まだ十四年しか生きていないとはいえ、間違いなく世界一の人間の屑は自分の両親であると断言出来る鈴木入間はその親によって、老悪魔であるサリバンにその身を売られて魔界にある彼の屋敷へと連行された。
多くの修羅場を潜り抜けて培った第六感的な超感覚によって、サリバン相手には自分は抵抗できない事も悟ると『どうにでもなれ』という諦観により、成り行きに任せる事にするとサリバンは入間に対し、『自分の孫になって欲しい』と要求した事で入間はサリバンの孫となった。
「それで……孫になるのは良いけど、俺はこれからどうすれば良いんだ爺さん?」
「入間君にはこれから……悪魔の学校に通ってもらうよ。入間君は年齢で言えばまだまだ学生だし、両親に今まで連れ回されまくってたから碌な教育も受けてないでしょ。大丈夫、手続きはもう済んでるんだ。なぁに気にしないで。いいよ僕は君のおじいちゃんだもの……ああ、良い響きだねおじいちゃん。入学式は校門で写真撮ろうね」
「おぉう、めちゃくちゃご機嫌で舞い上がってんなぁ」
入間の質問に凄くご機嫌な様子で早口交じりに返答をした。そんなサリバンの様子に入間は苦笑するしかない。
「悪魔の学校に人間が通うのって大丈夫なのか?」
「前例は今まで無いけど、バレなきゃ食べられる事も無いよ。多分」
「つまり、バレたら食べられるって事だな。肝に銘じておく」
呑気に答えるサリバンに入間は不安しか感じなかったが、とにかく魔界での生活において一番、気を付けなければいけない事を知った。
とにもかくにも入間の入学準備(人間だとバレないように特別な香水をかけられるなど)は進み、屋敷から馬車によってサリバンと共に大きく広い丘の上に立っている禍々しさが漂い、豪華さもある城のような建物であり、悪魔たちの学校であるバビルスへと向かった。
「まるで巨城だな……それにしても現実感がねぇ」
馬車から出てバビルスを見上げる入間はその圧倒的存在感であり、幻想的な雰囲気から現実感を感じられなかったために圧倒されていた。
「入間君、写真写真」
「……はいはい」
まるで前からやりたかった事をやっているとばかりにはしゃぐサリバンに戸惑いながら、彼の誘いに応じて『入学式』(サリバンの魔術によって、入間は魔界の文字や悪魔の言葉が分かるようになっている)の看板の前に二人で建って写真を撮った。
「良し、それじゃ新入生はあっちだよ。頑張って!!」
「お、おう」
思う存分、自由に振る舞っているサリバンは入間に告げると颯爽とバビルスの中へと入っていった。
入間も又、サリバンが指差した方からバビルスの中へと入り、入学式を行う会場へと入った。
「(悪魔も様々なんだな)」
当たり前だが会場の中に居る人間は入間一人であり、残りは全て悪魔である。その見た目も様々で大体が頭に角を生やしていたり、尾には尻尾が生えていたりするが中には見た目は人間と変わらない者や獣人のような者、明らかな異形がいたりと入間は悪魔の種類、あるいは種族は様々なのだと現実逃避しつつ、思った。
「何か……旨そうな匂いがする」
そんな悪魔の言葉に内心、びくつきながらも敢えて堂々とした態度で椅子に座っている入間は自分の感覚が警鐘を鳴らすのを抑えながら、入学式が始まりさっさと終わるのを待っていた。
「起立、校歌斉唱!!」
「(お、始まった)」
校歌など知る由もないが、とにかく周りに合わせればどうにでもなるとそうした心意気で歌おうとした入間だが……。
人間丸々 我らの食い物♪
魂・血と肉 残さず啜れ♪
「(俺の学校生活の難易度がベリーハードすぎる……)」
このように校歌の時点で人間は悪魔にとって食い物だと伝え、そんなバビルスの教育思考に頭を抱えたくなった。
「えー、続いて理事長挨拶」
校歌が終わるとそんな声が聞こえ……。
「入間くーん、おじいちゃんだよーっ!!」
壇上からハイテンションで両手を振りながら入間に呼びかけるは入間を孫としたサリバン。彼はバビルスの理事長であった。
「(そんな気はしてたが、呼びかけるなよじいさーん!!)」
入間は入間でサリバンの見せた手際の良さからバビルスにおいてサリバンが重要な立場の者である事は予測していたが、人間だとバレないようにするためにも注目はされたくなく、よってサリバンの行為はまったく、ありがたくなかった。
