三十二入
今日から三日間、悪魔学校バビルスにおいて『前夜祭』と『本祭』と『後夜祭』と三つに分けた祭事である『師団披露』が開催される。
それは多種多様な師団へと入団した一年生のお披露目会であるのだが入間はこの『師団披露』の前夜祭にて何者かと繋がり、その者の指示によりバビルスを破壊しようとした自分が所属する『魔具研究師団』の団長、アミィ・キリヲをカルエゴたち教師陣と共に拘束し、その後は魔界警備局へと連行した。
とはいえ、他の生徒を悪戯に不安がらせたりする事の無いよう、キリヲは一族の都合で学校を退学しなければならなくなったという事にし、『魔具研究師団』については一先ず、入間を団長代理として『師団披露』に参加させるという形になっている。
そうして今日は前夜祭の開催日であり、バビルスへと向かうための準備をサリバンの屋敷にて行っていた入間は……。
「爺さんはまだ帰ってきてないか……」
何気なく屋敷内を見回しながら呟いた。一応、キリヲとキリヲに指示をした者の通話記録はちゃんと録音しており、それを高音質に修正してアメリの父親が魔関署警備長だと言うので彼女を通して提供はしたのだが……サリバンは今も戻ってきていない。
どうやら、サリバンが現在も魔関署にて長い取り調べを受けている理由である『人間界への不正渡航の疑い』についての情報源は魔関署へと助言をしたとキリヲとの通話で言っていた者だけからの情報では無いようだ。
不正渡航はともかく、サリバンによって入間は魔界に連れてこられているので自分が関わっている事もあって、気にならざるを得ない。
「理事長なら心配要りませんよ。入間様……理事長はちゃらんぽらんで適当で大雑把でひたすらに自由人ですが……約束は守るお方です」
オペラが入間の元へと現れて声をかけた。彼の言う通り、サリバンは『13冠の集い』に出席する前に入間に『師団披露』には必ず行くと伝言を残しているのだ。
「師団披露の本祭には這ってでも帰ってきます。それより、私としては入間様の方が心配ですけどね」
「はぶぁ……散々、怒られたし罰も受けたじゃないですかぁ」
オペラは入間の両頬を掴み、引っ張って弄び入間はたじたじとなった。
入間はキリヲから情報を引き出すべく、通常の悪魔の『悪周期』よりも更に凶悪で邪悪な『元祖返り』である悪魔の精神に侵入するという無茶をした。彼が人間だと知っているバラムからは当然の如く、長時間の説教を受けたし今までの仕返しも兼ねて、この仔細をカルエゴはオペラに報告しており入間は一度、サリバンの屋敷に帰った際……。
「私は無茶をしろと教えたつもりは毛頭ございませんが……これは少し、お仕置きが必要なようですねぇ」
「……おぅ……」
それはもう凄まじく怒ったオペラにより、入間は1日、オペラの弟として交流させられ、しかもまるで猫が玩具で戯れるかの如き、扱いもたっぷりと受けた。
なので入間は2度とオペラを怒らせないと誓った。
「言っておきますけど、次やったらあんなものじゃ済ませませんのでそのつもりで」
「重々承知しています」
「……入間様、本来の貴方の家族の都合上、今までは一人の力で何とかしなければならなかったのは理解しています。ですが、この魔界では私や理事長……カルエゴ君たちと貴方が頼れる存在がいくらでもいます。もっと他者を信頼し、頼ってください。特に貴方はそうするべきだ」
「……はい……心配や迷惑かけてすみませんでした」
一度入間に言った事をオペラは繰り返して言い、入間は深々とオペラに対し、謝る。
「良し、では行ってらっしゃいませ入間様」
「行ってきます」
それに笑みを浮かべ、入間の頭を撫でる事でオペラは入間をバビルスへと送り出したのだった……。
2
『師団披露』の前夜祭が今日、行われているバビルス。
前夜祭は教師陣による師団審査が本格的に行われる明日の『本祭』に向けて学生たちが明日への英気を養い備えるための祭りだ。
「我ら『食物師団』が用意した
「じゃあ、食べさせてもらおうか」
『……ふぁ?』
入間は屋台から漂った匂いに誘われて、食物師団の屋台へと向かい……。
「美味かったぜ」
『か、格好良いいいいいっ!!』
夜鬼鼠破の鬼盛りを数秒で食べ終えると共にそう、告げながら颯爽と屋台を入間は去り、食物師団の者達はその姿に心ときめかせたが直ぐに師団披露のための出し物が無くなったので力尽きたのであった。
「相変わらず、良い食べっぷりねイルマ君は……」
「ほんとほんと、こっちまでお腹いっぱいになっちゃうよ」
「相変わらずの見事な食欲ぶりに感服いたしました」
料理を食べ終えた入間の左からエリザベッタが腕を絡め、そのまま寄り添うようにし、クララは入間の右手をしっかりと握って傍に付く。後ろからはアリスが続いた。
入間が団長代理となっている『魔具研究師団』の出し物は今日の夜に出すのでそれまでは自由行動、そのためにこうして皆で前夜祭を楽しんでいるのだが……。
「はい、イルマ君」
「入間ち、これ」
「おう、あんがとな」
入間は屋台で買った料理やお菓子をエリザベッタやクララから食べさせてもらったり、逆に食べさせたりなどそれはもう実質デートのような事をして触れ合っていた。
「ぐぅぅ、い、イルマ君めぇ……」
「うぐぐぐぐ……なんと、なんとうらやまけしからん事をぉぉぉぉっ!!」
リードからは嫉妬、カムイからは嫉妬どころか呪念、その他、多くの男性生徒からも美女であるエリザベッタに美少女であるクララと親密にしている事で色々と念を送られたが、全て入間は無視した。
「会長、行かなくて良いんですか?」
師団の見回りをしている生徒会のメンバーであるスモークが面白がってアメリに対し問いかけたが……
「構わんさ」
アメリは入間と一夜を過ごした(眠りについた入間を抱き枕にしただけ)事で余裕たっぷりの女の態度でスモークに返答する。
「へぇ」
スモークはアメリの様子に何か関係が進展する事でもあったのだろうと察し、それはそれで面白いと笑みを浮かべたのだった……。
3
前夜祭は特に何のトラブルも無く進行し、そうして夜中となり、殆どの学生は学校中央広場へと集まる。前夜祭終了と同時に本祭開始の鐘が鳴らされるからだ、
そして、本祭開始の鐘が鳴り響き、それが終わった瞬間……。
光が夜空へと撃ちあがり、そうして煌びやかな光の華として弾けると共に鐘よりも大きな音を響き渡らせた。
『うおおおおおっ、なんだなんだっ!?』
学生悪魔たちは初めて見る『花火』に感動や驚愕など様々な反応を示し始める。
「あー、あー……テストテスト……今のは俺たち『魔具研究師団』が作った花火だ。皆、もっと見たいか?」
拡声器型の魔具を使って入間は花火を打ち上げた『魔具研究師団』のスペースから呼びかけた。
『見たーいっ!!』
学生たちは花火をアンコールし……。
「良し、それじゃあたっぷりと花火のショーを楽しんでくれ」
そうして次々と花火を打ち上げ、10分間もの間、花火によるショーが行われ、それが終わった直後……。
「入間君、見事な花火にお爺ちゃん、感動したよ」
「おうっ、爺さん、帰ってきてくれたのか……お帰り」
「うん、ただいま」
サリバンが何処からともなく現れ入間を肩車しつつ、やり取りを得てサリバンは入間を学生悪魔たちの元へと連れて行くべく、入間を肩車したまま移動するのであった……。