魔入りましたよ 入間さん   作:自堕落無力

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八入

 

 

 悪魔学校の名門であるバビルスへと入学した新入生全員のクラスが決まり、早速、それぞれが配属されたクラスにて学業を始める日となった今日は飛行試験を行う。その結果を以前、初登校日にて行った使い魔の召喚試験の結果と総合して学生の位階を決定するためだ。

 

 その飛行試験を行っていた入間であるが、その最中に飛行試験で決められたコースとは別のコースで担任となったカルエゴも今は危険であると言った『金剪の谷』コースへと向かった同じクラスの悪魔であるサブノックを発見。

 

 それを見逃せなかったために入間は連れ戻す事を決めてスタートした時、自分の背に掴まっていたというクララとそして、自分の後に続いていたアリスと共にサブノックの後を猛烈な速度による飛行で追い始めた。

 

 因みに飛行試験においてはそれに臨む学生たちの行動を見張るため、中継の役割を担う使い魔が所々に配置されているが……。

 

「お前、試験の様子をカルエゴ先生へと中継しているんだろう? だから、しっかりとこれからの俺たちの行動をカルエゴ先生に伝えろよ」

 

「!?」

 

 サブノックを追っているところで見かけた中継係を捕まえて、中継係を驚愕させながら、『金剪の谷』コースを進んでいた入間たち。

 

 

 

「ギュイイイ……」

 

 道中にて大きな巣の中でかなり苦しそうにしている鳥を見かけた。

 

「悪い、少し寄り道をする」

 

「はいはーい」

 

 それを見逃せず、助けようと決めた入間の言葉にクララは答え、後ろから続くアリスも『入間様?』と反応しながら、入間の後をやはり追った。

 

 こうして、額に目のような紋様がある巨大な怪鳥とも呼ぶべき鳥の元へと入間は向かったのであった。

 

「っ!? ギィヤァァ……ギュウウ……」

 

 怪鳥は自分に近づいてきた入間に気づくと威嚇しようと立ち上がったが突如、苦しんで倒れ込む。

 

「驚かせて悪いが、俺たちは敵じゃない。その怪我を治療しに来たんだ。クララ、ナイフと包帯を出せるか?」

 

 倒れ込みながらも睨み付ける怪鳥に手を上げながら入間は呼びかけつつ、怪鳥の左足にある傷を指差す。

 

「うん、はい」

 

 入間が怪鳥の巣へと降りた事で背中から降りたクララは入間の声にポケットからナイフと包帯を取り出して入間へと渡す。

 

「ありがとう。いいか、良く見てろよ?」

 

 クララからまず、ナイフを受け取った入間は躊躇いなく、右手で持ったナイフで自分の左手の甲を斬りつけた。

 

「!?」

 

「入間ち!?」

 

「入間様、何を!?」

 

 入間の突然の行動に怪鳥もクララもそして、遅れて降り立ったアリスも驚く。

 

「っう……結構、切れ味鋭いナイフだったな……これをお前にやってやりたいんだ」

 

 入間はナイフを足元へ一旦、放りながら自分で切りつけた事で負傷し、血が流れ始めている左手の甲を見つつ、クララから包帯を受け取ると左手の甲へと巻き付け、縛り結ぶ。

 

 そして、包帯を指差して次に怪鳥の負傷している足を指差すと……。

 

 

 

「……」

 

「良し良し、偉いぞ」

 

 入間の意図は伝わり、怪鳥は自分の負傷した足を入間へと伸ばした。そして、手当をしようとした入間だが……彼の包帯をしている左手から血が滴り、怪鳥の負傷個所に落ちた瞬間……。

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

 血の一滴が落ちた。それだけのことで怪鳥の傷は完全に治癒してしまったのである。

 

「凄ーい。一瞬で治ったー!!」

 

「流石……これが入間様の家系能力という訳ですね。入学式ではサリバン様に拾われる前は孤児と言っておりましたが、これを見るからに入間様の家系は大変、高貴な悪魔のものなのでしょう。本当に素晴らしいです」

 

 当然、クララもアリスもついでに無理やり連行されてきた使い魔も一連の光景に驚愕した。アリスに至っては感極まりすぎて泣いているが……。

 

「あ、ああ……俺もびっくりだ。とにかく、良かったな」

 

 入間も驚きながら、魔界での人間はどうやら相当な価値を持つ、あるいは相当な良質の餌持つ者なのだろうと考えつつ怪鳥へと笑いかける。

 

