魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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二十九入

 

 悪魔学校バビルスの一年生がそれぞれの師団に所属して、直ぐに大きな行事(イベント)が始まる。その行事の名は『師団披露(バトラパーティ)』であり、師団による発表会もといそれぞれの師団に入団した一年生のお披露目会である。

 入学した生徒の学校での様子を見るのに丁度良いとあって、一年生の親は見学に来る事を認められていて、人間界で言う授業参観の役割も兼ねていた。

 

 そんな師団披露の期間は前夜祭、本祭、後夜祭の3日間。会場は1年~3年塔と中庭だ。

 

 参加は師団員に関わらず、全学年・全校生徒OKであるが4~6年生は実習などで忙しく必然的に1~3年生が活躍する祭りとなっていて、1~3年生が主役でその親が見学に来るのである。

 

 そして師団の発表会とあって、この祭りにて優秀な披露をした師団には豪華賞品が贈られる事になる。

 

『努力賞』としては豪華師団室を、『凄いで賞』としては団費増額、加えて希望の商品を何でも一つ贈呈、そしてなにより『特賞』としては団長の位階を2段階昇級し、伴って団員の位階を一段階昇級とバビルスの全師団はそうした賞を手に入れるために気合を入れ、準備をするのだ。

 

 それは勿論、入間がアリスにクララとエリザベッタと共に入団したアミィ・キリヲが団長である魔具研究師団も例外では無い。

 

 そんな魔具研究師団は現在、他の師団に情報が漏れないようにという意味もあって入間が自分の魔具や魔術を試す場として確保した魔界のとある辺境、荒れ果てた荒野のような場所に居て……。

 

 

 

「3……2……1……点火」

 

 入間の合図によって、小型の砲台に付いている導火線にアリスが火をつけ、それが砲台の元へと向かえば、薄暗い空に火が打ちあがり、それが華の如く、咲き誇り爆発音を奏でた。

 

 そう、それは人間界で言う花火である。

 

『おおおおおっ!!』

 

 魔界には花火が無いために初めて見たアリスにクララ、エリザベッタにキリヲは驚愕と感動の声を上げた。

 

「成功だな」

 

 師団披露は祭りであり、丁度良いからと魔具での花火を提案し、皆で作る形で指示をした入間は実験の成功に満足気に微笑み、声を上げた。

 

「入間様の提案した『花火』とやら……大変美しいです。流石は入間様……発想も一味、違いますね」

 

「ピカーってして、ドーンでドバーン、バカーンってとにかく派手で花火、大好きになっちゃった」

 

「それに幻想的でロマンチックだったわ」

 

 アリスにクララ、エリザベッタは花火に対し好印象であり……。

 

「いやー、イルマ君はほんまにアイデアも着眼点も何もかもが凄いなぁ、それに展示用の魔具の選別やら用意やら……頼りになりすぎる後輩やぁ……いやぁ、役立たずの団長ですんませんっ!!」

 

 キリヲは入間のハイスペックすぎる能力が故に頼りになり、実質立場逆転みたいな事が起こった事で団長としての自信を喪失してしまった。

 

 

 

「こ、こっちこそ出しゃばったようですみません……」

 

 入間はそう、キリヲに謝り……。

 

「とにかく、折角だからこの『花火』で特賞を狙いましょうよキリヲ先輩。低位階の先輩が特賞を取れば、高位階の悪魔たちも驚くでしょうし正しくこの状況は先輩の言う『弱い悪魔でも高位階の悪魔とも競えるような魔具を作って上下関係を無くす』って先輩の野望に近づく第一歩にもなるでしょうし、やってやりましょうよ」

 

 そう入間は告げながら、手を伸ばし……。

 

「……ふ、ふふふ……僕も大概やけど、入間君もなかなかの野心家や。けど、お蔭でやる気出たわ。やってやろうやっ、えいえいおーっ!!」

 

 キリヲは入間の差し出し手を握って握手を交わすと次に号令をかけつつ、拳を掲げた、

 

