うわっ…私のサーヴァント、強すぎ……? 作:あんどぅーサンシャイン
光と闇の壮絶なる対決。
一度は窮地に陥ったものの、どうにか勝利を治めたマシュ&立夏ペア。
『やった!! やったぞマシュ! 藤丸君! 一時はどうなるかとヒヤヒヤしたけれど……あの伝説の聖剣に真っ向勝負で勝つなんて凄すぎる!!』
「や、やったね……マシュ……」
「はい。先輩……」
―――しかし、戦いはまだ終わったワケじゃない。
「はァ……はァ……! 貴様らァ……!」
セイバーはまだ立っていた。
しかしその表情にもう余裕はない。
あれだけの強大なエネルギーを込めた宝具を一気に放ったのだ。いくら最優のサーヴァントといわれるセイバーのクラスに位置する彼女とて、体力と魔力の激しい消耗は免れない。
「まさか我が聖剣を退けるとは……敵ながら見事だと讃えよう……。だがあと一歩……押しが足りなかったようだな……!」
息を激しく切らしながらもセイバーは構えた。
もうあの盾のサーヴァントとそのマスターはマトモに動けないほど満身創痍な状態だ。
残っている力だけでも簡単に斬り伏せれる。こちらの勝ちは揺るがない。
「はァ……ハ、ハハハ! 中々に楽しかったぞ、カルデアの者共。だが―――これで終わりだァァ!!」
「!」
「先輩! 離れて―――」
―――その刹那、
「―――ああ、そうだな。これで終わりにしよう」
「! なん―――!!?」
「な、何ッ!?」
「えっ……!?」
全員が驚きの声を発したのと、セイバーの胸に一本の剣がグサリと突き刺さったのはほぼ同時だった。
何事か、と思い剣が飛翔してきた方を見やると、
「あ、あァッ……………あ、アー、チャー……!?」
「―――――セイバー……」
赤い外套に身を包んだ
「はァ、はァ……アイツはさっきの……なんでここに……? 白ひげと戦ってる筈じゃあ……」
「おれがどうした」
「ってのわァッ!? ビックリした! いつからそこにいたの!?」
「ついさっきな。というかおめェこそなんだ。その腹のデケェ傷はよ」
「う、うん……。ちょっとでしゃばり過ぎちゃってね……!!? ていうかお腹痛ッッたァァァァああ!!!?」
「せ、先輩!?」
「ああもう全くアンタは無茶して! サーヴァントに生身で挑むとか正気の沙汰じゃないってのよ! ほら、応急処置してあげるからこっち来なさい藤丸!」
「ず、ずびばぜェェェん……」
「そ、それはそうと白ひげさん。どうしてあのアーチャーを連れてきたのですか?」
「まァ……色々あってよ」
そう言って二人の方を向く白ひげ。
「あ、あァ……が、がはっ!? な、なぜだ……何故だアーチャー!? よりにもよって貴様が……何故私に牙を剥く……ッッ!! あり得ん……あり得ない!!! 血迷ったのか!!」
「…………」
「!! なんとか言え!! 答えろ!! アーチ―――」
「―――もうやめよう。セイバー」
「!?」
彼女の下に歩み寄り、優しく抱き寄せるアーチャー。しかしその顔はどこか悲しげな面持ちであった。
「もう私達の……いや、
「! フザけるな……下らなくなんかない。まだ終わってなんかない!! 例えどれだけの犠牲を払ってでも、全てを擲ってでも私は勝つんだ。そして聖杯を必ず……!!」
「……………」
胸に刺さる剣の柄をグッと掴むアーチャー。
「……なんで、どうしてだ■■■。どうしてアイツらだけじゃなく!
「認めて貰いたかった、だけなのに―――」
剣を勢いよく引き抜かれ、心臓ごと霊核を粉砕されたセイバーはそう言葉を残して力尽き、光に包まれて霧散した。
そこにはもう何も残ってはおらず、彼女が死ぬ寸前に流した涙の粒で濡れた跡のみが、あるだけであった……。
―――『サーヴァント』“騎士王”、アルトリア・ペンドラゴン
VS
―――『人理保障機関』カルデア
冬木市。柳洞寺が真下、大空洞の最奥にて聖杯を賭けた戦い―――勝者!!
