バビルスにて開催された『師団披露』の前夜祭、その終了と本祭開始の合図のために中央広場で鳴らされる鐘の合図に入間を団長代理とし、アリスにクララとエリザベッタを団員とする『魔具研究師団』は『花火』によるショーをサプライズとして披露した。
本来、人間界にしかない『花火』を始めて見た悪魔たちは多くの者が驚き、喜び感動した。特に『初恋メモリー』によって、花火の存在だけは知っているアメリは実際に花火を見れたのもあって他の悪魔たち以上に驚き、喜び、感動していた。
ただ、どうせなら『一緒に見たかったぞ』と入間は苦言を言われたが……その後は『花火』を作ったのは自分とアリスとクララ、エリザベッタと本来の団長であるキリヲであると言ったりして注目や好評を得て前夜祭を終えた。
そうして翌日となり、『本祭』は開催される。
師団披露の本祭では昨日の前夜祭も踏まえて師団による本祭の披露を教師と生徒が評価し、生徒は自分の師団以外で評価したい師団に投票する。
そして何より本祭では一年の家族がやってくるのだから賑わいは前夜祭の比では無い。
「後は時間に合わせて花火と鑑賞用の魔具のショーをするだけだな」
『魔具研究師団』のスペースにて入間達は花火の用意と使用すれば幻想的や神秘的な光景を演出する効果を有した魔具の用意をしていた。
「はい。しかし昨日は大成功でしたね」
「本当、改めて『花火』は綺麗だったわぁ……ねぇクララちゃ」
アリスが入間に応じ、エリザベッタも昨日の花火を思い返しながらクララへと話を振れば……。
『(増えてる!?)』
クララの両腰にクララ似の男児と女児がしがみついていた。
「ウァラク家口上!! 長女 クララ!!」
すると突然、クララはそう叫び……。
「三男 キー坊」
「次男 コンちー」
どこからともなくクララに続いて帽子を被ったやんちゃそうなクララ似の少年と帽子は被ってないが同じくやんちゃそうなクララ似の少年が現れて自己紹介する。
「長男 ウララ」
そしてキー坊が長男の似顔絵を持って紹介し……。
「シンシン」
「ランラン」
そして先程、クララにしがみついていた男児と女児も自己紹介をする。
「皆のマミー!!」
最後にクララ似の包容力豊かそうな女性が現れると……。
「仲良し満タン ウァラク一家見参!!」
ウァラク一家全員がポーズを取りながら、宣言するのであった。
「クララがお世話になってます。母です」
「いえいえ、こちらこそ」
「正直、お世話ばかりしてる方ですけどね」
「皆、そっくりねぇ」
クララの母に入間が対応している横でアリスが小言を言い、エリザベッタは微笑みながら感想を言う。
「クララと仲良くしてくれてありがとう。お腹空いてない? 飴ちゃんポケットに入れとくわね。玩具もあるけど一人一個、ケンカは駄目よ」
「おお、クララよりグイグイ来るなぁ」
クララの母は入間達に詰め寄ると捲し立てながら飴を渡したりした。
「では、お祭り出動!!」
そうしてクララは魔具研究師団の次の活動には時間がある事もあって家族と一緒に他の師団巡りへと向かったのだった。
「うーむ、中々賑やかな一家だったな」
「ねぇ、毎日楽しそうだわ」
「我々も行きましょうか、静かに」
入間とエリザべッタが呑気に、入間は先程貰った飴を口の中に放ってコロコロしながら舐めながら感想を言う中、アリスが披露巡りを提案したが……。
「発見~♡ アリスちゃ~ん♡」
そんなアリスの元へとかけられる艶の混じった声。
その声の主はピンクの長髪に女としての魅力も色気も抜群であり、魔性の美女そのものな女性悪魔。彼女こそは十三冠の一人、『色頭』のアスモデウス・アムリリス。
アリスの実母であった。
「んもーぅ、アリスちゃんてば♡ アムちゃんを置いてくなんてひどいわん♡ 急いでお仕事ほっぽってきたのよ~♡」
アムリリスは冷や汗を流しまくるアリスに抱き着き、溺愛している事が丸わかりの態度と言葉で接する。
「は、母上っ!? 何故……ダヴィデの監視は……」
