種族としての特徴柄、自分の欲望を満たす事が行動原理となっている悪魔は平気で他者に迷惑を掛けたり、傷つける行動をする。無論、盗みや破壊行為など純粋な悪事に手を染める事も良いし、程度はともかくそうした悪事をする悪魔は他の悪魔から尊敬されたりもするのだ。
だからといって、それが問題にならない訳ではない。
魔界には魔界の治安があって、それを乱す者は当然、魔界の治安を守る『魔関署』などそうした組織に捕まるし、その罪の重さ次第では牢獄にだって入れられる。
「そら、もう観念しろ」
「今なら大人しくすれば、まだいろいろと便宜を図ってやれるぞ」
「(ち、ちくしょう。調子さえ悪くなきゃあ……)」
とある悪魔が盗みをしたが、自身の体調の悪さやタイミングの悪さと悪条件が重なり、逮捕されようとしていた。
『(そんなお前に最後のチャンスだ)』
「っ!? な、なんだこの空間は……」
脳内から声が聞こえてきたと思えば、次の瞬間には何もない場所に居て、悪魔は酷く混乱する。
『お前が自分で自分の運命を決める場所ってとこだな。さて、お前は捕まって牢獄に行きたくないか?』
「そんなの勿論、嫌に決まってんだろっ!!」
声の問いにイラつき含めながら悪魔は叫んだ。
「だよなぁ……良し、だったら、取引しよう。お前の名前と姿を貸してもらいたい。そうすればお前はしばらくの間、姿も名前も別人として暮らす事になるがこの窮地は逃れる事が出来るし、その後もお前が思う通りに暮らせるぞ」
そうして、取引の条件が書かれ魔法陣も刻まれた紙とペンが悪魔の手元に出現する。
「そこに名前を書けば晴れて契約完了だ。お前は名前も姿も別人となってさっきまでいた場所とは違う場所に転移する。そして、契約しないならさっきまでいた場所に移動して捕まる事になるが……さあ、どうする?」
「そんなの、決まってるだろ」
契約の持ちかけに悪魔は言いつつ、ペンを……。
二
魔界における最高峰の遊園地である『ウォルターパーク』では遊び、楽しみ、喜ぶ悪魔による活気に包まれていて、その雰囲気と声は
そう、実は『ウォルターパーク』は地下にも施設があるのだ。それは遊園地にはふさわしくないものである『監獄要塞』こと『ウラボラス監獄』である。
収容囚魔数は約1600名であり、ウォルターパークのスタッフが看守を兼任していて囚魔管理のための施設も多く備わっている地下要塞だ。
ウラボラス監獄に入所した囚魔の義務は労働とウォルターパークの動力としての魔力提供。
上のウォルターパークから響く楽し気な声に当たり前だが囚魔たちはイラつくのだが、その憎しみが魔力の源になり、動力に変わるという中々、悪魔の事を理解した性質の悪い効率的な作りとなっていた。
「それにしても本当、此処のシステムはえげつないっすわ」
「手玉に取られてるようでムカつくよなー」
ウラボラス監獄に希少食物の乱獲で懲役15年として収監されたばかりの新人にして、額に一本角を生やし、髪を後ろで結ったインプ・ロッキーがぼやくと傍で彼と同じく魔力を送っている囚魔が同意した。
「ここは収監されたくない監獄で堂々の1位だからな……中には自ら、志願して来るような変わり者もいるが」
また、別の囚魔が言いつつ、傍の囚魔の方を見ると……。
「変わりもんて、酷い言い方やわぁ」
バビルスの3年生にして『魔具研究師団』の団長であったが、師団披露にてバビルスを破壊し、それによっておこる悲劇に皆が絶望するさまを楽しむという欲を満たそうとしたが、入間によって完膚なきまでに阻止されたアミィ・キリヲが苦笑と共に言う。
因みに彼の刑期は2年である。
「はあ、志願したってなんでっ!?」
「や~~~~僕は……皆の笑い声が好きなんよ。聞いてるとなぁ、こう心が安らかゴブェッ!!」
「心じゃなくて本当に召されるっスよ!?」
虚弱体質は相変わらずであり、キリヲは吐血しインプも周りの囚魔も動揺した。
「また魔力不足か、1313番。誰か医務室に……」
すると刑期45年の顔面に交差した傷痕のある巨漢の悪魔のバツがキリヲと何故かインプまで鷲掴みにして持ち上げる。
「え、ちょ、は……なんで俺までェェェェェェッ!!」
そうしてインプまでバツによって何処かへ連れて行かれ……。
「(悪周期囚魔用のケンカ部屋ッ!?)」
見るからに凶悪にして凶暴な悪魔たちが居る部屋へと連れて行かれ、インプは絶体絶命であると覚悟したが……。
「大丈夫か、キリヲくん?」
そうして、巨大な悪魔で厳ついマスクをした魔獣のような姿のドドドがゆっくりと抱え上げ、顔を優しく扇ぎ始めた。
「新人、お前に話がある。こっち、座れ」
面食らっていたインプはバツの指示に従い、そうして周囲の悪魔たちも集まり、会議をするような感じになる。
会議の内容は……。
『脱獄するぞ』
そう、脱獄……。
魔界にて『あらゆる悪事にその集団あり』と謳われる程の集団にして元祖返り集団である『
事前準備としてインプ以外の囚魔たちは六指衆の指定した箇所に今まで魔力を送り込んだとの事でそれにより、ウォルターパークを破壊し脱獄する計画なのだという。
「破壊……なんてそそられる響き、脱獄ってのもそうですが最高っス」
逃亡の動きも決まっており、インプが変な動きをして失敗しないようにバツたちは教えたとの事だった。
計画の決行予定は……。
「今日やで」
『今日、ウォルターパークは業火に沈み俺たちは此処から脱獄する』
キリヲも含めて囚魔の雰囲気にインプは気圧された。
「これはぶっこわしリベンジや、幸せに笑う悪魔たちが突如として絶望に染まるその時を今度こそ、そして……」
キリヲはこの後、起こるだろう出来事に想いを馳せながら……。
「(イルマ君、いずれは君を絶望させる遊びを考えるから待っとってぇな……)」
執着しているイルマにもキリヲは恍惚的な表情と共に想いを馳せたのであった……。
三
ウォルターパークの『カララギ通り』内のとある建物。
「失敗したからこそ次は成功させる……それは良いが、手段がワンパターンなのは駄目だ。芸がなさすぎる。なぁ、お前ら?」
『はい、イルマ様』
カララギ通りの支配者となり、住人全ての悪魔たちの王となってみせた入間が問えば皆は頷く。
「しかし、やっぱり企みがあって此処に移ったなんてな。まったく挫けてないようだし、お変わりないようで結構だよ先輩……それと貴重な情報ありがとう」
入間はとある方法によってウラボラス監獄でバツたちが交わした話し合いを全て把握していた。
「本当なら、もう二度とあんたには関わりたくないんだが……まあ、折角の『終末日』で此処はウォルターパークだ。遊んでやるよ、六指衆も脱獄しようとする囚魔たちも含めてな」
入間はそう、呟きながらとある紙を出現させて何気なしに見る。
「それにしても、お誂え向きの名前と状況だった」
その紙に記された名前を見て入間は苦笑するのだった……。