魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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四十二入

 

 大手アクドル事務所の『デビムス』に所属し、現在の魔界においてかなりの人気を誇るアクドルくろむによる魔苦針ドームでの朝昼晩(いちにち)ライブは大成功し、興行収入としても凄まじいものとなった。

 

 そしてくろむの朝昼晩ライブ終了直後の舞台裏はといえば……。

 

「女装して登場するなんてどういうつもりなんですか、貴方は」

 

「はむにゅ、ふむにゅ……頬を引っ張らないでよ」

 

 無事、ライブ成功したとはいえ自分に知らせもせずに謎の美少女アクドルとして登場したリン(入間の女装した姿)にくろむは詰め寄り、両頬を掴んで引っ張りつつ、柔らかさや感触が良かったのでそのまま弄りに弄っていた。

 

「私は只々、くろむのライブを盛り上げようとしただでそれ以外の他意は無いわ。現に盛り上がったし、それに女装似合ってるしょう?」

 

「……確かに似合ってますけども……っていうかまだそのままでいるつもりなんですか?」

 

「いやね、くろむ。ライブが終わって、家に帰るまでがアクドルの仕事で基本じゃないの」

 

「う……」

 

 まだリンの姿のままでいる入間に対して指摘すれば何を言っているんだというように逆に指摘され、くろむは勿論、マネージャのマル(弟はバビルスで拷問学担当のマルバス・マーチ)や各スタッフたちもそれには納得せざるを得ないし、何も言えなかった。

 

 

 

「私の事はともかくとして……くろむ、私から貴女にちょっとしたプレゼントがあるわ」

 

「プレゼント?」

 

 微笑みながら言うリンに戸惑うくろむ。リンは右手の指を鳴らし、ゲートを出現させると……。

 

 

 

「くろむ、ライブ成功おめでとう」

 

 ゲートを通ってくろむのもとへと歩くは氷色の髪と瞳、感情に乏しい印象を受ける正しく氷のようなという言葉が似合う美女であり、くろむことケロリの母に祖母、そして兄、妹のチマとクロケル一家であった。

 

 入間が事前に接触して話をし、ライブの際は疲労や感情の高ぶりに弱いクロケル一家のために用意した特殊な環境の特別の観客席にて楽しんでもらっていたのだ。

 

 

 

「え、あ……み、皆……」

 

 くろむは突然の家族の登場に驚き、上手く反応が出来なかった。そんなくろむに彼女の母親は近づき……。

 

「今までずっとあなたのアクドルとしての頑張りは皆で応援していたわ。今日のライブも含めてにっこり花丸よ」

 

 本当にわずかであるが、ケロリの母は笑顔を浮かべて愛娘を抱き締めた。

 

「お、お母さん……っ」

 

 ケロリがアクドル活動を始めた理由の一つはまったく、笑わない家族をかつて自分がアクドルに笑わせてもらったように笑わせ、にっこり花丸を貰うためである。

 

 そして、その念願が叶い感極まって抱き締め返すと母親の胸に顔を埋め、涙を流した。

 

 祖母と兄、チマも身を寄せて一家で交流を始める。

 

 一方、クロケル一家が交流始めたところで一足先に帰ろうとしたリンであるが……。

 

 

 

 

 

「……という訳で是非とも、今回だけでなく今後も謎のアクドルとしてうちで働いて欲しいのじゃが……」

 

 帰る前に豪奢な長い金髪を後ろで束ね、狐耳、着物姿の美女悪魔たるデビムスの社長キュパに肩を叩かれ、そのまま隅の方で謎のアクドル、リンとして活動してもらうために彼女はリンと交渉を始めた。

 

「ちゃんと報酬が貰えるなら、構わないわよ」

 

 リンはキュパからの交渉に結構早い段階でそう応じたのであった。

 

「おお、話が早い。では、後で契約書を送るからよろしく頼むでおじゃる」

 

 

「ええ」

 

 そして、一先ず口約束を交わすと……。

 

 

 

「あの、イル……リンさん、プレゼントありがとうございました」

 

「いえいえ、どういたしまして。気に入ってもらえたならなによりよ。それじゃあね」

 

 くろむが声をかけ、頭を下げたのに対し微笑み、手を振りながら返すと今度こそゲートを出現させてそれを通る事でサリバンの屋敷の前へと移動し、それと同時にゲートは消えた。

 

「良い友人を持ったわね。絶対に手放しちゃ駄目よ」

 

「うん」

 

 母からの言葉にくろむは頷いたのだった……。

 

 

 

 

 そして、サリバンの屋敷の前でリンとしての女装を解き、元の姿に戻った入間であるが……。

 

「驚きましたよ。まさか入間様が女装癖を持っていたとは……でも、大変良くお似合いでした」

 

「いや、別に女装癖では無いですよ。人間界で言うコスプレ。遊びですので」

 

 部屋へと戻る途中でオペラに声をかけられ、自分が女装した事についての理由を説明し、人間界でのコスプレの事を説明する羽目になった。もっと言えばオペラの前で女装姿の披露ショーをする事まで約束される羽目にもなったが……。

 

 

 因みに……。

 

 

 

 

魅力度(エロど)、限界突破!! 私すらも魅了するリンちゃん……是非とも一度、直にお会いしたいわぁ♡」

 

 くろむのライブをテレビで見ていたライムは突如登場したリンに対し、画面越しですら彼女が有する魅力度によって魅了されながら、舌なめずりすらしながらそう呟く。

 

 

 

 更に……。

 

「きゃああああっ!! 最高だわ()()()()()

 

 仕事が一段落し、休憩中にテレビでくろむのライブを見ていたアムリリスは教え子であるライムと同じように突如、登場したリンに魅了すらされつつ、しかも女の勘により、リンの正体すら把握して艶のある声で呟く。

 

 

 

 

 よって……。

 

「(!? 何故、凄まじい悪寒が)」

 

 入間はライムとアムリリスに狙いを付けられた事でしばらく、凄まじい悪寒に襲われる羽目にもなったのであった……。

 

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