「ギュウウ」

 

「おお、良いって良いって……じゃあ、俺たちはって……うおおっ!?」

 

 怪鳥は自分の怪我を治した入間に心を許し、顔をすり付けると流れるように入間を自分の背へと乗せて羽ばたき始める。クララは急いで怪鳥の背であり入間の後ろへと乗って、アリスは中継係を手に抱えつつ後へ続いて飛行を始めたのだった……。

 

 

 

2

 

 

 『金剪の谷』は生物が生きる環境としてはそもそも過酷な環境である。そんな谷に長として君臨する生物は当然、強大だ。

 

「ぐ……うぅ」

 

 頭の両側に悪魔の角、遥かに巨体であるその身は金の如き強靭性を持つ毛皮に包まれている巨長であり、大怪鳥。それが金剪の長の全容である。

 

 そんな長によって窮地に立たされているのはサブノック・サブロ。魔王の格好良さに子供の頃から憧れ、実際に魔王を目指しているからこそ歴代の魔王が潜り抜けてきた『金剪の谷』コースへと挑んだが、立ちはだかった長は彼にとってあまりに強大過ぎた。

 

 

 

「後悔など無い。己は最後まで自分の意志を貫いたのだっ!!」

 

 倒れ伏したサブノックへと止めを刺そうとする長に対し、気概だけは負けないと知らしめるため咆えるサブノック。そして……。

 

『!?』

 

 長とサブノックの中間を一筋の炎が通った事で両者は動きを止める。

 

 

「よう、危ない所だったなサブノック」

 

「入間様の寛大な慈悲に感謝しろよ」

 

「生きてて、良かったね」

 

「ヌシら、どうして此処へ!?」

 

 そして、入間と彼の指示により炎を放った当事者であるアリス、クララはサブノックの元へと降り立ちながら声をかける。それとは別に入間により傷が治癒した怪鳥、長の子供は戸惑う長に声を上げて何かを訴えかける。

 

「どうしてって、ルール違反しようとするお前を連れ戻そうとしていたのさ。結果的には助ける事になったが……要はクラスメイトになったばかりの奴を見殺しにするような事はしたくなかった。それだけだ」

 

「ああ、入間様はなんて寛大なんだ」

 

「だから、入間ちの事大好き」

 

 サブノックへと言う入間にアリスは感激、クララは微笑んで抱き着く。

 

 

「……感謝する。しかし……」

 

 入間たちへと助けられた事には礼を言ったが、長が居てはどうにもならないだろうとサブノックは言ったが……長に動きがあった。

 

「おお、これはご丁寧に……」

 

 長とその子供は入間に対し深々と頭を下げて、礼を尽くしたのである。

 

「わあ、礼儀正しい」

 

「長が……頭を……」

 

「ふふ、これこそ入間様のご威光だ……」

 

 クララが呑気に言う中、サブノックは長たちの行動に驚き、アリスは今回の事もあって更に入間への忠を、それ以上の感情を抱くのであった……。

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

 飛行試験のゴール地点。

 

 其処には入間にクララとアリス、サブノック以外の学生が既にゴールし、集結していた。

 

 

 

「入間君、一体どうしたんだろうね。スピード狂よろしく……あんなにご機嫌な雄たけび上げながらかっ飛ばしてたのに」

 

「うん、本当に気持ち良さそうに飛んでたね」

 

「その割には登下校では飛んできてないようでござるが……競争が好きなのでござろうか?」

 

「見間違いだと思ったんだけど、クララちゃんやっぱり、入間君の背に乗っていたのね」

 

「むぬぬ、女子を背に乗せるなどなんて羨ましいぃぃぃ……」

 

 ジャズにリード、ガープにエリザベッタとカムイなど学生たちが会話する中……。

 

 

 

「……」

 

 中継係と魔術によって念的な通信をしていたカルエゴは中継係を通して見ていた入間達の行動に頭を抱えており……そして……。

 

「皆ー、ただいまぁぁぁぁっ!!」

 

『ええええええっ!?』

 

 カルエゴ以外の学生は金剪の長の背からクララから出してもらった拡声器で呼びかけてきた入間の声にそして、実際に金剪の長の背に長の子供と共に乗っていた入間とクララ、アリスにサブノックの姿に大きく驚愕したのであった……。

 

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