魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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五入

 

 魔界学校バビルスの直ぐ下の広大な敷地の中にバビルスの理事長であるサリバンの屋敷があり、両親に売られた事でサリバンの孫となった入間の魔界での住処も当然そこだ。そんなサリバンの屋敷に……。

 

 

「入間ち、おっはよーう。一緒に学校行こうっ!!」

 

「おい、せめて入間様が出てくるまで声は控えろ。呼び鈴鳴らした意味が無いだろう!!」

 

 朝早くからサリバンの屋敷の門前でクララが元気に挨拶しながら呼び鈴を鳴らし、それにアリスが注意をする。

 

 入間と出会って数日、二人は入間と一緒に行動する仲となっていた。

 

「おはよう、二人とも。わざわざ迎えに来てくれてありがとうな」

 

 屋敷から入間が出てきて、二人に挨拶してから礼を述べる。

 

「うん、入間ちにアズアズとは一緒に登校したかったから迎えに来たよー」

 

「そうか、それにしてもクララは今日も元気だな。お蔭でこっちまで元気になるよ」

 

「えへへ、私はいつも元気だよ」

 

 入間に笑いかけながら、返事をするクララに入間は近づいて頭を撫でると気持ち良さそうな表情を浮かべた。

 

「すみません、入間様。ご迷惑とは思ったのですがウァラクがどうしてもと……」

 

アリスは申し訳なさそうに頭を下げて入間へと謝れば……。

 

「謝る必要なんてねぇし、迷惑とも思ってねぇから気にするな。先にも言ったように迎えに来てくれて本当に嬉しいんだ。それじゃ、準備してくるからもう少しだけ待っていてくれ」

 

「……はい」

 

「うん」

 

 入間は二人に礼を言うと屋敷へと戻っていく。

 

「いやー、良かったねぇ入間君。二人もお友達が出来て」

 

 すると自分の部屋へと鞄を取ろうと歩いているとサリバンが嬉しそうにしながら、声をかける。

 

「そうだな。悪魔のお友達ってのは妙な感じだが……それでも実際、嬉しいよ。切っ掛けが出来たのは爺さんのお蔭だ。ありがとう」

 

 入間は両親によって修羅場へと連れて行かれることが多く、学校などはまともに行けてないのもあって友人と呼べるものが居なかった。だからこそ、いずれはそうした関係を築ける者が欲しいと願っていたのだ。

 

 それは例え、悪魔であっても否は無かった。実際、アリスとクララと交流するのは入間にとって楽しい事だからだ。

 

「……どういたしまして、入間君!!」

 

 入間の微笑みにサリバンは感激しながら声を上げて抱き着く。

 

「そうだ、今日は僕も会議があるから学校行くんだ。二人も一緒に馬車で行こうよ」

 

「ああ、頼んだ」

 

 今日は午後に新入生が属するクラスの発表がある日であり、そのためにサリバンも学校へ勤務する事になっているのだ。

 

 そして、サリバンが用意した馬車の中のサリバンが座る向かい側で奥へとサリバンへと礼を言いながら、次にアリスの手前の席へと入間が乗ると彼は「クララはここな」とクララを自分の膝の上に乗せつつ、彼女の頭を撫でる。

 

 

 

「うん、しっくり来るな。良い感じだ」

 

「あう、そ、そうなの?」

 

「ああ、そうさ」

 

 満足そうに言いつつ、癒しを受けている入間に対し、流石に恥ずかしいのかクララは照れと戸惑いの言葉を述べていた。そんなこんなで入間はサリバンにアリスとクララと共にサリバンの馬車によってバビルスへと向かい……。

 

「入間様のおなーりー!!」

 

 馬車を御者として引いていたオペラが先に降りるとバビルスへと登校している生徒たちに対してそう叫び出した。

 

「……(流石に出づらい)」

 

 サリバンの孫として堂々と振る舞う事を意識している入間であるが、だからといって積極的に目立ちたい訳でも無いのでオペラの行動に戸惑った。

 

「どうぞ、入間様」

 

「参りましょう、入間様」

 

「行こう、入間ち」

 

 オペラは赤絨毯を引いて、入間が馬車から出るのを促しアリスとクララも又、呼びかける。

 

 

 

「ああ」

 