当然だが、サリバンの行為によって周囲の悪魔たちはざわついている。
「いやー、実は孫が入学しましてね。これがもう可愛くて可愛くて……」
そんな中、サリバンは惚気話をするかのように語り始めるのを入間は頼むからこれ以上、例えば自分の顔がバレたりするような事をしないでくれと願ったが……。
「そんな孫と撮った一枚がこれです!!」
「(俺の顔、もう即バレしたぁぁぁぁっ!!)」
サリバンは無情にも先程、入間と撮った写真を
「後ほど、皆にこれを配布します」
「(誰がいるんだよ、そんなの)」
「良し、言いたい事言ったから終わり」
「(そんな挨拶があるかぁっ!!)」
とんでもない悪魔の孫になってしまった事を悟り、愕然とする入間だが……。
「では続きまして……新入生代表挨拶」
入学式進行者の言葉により、立ち上がるのは見た目は人間の美男であり、ピンクの整った髪に纏う衣装からして貴族風であり、気品も漂う者。
「(お、悪魔たちの注意が逸れた。とりあえず、良しだな)」
周囲の悪魔の会話により、入試主席との事でそれもあって入間の話題は逸れたので安堵した入間だが……
「えー、新入生代表アスモデウス君に代わりまして特待生である入間君。登壇してください」
「(OH MY DEVIL!!)」
自分を呼ぶ声に思わず、造語を叫びながらこんな事になった原因だろうサリバンの姿を探せばサムズアップしながら、孫の晴れ舞台をしっかりと手に持ったビデオカメラで撮影しているサリバンの姿が其処にあった。
「(身内贔屓に権力乱用、無茶振りにも程があるんだよ……だが、こうなった以上は仕方ない)」
入間は呼ばれた以上は仕方なく、自分を呼んだ進行者の声に仕方なく従って壇上へと上がり……。
「えー……俺は特待生の入間と申します。まず最初にこの入学式を用意した皆さん、そして本来、挨拶する筈だったアスモデウスさんに深くお詫び申し上げます。本当にすいません!!」
まずは深々と壇上周囲に居る教職員だろう者たち、そして壇上へと上がり損ねてしまい軽く呆然としているアスモデウスへと深々と頭を下げて謝罪した。
「さて……俺がサリバン理事長の孫という事ですが、訂正しておくと俺はこの魔界のとある辺境で育った者であり、孤児でしたがつい、この間……サリバン理事長に拾われ孫になる事になりました。実際のとこは養子に近いです」
謝罪を終えると入間はそう、自分についての境遇を創りながら皆へと語り掛ける。
「だから、皆と比べればこの魔界における常識も礼儀も教養もまるでなっていません。だからこそ、このバビルスでそうしたものを生徒である皆さんと学びながら、この栄えあるバビルスの生徒としてもサリバン理事長の孫としても相応しくあれるよう、頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします」
最後にそう、語りながら深々と頭を下げれば……。
『おおおおっ!!』
誠心誠意、気持ちを込めて語ったそれは悪魔にも通じたようで多大な拍手と歓声を受けた。サリバンはと言えば凄い号泣している。
そして、入間の言葉は嘘では無い。彼はこれから第二の人生を送る気持ちでサリバンの孫として生きる事と決めているし、だからこそサリバンの名に泥を塗らないよう。励む事を決めている。
良くも悪くも彼は真面目であり、努力家でもあった。
ともかく、閉会して会場を去る悪魔に混じりつつ、しかし周囲からの視線は受けながらバビルス内を歩いていく入間だったが……。
「おい、入間……」
「ん、ああ……アスモデウスさん……でしたよね? 入学式での挨拶は本当にすみませんでした」
声をかけられたのでそちらを見れば声の主はアスモデウスであり、入間はもう一度深く謝罪する。
「うむ、お前のその謝罪については受け入れよう」
悪魔におけるアスモデウスの家系は礼儀を重んじるために二度も謝罪する入間のそれをアスモデウス・アリスは受け入れた。
「とはいえ、私にとっての晴れ舞台を汚されたのも事実で簡単には許せない」
しかし、礼儀を重んじるからこそ侮辱されると激怒するのもアスモデウスの家系の特徴だ。
「少し付き合ってもらうぞ」
「……分かりました」
そうして入間はアリスと共に移動を開始したのであった……。