魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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三入

 豪邸の中に設けられた私室であるためにその空間内は広い、そしてそれに見合うだけのベッドの上で眠っている者が身動きをする。

 

 

「ん、んん……今の状況が夢じゃないなんて本当、信じられないな」

 

 身動きから意識を覚醒させ、起床したのは魔界の悪魔、サリバンの孫となり、魔界内で唯一、生活をしている人間の鈴木入間であった。彼は部屋内や窓の外の様子を見て呟いた。

 

 

 

「まあ、重荷から解放されたお蔭で今は清々しい気分だ。よっと」

 

 彼はサリバンにその身を屑の両親によって売られるまで両親が犯罪だけでも起こさないよう、面倒を見るために必死で生きてきた。

 

 しかし、これからはサリバンの孫として生きる事になるし、現在は悪魔学校で悪魔の生徒として通う事になっている。

 

 少なくとも常日頃から修羅場の連続であった両親との暮らしよりはましであり、又、サリバンは自分に対して『とことん、甘やかして上げるからねぇっ!!』と過保護(結構、暴走するが)な対応であるため、色々と可笑しな話だが魔界での暮らしは楽なものとなるかもしれない。

 

 ただ、悪魔たちに人間とバレれば食べられてしまうらしいが……。

 

 ともかく新しい環境で生きる事になった入間の気分は両親による重荷から解放された事で凄まじい開放感に包まれているのだ。

 

 そして、入間は身支度を整えると朝食までは未だ結構な時間であるため(人間界での暮らしは早朝よりも早く、起きなければならなかったためにそれが習慣となっている)に準備運動をしてから、身体をほぐし学生服を持って部屋を出る。

 

 これからサリバンの屋敷周辺をランニングした後、汗を流して着替えるために浴室へと学生服を持っていくのだ。

 

 

 

 

「おや、入間様……おはようございます。随分と早起きなのですね」

 

 自分の部屋を出て、浴室へと向かう途中にオペラと遭遇した。

 

「おはようございますオペラさん。はい、早起きするのが習慣となっていまして。これからちょっとランニングしてきますね」

 

「そうですか、ではその着替えは私が浴室へと持って行っておきます」

 

 入間から話を聞いたオペラは入間から学生服を預かり、入間は屋敷から外へ出て一時間程、ランニングをして汗を流すと屋敷に戻って浴室へと向かい、汗を流して学生服に着替えると食室へと向かう。

 

「おはよう、入間くん!! 朝からランニングだなんて健康的だね。良い汗流して、お腹も空いたでしょ。朝ご飯はその分、多めに用意したから思う存分、いっぱい食べてね」

 

 すると席について入間を待ち構えていたサリバンが今日もご機嫌な様子で挨拶した。実際、目の前の机には多くの料理が並んでいる。

 

 魔界の料理は人間からすれば見た目はゲテモノで食べれるかどうかすら戸惑うが、少なくとも入間がそれを食べた場合は何の悪影響も無く、味も絶品。

 

 よって食はかなり進んだ。そもそもにして入間は今まで満足な食事というものが出来ていなかった反動で超絶的な大喰らいであり、食欲が凄まじい。

 

 故に最初、入間の食事風景を見たサリバンは……。

 

 

「いやー、ベへモルト君にも負けない食事量だね。でも育ち盛りだし、いっぱい食べるのは良い事だ」

 

 自分も属している13冠という魔界を代表する十三人の高位悪魔の中で『食王』と呼ばれる大食漢の悪魔を想起しながら、微笑み……。

 

「……胃袋はこれ以上育たなくて良いですけどね」

 

 オペラは驚愕しながらもしかし、幸せそうであり、美味しそうに食事するし、年相応で愛嬌のある入間の食事風景に微笑みを浮かべながら呟いた。

 

「おう、ありがとう爺さん。それじゃ、いただきます」

 

 サリバンに笑顔で感謝しながら、腹いっぱいになるまで朝食を味わった。その後は昨日、初孫祝いとして学生服など様々な物を貰ったばかりなのに入学祝いとして今回も色々な物を貰ったりした。

 

 そうしてサリバンとオペラに見送られながらサリバンの屋敷を出て、悪魔学校バビルスへと初登校を開始したのだった……。

 

