実の両親によって悪魔であるサリバンにその身を売られた鈴木入間は魔界でサリバンの孫として暮らす事になり、更には年齢の関係もあってサリバンが理事長のためにその権威が及ぶ悪魔学校バビルスに学生として通う事になった。
そして、早速迎えた入学式であるがサリバンが入間が人間だとバレれば悪魔たちに食われてしまう事、確実だというのにおもいっきり彼が自分の孫である事を式の前に先んじて撮った写真を拡大したそれによって入間の顔バレしながら自慢したり、入学式での新入生代表挨拶をするはずだった入試主席のアスモデウス・アリスを差し置いて入間に挨拶させるなど入間にとっては大迷惑な事をやらかした。
それが故か入間は入学式が終わるとアリスによって声をかけられ、そしてバビルスの中庭へと来るよう要求された事で入間はそれに応じるしかないために共に中庭へと移動すると……。
「養子でも孫でも……あの、サリバン理事長が君を身内として加えるという事はそれだけ、君に将来性があるのかそれとも優秀なのか……とにかく見定めさせてもらう。それ位の権利は私にはある筈だ」
アリスは入間に実力を証明するように要求してみせた
「荒事は苦手ですけど、それでアリスさんの気が済むというなら良いでしょう」
入間は本来、入学式で挨拶する筈であったアリスにとっての晴れ舞台を台無しにした負い目があるのでアリスの要求にやはり、応じる。
「良し、聞いたな皆。これから決闘を始める!!」
『オオオオオッ!!』
サリバンが孫だと言い、更に色々と自慢していた事で又、アリスに代わって挨拶した入間は当然ながら入学式に参加した悪魔たちに注目されていた事もあって、アリスが今回行う入間との決闘の観衆となる者は多かった。実際、アリスの掛け声に皆が期待の叫びを上げる。
「随分と手際が良いですね……まぁ、こういうノリは嫌いじゃないですよ」
「それは良かった。では、始めるぞっ!!」
苦笑する入間に対し、アリスは手より火球を生み出した。そして、それを放とうとしたその刹那……攻撃するための予備動作や意識の切り替えなど、どうしても生じてしまうアリスの間隙を入間の超感覚は見逃さない。
そう、鈴木入間は両親によって修羅場を幾度も潜り抜けさせられ続けた事で必然、何度も火事場の馬鹿力を発揮させられ続け、人間としての限界を日々、超え続けながら順応していった。
これにより、現在では彼の肉体も感覚も最早人外の域へと達しているのだ。
「ふっ!!」
「ごおっ!?」
そして、アリスの間隙に付け込む事で彼の間合いを盗んで接近しながらその勢いも加えての全力の前蹴りを放ち、まるで槍で突き刺すが如く無防備なアリスの腹部に炸裂させて彼を吹っ飛ばし地面に倒れさせるとアリスは余りの痛みのためか気絶する。
「俺の勝ちです」
『うおおおおおっ!!』
入間が勝利宣言すると決闘の観衆である悪魔たちはそれを讃え始める。それを一身に受けながら、入間は医務室までアリスを抱え上げて運んで手当てしてもらい、彼が目を覚ますまで待つと……。
「先の決闘、文句なしにこのアスモデウスの敗北です。そして医務室まで運んでくださったその身心にも又、感服しました。敗者は勝者に従属するのが習わし……よって、この身全てを捧げ入間様の学園統治に尽力致します!」
以前までのそれは消え失せ、アリスは入間に対し従者の如き態度を取りつつ、誓いを述べた。
「いや、学園統治しようっていう気も更々、俺には無いしまだまだ魔界での常識や礼儀に疎い俺を支えてくれるならそれで良い」
「ええ、勿論。このアリス、入間様は全力を持って支えます」
「いや、気楽な感じで良いから」
何やら誓いを述べて自分の配下になろうとするアリスの様子に入間は戸惑いながら、決意が固いのもあって苦笑しつつ、本人が納得しているなら良いとアリスの好きにさせる事にした。
「ふふ、早速配下を手に入れるなんて流石、入間くんだね。お爺ちゃんは誇らしいよ」
「……それは良かった。爺さんが喜んでくれるなら俺も嬉しいよ」
入間は正直、サリバンに皮肉を込めて言ったがそれは伝わってはおらず、サリバンは入間の言葉に笑顔を浮かべて更にご機嫌となったのだった……。
2
バビルスからサリバンの屋敷へとサリバンと共に戻った入間はその後、書斎へと向かい魔界の悪魔としてあるいはサリバンの孫として暮らす上で必要な教養身に着けるべく勉学に励み始める。
屋敷での勉学において入間の指導者となるのはサリバンに仕える唯一の使用人、猫耳に尻尾があり、赤髪を三つ編みとした獣人風の悪魔ことオペラである。
「入間様……人間界に戻りたくはないのですか?」
勉学を始める前にオペラは強引に連れてこられ、サリバンに孫にされたのを受け入れるどころかその身分に相応しくあるよう努力し始める入間に質問する。
「まぁ、両親が犯罪犯さないかは心配ですが、俺は売られてしまいましたからね。向こうから縁を切られた以上は俺もこれからは好きにやろうかなって。そして爺さんは俺を本当の孫として可愛がろうとしてくれるのは見てて伝わってきますから、それに応えようと思います」
オペラの質問に入間は自分の気持ちを正直に答え……。
「人間は悪魔にとって食料みたいですし、バレないようにしないといけないのもあって、此処での生活は色々と大変なのは違いないですが……オペラさん。どうか俺が爺さんの孫として相応しくあれるよう教育や助けをよろしくお願いします」
オペラへと誠意を込めて深々と頭を下げて頼み込む。
「貴方は本当に真面目ですね、入間様。理事長からも入間様を支えるよう言われていますから喜んで教育の方はさせていただきますよ」
そうしてオペラの指導の元、入間は勉学を始めたのだった……。