『おーっ!!』

 

 そうして『魔具研究師団』は全員が一致団結し、特賞獲得を目指すと決めたのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

「ほんま頼りにならん団長ですんません……」

 

 師団披露準備会場にて『魔具研究師団』に与えられたスペースは超極小(直後に入間が空間系魔術で拡張したが)であったためにキリヲはまたしても団長としての自信を喪失してしまったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 師団披露の準備のため、申請書を出しさえすれば学校にて泊まり作業を認められている事により、現在、夜中でありながらも準備会場では作業をする師団の者たちやその顧問が動きを見せていた。

 

 そんな皆の様子を部屋のガラスから見下ろす者が一人いたが……。

 

 

 

 

「お、兄さんからや」

 

 着信が鳴り響き、とある部屋に一人居たキリヲはス魔ホを懐から出すと通話に出る。

 

『ちゃんと準備は進んでんだろーな?』

 

「ええ、勿論ですよぉ兄さん。喜んでください、実は頼りになる後輩が出来まして()()()()の完成と()()()()()()()()()()()を作ってくれたんです」

 

 キリヲは通話相手にそんな事をご機嫌気味に報告する。

 

『ほぉ、そいつは良かった。良いか、絶対にしくじるなよ……俺たちでその学校をぶっ壊すんだ』

 

 キリヲの通話相手はそう、キリヲへと念を押す。

 

理事長(サリバン)は俺の()()で足止めされてる。しばらく学校には戻れねぇ。嵐を起こすなら今だ』

 

「ええ、待たせた分、盛大に嵐を巻き起こしますよ兄さん」

 

 キリヲは通話相手へと答えつつ、自分が計画を実行する事で待ち受ける未来を想像して愉悦に浸ったような笑みを浮かべた。

 

 しかし、キリヲと彼の通話相手の二人は知る由も無かった。自分たちの会話を傍受している者が居る事を……。

 

 

 

 

 

 その者は師団としての連絡のためにキリヲと連絡先を交換しており、『試し』にという名目で送ったメールにウイルスを仕込んでいた。とある魔具を使う事でそのウイルスは発動し、通話の傍受などの干渉が出来るものである。

 

 他にも色々、キリヲに対して用心も含めて幾つかの仕込みはあるがともかく……キリヲと通話相手との話を異界と化している自分の教室にて傍受している者は……。

 

「一つ、何か悪事をやるなら『師団披露』は絶好な機会だ。2つ、爺さんが高位悪魔たちの重要な定例会議の『13冠の集い(サーティン・ディナー)』に出た後、()()()人間界への不正渡航の疑いで魔関署に取り調べを受ける事になった。3つ、2つの事とキリヲ先輩……あんたが()()を無くしたいって言ってたのを踏まえると目的は『バビルス』を壊す事というのは予想出来たよ。バラム先生に確認したのと俺の観察でもあんたの位階を無くすって言葉には本心が籠っていたからな」

 

 そう、入間は今までを振り返りながら呟く。

 

「だからこそ、提案してやったんだよ。あんたの計画にとっても一番良い物を………そしたら良くもまぁ、予想以上に食いついたし悦んでいたなぁ……ほんの一瞬、ちらりとだが邪悪な本性が出ていたぞ」

 

 花火を見たキリヲの表情を入間は観察していた。そして、見たのだ。ほんの一瞬、見間違いとも思えてしまう程の短い瞬間であるが確かに邪悪な笑みを浮かべるのを……。

 

 

 

 

「それでも『絶対』というものは無いから、信じられる限りは信じていたかったけど……もう無理だ。あんたはこの瞬間、俺にとっての敵になったんだよ」

 

 そう、入間は告げて……。

 

「あんたの野望、ここで潰させてもらう」

 

 右手を上げると指を鳴らし、初めて出会った際にキリヲの魔力を貯めるための魔具である首輪への仕込みを通じてキリヲに魔術で干渉したのだった……。

 

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