魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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二十六入

 学生である悪魔が位階を昇級する手段において、『位階昇級対象授業』であり、試験にて昇級に値する成果を出す事が主ではあるが、他にも『師団(バトラ)』に所属して成果を出す事で昇級するという手段が存在する。

 

 師団とは位階昇級を主な目的とした団体活動の事であり、共通の特技や趣味嗜好を持つ者たちが集まり、交流するのだ。その活動は多岐に渡り、例を挙げるならば飛行師団や魔生物師団、薬学研究師団など主に活動に応じた名を冠している。

 

 悪魔学校としては師団は魔力、知力、体力の向上と統率訓練を兼ねているので師団での活躍に応じて位階の昇級を認めていて、師団で参加する団体昇級試験もあるし、師団での個人の功績によって昇級させたりという事もある程だ。

 

 学生悪魔の約六割が何らかの師団に属しており、それは上級生徒とのコネクション作りにも有効だというメリットがあるのも一因である。

 

 早い話、悪魔版の部活といったところか……。

 

 そして、師団の目的は位階を昇級させる事であり、故に当然だが有能な新人を欲しがる。よって、新入生である一年に対して位階が安定した時期になると学校側は師団に対して解禁をするのだ。

 

『一年はいねぇかぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!』

 

『ぎゃあああああっ!?』

 

 師団所属の上級生による『一年生争奪戦(ルーキーハント)』をっ!!

 

 

 それは勧誘などと言う生易しいものではなく、自分の師団に加えるためならば力尽くは序の口で魔術による洗脳などと本当に手段問わずであり、他の師団が加えようとする新入生を横取りしたりするなど一年生争奪戦において『他の師団に迷惑をかけず、場所を譲り合って仲良く、節度をもった行動をとる』とそうした建前はあれど、結局のところは無法である。

 

 一年生争奪戦は早い者勝ちであり、獲得した者勝ちなのだ。

 

 そして今年、一年生争奪戦をしている師団の多くが一番の獲物としている一年生が居た。それは以前、行われた『処刑玉砲』においてなんと高位階の教師と特別試験を行い、実質的に勝利してみせた者……つまりは……。

 

『イルマは……イルマはどこだぁぁぁぁぁっ!?』

 

 師団の多くが入間の姿を探しているが、しかし、彼は絶対に見つかる事は無い。何故なら……。

 

「いやー、凄ぇなルーキーハント……正に名の如く、狩猟(ハント)じゃねえか」

 

「バビルスに限らず、悪魔学校においての名物のようなものですので」

 

「迫力凄ーい!!」

 

「ええっ、上級生は皆、必死ね」

 

 入間にアリス、クララにエリザべッタは皆、入間の魔術によって自分たちの存在強度を希薄にしているからだ。

 

 世界に存在しているが、存在していないというような曖昧な状態となっているので入間以外の者からすれば認識も干渉も出来ない。まあ、入間たちの方にしても相手を認識出来ても接触といった直接的な干渉は出来ないのだが……。

 

 そうして入間達はのんびり、他の一年生がルーキーハントにより阿鼻叫喚となっているのを見物していたのだが……。

 

『生徒会だ、道を開けろぉっ!!』

 

 一年生争奪戦において一定のラインを超える者も出て来るのでそれを抑制すべく、師団である『生徒会』は現れた。

 

「おい、貴様……」

 

「ヒ、ヒィィィィ……すみませーんっ!!」

 

 早速、生徒会長としてアメリが一年生に対し、限度を超えた上級生に対して声をかけ睨みを聞かせると上級生は一目散に逃亡し、強引に勧誘されようとした一年生はアメリ達、生徒会に礼を言って、感謝をする。

 

「生徒会も来た事だし、頃合いだ」

 

 入間はルーキーハントが落ち着くのが見えたので魔術を解いた。

 

「流石ですね、アメリ会長。公務、お疲れ様です」

 

『っ!?』

 

 そうして入間が大声でアメリへと呼びかければ今まで居なかった筈の入間達が急に出現したとあって、アメリ以外にも周囲に居た者達、皆が驚愕した。

 

「……」

 

「会長?」

 

 アメリは一瞬、驚愕しながらも入間の元へと移動を始め、生徒会の男性陣たちは怪訝に思うがアメリと同じく、女性悪魔であるスモークはニコニコとアメリの様子を見ていた。

 

 男性陣たちは処刑玉砲を見物した際に入間に対するアメリの行動が良く見えていなかったがスモークだけはばっちりと入間の額に口付けするところまでばっちりと見ていて、アメリが入間に対して好意があるのを察していた。

 

 というかそもそも結構、入間に対するアメリの振る舞いがあからさまというのもあるのだが……。

 

「オホンッ……あ~、せ、生徒会も師団だからな!! 新人を募集している!! ぜっ、前回の昇級試験は本当に見事であった。伸びしろがあると判断したのだ。も、もっと頻繁に交流したり、読書をしたいとかでは断じてないぞっ!!」

