魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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五十七入

 

 人間とは違い、特異で優れた能力を持つが故に劇的な事が起こりやすい世界である魔界でも日常の時間は過ぎ去り行くものという法則は変わらない。

 

 そして今日は過ぎ去り行く時間の中で劇的な日常になるという事が一部の悪魔たちにとっては確定だった。

 

 何故なら……。

 

「今日という日を私たちは楽しみに待っていたッ!! そう、今日こそは此処、魔苦針ドームにて我が校、バビルスにおいてとんでもないことをやり続けている常識外れな入間君と優れた講師であるカルエゴ卿との決闘当日です」

 

 そう、今日は入間とカルエゴの決闘当日である。そして、決闘場として選ばれたのは『魔苦針ドーム』であり、中では特性のリングが用意されている。

 

 そして、それを放送室で見下ろしながら言葉を発しているのは実況者を務めるバビルスの『放送師団』団長のバディン・バラキである。

 

 

『ワアアアアアアッ!!』

 

 バディン・バラキの言葉に観客として来ている全バビルスの生徒と講師が歓声を上げた。

 

「そして、今回の決闘の解説として我が校、バビルスの理事長であるサリバン様に来ていただいております。こうして貴方の傍で実況させていただけますこと、 本当に光栄です」

 

 

「うおおお、入間くーん。おじいちゃんいっぱい、応援するからねー!!」

 

 サリバンは自作の入間応援グッズで応援しており、バラキの言葉を聞いていなかった。

 

 

「はい、まったく聞いておりません。ともかく、決闘はまもなくです」

 

 そうして、バラキの言う通り……少しして入間とカルエゴが姿を表し、リングへと歩き、上がっていくのだった……。

 

 

 

 

 

 2

 

 

 

 

 入間とカルエゴは決闘のリングへと上がる。

 

 二人の決闘の合図を務める審判としてオペラが控えてはいるが……。

 

「イルマ、言っておくが今回は情け容赦なくやらせてもらうからな。決闘を挑んだのはお前だ」

 

「ええ、勿論。こっちも全身全霊で挑ませてもらいます」

 

 

 

 そして……。

 

「では開始時間となりました」

 

 バラキの言葉と共にドーム内は暗くされ、照明が入間達を照らしていく。

 

 そうして、オペラが手を振り上げるのと共に入間とカルエゴが構え合い……。

 

「始めっ!!」

 

 オペラが手を振り下ろすと共にゴングが鳴る。

 

 

「ケルベロビュート!!」

 

 『情け容赦なく』と言った通り、カルエゴはケルベロスを出現させると共に入間へと突撃させ、ケルベロスは全力の爪撃を振るう。

 

 それに対し、入間は不敵に笑いながらまるでケルベロスの突撃を迎え入れるように両手を広げ……。

 

 

 

「ぐうっ!!」

 

『!?』

 

 カルエゴもそうだが、決闘を見ている者たちの驚愕の中、ケルベロスの爪撃を無抵抗に受けた事で体を切り刻まれる。そうして、倒れゆくが……。

 

「次は俺の番だな」

 

 致命傷を受けながらも踏ん張って、倒れるのを防ぐとそのまま、再起すると凄まじい力が彼の体から噴出し、それは入間の右拳に収束する。

 

 入間が開発した自己能力である『大利得』を彼は使用した。

 

 彼がこの能力のために捧げたのは『相手の一撃を受け入れる事』、『攻撃は拳によるもののみ』、『攻撃できるのは一度だけ』、『全力を振り絞る』という多重のリスク。

 

『大利得』の特性上、リスクを負えば負うほどに見返りは大きくなっていく。

 

 そう、今の入間は致命傷を受けたダメージ分の力が入間に加えられた上に拳による攻撃の威力と精度は最高潮以上に高まり、全力以上どころか限界を遥かに超えた力が握られた拳に収束されている。

 

 

暴食の一撃(グラトニー・ストライク)!!」

 

 そして、入間は右の拳に収束された力を解放し、拳撃を放った。

 

「なっ!?」

 

 拳撃により解放された威力は距離や間合いなどの概念を超えた超常の一撃となり、空間ごとケルベロスとカルエゴを食らい尽くすと余波でカルエゴの居た場所、リングからリングまでの道などを破壊し、粉塵を巻き起こす。

 

 そして、粉塵が晴れると倒れ伏し血だらけで瀕死なカルエゴの姿がそこにあった。

 

 入間はそれを見て、拳を抱え上げた。

 

 

 

「あーっと、なんという事でしょう……イルマ君は一撃で、そう、只の拳の一撃でカルエゴ先生に勝ってしまいました。決闘は入間君の勝利です!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオッ』

 

「勝ったか」

 

 勝利を告げる声と賞賛の声を浴びながら、安堵の為か倒れようとする入間。

 

 

 

 

「おっと……勝利おめでとうございます。入間様」

 

「ありがとう、オペラさん」

 

 入間はオペラに支えられ支えられながら、入間は観客たちの賞賛の声を浴びたのだった……。

 

 そして……魔苦針ドームから大分離れたとある場所にて……。

 

 

「保険を使わずに勝てたな」

 

 入間が魔術によって出現させていた分身ではなく、遍在体がまるで全てを喰らい尽くさんとする牙を連想させる弓を構えた状態でそこにいた。

 

 もし、拳の一撃で決めれなかった場合の次の手段として、弓矢によって奇襲を仕掛けようとしたし、それが失敗すればリング内に居る分体と入れ替えて戦おうとしていた。

 

 要はどう転んでも良いように保険をなんて先も用意していたのだ。

 

 ともかく、後はカルエゴの治療なども含めて弓矢を下ろし、分体の入間は姿を変えて空間にゲートを開いてドーム内へと移動したのだった……。

 

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