 意識を切り替えると入間はいつものように鞄をアリスへと持たせながら、馬車から出て堂々と赤絨毯を歩いていく。その右側をアリスは歩き出し、クララも又、左側を「そこ退けそこ退け、入間ちのお通りだぁ♪」とノリノリで歌いながら進んでいった。

 

「入間君、おはよう」

 

 声を女子生徒の一人がかけてきたので……。

 

その方向へと顔を向けて微笑みつつ、手を上げて応えた。

 

 

 

「ふわぁ……」

 

「はぁ……」

 

「ひえぇ……」

 

 入間の魔性の雰囲気たっぷりな仕草により、女子生徒たちは頬を赤らめつつ、魅了されたが如く固まった。

 

「相変わらず、貫禄あるなぁ」

 

「黒い羽根が舞っているのが見える……」

 

「ヤベぇ……」

 

 男子生徒も入間の仕草による衝撃によって、圧倒されていた。

 

 

 

「うぬぬぬ……私だって本当なら……」

 

 今日も又、生徒達の注目を受ける入間にとある一人の女子生徒は嫉妬を抱いたりもしたが……。

 

「(やっぱ、これは恥ずかしいな)」

 

 堂々と行進してみた入間は多少の気恥ずかしさがあったので今後はこうした対応は控えてもらおうとサリバンにオペラへ頼もうと思ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 バビルスに入学した新入生はクラス分けされて正式な授業を受ける前は学食と庭園ぐらいしか利用することが出来ない。今日は新入生のクラス発表が午後にある日でまだ、それまでは時間がある。

 

 なので入間にアリスとクララの3人は学食堂へと昼食を取るために移動した。そしてバビルスの学食堂は生徒の位階(ランク)によって注文できる料理が違うし差もある。

 

 とはいえ、無料なのは同じで嗜好品は売店にて有料で手に入れる事が出来る。

 

 

「狭いし、小せぇな……アリス、任せて良いか?」

 

 

 新入生であるため、入間達はメニューの中のfreeと書かれた枠の中のものしか注文できず、しかも文字は小さいし、何より魔界の料理の名を入間は知らないのでアリスに任せる事にした。

 

「はい、お任せください。苦手なものはシェアしましょう」

 

「アズアズ、私もお願い」

 

 そうして入間に対しては喜んで、クララに対しては「お前は自分で頼めよ!!」と突っ込みながらもアリスは注文をしようとして……。

 

 

 

 

「おお」

 

「っ!!」

 

「わぁ、いっぱい来た」

 

 突如、数十人前分の色んな料理が入間達の席へと運ばれる。

 

「おい、何だこれは!?」

 

「え……でも確かに50人前と」

 

 アリスが料理を運んできた者へと文句を言えば、戸惑いながら料理を運んできた者は答える。周囲を見れば複数の嘲笑う声。

 

 注目を受けて目立っている入間に対して複数の者達が恥をかけとばかりに悪戯を仕掛けたのだ。

 

「おのれ、低俗な悪戯を……入間様、奴らを片付ける許可を……ってうおおおおっ!?」

 

 それを察したアリスは入間の方を向いて次の瞬間、驚愕の声を上げた……。

 

「うん、学食堂の料理も美味いな」

 

「入間ち、凄い食べるんだね」

 

『……ぉぉぉぉ』

 

 入間は料理が運ばれてきた瞬間に食事を開始しており、しかもアリスが入間の方を見る数秒間の間に殆どの量を腹に納めていたのである。

 

入間の食べっぷりをクララは楽しそうに眺め、悪戯を仕掛けた者たちも含めて生徒達は呆気に取られていた。

 

「あの体のどこにあれだけの量が入るんだよ……」

 

特待生(いるま)、マジヤベェ……」

 

「わぁ……食事をする入間君、可愛い」

 

 

 食事風景ですらも生徒たちの注目を受ける入間は50人分の料理を平らげると……。

 

 

 

 

「すみません、おかわり」

 

『まだ食べるのっ!?』

 

 おかわりを要求し始める。

 

「ふ、ふ……」

 

 食堂のシェフはそれに応えて料理を用意するが……。

 

「またおかわり、お願いします」

 

「せっせ、せっせ……」

 

「またお願いします」

 

「ふー、ふー……」

 

