昨日に引き続き、悪魔学校バビルスが一年のクラスの一つである『問題児クラス』の生徒はその名に反して今日、予定された授業の全てにおいて一年だけでなくあらゆる学年、クラスにおいても模範に出来る程の授業態度で臨み、真面目に厳粛に授業を受け終えた。
そして今日も又、『問題児クラス』の教室にて担任であるカルエゴは終わりのホームルームを開始したが……。
「……では、今日も以上で終わりだ……出来る限り、速やかに帰宅し……明日も厳粛に学業に励むように……」
カルエゴはいつ何時、入間が自分の心身にとんでもないダメージを与える弄りをやらかしてくるか気が気でないので警戒しながら、ホームルームを行うも入間はまったくもって気味が悪く、不穏で嫌な予感を感じさせつつも静かであり、微笑を浮べている。
「起立、礼……『ありがとうございました』」
しかし、入間はこれといったことはせずに普通にクラスメイトへと号令すると皆でカルエゴへと挨拶をして、ホームルームは終了する。
そして……。
「カルエゴ先生」
「(っ、来たっ!!)」
入間はふとした感じでカルエゴへと呼びかけたのでカルエゴは準備体勢となり……。
「そんなに警戒しなくとも、病み上がりの先生の御身体に障るような事はしませんよ。ちゃんと完治したら、またコミュ……弄って「おい、何でそっちの方に言い直した。というか、言ったな。事もあろうに弄っていると自白しやがったな貴様ぁぁっ!!」」
入間が自然に語り出す最中にしれっと言った言葉に即座に反応してカルエゴは激怒する。
「だってカルエゴ先生、弄るの楽しいんだから仕方ないでしょうがぁぁっ!!」
「即座に逆切れするんじゃあない……ぐっ!!」
「ああ、ほら冷静にならないとまた、吐血して倒れちゃいますよ。ちゃんとご自愛くださいね……完治したらこれから……クフフフフフ、フハハハハ、アハハハハハハハハハッ!!」
入間の弄りによる刺激によってカルエゴの胃が痛みを訴えだす。痛みに悶えるカルエゴを尻目に、入間は態度や声色こそ心配げだが、最後には高笑いをして教室から出ていった。
「不穏な事を言い残しながら、古典的三段悪役笑いをして帰るなぁっ!!」
しかして又、カルエゴの胃は痛み始めたので……。
「くそ、こうなっては仕方ない。出来る限り、頼りたくはなかったが……」
カルエゴは普段は絶対に無い事だが学校を早退すると薬局へと向かい……。
「……ぐ」
「は……はい?」
只ならぬ様子で重々しい雰囲気のカルエゴに薬局の店員は恐怖しながらも良く聞こえなかったので問い返すと……。
「持ってこい、ありったけの胃薬をっ!! 今すぐうぅぅぅっ!!」
「は、はいいいいいいいっ!!」
今日、薬局のあらゆる種類の胃薬が売り切れになったという……。
2
入間はホームルームが終わると校舎の方へと向かっていた。昨日、2年生であり、生徒会長であるアメリとの約束を果たすために集合場所である談話室に行くのだ。
約束とは人間界において、大人気のラブコメ漫画である『初恋メモリー』をアメリに朗読する事であり、それは偶々昨日出会った際にアメリが懐に持っていて落とした『初恋メモリー』を見て、反応してしまったのが原因であり、必死で切り抜けるために何とか導き出したのが朗読という方法だった。
入間にとっては昨日の自分がやらかした失態は『初恋メモリー』ならぬ『
アリスとクララには『昨日、生徒会長に話があるからと呼ばれた』と言って、先に帰ってもらうように頼むとアリスは即座に頷いて了承、クララは渋々ながらも納得して帰ってくれた。
そうして、談話室へと近づけばそわそわと今にも待ちきれない様子でアメリが扉の前で立っていた。
「おお、来たか入間!!」
「はい、アメリ会長。女性を待たせるのは俺の性分では無いのですがどうにも『問題児クラス』の教室は校舎からも遠いので……すみません」
本当に楽しみにしていた事が分かるアメリの態度に微笑みながら、まずは待たせた事を詫びた。
「いや、良い。それとこういう時ぐらいはアメリと呼んでくれて構わんぞ」
「ありがとうございます。では、待たせた分は力を入れて朗読させてもらいますね。アメリさん」
「うむ、よろしく頼む」
こうして入間はアメリと共に談話室の中へ入り、彼女が持ってきた『初恋メモリー』の一巻の朗読を始めた。
「『いっけなーい、遅刻遅刻!』、『私、星野凛(16) 只今、絶賛遅刻中!』」
「凄い演技力だなっ!?」
入間の朗読は声優が如くであり、その声色は多種多様で演技力は擬音ですらもしっかりとこなしてしまう。アメリはそれに驚きながらも入間の朗読を時には人間界での物事を質問したり(サリバンから人間界の知識を教わったという態にしてある)、キャラの行動に声を上げたり、一喜一憂して『初恋メモリー』の物語を楽しんだ。
そんなアメリの様子を見て入間は『(漫画って本当凄いな)』と人間界でも世界の人を魅了するそれが悪魔にも通じた事で漫画の持つ力を実感した。
そうして『初恋メモリー』の一巻の内容は終わり……。
「入間、お前の朗読は凄かったな……こう、本当に凄かったっ!!」
アメリは大きな感動と興奮で思わず、言葉に詰まりながらもそれだけを言った。
「ありがとうございます。こちらこそ、アメリさんの魅力的な一面を色々と見れたので嬉しかったです」
「む、それは私を口説いているのか?」
入間の言葉にアメリは不敵に笑いながら問いかける。
「いえいえまさか……熱い物を触ったら熱いと言うように……魅力的だと思ったから、魅力的だと言ったまでですよ」
「正直なのは良いが、中々くすぐったくなる事を言う奴だな入間は……決して不快では無いが……これからも朗読を頼むぞ」
「はい、喜んで」
そうして今日の朗読を終えて入間はアメリの元を去り……。
「(トランペット……良い演奏だ)」
校舎の屋上の方から鳴り響くトランペットの音色が聞こえたので聞き入りつつも動き出し……。
「良い演奏だったぜプルソン、これはファンからの贈り物って事で受け取ってくれ」
「あ、う、うん。ありがとう」
入間は屋上でトランペットを吹き終わったプルソンへ販売機で購入したスポーツドリンクを手渡し、プルソンは礼を言って受け取った。
「この事は皆に内緒にした方が良いか?」
「……うん、それでお願い」
「分かった。本当にトランペットの演奏心惹かれたぜ」
プルソンの返答に頷くと感想を言って、入間はプルソンの元から去る。
余談であるがこの翌日の放課後、昨日の夜にてトランペットの演奏技能を異常すぎる才能によって身に着けた入間はプルソンが演奏するために居た校舎の屋上とは反対の屋上にてプルソンの演奏に自分の演奏を重ね合わせた。
入間は家系のしきたりで積極的には他者と交流できないプルソンに対し、トランペットによるプルソンとの合奏を彼に対するコミュニケーション代わりにしたのだ。
その意図は伝わり、プルソンは答えてくれた。
この二人のコミュニケーション代わりの合奏が続く中でバビルスに二人のピクシーがいるという噂話が出来上がったのだった……。