魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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五十入

 

 

 風紀師団の風紀委員長であるロノウェ・ルミエールが現在、入間が生徒会長代理となって活動している生徒会に『解散選挙』を挑んだ事はその翌日である今日、すぐにバビルスの教員や生徒中に広まった。

 

「なんて馬鹿な事を……」

 

「よりにもよって、入間君が生徒会長をしている時になんて……」

 

 当然、カルエゴにオリアスは頭を抱えたし、大体の生徒も『入間君に挑戦を!? なんて命知らずなんだ』とロノウェの正気を疑ったりした。

 

「これは面白い事になるぞー」

 

「どんな末路を迎えるんだろうな、ロノウェ先輩」

 

 とはいえ、欲望中心で愉悦に飢えている悪魔たちなのでロノウェの戦いぶりと末路を楽しみにし始めた。

 

 悲しいかな、学校中の者たちがロノウェが勝つ事は絶対無理だという認識であった。

 

 そして……。

 

「先輩と言えど、入間様に勝負を挑むなどなんて愚かな」

 

「だねー、いるまちにコテンパンにやられちゃうだけなのに……」

 

「うーん、会長ちゃんがああなっちゃってるから、狙いとしては悪くないんだけれど……」

 

「イルマさんが会長代理になっていますし……っていうか今までイルマさんがやったことを考えていないのでしょうか?」

 

『問題児クラス』の教室の中で入間の周囲でアリスにクララ、エリザベッタにクロケルらが言い合う。

 

「我がライバルよ、容赦なく叩きのめしてやるが良い」

 

「あはは、俺らはイルマ君の勝ちっぷりを楽しませてもらうよ」

 

「同じく。入間君の勝ち方を楽しませてもらうでござるよ」

 

「深謀遠慮に期待している」

 

「なるべく、お手柔らかにしてあげてね」

 

「勝ちは見えまくってるから、寝ながらイルマ君の勝利と相手の負けっぷりを楽しませてもらうよ」

 

「それにしても、本当に無謀ですなロノウェ先輩は」

 

「まったくだよ。イルマ君、少しは慈悲を与えてあげて」

 

 他にもサブノックにジャズ、ガープにアロケル、プルソンにアガレス、カイムにリードらがそれぞれ応援や声かけをした。

 

「リード、ロノウェ先輩はな……俺に対して小さい悪魔って言いやがったんだ」

 

『(あ、これはロノウェ先輩終わったな)』

 

 入間の呟きと彼から漂う雰囲気のヤバさに全員がロノウェが凄まじい破滅をすることを悟る。

 

「なんだって、それはもう極刑ものだよ。慈悲与えなくて良いからね、イルマ君!!」

 

「ああ、任せろ」

 

 そして入間と同じように身長の低さを気にしているリードは入間に共感して、応援し入間は頷くのであった……。

 

 

 

 

2

 

 

 

 自由時間――いつもならバビルスの生徒たちはだべったり、遊んだりする時間帯であるが……。

 

「やあ 平生徒庶民。僕だよっ!!」

 

 今回は『解散選挙』のためのアピールが行われており、ロノウェは自己紹介しながら自分に対してあらゆる者の注目を集める家系魔術を使って、皆の視線を浴びる。

 

「ロノウェが生徒会長になった暁には授業日数を半分にし、その分旅行に行く」

 

 そうしてロノウェは遊びや楽しいこといっぱいな学校に変えていく事を宣言する。

 

「本当にそんな事、でき……「約束はしない」」

 

 そして、生徒からの質問に堂々と言ってのけるなどとにかく盛り上がりを重視したアピールをした。

 

 その一方で……。

 

 

 

「しかと聞け、今より生徒会長代理であらせられる入間様よりお言葉がある」

 

「しかと聞けー」

 

 アリスとクララが周囲の人々へと大きく呼びかけ、そうして入間が皆の前に姿を表す。

 

「えー、何やらロノウェ先輩が皆の興味を惹くことを言ったようだが……まあ、『解散選挙』のためにアピールするのは大事だ。生徒会を乗っ取りたい、とにかく注目を浴びたいとかロノウェ先輩はロノウェ先輩の欲望を果たすために動いてもいるようだしな」

 

 入間はまず、そう前置きをすると……。

 

 

「そう、俺たち悪魔にとって大事なのは欲望だ。誰かから与えられた愉楽(よく)では満たされない程の深き欲望、そしてそれに伴う遥かに高い野望を掲げ、果たそうとする事が大事でこのバビルスはそんな野心ある悪魔を育むべき場所であるべきで、そう環境を整えるのが俺たち、生徒会の使命だ」

 

『……』

 

 入間は真摯に呼びかけ、その雰囲気や言葉に込められた感情に悪魔たちは唯々、惹き付けられた。

 

「……なんて偉そうな事を言ったが、これはそこにいるアメリ会長からの受け売りだよ。でも、実にバビルスの生徒会らしい目的で野望だと思っている」

 

 入間は次に苦笑するとアメリの方を見て言った。

 

「……入間さん」

 

 アメリは顔を赤らめ、くすぐったい気持ちになった。

 