アリスはアムリリスに抵抗しながら、三日間、アムリリスが師団披露に来ないように指示していたダヴィデの事を訪ねれば……。
「彼なら私の
「ダヴィデ!!」
ダヴィデの不甲斐無さをアリスは嘆いた。
「何だよ、アリス。お前のお母さん随分と若々しいし、綺麗だし……素晴らしいお母さんだな。って言うか本当に母親か、今こうしてみても姉としか思えないぞ」
入間は社交辞令も兼ねてアムリリスを評価してみれば……。
「っ!!」
アムリリスは非常に嬉しいという表情を浮かべ……。
「ん?」
そのまま、入間を抱え上げて何処かへと行こうとする。
「は、母上、ちょっと入間様を連れてどこへ行くおつもりですか!?」
「お上手だったから、お礼にエロい事をしてあげようかなって」
「ちょ、ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇぇっ!!」
『止めてくださいっ!!』
アムリリスの発言に入間もアリスもエリザベッタも大声で制止をかけた。
「ま、まじで喰われるところだった……」
「良し良し、女には気を付けなきゃ駄目よ」
なんとかアムリリスから逃げた入間は怯えながら、エリザベッタに駆け寄り、エリザベッタは役得を実感しながら入間を抱き締めて頭を撫でて宥める。
「すみません入間様、本当にすみません」
アリスはアムリリスの行動に対し、入間へと深く謝った。
そうしてなんとかすべく、アリスはアムリリスを彼女の教え子でサキュバス師団の顧問でもあるライムの元へと強制的に連れて行く。
「イルマくーん、相手して欲しかったらいつでも言ってね~♡」
「ひぇ……」
色気たっぷりなアムリリスの声であったが、それとは裏腹に良い獲物を見つけたとばかりな彼女の表情にまたしても入間は怯えた。
アムリリスからは好印象であるが、対する入間はアムリリスに対して苦手意識が生まれた瞬間であった。
ともかくそうして少しの間、エリザベッタに甘やかされて落ち着いた後はエリザべッタの元へと彼女の親が訪れ、そのまま別れる。
その後、入間は一人となり……。
「……人間も悪魔も変わらないんだな」
目の前で行き交う悪魔の家族たち、その触れ合いは人間の家族が織り成すそれと全く変わらない。そして穏やかさすら感じるその光景は普段から修羅場続きの人生であった入間からして……。
「羨ましいな……っ!?」
無意識に呟いたその言葉に彼自身、驚愕し口を塞ぐ。こんな言葉、呟いたってどうにもならないし、どうにもできない。
そもそも自分は実の両親から悪魔へと売られた身、故に一家団欒など出来はしない。ましてやこの魔界において、本当ならば自分は人間故に距離感としては孤独なのだ。
しかし、今の自分はサリバンとオペラの世話になっていて二人は家族のように接してくれている。それに感謝しているし、喜びがあるのも幸せだって感じている。だからこそ、自分が呟いた言葉は二人に対して侮辱だろう。
まだ、キリヲの精神に侵入した反動が残っていたかと思っていると……。
「だったら、気合を入れて入間君と祭りを楽しまないとね」
「じ、爺さ……」
「そういう気持ちは素直に言わなきゃ、駄目ですよ。入間」
サリバンが後ろから入間を持ち上げつつ、声をかけてそんな入間の頭をオペラは撫でながら注意する。
「え、何、なんか随分と入間君に対して距離間近くない?」
「何か問題でも? 良いじゃないですか今日くらい……私だって入間の
「う、は、はい」
入間を自分の弟の如く接するオペラに対し、サリバンは戸惑ったがオペラは構わずに入間に声をかけ、入間は頷いた。
「僕が居ない間に仲良くなるなんて、これはもう益々、入間君の家族として気合入れちゃうぞぉっ、さぁ、一緒にお祭りだ入間君」
「今日はとことん、楽しみましょう」
サリバンは怒りつつもそう、宣言して入間に手を差し伸ばし、オペラも又微笑みながら手を伸ばす。
「っ、ああ」
入間は心底、嬉しそうな笑顔を浮かべて二人の手を取ったのだった……。