 

 

2

 

 

 入間はバビルスにおいて入学式でサリバンが物凄い勢いで入間が自分の孫だと自慢しまくり、更には特待生として挨拶させられ、ましてや本来、入学式での挨拶をする筈だったアスモデウス・アリスの晴れ舞台を台無しにした責任をとれとばかりにアリスと決闘する事になり、そしてそれに勝利すると敗者は勝者に従うのが悪魔の流儀だとアリスは入間の配下となったのである。

 

 こうして並べれば分かる通り、既に入間はバビルスにおいて注目の悪魔(ひと)となるに値する事をやりまくっている。

 

 今更、人間だと正体がバレないように目立たないようにすることは不可能だ。

 

 故に堂々とした態度でいる事にし、バビルス内へと入れば……。

 

 

 

 

「おはようございます、入間様!! 6時間と6分お待ちしておりました」

 

「おはよう、アリス……って、本当に6時間も待ったのか!?」

 

 アリスが入間へと接近し、挨拶したのでそれに応じたが何でもない事のようにさらっと言った時間帯を思い返し、突っ込んだ。

 

「はい、丑三つの漆黒の中でじっと……」

 

「極端だなぁ、おい……アリス、そういう事はしなくて良いからな。普通……いや、程々で頼む」

 

「はぁ、そうですか。では、お鞄をお持ちします」

 

 アリスに苦笑しながら、告げる入間にアリスは本当にそうしたいと言った態度で両手を差し出す。

 

「それでお前が良いなら……」

 

 本人が望むならば良いだろうという事で入間は鞄をアリスに渡す。

 

 

 

「あれは特待生の入間だな」

 

「主席侍らせてるって本当だったんだ。流石はサリバン理事長の隠し孫だなぁ……」

 

 バビルスに来て早速、他の生徒達の注目を受けながら入間とアリスはバビルス内を歩いていく。

 

 因みにバビルスに入学した新入生は163名であり、それを幾つかのグループに分ける事で授業が始まるまでの準備をする事になる。

 

 入間とアリスのグループは丁度、同じであり今日の準備としては『使い魔』という悪魔が自分の家来として使う魔獣の召喚儀式をする。

 

 又、この召喚した使い魔の質によって生徒の位階(ランク)を計り、この位階を上げていく事がバビルスでの成績に繋がる。

 

 そうして、アリスの案内の元に使い魔の召喚儀式をするための部屋へと向かうと召喚儀式の結果によってクラス分けされるのもあって、緊張している多くの学生たちが待機しており、ざわついていた。

 

 そして……。

 

 

 

 

「粛に!! 監督官のナベリウス=カルエゴである」

 

 扉を開けながら威圧の声を上げて入ってきたのは黒色の短髪で前髪以外はオールバック、両側の髪は短い角のようになっているという特徴的なもので厳格さと陰鬱的な雰囲気も持つ男、ナベリウス=カルエゴだ。

 

「この行事は常に私の担当だ。何故か? 私が常に厳粛であるからだ。貴様らが使えないゴミか、はたまた多少は使えるゴミかを判断する」

 

 カルエゴは淡々と当たり前の事を言っているとばかりに言い放ちながら、歩み始めると……。

 

「例えば、入学早々に教師に殴りかかるゴミや……入学式を終えて早々、乱闘騒ぎを起こすようなゴミがいたら即刻、処分対象である」

 

「ご忠告、痛み入ります」

 

 カルエゴは最後の方は入間に近づき、睨みながら言った。そもそも、入学式での挨拶やアリスの決闘など入間の事はバビルス内で発行されている新聞で報じられている。

 

 これはカルエゴからの重大な警告でこの召喚儀式で悪い結果を出せば、実際に処分されると覚悟した。

 

「ふん……出来の悪い者は即刻、退学処分とするのでそのつもりで」

 

 カルエゴは入間に背を向けて、やはり、淡々と生徒にとっては重大な事を言って、ざわめかせるが……。

 

「粛に!!」

 

 そう言って、黙らせると大きなディスプレイのようなものを叩きつけた?ように台の上に置くと映像が映り始め……。

 

 

 

 

 

 『簡単!! 使い魔召喚講座』

 

 

 

