この魔界において『魔王』に近しい存在とは『キングメイカー』であるメフィストフェレスである。
魔界の歴史において登場するのは今を数えて3代前の魔王の手記からである。
どうしてそんな昔から出る事が出来たのかと言えばなんと、メフィストフェレスは転身出来、生まれ直せる悪魔だからだ。
そうして、魔王の資格を持つ者を見極めつつ、キングメイカーとしてこの魔界に相応しい魔王を生み出してきたのだ。
そんな彼は数百年間、キングメイカーの活動を止め、魔界の頂や盤上から外れた。
なぜ、そうしたのかと言えば、これもやはり数百年前の出来事が原因である。
当時、メフィストフェレスはキングメイカーとして、歴代魔王の中でも賢明で容赦のない性格であるが故に苛烈な魔界の生存闘争を生き抜いた傑物であった『ドクフェル』を魔王として魔界を治めさせた。
転身したある日、もうかなりの老齢で寿命も近づいていたドクフェルから命じられたのだ。次期魔王を選定しその者に仕えるようにと……。
その当時の魔王候補は二人いた。
一人は粗暴な性格であるが、魔力も技術も頭一つ抜きん出ている実力者であった男の悪魔である『豪将』アルヴロ。
もう一人は女の悪魔で地力は足らぬが柔軟な発想力と厚き人望のある『知将』クシナシ。
この二人が当時、魔界を己が物とすべく戦っており、メフィストフェレスは魔王ドクフェルの最後の言葉もあって、アルヴロとクシナシ、どちらがドクフェルを継ぐ次代の魔王になれるか見極めようとしたが……。
『両軍、
アルヴロとクシナシの二大勢力のどちらも一人で潰した男の悪魔が現れた。
『何、笑ってんの?』
メフィストフェレスはその男の悪魔を見て全身が沸き立つような感覚を覚えた。何故なら圧倒的な王の威風を感じたからだ。
そうして男の悪魔にキングメイカーだとメフィストフェレスは自己紹介しながら、彼を魔王にしようとしたが……。
『あー、そういうのいいや。俺が歩く道は俺が決める。だから、道案内はいらない』
男の悪魔は既に『王』として完成していた。
キングメイカーは王を育てる事、共に世界を作るのが存在意義である。
故にメフィストフェレスはその男が王である限り、自分の存在意義は無いと確信したのだ。
そう、メフィストフェレスの存在意義を否定した魔王こそ、デルキラだった。
「なるほど……そういう事だったのか。まぁ、そういうスタイルもありなんだろうが……俺は近道とか大好きだからよろしくお願いするぜ、メフィストさん」
「ふふふ、君は実に魔王にならせ甲斐があるし、本当に君がいてくれて良かったよイルマ君。じゃないともう、俺は存在すら消えていたかもしれない」
入間の要望で自分がキングメイカーとして関わってきた魔王たちの全てを語りつつ、キングメイカーとして再び活動できるし、なによりキングメイカーとして必要にされた事を喜んでいるが故に入間を気に入っているメフィストフェレスなのであった……。