八十九入
『王の間』に相応しい実力を発揮できるよう、それぞれに合った講師を割り与えられ、その講師たちによる指導を受けていく『問題児クラス』。
入間の場合は自分が相応しいと思った者――バルバトス・バチコに師事して教えを受けている。
「ん……あいつらの特別講師って確か……」
そして、今日もバチコの指導を受けた後、入間はジャズとシュナイダーから『助けてくださいっ!!!!!!!!!!』とメールが来たのを読みながら、彼らの特別講師が何者であったかを思い返す。
「様子見くらいはするか……ってか、場所くらいは書いとけよ」
そして、魔術で二人がメールを送って来た場所を探り出し、その場所へと向かう。
「よう、二人とも。とりあえずは元気そうだな」
『イルマ君ッ!!』
ジャズとアロケルは入間が姿を表し、声をかけた事で希望にありふれた表情を浮かべた。
二人がいる場所は『魔界クラブ ヴァルバラ』という大人の悪魔が集まる遊び場だ。フルフル軍曹に連れられてこの場所に入ったジャズとアロケル。
最初こそ色々ともてはやされたり、歓迎されたりと良い想いをしていたのだがそれは獲物を油断させるための罠だった。
ヴァルバラはフルフル軍曹にとってツケのある店であり、二人は労働力として売られてしまった。
結果、三週間、ヴァルバラでのバイト地獄へと叩き込まれてしまったのである。
だが、入間が来たなら後はなんとでもしてくれると思った二人だが……。
「いや、俺がお前たちとフルフル軍曹の事情に首ツッコむわけないじゃん。命獲られるヤバいやつならともかく」
入間は二人の希望を打ち砕いた。
実際、これはフルフル軍曹が趣味で遊んでいるのもあるが、二人に色んな騙し合い交わる大人の世界を経験させるための物であると入間は察している。
仮にも軍曹であり、金も貰えるならそれに見合う仕事はする主義なのだ。フルフル軍曹は……。
『え……』
しかし、ジャズとシュナイダーは当然ではあるがショックを受けて呆然とする。
「まあ、冷やかすのもあれだし差し入れは持ってきた。皆さん、どうぞ二人へ大人の悪魔というのを教えてやってください」
『任せて』
美味しいつまみと酒の幾つかをヴァルハラの店員たちへと配れば、店員たちは喜びながら頷いた。
「じゃあ、頑張れよ」
そうして入間はジャズとアロケルに挨拶するとヴァルバラから去っていたのだった。
その後、それぞれの講師による指導の報告会を問題児クラスで行った際、二人は無事、生きているのを入間は伝えたのである。
そうして、その後もバチコの指導を受ける入間。
「ふっ!!」
「しっ!!」
どこかの山々が並ぶ場所にてそれぞれ遠く離れた二人――入間はバチコが放つ矢を自分の矢で撃ち落とし、撃ち返すという実戦形式の事をやっていた。
「へっ、やるじゃねえか」
「まだまだ、これから」
二人はそれぞれ必中の矢を撃ち落とし合いながら、手合わせを楽しんでいた。
そんな中……。
「(良し、最後の時には……)」
「(なんか、妙な悪寒が……)」
入間はとある事を思い付き、バチコはそれを感じ取って震える。
そう、入間が考え付いた事はバルバトス家にとって衝撃の事態となる事であった……。