入間による徹底的なカルエゴ弄りの結果、カルエゴは限度を超えた心労によって吐血し倒れ伏すという事があった翌日、悪魔学校バビルスの一年『問題児クラス』の教室。
「皆、おはよう」
『おはよう』
いつものようにアリスとクララと共に教室へとやって来た入間は先に入っていたクラスメイトたちへと挨拶すればそれに皆も挨拶を返す。そして、入間は教壇の方へと行くと……。
「今日は皆にプレゼントを持ってきた。俺の手作りのシュークリームだ。一人、一個だからな。アリスとクララは先に食べてる」
「お前達、入間様の御心に深く感謝し、良く味わって食べるように」
「入間ちの手作りのシュークリーム、滅茶苦茶美味しいよ」
入間が言うとアリスが持っていた箱を開けて十個あるシュークリームを見せ、クララは絶賛した。
二人は入間の家であるサリバンの屋敷へと迎えに行った際、入間の手作りのシュークリームを食べたのだ。その際、アリスは『入間様のシュークリーム……保存魔術をかけて家宝とします』と感激しながら言い、『いや、食べてくれた方が俺にとっては一番、嬉しい』と呆れながら突っ込むというやりとりがあった。
「へぇ、入間君お菓子作れるんだ」
「プレゼントしてくれるのは嬉しいけどさ……何でシュークリーム?」
ジャズは有難く、シュークリームを手に取り……リードも同じく手に取りながら、何故プレゼントがシュークリームなのかを質問する。
それは他の者も一緒なので注意を向け……。
「いや、昨日カルエゴ先生が『シュークリームが食べたいっ!!』って此処に入ってきた瞬間に叫んだだろ。でも買ってあげるって言ったらそれはいらんって言われたからしょうがなく、真心を込めて手作りのシュークリームを用意したんだよ。で、ついでだし皆の分も作ったんだ」
リードの質問に入間は『カルエゴ先生も我儘だよなぁ』と最後に呟きつつ、そう返答した
「……色々、言いたい事はあるけど……入間君、ありがとうとだけ言っておくよ」
リードは感謝の言葉だけを伝えた。
リードもジャズも他のクラスメイト達も『シュークリーム』が食べたいと言ったのはあくまでもカルエゴの声真似をした入間だし、買ってあげると言った奴がいらないと言われたからって何故、手作りの物を渡すという発想になるのかとか、カルエゴにもシュークリームを渡したのかとかどこまでカルエゴを弄る気なのか等々、思う事は色々あったがしかし、入間に逆らえば、敵に回した時の恐怖は十分に昨日のカルエゴ弄りで思い知ったので突っ込むのは止めた。
「美味っ、本当に美味いぞこれっ!!」
「こんなに美味しいシュークリーム、今まで食べた事無いよ」
ジャズとリードはシュークリームを食べると至福を体感しているような表情でシュークリームを食べた感想を言った。そして、ジャズとリードを先に毒見のようにさせていたクラスメイト達も続々とシュークリームを食べようとアリスの元へ行く。
「甘味はあまり好みでは無いが、我がライバルが作った物だからな。腕の程を確かめてやろう……うむ、極上の味だぞっ!!」
「はむ……おお、なんと美味な……」
「とても美味しいでござるっ!!」
「美味しい~~っ!!」
「正しく、甘美」
「うん、美味しいよ」
サブノックにカムイ、ガープにアガレスにアロケルにそして、家系のしきたりによって他の悪魔との接触を控えるように言われている事であまり、クラスメイトとも交流しようとしないプルソン達は入間のシュークリームの味を絶賛した。
「あら~、本当に美味しいわ入間君」
「はい、とっても美味しいです」
エリザベッタとケロリも又、入間のシュークリームの味を絶賛した。
「入間君って、パティシエ志望なの? 絶対、魔界一のパティシエになれるけど」
「いや、別に」
「え、じゃあ菓子作りが趣味とか?」
「趣味って程でも無いぞ。大体、俺は作るより食べる方が大好きだしな」
ジャズからの質問に淡々と答える入間。彼は両親によって過酷な環境に追いやられるうち、何度も自立を考えており、そのための一つとしてそして、生きるために料理の腕を磨いたし、だからこそ『食』に拘った。
入間にとって料理も菓子作りも生きるためのものなので趣味と言う概念には当てはまらないのだ。
「……ああ、やっぱり……入間君はやれば何でも出来るタイプか」
「いや、何でもは出来ないぞ。後、もしみんなが望むならこれからも授業を昨日のように問題起こさず、真面目に受けてくれたら菓子を作ってきてやるよ」
