『生徒会』に入って早速、学業が始まる前の早朝での仕事を終えた入間は自分のクラスである『一年 問題児クラス』の教室へと入ると……。
「生徒会の仕事、お疲れ様です入間様。早速、生徒会の制服着こなしていますね。流石です」
「おう、ありがとうなアリス」
即座に教室にて待機していたアリスが駆け寄り、頭を下げつつ労って褒める。
「わぁ、その恰好の入間ち。いつもより格好良い」
「ええ、そうねクララちゃん。生徒会としてのイルマ君も格好良いわ」
「ありがとよクララ、エリ。クララは今日も可愛いしエリは今日も綺麗だ」
次にクララとエリザベッタが入間へと近づきながら、声をかけると入間も二人に対して返答する。
「えへへ」
「ふふ」
入間に言葉を送られたクララとエリザベッタは顔を赤く染め、微笑みながらそれぞれ入間に密着し、入間はそれを受け入れた。
瞬間、当然だが傍目から見てもそれはもう甘い雰囲気が漂い始める。なので……。
「こらぁ、そこイチャつかないっ!!」
「そうですぞ、朝からそんなにイチャイチャするなどなんと羨まけしからん事をしているのですかっ!!」
リードとカムイが入間に対して声を上げた。
「何言ってんだ二人とも。イチャついてはないだろ」
「え、いやいやいやどう見たってイチャイチャしてんじゃん。甘い空気漂わせまくってんじゃんっ!!」
「言い逃れするにしても苦し過ぎますぞっ!!」
きょとんとした入間に対し、リードもカムイは更に詰め寄ると……。
「クララ、エリ。俺たちってイチャついてないよな? ただ、コミュニケーションとスキンシップしてるだけだし」
入間はそれぞれ密着し寄り添っているクララとエリザベッタに問いかけると……。
「うん、そうそう。
「ええ、イチャついてないわよ。
クララもエリザベッタもどこか含みを持たせつつ、魔性の微笑み浮かべながら頷き、言った。
「だそうだ。大体、仮にイチャつくにしても俺は周囲に見せつけるような趣味ないから安心しろ」
『……何を安心しろって言うんだっ!!』
入間の問題無しといった態度と言葉にリードもカムイもそう返した。
「うう、どうしてイルマ君はそんなにモテるのさ」
「おかしい、紳士である私がモテない筈は……」
「いや、俺は別にモテては無いだろ」
『えええええええっ!?』
自分はモテてはいないと本当に認識している入間の態度と言葉にクララとエリザベッタ、アリス以外の者が皆、驚愕の声を上げた。
「ふふ、入間様のカリスマをもってすればモテようとせずとも自然とそうなるのだ」
『ま、参りましたぁぁぁぁっ!!』
アリスがそう断言すれば、リードもカムイも入間に対して平伏したのであった。
そうして少し時間が経過すると……。
「……さっさとホームルームを始めるぞ」
カルエゴがそれはもう、大変疲れ切った様子で溜息を吐きながら教室に入って生徒たちに声をかける。
「おはようございますカルエゴ先生、職員室ぶりですね。でも、どうしたんですか職員室で会った時より大変、疲れ切っているじゃないですか。悩みがあるなら相談に乗りますよ」
そんなカルエゴに入間は挨拶しながら心配げに声をかける。
「悩みの張本人が何を言っている。貴様が私の前から消えない限り、私の悩みは解消せんわ」
「分かりました。それじゃあ先生の前から消えます」
吐き捨てるかのように言葉を発したカルエゴに入間は頷くと瞬時にその姿を消した。正確にはカルエゴにだけ自分の存在を認識できないように魔術を使ったのだ。
「いや、本当に消える奴があるか。そういう碌でもないことばっかりするから私は悩まされているんだぞ」
「(ええー、でも消えろって言ったの先生じゃないですか)」
「態々、声色変えながら私の脳内へ念話してくるんじゃあないっ!!」
「もう、どんだけ自分勝手で我儘で理不尽なんですかカルエゴ先生は」
「全部、お前の方だろうがああああっ!!」
カルエゴに対し、姿を出現させると不満気味に言う入間に対し、カルエゴは叫び声を上げる。
「貴様らもさっきから、『ああ、これこれ。このやりとりがあってこその問題児クラスなんだよなぁ……』みたいな態度で傍観し、頷いているんじゃない!!」
更にカルエゴは他の生徒達にも声を上げたが……。
「先生、皆カルエゴ先生を慕っているんですよ。そう、俺たち問題児クラスは本当にカルエゴ先生の事が……」
『大好きですっ!!』
入間が代表して声を上げ、問題児クラスの全生徒がカルエゴに宣言した。
「喧しいわぁぁぁぁ、私は貴様らの事が大嫌いだっ!!」
「はいはい、そんな事言ったって本当は俺たちの事が大好きなのはもう、バレバレですよ」
「本当に大嫌いなんだよぉぉぉぉっ、ぐふっ!!」
「うわぁぁ、嬉しいからって興奮し過ぎですよ先生―っ!!」
「……イルマァァ」
カルエゴは入間に弄られ続けた事で吐血して倒れ、そんなカルエゴを心配して駆け寄る入間に対し、怨嗟の声を上げながら意識を失ったのであった。
二
時間は経過し、昼食の時間帯となり学食堂へと生徒達が足を運び……。
「もきゅもきゅ」
今までの人生経験が故か他の人間、他の悪魔と比べても超越的に『食欲』が強すぎる入間は相変わらず、自分にとって楽しい食事を過ごしていた。
「ほらほら、入間ち。あーん」