 

 アメリは入間に接近すると生徒会勧誘のチラシを差し出しつつ、表情は照れによって顔を赤らめたその状態で明後日のほうを(それでもちらちらと入間の方を)見、早口で用件を述べた。

 

「あ、あはは……お誘い、ありがとうございますアメリ会長」

 

「う、うむっ!! い、いつでも見学に来るがよい!!」

 

 入間が苦笑しながらそう言えば背中を向けながら嬉しさ混じった声色でそう言い、生徒会の皆と歩き去っていった。スモークは入間の方を見て、手を振ったりしたが……。

 

「うう~、まっかちゃんめぇ~」

 

「成程、あれは強敵そうね」

 

 そしてクララはアメリに対し、嫉妬しておりエリザベッタは何度かクララから聞いていたアメリを実際に見て、そう認識する。

 

「やはり、入間様は入るなら生徒会ですか?」

 

「ああ、今のところはそうしようと思っている」

 

 対してアリスからの質問に入間はそう答えていた。アメリとの縁を考えればそうした方が良いし、なにせ理事長の孫としても貫禄が付くというのもある。

 

 それに、生徒会はバビルスの教師陣とも良く連携をするのでつまり……。

 

 

 

 

「っ!?(この感じ、また入間(やつ)が何か碌でもない事を考えているなっ!!)」

 

 職員室に居るカルエゴは胃痛によって、入間が何か自分に対して良からぬ事をしようとしているのを感じた。彼にとっては全く嬉しくない事だがカルエゴは胃痛、あるいは胃の疼きによる察知が出来るようになってしまったのである。

 

 それはともかく……生徒会の登場で落ち着いてきた中、入間達が歩いていると……。

 

「(イル坊、あの大荷物を背負ってる奴を見てくれ!!)」

 

「(分かった)」

 

 そう、入間へと念話をする存在は入間が『3』へと昇級して少し経過した時から自我を持ち、言葉を話せるようになり、更にはある程度の行動まで出来るようになった『悪食の指輪』の化身。

 

 質が濃く、高い魔力やヘルハウンドを開発し、宿してからも魔力を食わせた影響か現在の姿は『暴食』や『捕食者』を体現するが如き獣染みた姿をしている。

 

 そして、何故か名前は『アリクレッド』だと自覚していた彼は入間との話し合いの元、入間の事をご主人、そして『イル坊』と呼びつつ彼に従っていた。

 

 入間はアリクレッドを『アリク』と呼んでおり、ともかく彼の言葉に従って大荷物を背負っている者を探せば、確かにすれ違い間近である青緑色の髪、頭の両側に角があるが左側だけ不自然に小さく、髪と同じ色の目には丸眼鏡、左目の下には泣きぼくろがあり、首には飾りのついたチョーカーをした者が大荷物を背負っていてふらつきながら歩いていた。

 

 

 

「(っ、あいつはヤバいっ!!)」

 

 そして、今まで数多くの修羅場を潜り抜ける中で身に着けた観察眼により、その人物がとんでもなく危険である者だと言うのを見抜いた。

 

「(ああ。あいつが首に着けている魔具が俺ちんのと同じ素材みたいだから伝わってくるが、間違いなく元祖返りしてる奴だぜ)」

 

 元祖返りとは従来の悪魔よりも他者への苦しみを喜んだり、破壊を楽しむなど悪魔的衝動が強い悪魔の事である。

 

「(なら、尚更放ってはおけないな)」

 

 入間はそうして……。

 

 

 

 「あの、すみません。その首輪……もしかして、これと同じ素材で出来てたりします? どうも反応してるみたいなので」

 

 危険人物であると見抜いている悪魔へと指輪を見せながら、声をかけた。

 

「ああ~、悪食の指輪か。それならしゃあないなぁ。君の言う通り、これはそれと同じ素材で出来てるで。因みに能力はそれと同じく魔力を溜めれるんや」

 

「そうでしたか……申し遅れました。俺はイルマと言います」

 

「っ、君があの有名な……僕は3年のアミィ・キリヲ。魔具研究師団の団長やっとるんよ。っと言っても団員が僕一人だからなんやけどな……ともかく、良かったら見学に来てな」

 

「ええ、実は俺も結構、魔具を自作してたりするので魔具には興味がありますし、喜んで見学させてもらいますよ」

 

「ほうなんや。じゃあ、期待して待ってるでイルマ君」

 

「はい」

 

 そうして、キリヲは入間の元を去っていく。その様子を見ながら……。

 

 

 

「(とりあえず、仕込みは成功だ)」

 

 キリヲとの会話中に入間は彼の魔具である首飾りに超極薄の糸状にした極小の魔力で接触しており、魔術で干渉できるように繋がりを作るという仕込みをしていたのだった……。

 

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