「“シールダー”、マシュ・キリエライト!!!」及び「“マスター”藤丸立香!!!」
「……すまない。セイバー」
そうポツリと呟いて立ち上がるアーチャー。
『……アーサー王の霊基消滅を確認した。うん、この戦いは僕らの勝ちだ』
「ええ、そうみたいね」
「はい。まだあのアーチャーが残っています……。ですけど―――」
「……済まないな白ひげ。わざわざおれの目的に付き合わせてしまって」
「謝罪なんざいらねェよ。だがよ、おめェは本当にこんな結末で良かったのか。まがりなりにもアイツはおめェを―――」
「いいんだ。聖杯戦争と共に、セイバーはもう俺では手の施しようがない程に狂い、壊れてしまった。そして多くの血を流し、多くの罪の無い命をその手で奪い続けた。故意ではないにしろ、彼女は決して許されない事をしてしまったのだ。だから
「……その面ァ、まるで自分のした事に後悔は全くねェようだな」
「……ああ。そんなもの、あろう筈がないさ」
「そうか」
すると、セイバーと同じようにアーチャーの身体も消え始めた。主であるセイバーが消えた為、肉体を現世に留めておく事が出来なくなったのだ。
「さて、私ももう時間切れの様だ。敗者は敗者らしく、地獄に堕ちるとしよう」
「“白ひげ”エドワード・ニューゲート。僅かな時間であったとはいえ、貴殿とサシで立ち合えた事はとても光栄であった。この吹き飛ばされた右腕はその名誉の負傷として捉えさせてもらうよ」
「そうかよ、好きにしな」
「ありがとう。そして―――そちらの盾の少女とそのマスターよ。ギリギリであったとはいえ、あのセイバーを倒したのは見事だった。君達のその力と絆なら―――これからの旅路も問題はあるまい」
「えっ?」
「旅路……? それってどういう―――」
事ですか、とマシュが言い終える前にアーチャーは再び白ひげに向き直る。
「最期に白ひげ。私はここで消えてしまうが……もし再び貴殿と相見える事が出来たのなら、今度は敵でなく仲間として……いや―――」
「“息子”として……この剣を振るわせてほしい」
そう言い、アーチャーはセイバーの後を追うように消滅した。
それを見届けた白ひげは、口元を若干斜めに歪ませつつグララララと笑いながら言った。
「……フン、何が息子だ。ハナタレ小僧がナマ言いやがって……」
あのアーチャーは弱くはなかった。
いや、むしろ片腕のみであったにも関わらずあれだけの高度な剣技を使いこなし、またあの無数に武具を生み出す芸当……こちらの世界では“魔術”というものらしいが、それも見事であった。
もし彼が白ひげ海賊団に所属していたとしたら、一体どれだけの戦力になっていただろう……なんて事をつい考えてしまう。
「―――まァ、気が向いたら考えてやろうじゃねェか」
「……ねェねェ白ひげ」
「ん?」
そんな彼に立香が話しかけた。
「見ない間に、随分とあのアーチャーと親しくなったんだね」
「親しくなっただ? 馬鹿言え。おれァただアイツの真意を汲んでやっただけだ。別に馴れあったつもりはねェよ」
「ホントに? ホントのホントに? 仲良くしてない?」
「そうだって言ってんだろうが。……なんだその不服そうな面は」
「いや……だって、ほら……白ひげは私のサーヴァントなのに……む~~! もういいッ!」
「?」
プイッとそっぽを向いてしまった立香。
その際に『良かった……』と静かに呟いたのを聞いたのだが、白ひげは特にそれを追求しなかった。
「……まァいい。それで他には何かやることはあるのか? オルガマリー」
「え? ええ。多分そうだと思うけれど……どうなの、ロマニ」
『ああ。そちらにはもう白ひげとマシュ以外のサーヴァント反応は見られない。後は聖杯を回収してカルデアに帰還すればこのファーストオーダーは終了だよ』
「そうか、ならさっさと済ませようぜ。こんな日も当たらねェような所から早く出て行きてェ。それに藤丸にもちゃんとした手当てが必要だろ」
「そうだね。よし、行こう!」
「……………」
「マシュ?」
見ると、マシュが顎に手を当てて何やら考え事をしていた。
「何難しい顔してやがる」
「えっ? あ、いえ。先ほどアーチャーの残した言葉が妙に引っ掛かっていまして……これからの旅路、とは……どういう意味なのかなと」
