魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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三十七入

 

 バビルスにとっての一大行事であり、前夜祭に本祭、後夜祭と三日かけてのそれはすべて無事に終えた。そして後夜祭が終わったばかりの講堂の隅に一人、バビルスの生徒でも教師でも無い者が居た。

 

 見た目はアメリにそっくりであるが髪型は長い赤髪を後ろのほうで二つに結んでいて、顔には眼鏡をかけていて服装はスーツ姿。

 

 彼こそアメリの父親であり、『魔関署警備局長』を務め、『13冠』に属している悪魔の一人であるアザゼル・アンリだ。

 

「……彼が入間か」

 

 現在、講堂の壇上にて皆から注目を受けたり、話しかけられたりしている入間を見てアンリは呟く。

 

 彼が何故、バビルスにやって来たのかと言えば入間が幾つかの情報源が『魔関』へと提供した情報において魔界の三傑の一人であり、このバビルスの理事長のサリバンが『人間界に不正渡航し、無理やり手元に置いている人間』だと確信しているからだ。

 

 実際、サリバンを取り調べしていた時も前夜祭が終わろうという時間帯になった時、それまでは大人しく取り調べに協力していたのに急に……。

 

 

 

「それじゃあ、そろそろ本祭始まる頃だし、帰るね」

 

 時計を見て時間を確認したサリバンはそう言って、立ち上がる。

 

「いえ、サリバン様。まだ取り調べは済んでいないのでそう言うわけにはまいりません。嫌疑が晴れるまではここにいて貰わねば……」

 

 急いでサリバンを引き留めるためにアンリ達はサリバンに近付いたものの……。

 

「でも確実な証拠が無いよね。だったら、もう十分でしょ。ごめんね」

 

「サリバン様……」

 

 意に介せず、サリバンは帰ろうとしたのでアンリが引き留めようとしたが……。

 

「帰ると言っている」

 

 瞬間、サリバンは現在の魔界にて魔王に近い実力、『9』位階の実力の片鱗を解き放った。

 

「(っ、身体がっ!!)」

 

 アンリ達、警備局員はサリバンからの重圧により一歩も動けなくなってしまう。

 

「ごめんね。でも帰るって約束したからさ……入間君と」

 

 そうして謝り、重圧を解くとサリバンはバビルスへと帰っていった。その異常な執着からアンリは入間が人間界から無理やり連れてきた人間だと確信したのである。

 

 因みにであるが、これとは別にサリバンが『人間界に不正渡航し、人間を無理やり手元に置いている』その情報源の一人であるアンリと同じ、『13冠』の一人であるバールがバビルスの3年生であるアミィ・キリヲと繋がっていてバビルスを壊すよう指示している通話記録がアメリを通して送られたのでバールの取り調べも行った。

 

 とはいえ、音声だけなので証拠としては弱い。一先ずはバールの周囲を少しの間、調査するという牽制だけはしておき、バールもそれに対しては渋々納得するという形で終わった。

 

 

 

「さて、どう接触したものか」

 

 それはともかく……一先ず、入間の顔だけは見て後はどう入間に接触しようかと考えていたアンリ。

 

「なにか俺に御用ですか?」

 

「っ!?」

 

 バビルスの校庭にて全く気配も何も感じさせずに後ろから声をかけてきた者に驚き、振り返れば入間が居た。

 

「失礼。後夜祭の最中、俺にやたら視線を向けてきたので気になりまして……まずは初めまして。俺はバビルスに通う1年でこのバビルスの理事長であるサリバンの孫……まあ、正しくは養子ですけど……。名前は入間と申します」

 

「……私は魔関署警備長のアザゼル・アンリだ」

 

「その見た目でもしかしてとは思いましたが、やはり貴方がアメリ会長のお父様でしたか」

 

 入間はアンリと握手を交わしつつ、言った。

 

 

 

「アメリを知っているのか?」

 

「はい……この学校では英傑と言っていいアメリ会長は俺の憧れの先輩ですから、色々と参考にしようと相談に乗ってもらっているんですよ」

 

「そ、そうか……」

 

「ともかく、立ち話もなんですしベンチにでも座ってからにしましょう」

 

 そうして入間は右手を振るうと自分とアンリの足元に魔方陣を構成。それが発光した直後に入間とアンリはベンチの元に転移していて、座っていた。

 

「な、こ、これは……」

 

「ちょっとした転移魔術ですよ。さて……何か俺に用があるならお聞きしますが?」

 

 

「……これは内緒の話だがね。実は私は人間にあった事があるんだ」

 

「え、人間にっ!? 本当に人間がいるんですかっ!! バラム先生が聞いたら喜びますよそれ」

 

 入間からの問いに思い切って話してみたのだがすると本当に人間が実在する事を知らないその他の悪魔のような反応を入間が見せた。

 

 

 

「あ、ああ。それで悪魔に無理やり連れてこられたようだったから、保護して人間界に帰したんだよ。正規の手続きを取って人間界に戻れるように……魔界での記憶を全部消して、家に帰してあげたんだ」

