魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

47 / 163
四十六入

 

 魔界において有名過ぎる程に有名な悪魔学校、『バビルス』。

 

 そこには未成熟な若手悪魔が集っていて、学年は6学年で在校生としては666名居る。そんなあらゆる家系の悪魔が共存する学内で教職員に次いでその秩序を保ち、監督する集団こそが高潔にして冷血、悪魔のエリートの集団である『生徒会』。

 

 中でも生徒会のリーダー、生徒会長はまだ二年生であるというのにランクは『6(ヴァウ)』と将来、有望過ぎる程に有望な女悪魔にして雰囲気も相まって女傑然としたアザゼル・アメリなのだが……。

 

「……はぅぅ」

 

 そんな彼女は普段の凛とした女傑のそのものな雰囲気はどこへやら……今はまるで花も恥じらうような乙女で箱入りの大和撫子の如く、凄く恥ずかしそうな様子と表情を見せていた。

 

「なるほど……こりゃあ、また……」

 

 それは彼女の目の前にいる入間が彼女の様子を探るために手でカメラを形作り、レンズを覗くような姿勢を取りながら使用している対象の様子を深いところまで視る事の出来る魔術を使われているからである。

 

 無論、アメリ自身から入間は許可を取っているが……。

 

「それで、治せそうか会長は?」

 

 生徒会のメンバーであるザガンが代表して入間へと質問した。

 

 彼ら生徒会によれば昨日、実質的な意味においては入間が単独で配信ライブをやっていて、その休憩時間中にアメリたちはいつものように見回りをしていたのだが、その際にアメリが『放送師団』による放送で第一準備室に呼び出された。

 

 しかし、それは『放送師団』の公的なものでなく、『放送師団』の者たちが外で資料集めをしている間に何者かが放送師団の部屋に忍び込んで勝手にやったことであった。

 

 それを知った事でザガンたちは第一準備室に向かうと、その時にはアメリはいわゆる『乙女モード』になってしまっていたそうだ。

 

 魔術に詳しいモラクスによれば、アメリにかけられた魔術は素人が編んだセーターみたいになっていて、解くのは容易ではないが術自体は簡単なものなので時間が経てば元に戻るとの事らしい。

 

 あるいは色々と高等魔術を使用していて、高性能な魔具を開発している入間ならすぐにでも治せるのではないかと思って、ザガンたちは入間に任せてみると……。

 

「出来ないことは無いですよ。ただ、思ったより……アメリ会長にかけられた魔術がアメリ会長の深層意識と結びついてますね」

 

「どういう事だ?」

 

「用は息抜きしたいなぁって思っていた時に息抜きできる状況を与えられたから抜け出せなくなってる感じです。深層意識とはいえ、アメリ会長が今の状況を望んでいるなら、俺も無理やりそれを奪いたくも無いですし」

 

 基本、魔術というのはその使用者の技量もそうだが、かけられた者の状態によってもその影響は違う。精神に作用する魔術なら、対象の精神状態によっても効力は違い、今回はアメリが『乙女』になることを望んでいて、それを可能にする魔術がかけられたのでその効きは強固になっていると入間は言った。

 

 

「……そうだな。く、それほどまでに会長に心労が……」

 

「中々、ストイックな方ですからね……」

 

『(絶対、違うと思う)』

 

 ザガンと入間以外の生徒会の者たち、特にアメリと同じ女性であるスモークと入間が指にしている『悪食の指輪』の化身、アリクは入間に対して突っ込んだ。

 

 アメリが『乙女』になりたいと思うような事など、普段の入間に対する彼女を見ていれば大体、分かるからである。

 

「(イルマ君って案外、こういうとこは鈍いんだ)」

 

「(イル坊ってこういうとこ、あれだなぁ)」

 

 次いでスモークとアリクは入間に対しての評価も一致させていた。

 

「アメリ会長、しばらくの間は俺たちがなんとかするので思うままに息抜きしてくださいね」

 

「う、あ……はい、ありがとうございます。入間さん」

 

入間は優しくアメリに微笑むとアメリは顔を赤に染めながら、返事をした。

 

「(まさか、もうこの手段を使う事になるなんてな……柄じゃないが、仕方ない)」

 

 こういう時のために以前、アメリと相談しながら決めていた事をやる時期が思うよりも早く訪れた事に頭を抱えながら、入間はとりあえずアメリに対して魔術をかけた者の正体を探ろうと第一準備室に設置している監視カメラの魔具の映像記録に自分のス魔ホでアクセスしたのだった……。

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 バビルスの教職集う『職員室』では登校時間が迫っているとあってそれぞれ準備をしている教師たちが居た。

 

 そして……。

 

「平穏って本当に尊く、良いものでしたね、オリアス先生」

 

「ええ、そして平穏は儚いものですねカルエゴ先生」

 

 

 『職員室』の片隅でなにやら悪魔生について悟りを開いてるかのような心境、表情でカルエゴとオリアスがコーヒーを飲みながら言った。

 

 普段においてはいつも入間によって好き放題、やりたい放題に弄られて胃がストレスでマッハ以上となっている二人ではあるが昨日は本当に、本当に珍しく入間が配信ライブをやっていた事で入間の弄りは無く、二人は平穏な1日を迎えることが出来た。

 

 因みに二人が飲んでいるコーヒーは入間が全力以上の全力を発揮して栽培したコーヒー豆によるもので魔茶の茶葉もそうだが、市場に出回れば超高級品となること間違いなしの嗜好品などが教師たちに対して幾つも入間から差入れされたりしている。

 

 ともかく、今日からまた入間によって苦しめられることを覚悟し、気持ちから備えるカルエゴとオリアスであったが……。

 

「先生たちはとっくに承知の事ですが、乙女になってしまい普段の会長業務が出来なくなったアメリ会長の様子が戻るまで俺が代理として、生徒会長になるのでよろしくお願いします」

 

 生徒会長によるアメリ直々の署名と印を押された正式な文書と理事長であるサリバンの署名と印がされた書類を見せながら打ち合わせに訪れた入間がそう、宣言した。

 

『なにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?』

 

 二人の想像の斜め上どころか遥か高いところを行く入間に早速、カルエゴとオリアスの二人はやはり、精神的ダメージを負わされるのだった……。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。