「そういえば、確かに気になるわね……」
「あれじゃない? 今後もカルデアの活動を頑張ってね的な意味合いでそれっぽく言ったとか?」
「そうでしょうか……」
「おい、色々考えるのは後にしろ。まずはアレを取りに行くんだろうが」
「はーい!」
そして一行は岩山を登り、聖杯の前まで移動する。
巨大な光の柱として高々と聳えるそれを間近で見ると、とてつもない迫力と存在感であった。
「とりあえず近くまで来ましたけど……どうすればいいんですか?」
「確かサーヴァントが触れる事で実体化するハズよ。だからマシュか白ひげがやる必要があるわね」
「そうか。だがその役目はおれじゃねェ。今回の戦いで一番の活躍をしたのはコイツだからな」
「そうだね! マシュが頑張ってくれたからあのセイバーを倒せたんだし!」
「そ、そんな……! 私なんて白ひげさんに比べたら全然……」
白ひげと立香の言葉に両手を横に降って謙遜の態度を見せるマシュ。
「若ェヤツが一丁前に謙遜なんかしやがって。年上の誉め言葉は素直に受け取りやがれ。グララララ……」
「そうそう! あ、ヤバい。また腹痛がキたァ……!!」
「ああもうまた。ほら、肩貸しなさい。というかアンタ、そんな大怪我してるのによく普通に喋れるわね……痛覚おかしいんじゃない?」
「いやァ……それほどでも」
「褒めてないわよ」
「アハハ……」
ほんわかとした雰囲気が流れる。
ミッションを全部クリアした事で、三人の心にも若干の余裕が生まれているのだろう。
―――――が。
「―――下らない茶番劇はそこまでにしてもらおう」
『!!?』
その空気は一瞬にしてブチ壊された。
そして全員に警戒せよ、という脳内からの指令が一気に下る。
「ッ! 皆さん、気をつけて下さい! 何者かが奥にいます!」
「フン……まだ終わらせてくれねェか」
気配のする方を見やると、一つの人影がある事に気づいた。しかしその正体は……、
「!」
「……え、アレって……」
「……!! 嘘……!?」
「レフ……!?」
カルデアの技術顧問レフ・ライノール教授であった。
「48人目のマスター適正者。全く見込みのない子供だからと善意で見逃してやったが……どうやら失態だったようだな」
「レフ教授!?」
「妙に声がイケボな人!」
(気のせいか……妙にリンリンのガキの声に似てんな)
『レフ!? 今レフ教授と言ったのか!? 彼がそこにいるのか!?』
事情を知らない白ひげ以外の面々が彼の存在に驚愕する。
無理もない。何故なら彼はカルデアの爆発事故によって死亡したと思われていたからだ。
「うん? その声はロマニか。君も生き残ってしまったのか。あの時管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を無視したんだね。全く―――」
「どいつもこいつも―――統制の取れないクズばかりだ!!!」
『!!!』
急に声を荒げたかと思うと、次々に罵倒するレフ。
「人間というものはどうしてこう定められた運命を受け入れないのか理解に苦しむよ。そんなものは所詮ただの悪あがきに過ぎないというのに。目障りだ。不愉快だ。何の美徳も価値もない。吐き気がする」
「抵抗など無意味なんだよ。ゴミはゴミらしくさっさと醜く無様に死に腐ればいいんだ。それが人間の本来在るべき姿なんだ。だというのに貴様らは……あまりにも愚か過ぎて笑い話にもならない!!」
「!」
「おいおい、ゴミクズだのなんだのと酷ェ言い様じゃねェか」
「―――! 下がってください! あの人は……あの人は私達の知っているレフ教授じゃありません!」
全員にそう警告し、盾を構えるマシュ。立香や白ひげも同じく彼の異常性に気づいたのだが、
「レフ……ああ、レフ!! 生きていたのねレフ!!」
「ちょ、所長!?」
「待ってください!! その男はレフ教授とは―――」
オルガマリーだけは他とは違い、マシュの制止を無視してレフの下へ駆け寄って行ってしまったのだ。
「ああ……! 良かった、本当に良かった! 貴方がいなくなったら私は……どうすればいいのかわからなった。管制室は爆発するし、こんな危険な場所には飛ばされるし、カルデアには帰れない! 寂しくて、怖くて……!」