 

「『魔関』ではそうした仕事もしているんですね……でも、妙な言い方だ。それだとまるで()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!?」

 

 入間はアンリの言葉に苦笑を浮かべつつ、背中から悪魔の翼を広げた。魔術を使ったのもそうだが翼の件もあって入間を人間だと確信していたアンリは混乱する。

 

「俺は確かにサリバン理事長に拾われるまでは辺境で孤児として育ってきましたが間違いなく、正真正銘の悪魔ですよ」

 

「う……そ、そうか……いらぬ疑いをしてしまったようだな。すまなかった」

 

「いえいえ」

 

 アンリは謝罪し、入間はそれを受け入れる。

 

 

 

 すると……。

 

「お父様っ!? どうしてこちらに……」

 

 後夜祭が終わったのでいつもの服装に着替え、見回りをしていた最中に自分の父親を見かけたのでやってきたアメリが話しかける。

 

「アメリ……いや、此処には仕事でな……彼には道を聞いていたんだ。助かったよ」

 

「いえ、少しとはいえアメリ会長のお父様とお話が出来て良かったです」

 

 アンリはアメリに説明しながら、入間と話を合わせるかのようにした。

 

「では帰ると……って、アメリ何をしている?」

 

 アンリが帰ろうとし、一度振り返れば娘であるアメリが入間の頭を撫で回しているのを咎める。

 

「ぇ……あ……こ、これは……その、入間は実に可愛がり甲斐があって、私にとっては弟のようなものでして」

 

 無意識にやってしまった行為に焦りながら、アメリは弁解する。

 

「入間君、さっき相談していると言ったが何の相談をアメリとしているのかな?」

 

 アンリは入間に詰め寄り、重圧をかけながら言った。

 

「学校での立ち振る舞いとか、悪魔としての生き方やら、後は貴族悪魔としての義務とかその辺ですかね」

 

「そ、そうそう後は()()()()()()

の話を……」

 

 入間は自然に当たり障りの無い事を言ったのだが、アメリは焦りすぎていたのか余計な事を言ってしまった。

 

「(せっかく、フォローしたのに)」

 

「(本当に全部、パーだな)」

 

 瞬間、入間とそして彼の指輪の化身であるアリクはとんでもない事になった事を察した。

 

「れんあ……れ?」

 

 対してアンリはアメリの一言に激しい衝撃を受け、極限の混乱状態に陥った。

 

「も、勿論他にも……」

 

「(イル坊、止めなくても良いの? 絶対、追撃かましちゃうよ。会長ちゃん)」

 

「(まあ、これで確実に俺を疑うどころじゃなくなるし、傍から見てると正直、面白いから良い)」

 

 アリクは更にアメリが何か言おうとしているのを見て、確実に爆弾発言するのを察して入間に聞けば、入間はそう断じた。

 

 因みに入間は後夜祭においてアンリの視線に気づくと魔術で彼の精神を読み取り、自分が人間だと確信しているのを知って、自分の記憶から自分が人間である事だけを一旦、抜き取った。そうしてアンリの元へ行き、話しかけつつある程度の思考誘導魔術などもかけながら、入間が人間では無く、悪魔だとアンリが確信するように振る舞っていた。

 

 そういう意味ではアメリの行動は大きな助け舟ではあるのだ。

 

 そして、次にアメリが父に何を言うのかと思えば……。

 

 

 

「他にも将来(の夢)についても語ってます!」

 

 

 

「(恋愛っ!!)」

 

「(将来っ!!)」

 

「(結婚っ!!)」

 

 アザゼルの家系は思い込みの強い性分である。故に娘の発言にアンリの脳内では入間と娘が結婚する光景が浮かんでいた。

 

 そして……。

 

「(無理っ!!)」

 

 怒涛の如く、アンリの眼鏡がアンリが受けたショックによって割れた。

 

 

 

 

「お父様っ!?」

 

「何回、割れんだよ」

 

 アメリは驚きつつ、父へと駆け寄り入間はツッコミを入れる。

 

 

 

 

「お、お怪我は!?」

 

「大丈夫ですか……」

 

 そうしてアメリと入間が呆然自失状態なアンリに声をかければ……。

 

「絶対にお前達の仲は認めんからなっ!!」

 

「良し、全然大丈夫じゃないなっ!!」

 

 アンリの様子に入間は彼が全くもって平静じゃないのを確信する。

 

 

 

「い、医務室に行って来るっ!!……じゃあな、入間」

 

「はい、アメリ会長。とりあえず念入りに診てもらった方が良いですよ」

 

 

「分かった」

 

 アンリを連れて行くアメリに声かけし、彼女たちが去るのを見送りながら……。

 

 

 

 

 

 

「(絶対、嫌われたな)」

 

「(嫌われちまったねぇ)」

 

 アリクと入間はアンリに嫌われた、何なら敵として認識されているだろうという意見を一致させつつ、帰宅の準備をするためにこの場から去ったのであった……。

 

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