魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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十八入

 

 

 悪魔学校バビルスの教師であり、一年『問題児クラス』の担任であるナベリウス・カルエゴにはかつて『バビルスの番犬』として働いていた伯父が居る。とはいえ、叔父はナベリウスの一族には珍しく、基本的に怠惰な性格であった。

 

 だからこそ、カルエゴが嫌いとして認定するタイプなので彼がバビルスを去った後も基本的には関わる事は避けていた。

 

 しかし……。

 

 

 

 

「……叔父上?」

 

 ある日、急にカルエゴのス魔ホに叔父から通話がかかった。

 

 

「どうしたんですか、叔父上。言っておきますが金なら貸しませんよ」

 

 叔父がかけてくる用件の中でも一番、心当たりがあるそれについて言いながらばっさりとした態度をとる。

 

「おぉう、相変わらず厳しいねぇカルエゴちゃんは~。でも、用件はそれじゃないよ。ねぇ、カルエゴちゃんってさ、音楽は好きだけどダブステップは嫌ってたよね?」

 

「はぁ? いきなり何を……」

 

 叔父からの面白がるような態度が籠った声と共にカルエゴの脳内に電流が走った。そう、又、入間が何かやらかしたに違いないと確信したのである。

 

「すみません、確認する事が出来たので通話を切ります」

 

「はいは~い、何でも良いから動画サイト開いてみなー。すぐわかるよ」

 

 叔父からの助言に従い、カルエゴはス魔ホで大手動画サイトの『デビチューブ』にアクセスすると、叔父の言う通り、早速見つけた。

 

 その動画は動画では無く音楽であり、そのジャンルは『ダブステップ』であるために重厚な電子音楽と特殊音が奏でられる。

 

 そして、合いの手代わりに『粛にっ!!』と何度もカルエゴの声が混じるのだ。締めには『粛にっ!!』の後に激しく奏でられ続ける重厚な電子音に特殊音が演奏されて終わるというもの。

 

 正直、音楽は好きで楽器の演奏にも長けているカルエゴとしてはダブステップのようなEDMは好かないのだが、それでも中々、聴かせる曲であり出来は凄まじく良い。

 

 実際に再生数も高評価も鰻登りに上昇し続けている。『EDⅯ界に伝説現れる』というようなコメントまで次々と書かれてもいた。

 

 そして、その曲名は『SHU☆KU☆NI』であり、配信者はDJ.MAIRU&イマジナリーシンガーことEGIIとなっていた。

 

「入間ぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 いよいよをもってカルエゴの怒りは限界を超え、翌日入間の居る『問題児クラス』の教室の扉前へと向かえば、外へと例の曲が響いてきていて……。

 

 カルエゴは扉を勢い良く開くと……。

 

 

 

「EGIIっ!? お前、実体化したのか……」

 

 扉を開いた先は入間によって豪華なクラブと化していて、入間はDJに扮し、片手にマイクを持ちつつ、ターンテーブルで例の曲をクラスメイト達に演奏していた。

 

そして、カルエゴを見て、驚愕と共に放った入間の言葉に……。

 

 

 

「【番犬の(ケルベロ)……】」

 

 カルエゴの中の糸が切れ、彼はナベリウスの一族の血だけに宿る魔力であり、三つ首の巨犬を出現させ、その暴威を全力で入間へと解き放とうとしたが……。

 

 

 

「おっと、危ない」

 

 入間が指を鳴らす事でこの異界限定で事象を改竄する魔術を発動する。すると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 カルエゴは小柄に過ぎる体格、もふもふの羽毛に包まれた鴉の雛のゆるキャラ染みた姿となり、三つ首では無く、可愛らしい子犬の如き姿となったケルベロスの上に落ちる。

 

『!!!!!!!??????』

 

 当然、カルエゴもケルベロスも激しく混乱した。

 

 

 

「おお、カルエゴ君。なんてもふもふで可愛らしい姿に……とても素晴らしいです」

 

 どこからかオペラが現れ、カルエゴを抱きかかえるとモフモフを楽しみ始めた。

 

「ちょ、あ、あんたどこから湧いた……こ、の……入間ぁぁぁ、覚えておけよぉぉぉぉっ!!」

 