リードの言葉に入間は苦笑しつつ、皆へと提案すれば……。
『お願いしまーすっ!!』
皆が即答したのだった……。
2
昨日、入間によって徹底的に弄られた挙句の果てに吐血し、倒れ伏してしまったナベリウス・カルエゴは医務室にて目を覚ませば、傍には自分が教師の先輩として教育をした事のあるモラクスが居て、彼女は親身に看病してくれた。
「看病をしてくださり、ありがとうございましたモラクス先生。何かお礼をさせてください」
「っ……そ、それじゃあ次の休みの日、一緒に街を出歩いていだけませんかっ!?」
カルエゴからの申し出にこの好機を活かすべく、深呼吸し覚悟を決めながら一世一代の勝負だとばかりにカルエゴへと逢瀬を申し出るモラクス。
「……は、はぁ……別にそれくらい、構いませんが」
カルエゴはモラクスに気圧されつつも、了承する。
「っ!! ありがとうございます」
当然、モラクスはそれに大喜びをした。そんなやりとりがあった翌日……彼は職員室で入間からの弄りに本気で対抗するために警戒心を準備しようとしていたが……。
「おっはよーう、カルエゴ先生。早速だけど君にはこのシュークリームを食べてもらうよ」
「貴方の生徒であり、使い魔としての主である入間様の手作りです。まさか、断りませんよねぇ、カ・ル・エ・ゴく~ん?」
突如、理事長であるサリバンとオペラが職員室へ入ったかと思えば一つのシュークリームをカルエゴへと手渡す。
「(さっそく、仕掛けてきたなぁっ!! でも、何故……)」
入間がサリバンとオペラを通して弄ってきた事を悟りながら、何故シュークリームなのかを考えて昨日、自分の声真似をして『シュークリーム』がどうとか言ったのを思い出した。
「(奴はどれだけ、私を弄るのに無駄に尽力してやがるんだぁぁぁぁっ!!)」
買ったものが駄目なら、手作りでとかそうした入間の意図を悟ったカルエゴは改めて驚愕する。
「おお、シュークリームの手作りとは……入間君、凄いですね」
「慕われてますねぇ」
そう、カルエゴ以外の教師たち……特に昨日、『問題児クラス』の授業を受け持ち、入間のカルエゴへの想いを伝えられた者たちは入間はカルエゴを本当に慕っているのだと確信した。
「(あの野郎は本当に外面ばかり、取り繕いおってぇぇぇっ!!)」
「ほらほら、さっさと食べてよカルエゴ先生」
「安心してくださいカルエゴ君。入間様は甘い物が苦手なカルエゴ君のためにちゃんと甘さ控えめにしてくれていますよ」
オペラの言うようにカルエゴは甘い物が苦手であった。もっとも食べられないという訳ではないが……。
「(そんな手間をかけるくらいなら、そもそも食べさせようとするんじゃあないっ!!)」
カルエゴは心の中で突っ込みながらも雰囲気的には食べなければならないそれが出来上がってしまっている。入間の事だから何が入っているか分からないし、凄く不味いという可能性もあるのでやはり、どうしても躊躇ってしまう。
「……ふぅー……わ、分かりましたよ。た、食べれば良いんでしょうっ!!」
もし、死んだら入間を呪い殺してやるという誓いの元、生涯においてこんなに緊張やら覚悟をしてシュークリームを食べようとしているのは初めてだと思いつつ、シュークリームを口にして……。
「美味っ……美味いっだとおっ!!」
高貴な家系柄や高級料亭を行き着けにしているなどあって舌が肥えているカルエゴをして入間の手作りのシュークリームは絶品であった。
「(だからこそ、余計に複雑だ……)」
しかし、流れで言えば不味いか変な物が入っているかの方が良かったのでカルエゴは美味い物を味わっているというのにとても複雑な気分で食べる羽目になり、美味い物を楽しんで食べられないからこそ、それが余計に嫌で辛かった。
ともかく、入間のシュークリームを食べ終えていよいよ入間の居る『問題児クラス』の教室へと向かえば……。
「起立、せーの『カルエゴ先生、おはようございまーす!!』」
カルエゴが教室へと入れば入間が代表して合図し、クラス全員がカルエゴへと挨拶する。
「カルエゴ先生。倒れるくらい、身を粉にしてまで働くのは教師として尊敬に値しますがやはり、自分の健康管理も教師の務めですよ」
「貴様が言うなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
本心から心配している態度で言う入間にカルエゴは大きな声でツっコんだのであった……。