「うふふ、存分に食べてね」
「じゃあ、私も……どうぞ、イルマさん」
「ほら、イルマ。私のもやろう」
「じゃあ私のもあげる」
食事を楽しむ入間はまるで小動物の如き、愛嬌を醸し出しておりそんな彼の周囲に陣取りながら、餌付けの如き事をしているのはクララにエリザベッタと遠慮気味にしていたが近寄ろうとしていたところを誘われたエイコ、そしてアメリとスモークであった。
「あむあむ」
『はぁぁぁ』
入間の小動物の如き、可愛さに餌付けをしている女性たちはそれぞれ、心をときめかせる。そうしてより、慈しもうと積極的に餌付けするのである。
とはいえ、様子こそ小動物であるが食事のペースだけは早い。
「……本当、どんな胃袋をしているんだあいつは」
「うーん、間近で見ると余計に凄く見えるし、感じるなぁ」
「いつもあんな食事量なのか?」
「いえ、あれでも食堂には遠慮していて腹八分で止めていますよ。入間様は自制も出来る方ですので」
入間と彼に餌付けをしている女性陣から少し離れたところではアリスと生徒会の男性陣であるザガンにキッシュ、グシオンが控えていた。
入間の食事光景を奇々怪々なものを見る目でザガンが見、只々驚いているキッシュ、そして驚きながらアリスにグシオンが質問すればアリスは淡々と答えた。
『(腹八分? 自制?)』
しかし、アリスの言葉にザガン達はまるで知らない単語を聞かされたような気がした。今見ているだけでもとうに数十人分は超えて三桁に突入しようとしているからだ。
そもそも『デビルビーフの666人前』を一人で完食した入間なのだから、胃袋構えが違う。
とにもかくにも傍から見ればイチャイチャしているようにも見えるので男性悪魔たちから多くの嫉妬を送られ、餌付けされている可愛さに女性悪魔たちからの慈しみを送られながらも入間は食事を続ける。
「やっぱり、入間ちって食べてるとき、可愛いよね」
「はむはむ……む、言っておくけどなクララ。俺はそのうち、絶対もっと背丈伸ばして、筋骨逞しくなって男らしく成長するんだからな」
『それは駄目っ!!』
「女性悪魔、皆から全否定っ!?」
クララの声にムッとして反論したものの、直ぐにクララ達どころか食堂に居る全女性悪魔たちから大きな声で反論されてショックを受ける入間であった……。
三
午後の授業も全て終わり、師団に所属する生徒たちの師団活動が行われる時間帯。
入間が『魔具研究師団』として活動するのは『生徒会』の活動に一区切りをつけてとなっており、そのため生徒会室で業務を行っていたのだが……。
「お前ならば問題無いだろう……
ザガンが立ち上がりつつ、入間にそう声をかけた。これに魔茶を飲んでいたアメリがギクッと反応し……。
「えっ……あ、うう……わ、分かりました。同性の方とそういう事をするのは初めてですが、何事も経験ですもんね」
声をかけられた入間は驚愕しつつも頬を赤く染め、恥ずかし気にしながらも頷く。
因みに悪魔はそもそも『欲』を重視する生き物である事、男性悪魔に比べて女性悪魔の数が少ないとあってか、異性も同性も『愛』に関しては自由な価値観である。
「ぶふーっ!?」
入間の反応にアメリは魔茶を噴き出すと咳き込みながらも素早く、入間へと近づき抱き抱えるとそのまま勢い良く生徒会室を飛び出した。
「はぁ、はぁ、はぁ……ちち違うんだ。イルマ……別にザガンはそういう意味で言ったんじゃないんだ。生徒会では『デート』はな……」
人気の無い所へと駆けこむと入間を下ろして必死な形相で入間に説明しようとするアメリ。そう、実は『デート』という概念は悪魔の世界においては概念自体が無い。
もっともアメリは『初恋メモリー』でその概念を知っているのだが……とはいえ、アメリは色々あって生徒会の者達には『デート』は重要な見廻りであると説明し、それはそのまま浸透しているのである。
「知っていますよ。生徒会ではデートは重要な見廻りという事になっているんですよね? これまで何度かザガン先輩たちの巡回みたり、『デート』がどうとか言ってたりしてましたんでなんとなく察しが付きました」
パニックに陥っているアメリに対して入間は平然と答えた。
「そ、そうか……む、という事は私を揶揄ったな?」
アメリは入間の返答により、大きく安堵しながらもある事に思い至ったので訊ねると……。
「ちょっとした悪戯ですよ。そもそもアメリ会長がやらかしたのが悪い「だからと言って度を越しているのだから、お仕置きしなければな」ぇ、あ……」
入間からの返答を途中で遮ると瞬時に接近しつつ、入間を壁際に押し込み、いわゆる両手での壁ドンをして逃げれないようにすると……。
「んむ、ふ……んむ」
「ふ……ぁ……」
入間に深い口づけをしながら、入間の口内も舌も『欲』のままに貪った。
「はぁ……ご馳走様。ふふ、次にやったらこれだけでは済まさないからな」
壁ドンから入間の身体を抱擁しつつ、捕らえながらやはり、入間を口付けで貪り、十分に堪能したところで入間から離れつつ満足げに、そして妖艶にアメリは言葉をかけた。
「ふ……あ……は、はい」
入間は力を失ったかのように床へと尻もちをつき、悶えた状態で息を乱しながらようやっと、アメリに返答するのであった……。