そう弱音をブチ撒き、彼の胸元に顔を寄せるオルガマリー。
今までの高飛車かつヒステリックが目立つ態度とは打って変わり、とても矮小で弱々しい。
「やあオルガ。元気そうでなによりだ。大変だったね」
「ええ! そうなのレフ! 予想外の事ばかりで頭がどうにかなりそうだった! でもいいの。だって貴方に会えたんだから」
「そうか……」
「貴方がいれば何とかなるわよね? 貴方がいれば何が起こっても大丈夫よね? だって今までそうだったもの。今回だって!」
「……ああ。君の言う通り本当に、予想外の事ばかりで頭にクる。そう、例えば―――」
「君みたいな
「―――えっ?」
レフの発言に、オルガマリーの思考が止まる。
「え、はっ……は?」
「何だ、その間抜け面は。死んだ事で頭の回転が遅くなったのか? まァ、その不愉快さは変わらんがね。フハハハ」
「れ、レフ……?」
ねっとりと下衆びた笑みを浮かべてそう言うレフ。
「なら教えてやろう。あのカルデアの爆発事故―――あれは私の仕業だ。丁度君の足元が起点となるように大量の爆発物を仕掛けた」
「なっ!?」
『レフ教授が……あの爆発事故の首謀者だって……!?』
「……………」
「当然オルガの身体は木っ端微塵に爆散し吹き飛んだ。だが彼女はこうして五体満足で存在している。その理由は一つ、今のオルガはトリスメギストスが残した未練がましい“残留思念”であるからだ。簡単にいうと亡霊のようなものなのさ」
「!」
「所長が、亡霊って……!?」
「―――なにを、言ってるのよ……? 残留思念、亡霊……? 全く意味が分からない……だって、こうして生きてレイシフトしているじゃ―――」
「はァ……つくづくド低能かつ空っぽな脳ミソだな君は。レイシフトの仕組みを忘れてるんじゃないのか?」
「仕組みって、そんなのとうに―――ッ!!」
レフの質問に当然だ、と言わんばかりに答えようとしたオルガマリーであったが、結局それは彼女の口から最後まで発せられる事はなかった。
そう……彼女はようやく自分の置かれた状況を理解してしまったが故に、驚愕で言葉が出なかったのである。
「そうさ。本来レイシフトは使用者の魂をデータ化して肉体から分離。異なる時空間に送り込んでいる。これは言い方を変えれば―――元の肉体が
「えっと……つまりどういうこと?」
「つまりレイシフトするだけなら肉体はあってもなくても……問題がない、ということです」
「魂だけを自由に飛ばす、か。そんな凄ェ技術があるのか。おめェらの世界はおれ達よりも遥かに進んでるんだな」
「はい。でも……!」
『……そうか。だからレイシフト適性の無かった所長が冬木に……。これでずっと疑問に思っていた事の合点がいったよ』
「そんな……」
「所長……」
ガクリ、とオルガマリーはレフの眼前で膝をつく。
そんな彼女をレフは更に罵倒し、嘲る。
「そうともさ、ロマニ。この無能は自分の死を以て初めて渇望していたレイシフト適性を得たんだ。良かったじゃないかオルガ。これで君もようやく―――
「……違う。違うわよ……」
「何が違う? 優秀な魔術師の家系に産まれながらマスターになれないなんて半人前と言わずなんと呼ぶのか。ただカルデアを我が物顔にし、何も出来ない分際で私やロマニ、他のスタッフにも高圧的かつヒステリックに振る舞い、死んだ父親の背中を追いかけることしか出来ないファザコン野郎が。果てには魔術師ですらない一般人にすら劣る始末。実に空虚で無価値な存在じゃないか」
「違う……違う違う違う!!」
「現に今も!! 君は
「違うッ!! 私は、お荷物なんかじゃ―――」
「所長!」
「ッ……!! まだそんな態度を取るのかこのゴミガキが!! ならばその目でしっかりと見るがいい!! 君が生涯を捧げ尽くしたカルデアのその成れの果てをなァ―――!!!」
『「!!?」』
すると突然に空間が音を立てて裂けた。その向こう側にはカルデアの管制室にあった大きな地球型の天体を模した物体―――“カルデアス”があるのだが、それは―――
―――燃え盛るような『赤』に染まりきっていた。
次回、顕現