「お☆か☆わ☆り」

 

「……モウユルシテ」

 

 ハイペースで連続する入間のお代わり要求に対応できず、シェフは力なく呟きながら倒れた。

 

「シェフが倒れたぁぁぁぁっ!?」

 

 入間のとんでもない胃袋に戦々恐々とする生徒達、食堂の雰囲気は騒然としていたが……。

 

 

 

 

「粛に!!」

 

 そう声を上げて騒然とした雰囲気を消そうとする者が学食堂の中に入る。

 

「全く、久々の出勤だというのに白昼堂々、騒ぎを起こす阿呆はどこ……って何だこの量はぁぁぁぁぁっ!?」

 

 大きな精神的ショックによって今日までの数日間、家で寝込んでいたナベリウス=カルエゴは入間の席にて大量に積み上げられている皿の量に先ず、驚愕した。

 

「あ、カルエゴ先生。学食の料理って美味しいですね……ついつい食が進んじゃいましたよ」

 

 カルエゴへと入間は笑みを浮かべて声をかけつつ、いただきますの仕草をした。

 

「よりにもよって貴様かぁぁぁっ。食が進んでるのにも程がありすぎるだろう馬鹿め。言っておくが、学園の食料全部食い尽くしたら、絶対に許さんからな」

 

「分かりました、程々にしときます」

 

 カルエゴは使い魔にされたこともそうだが、自分の先輩で苦手なオペラと似たものを感じさせる入間がすっかり嫌いであり、苦手となっている。

 

 故に文句を言った後、そうそうと去ろうとしたが……。

 

「こんにちは、エギー先生。私、クララ……ねぇ、エギー先生。入間ちの使い魔って本当? ねぇねぇねぇ」

 

「何だこの珍獣は、ひっつくなっ!!」

 

 クララが去ろうとするカルエゴの服の裾を掴んで引っ張りながら言葉を捲し立てる。

 

 そんな二人を見ながら、入間は懐から取り出した魔方陣の描かれたシール――手に貼って、その手を上に上げれば使い魔を召喚出来、両手を叩けば召喚を解除できる『使い魔召喚シール(ミニ)』という品物で食堂に設けられた売店にて買える物であるそれを手に貼り……。

 

「見たい見たい、召喚みたい!!」

 

「ええい、やかましいわ……って貴様、こそこそと何をっ!?」

 

 未だ引っ付くクララを引き離そうとしたカルエゴだが入間の方を見れば使い魔召喚シールを手に貼って、それを上に上げた。その瞬間、カルエゴの体が光に包まれ……。

 

「あれがカルエゴ先生の使い魔としての姿だ」

 

「わぁ、使い魔のエギー先生格好良いっ!!」

 

 召喚シールによって召喚を行った事で王の覇気、気品、風格を纏った鴉の鳥人悪魔という入間の使い魔としての姿となったカルエゴをクララへと紹介し、クララは素直な感想を述べる。

 

「貴様、何のつもりだ……」

 

使い魔となっている時は主である入間に手を出せば処罰を受けてしまうので怒りを堪えて問いかける。

 

「何のつもりも何も……この前そこの売店で買った使い魔召喚シールの効果を実際に試しただけですよ。カムカムさーん、これ、良い物ですね」

 

「ん。ご利用と宣伝、ありがとう」

 

 入間は両手を叩いてカルエゴの姿を元に戻し、売店の店員である着ぐるみを着た悪魔のカムカムさんに声かけつつ、サムズアップするとカムカムさんも頷きつつ、サムズアップを返した。

 

 

 そして次の瞬間には食後のデザートとしてアリスとクララの分も含めて売店で3つのアイスを買うと……。

 

「では、俺たちはこれで」

 

 そうして入間はさっさとアリスとクララの二人と共に学食を去った。

 

 

「……疲れた」

 

 今日もカルエゴは入間に苦手意識を強めたのだった……。

 

 

 

 

 

 そうして午後のクラス発表の時間が来て……。

 

「お、3人一緒だな」

 

「当然の事です。私と入間様が別クラスなどありえません。問題児(アブノーマル)クラスというのは納得いきませんが」

 

「3人一緒だやったぁぁっ!!」

 

 入間にアリスとクララは問題児クラスに入る事が発表されたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

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