① 羊皮紙に血で丸を書く。

② 羊皮紙を持って魔方陣の中へ

③ 羊皮紙を中央のロウソクにかざす……と。

④ その煙が形を成し、使い魔になるよ☆

 

 「さあ、皆もレッ「概要は以上だ」」

 

 ハートに手と悪魔の尻尾をつけたマスコットキャラが召喚儀式の手順を説明する全体的に緩く可愛い感じの映像が始まったが紹介が終わった瞬間にカルエゴはディスプレイを思いっきり叩きつけた。

 

 

 

 

「(はたき倒した……)」

 

「(嫌いなんだ、あの可愛い説明セット……)」

 

 カルエゴの様子から可愛い説明セットを相当に嫌っている事を確信するは生徒達、それは事実であり、因みに可愛い説明セットはサリバンの自作である。

 

 ともかく、後の補足として羊皮紙はカルエゴの印が入った物を使う事と(不正があれば直ぐ分かるように)、危険はないかという質問に使い魔の召喚は隷属可能な種族を呼び出し使役する事であり、仮に使い魔が主人に刃向かえば処罰(しつけ)が下るというそれ程までに濃い血の契約であるとカルエゴは告げた。

 

 そうしてカルエゴが監督する中、使い魔召喚の儀式は行われ……。

 

 

 

「すげぇ、滅茶苦茶格好良いなぁアリスの使い魔。種族はなんていうんだ?」

 

「有り難き御言葉……これはゴルゴンスネークと言います」

 

 

 アリスが召喚した悪魔の角を頭部に二つ、胴体の中ほどに悪魔の翼、尾は燃え盛る炎という白き蛇であり、気品を感じさせる使い魔の姿に入間は珍しく、格好良い物を見た子供の如き、表情と言葉で接する。

 

「へぇ……うん、結構、俺こういうの好きだ」

 

 入間にとって、アリスが召喚したゴルゴンスネークの姿は彼の男としての感性に響くものであったからだ。

 

「気に入っていただけて嬉しいです。しかし、これから入間様が召喚する魔獣に比べれば大した事は無いですよ」

 

「さあ、どうかな」

 

 入間の様子にアリスは幸福だという表情と言葉を述べつつ、告げれば入間は苦笑する。

 

 しかし、彼はこの召喚儀式で自分は又、とんでもない事をする事になると予想していた。

 

 何故なら、入間は人間である。

 

 そして、彼の両親はサリバンを召喚した事を考えれば人間は悪魔を召喚できる者である。

 

 この前提で考えてみよう……まず召喚に使うための羊皮紙にはカルエゴの(サイン)が描かれており、そして儀式用の魔方陣もしっかりとある。

 

 事前準備としてはこれ以上無いほどのお膳立て……故に入間は自分がこのまま召喚儀式を行えばカルエゴかあるいはナベリウスの関係者かが使い魔として召喚されるのではないかと予想したのだ。

 

「(これは必要な事だからな)」

 

 しかし、召喚儀式はバビルスの新入生全員が絶対にやらなければならない事、使い魔として悪魔が召喚されたらそれは仕方ない事なので躊躇は全く無く、更に使い魔としてはこれ以上無い程に頼りになるだろうと期待すらしながら、入間は召喚儀式を始め……。

 

 

 

 

3

 

 

 今回、使い魔の召喚儀式の監督者であるナベリウス=カルエゴには嫌いなものが3つある。

 

それは喧しく、節度が無く、マイペースである事。それら全てを併せ持つものこそがサリバン理事長であり、今まで給料を減らされたり、可愛い自作の説明セットを押し付けられたり、自分が用意した昨日の入学式の進行もめちゃくちゃにされたりと彼はサリバンに振り回され続けている。

 

 因みに魔界では階級は絶対なので、これもあって、カルエゴはサリバンに逆らえない。

 

 ともかく、八つ当たりに近くなるがカルエゴのサリバンへの負の念の矛先は入間に向かう事となった。入間の挨拶は聞いていて、入間が真面目だというそれは伝わったが、乱闘騒ぎを起こしたのでカルエゴにとって入間は要注意人物となり、そして彼がこの召喚儀式でヘマをしたら即退学にする気でいた。

 

 そして、入間が儀式を始めると……。

 