「さて、俺自身はどうかと言う事だが……今まで俺はやりたいようにやってきたが……実はどうしても叶えたい野望なんてものは掲げていなかった。そんなもの無くてもどうにでも生きられると思ったからだ。でも、アメリ会長と触れ合って、生徒会に入って、生徒会長代理になって……生徒会として働いて野望に生きる事がどれだけ大事か分かったし、俺にも一つ、野望が出来た」

 

 そうして……。

 

「俺は皆の欲望や野望を守りたい……もっとも、その程度によっては砕くかもしれないけどな。ともかく、俺は生徒会としてこれからも皆が欲望を掴もうと……野望を果たそうとするのを手助けしていこうと思う。まあ、色々と言い繕っているが、要は……」

 

「黙って俺についてこい。その恩恵は必ず、与えよう」

 

『はいっ!!』

 

 入間の宣言と放たれる雰囲気に全員が傅き、返事をした。

 

「はっ、つい反応してしまったロノウェっ!?」

 

そう、敵対者であるロノウェですら……。

 

「さて、ついてくる者には恩恵を与えると言ったが、敵対者には俺は当然、容赦しない。そういうわけでこれより、こんな面倒くさい事をやらかしてくれたロノウェ先輩たち風紀師団と代表に選んだ師団に対して報復をする。第一弾は絶対に秘密にしたかった事、大暴露だぁぁぁぁっ!!」

 

『や、止めろぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

 そうして、入間は先ほどまでのやり取りはどこへやら、指を鳴らして集まった生徒たちの手元にロノウェたち風紀師団と彼を『解散選挙』の代表に選んだ師団の全員の恥ずかしい秘密を網羅したそれを書物に記したそれを召喚し、敵対者を阿鼻叫喚へと追いやったのであった……。

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

『解散選挙』に向けてのアピールは大事だが、無論、生徒会としての業務も大事であるため、現在は放課後、入間は生徒会の業務を行っていた。

 

「入間さん、少し休みませんか。働きすぎだと思いますし」

 

 現在、ザガンたちは巡回中で入間とアメリだけが居る生徒会室……アメリが入間へと声をかける。

 

「ん、そうですね……ちょっと休みます」

 

 書類を机に置くと首と肩を回す。

 

「はい、どうぞ横になって休んでください。ここで」

 

 アメリは微笑みながら、椅子に座り自分の膝を叩く。

 

 

 

 

「え、そこで?」

 

「はい、ここで」

 

 入間は確認するもアメリは頷く。

 

「いや、それは……」

 

 入間は恥ずかしがって戸惑うも……。

 

 

 

 

「嫌なんですか?」

 

 泣きそうな顔でアメリは言う。

 

 

 

 

「わ、分かりました」

 

 入間はたじろぎ、頷くとアメリの元へと行き……。

 

 

 

 

「失礼します」

 

「はい」

 

 アメリの膝を枕に横になった。

 

 

 

「ふふ、いつもお疲れ様です」

 

「ん……」

 

 アメリは見上げる体勢の入間の頭に手を置き、優しく撫でていき、入間はその感触にくすぐったそうにしながら、次第に心地良くされていく。

 

「……入間さん、私が不甲斐無いばかりに苦労と迷惑をかけて、すみません」

 

 アメリは入間の頭を撫でながら、申し訳なさそうに謝る。

 

 

 

 

「……やっぱり、アメリ会長はアメリ会長だ。多少、人格や雰囲気が変わっても大事なところは変わってない。貴女は優しくて、真面目で、気高くて……魅力的で素敵な女性だ」

 

 入間は苦笑を浮かべるとアメリを見つめながら、言う。

 

 

 

 

「ぅ……ぁ……」

 

「後、どうやら自分には可愛げが無いと思っていたから人格改変を受け入れてしまったようですが……『初恋メモリー』を俺が読み聞かせている貴女は十分に一人の可愛らしい女性でしたよ。むしろ、そういう部分は俺だけが独占したかった。なのに可愛い部分を皆が知るようになって、正直、悔しいです」

 

「い、入間さん……」

 

 入間からの言葉にアメリは顔を真っ赤に染めながら狼狽え……。

 

 

 

「まあ、これはこれで揶揄い甲斐があって良いのは事実ですが」

 

 入間は起き上がるとアメリと向き合い……。

 

 

 

 

 

「この前のお返しをしておきますね」

 

「っ!?」

 

 彼女の頬を手に持って引き寄せながら、額に口づけした。

 

 

 

「きゅうう……」

 

「また気絶か……」

 

 入間は恥ずかしさの余り、気絶したアメリに苦笑しながら優しく横に寝かせた。

 

 

 

 

「(うーん、イル坊って実はヘタレだよなぁ)」

 

「(ハァ……)」

 

 入間の内部でアリクレッドとヘルハウンドが呆れて溜息を吐く。

 

 

 

 

「(お前ら、後で覚えておけよ)」

 

『(い、いやあああああああっ!?)』

 

 すぐさま、入間からの言葉に悲鳴を上げる事になったが……。

 

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