魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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五十一入

 

 そうして、その日はやってきた。

 

 数多の悪魔が共存する学内でその秩序を保ち、監督する集団である『生徒会』とそんな生徒会のライバルを自称しながら、似たような活動をして対抗していた『風紀師団』、それぞれの存続をかけた『解散選挙』がこれより、始まるのである。

 

『アレフ、ベト、ギメル』

 

 興奮に満ちたままにカウントダウン始める生徒たち、周囲には教員もおり、中心には今回、対決する入間とロノウェがそれぞれ、高く上げられた専用のアピール台で開幕の時を待っている。

 

『タレス、ヘー、ヴァウ』

 

 カウントダウンは唯々、進んでいき……。

 

『ザイン、ケト、テト、ヨド!!』

 

 「我らが主を決す、解散選挙の開会だ!!」

 

 カウントダウンが終わるといつもこのバビルスの校内で生徒や教員への放送全般を担っている『放送師団』の団長、バディン・バラキが『解散選挙』の開会を宣言し、学生たちが歓声を上げた。

 

 

 

 『解散選挙』では双方、つまりは入間とロノウェによるアピールの後、投票が始まるルールとなっており、制限時間は三分。

 

 そして、先攻は……。

 

「ロノウェ・ロミエール!!」

 

「僕から君たちに提案するものは、ズバリ、愉楽だ」

 

 挑戦者のため、先攻を務めるのはロノウェ、彼は自信満々に自分の考えを語る。

 

学生の本分とは学びを楽しむ事であり、故に学園を楽園に、あるいは遊園地にする事を目指すと……。

 

「つまらないは最も無価値!! 苦しみを誇るな、楽しみを崇めろ!! さぁ、僕と理想の楽園目指して遊ぼうじゃないか!!」

 

 堂々と何処までも自信満々にロノウェは叫ぶ。

 

 

 

「セイ マイネーム!?」

 

『ロノウェー!!』

 

 そうしてロノウェのアピールに学生たちは声援を送る。

 

 

 

 そして……。

 

「後攻、イルマ!!」

 

 次に入間がアピールする番となり、生徒たちは静まった。

 

「今更、多くは語らねぇ。悪魔にとっては欲望が全て。生徒会と風紀師団、どちらを求めるかお前たち自身の欲望に従え」

 

 唯々、皆を見下ろしながら、入間は言う。

 

 

 

「勝とうが負けようが、結果はどうあれ……俺はお前たちの欲望を愛し、讃えよう。以上だ」

 

『はっ!!』

 

 入間のまるで王者が部下を、あるいは市民に投げかけるような言葉とそして雰囲気に皆が、教員ですら傅く。

 

「ま、またやってしまったロノウェ!?」

 

 やはり、ロノウェですらも無意識に傅いてしまい……この時点でもはや、結果は出ている。

 

「『解散選挙』の勝者はイルマ……『生徒会』の勝利です!!」

 

『ワァァァァァァッ!!』

 

 そう、勝者は生徒全員からの投票を勝ち取った入間である。

 

 

 

 

「やっぱり、こういうのは性に合わねぇな」

 

 入間は自分が上のものとして振る舞うそれに対し、疲れているような呟きと溜め息を吐いたが……。

 

 

 

 

 

「負けた……」

 

 ロノウェは負けたショックで項垂れ、倒れると失意のままに付き人のミギとダリの協力も会って、自宅の屋敷へと帰ったが……。

 

 

 

 

「ロミエール先輩、俺はね……なんであれ、喧嘩を売られたら相手を徹底的に、そして容赦なく打ち負かして、完全なる敗北を刻んでやらないと気が済まないんですよ」

 

 その屋敷に現れた入間は書類を見せつける。

 

 ロノウェ家――その頭首であるロノウェの父、ロノウェ・ローズベルトはこの魔界における最高の遊び場、遊園地のウォルターパークの支配人だ。

 

 しかし、そんなウォルターパークにロノウェ家の屋敷も全て入間は圧倒的な財力を使って、土地や経営権など何もかも買い取ってしまったのである。

 

「もっとも慈悲の心くらいは持ち合わせていますから……契約して頂けるなら、屋敷とウォルターパークは返して差し上げますよ」

 

「……そ、そんな」

 

 入間は『私は入間を主とし、忠実な使い魔になります』と書かれた契約書をロミエールに差し出した。

 

「頼む、息子よ。契約してくれ」

 

 ロミエールをダンディにしたような見た目のローズベルトは泣く泣く、息子へと懇願し……。

 

「あ、悪魔……」

 

 ロミエールは入間によって、魂までも恐怖に染められ徹底的なる敗北を刻まれたのであった……。

 

 

 

 

 

 

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