 

「(っっっっっっ!?)」

 

 魔方陣が光り輝いたかと思えば、彼の上半身は魔方陣の中から出現しており、下半身は魔方陣を通ろうとカルエゴが先程まで立っていた場所で待機しているような状態であった。

 

 当然、周囲の新入生悪魔もだがカルエゴもあまりの事態に思考が停止し……。

 

 

 

「ふんっ」

 

 入間は自分の立っている魔方陣から姿を現しているカルエゴの上半身、両肩を掴んで引き抜くように全力で持ち上げ、結果としてカルエゴを使い魔を召喚するための魔方陣からの出現を完了させる。

 

「あっ!!」

 

 次の瞬間、カルエゴの身が煙に包まれ……。

 

 

 

「……おお、イメチェン良いじゃないですか」

 

「……ば、馬鹿な」

 

 カルエゴは圧倒的な王の覇気、気品、風格を纏った鴉の鳥人悪魔へと姿へと変身していた。これは使い魔における共通事項、召喚者に影響されて多少、本来の姿が変化するというそれによるものでカルエゴの今の姿は入間の使い魔としての姿となる。

 

「き、貴様ぁぁ、今すぐ契約を解除しろぉぉぉぉっ!!」

 

「先生、先ずは落ち着いてください。じゃないと」

 

 姿はどうあれ、使い魔になるという屈辱的な事が許せず実力行使すらしようと入間へと襲い掛かるが、入間は大事な事を忘れていると忠告しようとした。

 

 それは……。

 

 

 

 

「ぐばあああああっ!!」

 

「だから、落ち着いた方が良いって言ったのに」

 

 

 

 使い魔は主人に刃向かった時、処罰が下る。

 

 それは使い魔を使役する種族の悪魔であるカルエゴであっても例外無く、適用されてカルエゴは入間に襲い掛かろうとしたため、強烈な電撃を受ける事となった。

 

「……先生、なんて生徒思いの良い先生なんですか。身をもって使い魔が主人に刃向かえば処罰が下るというのを実演するなんて……。それに敢えて厳しく振る舞う事で生徒それぞれに全力を引き出させる……このバビルス一の先生は間違いなく、カルエゴ先生です。皆、拍手と称賛を送ろう」

 

 入間は電撃によって倒れ伏したカルエゴの姿を見ると突如として盛大にカルエゴを評価し始めた。

 

『お、おおおおおおっ!!』

 

 入間の全力の評価の勢いに流され(アリスは入間第一なのでノリノリで)、口々に賞賛や拍手を新入生たちはカルエゴに対して送った。

 

「(こいつ、あいつの同類かぁぁぁぁぁぁっ!!)」

 

 ちゃんとフォローしときました的な眼差しを向ける入間の姿にカルエゴはサリバン以外に苦手な悪魔でバビルスの生徒時代、自分の先輩であり散々、パシリとして扱き使われたオペラの姿を幻視した。

 

 

 その後、カルエゴは最終手段とばかりに入間と共にサリバン理事長の元へと向かったが使い魔の『1年契約』は絶対であり、儀式が成立した以上は無理に解除したらどっちも死ぬと告げた。

 

 どうしようもないのでカルエゴは入間に対して使い魔に成り下がらないし、枷を付けていい気になるようならすかさず、その首をかき切るとしっかりと入間に告げて入間は入間でカルエゴに気圧されずに堂々と交渉を行い、カルエゴを使い魔として召喚するのは『明らかな非常事態』と『バビルスにおける使い魔の授業(ただし、この場合は常に最高評価を取り続け、飛び級で単位を終える)』のみという条件の元、両者合意の契約を交わした。

 

 この後、カルエゴは心労で寝込む事となったが……。

 

 

 

 

 因みに……。

 

「流石、カルエゴ先生……使い魔としての姿も素敵……」

 

 カルエゴが入間の使い魔として召喚された事はバビルスで発行されている新聞にて一面を占める記事となり、使い魔状態の姿も写真にて写されたのだがそれに女子生徒もそうだが、特に魔術基礎学の教師で水色の長髪をポニーテールにした美女悪魔でカルエゴに好意を抱いているモラクス・モモノキは特に惚れ惚れ状態になったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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