまま行こうとすれば『待て』と声をかけられたので振り返った。

 

 

 

 

「あ、ああ……えっと、貴女は確かアザゼル・アメリ会長ですよね? 俺の名前は入間です、初めまして」

 

 アメリの外見自体は話に聞いていたし、それに何度か学校の門を通る前に見かけていたので入間は知っていた。

 

「入間……ああ、お前が色々と評判の……それはともかく、すまなかったな。お前が回避してくれなければ間違いなく、ぶつかっていただろう。急いでいたとはいえ、本当に済まない」

 

「これはご丁寧に……」

 

 頭を下げるアメリに対し、入間も又、頭を下げた。

 

「それにしても、こんな時間まで何をしていたのだ?」

 

「いやー、それがですねぇ。()()()()()()()()がやりすぎたのか勢い余って壊した壁を直そうとする用務員さんの仕事を手伝っていたんですよ。後はついでに他の用務員さんの仕事も手伝っていましたが」

 

 入間は悪戯をしかけるような態度でアメリへと言った。

 

「う……そ、そうかそれは重ね重ね済まなかったな。そして、ありがとう」

 

「いえいえ。ただ、次からは余り学校を壊さないようにしてあげてほしいなって、用務員さんが困る事になりますし」

 

「中々、言ってくれるな。だが善処しよう……ではな」

 

 入間に対し、苦笑するとアメリは去ろうと振り返って歩き出すが……。

 

 

「あ、何か落としましたよって……うお、『初恋メモリー』じゃあないかっ!!」

 

 アメリの懐から『初恋メモリー』が落ちたのでそれを入間は拾い上げて懐かしさのあまり、驚く。

 

 彼は実は人間界での生活の中で毎週読んでいて、しかもアシスタントすらした事のある漫画である『初恋メモリー』を見て思わず、懐かしさが込み上げたのである。

 

「おお、そうそう主人公の凛と翔が王道的な出会いをしながらも結構、ハチャメチャな騒動をしながらラブコメっていくことになるんだよ。いやー、本当に懐かしいな。でも、なんでアメリ会長がこれを? だって、此処は……っ!?」

 

 漫画を読み開き、内容を確認しながら改めて懐かしがる入間。そして、アメリに返そうとしたところで致命的な失態を犯した事を悟る。

 

「い、入間……お前……」

 

「(やっちまったぁぁぁ、此処、魔界だから『初恋メモリー』を知っていたら、人間と疑われちまうぅぅぅぅっ!!)」

 

 驚愕を露わにするアメリを見ながら、瞬時に入間は自分の失態を呪ったが……。

 

 

 

 

「(いや、まだ遅くない。遅くはないっ!!)」

 

 アメリの表情になにやら期待感のようなものが溢れているのを見てとり、手放さず持っていた事からある事を予測し、それに賭ける事にする。

 

「アメリ会長っ!!」

 

「お、おう……何だ」

 

「実はですね、俺の爺さんであるサリバン理事長は人間界の物を集めるのが好きなので確か、漫画でしたっけ……これも屋敷にあってですね。俺にもこれを魔術で翻訳しつつ、読ませてくれたんですっ!!」

 

「な、まさかこれを読めるのか!?」

 

 アメリは入間の言葉に目を輝かせながら問うた。

 

「(やった、食いついたっ!!)はい、しっかりと読むことが出来ます。そして、アメリ会長が望むなら……今日は遅いので明日から読んで差し上げても構いませんよ。ただ、この事は俺とアメリ会長の二人だけの秘密にしていただけるならですが……どうです?」

 

 入間は『初恋メモリー』が読める自分に対してのアメリの反応に彼女は『初恋メモリー』の字は読めない事を確信しつつ、そして彼女は『初恋メモリー』に興味津々であるのを確信。

 

 

 よって、状況は上手く行きそうなのを確認しながら、そう提案し……。

 

 

 

「その前に確認はさせてもらおう」

 

 アメリは入間が実際に『初恋メモリー』を読めるのかを確認し、そして読める事が分かれば……。

 

「……良いだろう。入間、お前の上手い口車に乗ってやる事にする」

 

「ありがとうございます。アメリ会長……では、交渉成立という事で」

 

「うむ」

 

 入間とアメリは交渉を成立させ、その後は通信媒体であるス魔ホによってお互いの番号にメアドを登録して別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃあああああああああっ、切り抜けたぞぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 入間はもう2度と失敗しないようにと反省しつつ、窮地を脱した高揚感のあまり、勝利の雄たけびを上げたのだった

 

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