 カルエゴはオペラにモフモフされながらも入間に激怒の叫びを上げ……。

 

「ケルちゃんも可愛いわね」

 

「ケルっち、可愛いい」

 

「キャウウ……」

 

 一方でケルベロスはエリザベッタやクララなどに可愛がられ、まんざらでもない様子で飼い慣らされつつあった。

 

「ケルベロスゥゥゥゥゥゥっ!!」

 

 当然、カルエゴならぬモフエゴはケルベロスにも怒ったが……。

 

 

 

 

 

 

 2

 

 

 

 

 

 

 

 今日も今日とて放課後、入間は談話室にてアメリへ『初恋メモリー』の朗読をしようと待っていると……。

 

 

「今日は随分と急いだようですね」

 

「ぜぇ、ぜぇ、ま、まぁな……」

 

 凄い勢いで走った事で息を切らせているアメリに入間は苦笑しながら言う。

 

「今日もよろしく頼む」

 

「はい、喜んで」

 

 ともかく、入間はアメリと共に談話室へ入ると『初恋メモリー』の5巻の朗読を始め……。

 

 

 

 

「『私の夢は素敵なお嫁さんなの』」

 

「夢……つまり、野望の事か!!」

 

 ヒロインの台詞に対し、アメリはそう結論を出しながら言う。

 

「え、あ、ああ……そうですね。アメリさんは何か、将来の夢とかあるんですか?」

 

「……私は……悪魔である事にも誇りを持っているし、皆にも悪魔に生まれた事を誇ってもらいたい。だから……」

 

 入間からの質問にアメリはそう、堂々と答え……。

 

「生徒達の質を向上し、この学校を悪魔たちの憧れの学び舎にしたい。それが私の夢であり、野望だ。入間の野望はなんだ?」

 

 そう締めくくり、アメリは入間の野望を問い……。

 

「聞いといて失礼ではあるんですが、実は俺には夢も野望も無いんですよ……だから、学生として位階(ランク)を上げながら、見つけようと思っています」

 

 入間は苦笑しながら、アメリへと返答する。

 

 実際、入間は人間界においては両親の事で手一杯であり、この魔界に来たときは両親から解放されたその反動で色々とやっているものの、夢や野望と呼べるようなそれが彼には無かった。

 

「む、そうか……ならばお前が野望を見つけるのを楽しみにしていよう。それと位階を上げていずれ、私に並ぶのもな」

 

「あう……は、はい。ありがとうございます……」

 

 アメリは入間の方へと近づき、穏やかな笑みを浮かべながら彼の頭を撫で、入間は恥ずかしながらも受け入れる。

 

 ついこの前のやり取りの結果、アメリは入間を弟のように接し、可愛がり始めたのである。

 

 因みにアメリの位階(ランク)は『(ヴァウ)』だ。

 

 

 

「アメリさん、禁書の方はちょっとしまっていただけますか?」

 

「ん? あ、ああ」

 

 入間の言葉に応じ、アメリは『初恋メモリー』を懐に入れ……入間は談話室の扉へと手を翳すと次の瞬間、扉に魔方陣が浮かび上がると砕け散り、扉が勢い良く開く。

 

 

 

 

「おわあっ!?」

 

「きゃうっ!?」

 

 そうして最近、生徒会長と大事な話し合いをしている入間が気になって盗み聞ぎしていたアリス、盗み聞きどころか部屋に入ろうとしていたのでアリスに止められていたがそれを振り切っても入間が扉に施していた魔術により、部屋に入れずそれでも入ろうとしていたクララの二人が入間が扉に施した魔術を解くと同時に魔術で扉を開けると部屋へと倒れながら入って来た。

 

「全く……盗み聞きは感心しないぞ。アリス、クララ」

 

「す、すみません。お邪魔するつもりは無かったのですが……」

 

「だって、気になったんだもん」

 

 苦笑する入間に対し、アリスは申し訳なさそうに言い、クララは頬を膨らませながら答える。そんなクララの頭を入間は撫でつつ……。

 

「では、今日はこれで失礼します、アメリ会長」

 

「あ、ああ。またな」

 

 そうして入間はアリスとクララの二人と共にアメリの元を去ったのであった……。

 

 

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