魔界にて生きる種族、悪魔には『悪周期』という暴力的、加虐的な思想が昂ぶり、悪事への欲求が高まるストレス周期があるという厄介な特徴がある。
『悪周期』になってしまえばどんなあくまでも程度の差はあれ、落ち着くまであらゆる悪事の限りを尽くし始めるので抑える者は苦労する事になるのだ。
そして、かの魔王が『悪周期』になった場合は30日間にわたって暴れ回り、大規模な焦土を作る事となったのをふまえて長期のストレス発散期間である『終末日』が生まれた。
更に『悪周期』の悪魔のストレスを発散するために魔界においての最大の遊園地である『ウォルターパーク』は設立された。
悪魔を楽しませる事をモットーとしているため、多くのアトラクションやショッピングモールに色んなイベントを開くための会場となるドームなどが用意されていて、更に此処で働くスタッフも『いつでもどこでも、皆の遊び相手』というモットーを元に客の遊び相手となる事で客の気分を更に盛り上げるのである。
まさに『ウォルターパーク』は遊びの最高峰の施設なのである。表向きは……。
そう、表があれば裏があるのだ。
ウォルターパークには悪道――『カララギ通り』という血で血を争い、違法な魔具を取引していた裏通りを残しているのだ。
更に地下には犯罪を犯した悪魔の監獄施設である『ウラボラス監獄』という施設が作られていて、その施設の中にいる囚魔の魔力を動力源にしている。
そんなウォルターパークだが実は最近、ウォルターパークには似つかわしくない者たちが潜入していた。
「さて、皆……これより計画を始動する。現時刻をもって我々はウォルタースタッフではなく、六指衆としてウォルターパークを襲撃するよ」
ウォルターパークのF15という区域にあるとある建物の屋上で如何にも地味な見た目の男悪魔でスタッフの一人として潜入していた者が連絡器を持って指示を出した。
彼の傍には入間が動物と触れ合うコーナーで出会った女性もいた。
『イエス、
そして、六指衆の一指であるウエトトによる連絡器からの指示に一度、『六指衆』の悪魔たちは応じた。
「ん~~、ようやくか。待ちくたびれたぜ、ウー兄」
チャラいといった感じが似合う男悪魔の五指ことアトリが楽し気に言い……。
「フッ……ようやく、出番か」
ガンマン風の衣服を纏った骸骨の悪魔である六指、マエマロも応じる。
「急に坊ちゃんのお守りに回されてな、いやー大変だった」
親密な様子でアトリとマエマロに応じるウエトト。
彼の言う坊ちゃんとはウォルターパークのオーナーであるローズベルトの息子であるロノウェの事だ。
少し前までウエトトはロノウェが学内に遊園地を作りたいから参考のためにウォルターパークを視察する彼のお守りをさせられ、振り回されたのである。
「んはっ、ウー兄、パシリ顔だからなぁ~~」
「作戦のためとはいえ、スタッフと仲良くなり過ぎたよ」
「私達もしっかりお仕事しちゃいました」
「中々に面白い仕事でしたな」
アトリとやり取りをするウエトトに対し、黒髪の長い髪をツインテールにし、頭には二本の角、眼鏡をかけた美しい女悪魔の四指ことミキィ、彼女の傍に居る髪を逆立てたと老紳士風な見た目だが体格はかなり小柄な三指ことヒュダーリンが楽し気に言う。
「確かにね、だが今日で終わりだ。此処での潜伏も全て今日この日の為……」
そう、六指衆はウォルターパークに潜入し裏路地や本部内も含めて隅々までウォルターパークの地理を頭に入れ更にはウラボラス監獄の囚人たちとも連絡を取りながら、準備をしつつ今日、看守長が居なくなる好機を待っていた。
「全ての準備が整った。これから起こる大混乱の隙に我々は監獄を目指し、
ウエトトは懐から卵を取り出し、マエマロやヒュダーリンも……それぞれ、囚魔たちとの連絡により魔力を集めさせた場所にて卵を取り出す。
「我ら六指衆、混沌つくりし六本の指……このウォルターパークでの日々はとても楽しかった。だから、大事に壊そう」
そうして、卵をウエトトたちが放る中……。
「(ごめん、でも皆を裏切れないから)」
ウエトトの傍にいる女悪魔、シーダは入間の姿を思い浮かべ心の中で謝る。
卵が地面へと落ちれば爆発と共に……。
『ギャオオオオオオオオンッ!!』
召喚災獣である巨大な龍の『
どれも巨大にして凶暴な召喚魔獣である。
そう、このままならばウォルターパークそのものどころか客の悪魔たちにも大きな被害を及ぼしていただろう。
しかし、客やスタッフに被害は及ぶ事は無い。
『皆、少し過激なイベントを楽しんでくれ』
六指衆を除くウォルターパーク内の客にスタッフが全てドーム内に転移させられたからであり、全方位から観れるスクリーンには魔獣たちが暴れる映像が映し出され、高品質な器具により、音も良く響く中、声がかけられた。
そして、一人ウォルターパークの中心に翼を広げ、空に浮き、魔獣たちを見下ろす入間は仮面を取り出す。
「それじゃあ、
仮面を被ると以前、筋肉師団に対して使った戦闘用スーツを纏いながら、魔獣たちに対してそう言ったのだった……。
二
ウォルターパークの地下の監獄要塞こと『ウラボラス監獄』にて振動が響く。魔獣が召喚され暴れ始めたからである。
「へへ、始まったか」
「みたいっスね。ところで考え直したんですが、やっぱり他の悪魔を頼って脱獄ってダサいと思うんすよ」
そろそろ脱獄が始まる事を予期して喜ぶ囚魔たちだが、新入りであるインプがそんな事を言いだした。
「何だと、テメェ……」
挑発紛いな言葉に当然、バツ始め囚魔たちはインプを睨め付けながら詰め寄ろうとし……。
「それに監獄暮らしで鈍ってるでしょうし、折角だ。表も騒がしいし、此処でも騒ぎましょう」
そして、インプは懐から出した小瓶を投げ捨てて割ると中身の液体は飛び散り、直ぐに揮発して気体になり、広がっていく。
「っ!?」
感覚でヤバいと悟り、自らの家系能力による『
「う、あ、が……な、何だ、こ、これは……」
他の悪魔たちは誰もが胸や頭を抑え、激しい発作を耐えようとしていた。
「今、俺がばら撒いたのは嗅いだ悪魔を強制的に深い『悪周期』にする薬だよ。もっとも俺が魔術を使うまでは待機状態で済むんだけどな」
「う、があ……お、お前は一体……」
「あぁ、おったんか……おってくれたんやな、イルマ君っ!!」
突如、雰囲気を豹変させたインプに戸惑う囚魔たちであるが、キリヲだけは直ぐにインプの正体を悟り、歓喜した。
「どうも、久しぶり。キリヲ先輩……では、
インプと契約する事で彼の名や姿、思考ですらも彼そのものになれるようになっていた入間が姿を現し、キリヲに挨拶すると指を鳴らす。
それと共に囚魔たちに仕掛けた強制的に深い『悪周期』にする魔術を発動するとそのまま、姿を消した。
『ウオオオオオオオッ!!』
キリヲを除いた1600近くの囚魔が『悪周期』となり、争いを開始したのであった……。