うわっ…私のサーヴァント、強すぎ……? 作:あんどぅーサンシャイン
―――宝具。
それは英霊の力を象徴するものであり、その者が生前に成した伝説、または功績を強大な魔力によって具現化させる最大級の切り札。
いわばサーヴァントの必殺技のようなものだ。
その種類は多く、生前に使用していた武具や技術、技、身に受けた呪い。またはその者の遺した逸話自体が宝具として昇華するケースもある。
無論切り札というだけあってその威力は凄まじく、中には剣の一振りで
なので架空の存在ではあるものの、サーヴァントとして現界した白ひげやサーヴァントと融合したデミ・サーヴァントと呼ばれる存在のマシュも例外ではなく、最低でも一個以上の宝具を所有しているものだと思い、オルガマリーは質問したのだが……、
「それが……私はまだ宝具が使えないんです」
「なんだそいつァ」
この有り様である。
しかも片方に至っては使う使えない以前に宝具の存在すら認知してなかった。
「……ねェ。マシュはともかくとして白ひげ。サーヴァント、聖杯、クラス、宝具。そのどれ一つも知らないって……アンタ本当になんなの? サーヴァントとして前提条件から欠陥まみれなんだけど」
「んな事言われたって仕方ねェだろ」
「白ひげの宝具かー。全く予想がつかないよ」
「一発殴っただけで空間ごとサーヴァントを粉砕する威力がありましたからね。おそらく宝具ともなれば―――この冬木の街さえも容易に破壊出来るぐらいなんじゃないでしょうか」
「その可能性は……………なくはないわね」
「もしかして、街どころか本当に
「さァな」
先ほども言った通り、その者が生前に成した伝承や逸話がそのまま宝具になる場合もある。なので立香の今の発言もあながち間違いとは言えないのだ。
かつて彼の世界における世界の海の治安組織―――“海軍”において元帥を務めていた男は、彼に対して、
―――勢力で上回ろうが勝ちとタカをくくるなよ!
―――最期を迎えるのは我々かも知れんのだ……………あの男は―――
―――世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!
こんな言葉を残している。
「まァ、白ひげの方は素があの強さだから心配がないにしても……問題はマシュよね」
「はい……」
「これから英雄として戦っていく以上、宝具が使えないというのは致命的よ」
「……すみません。折角サーヴァントとして復活したからお役に立てると思ったのにこの体たらく……。やはり私では、“彼”の思いには応えられないのでしょうか……所長の言う通り、ダメなサーヴァントですね。私って……」
「ああいやっ、そこまでキツく言ったつもりじゃないのよ?」
「ちょっと所長。私の可愛い後輩をいじめたら許さないよ!」
「いや、そんなことは……私はただサーヴァントとして宝具というものの必要性を……」
「いいんですよ先輩。紛れもない事実ですから……」
「大丈夫だよマシュ! あんなイジワルな所長の言葉なんか気にしなくても! 私と白ひげがついてるからね! よーし、先輩が頑張りやさんの後輩に頭を撫でてあげましょう! なでなで~」
「ひゃあっ!? せ、先輩っ! いきなりくすぐったいですよっ!」
「おーおー、一々反応が可愛いやつよのォ~~ほれほれ~~」
「せ、先輩ってば~~っ!」
「……ちょっと! なんで私が悪者みたいになってるのよ! 白ひげ!」
「しらねェしおれに当たるんじゃねェよ」
まるで姉妹のように仲睦ましげにじゃれあう立香とマシュ。
まだカルデアで知り合って数時間程度しか経っていないのにも関わらず、それなりの信頼関係を築けているようだ。
「だが、別に気にするこたァねェと思うぞ。マシュ」
白ひげがマシュに対して言った。
「おれァ海賊としてこれまで多くの人間が戦う様を見てきたが……おめェのさっきの槍女との戦いは、そこまで悪くはなかった」
「えっ?」
「もちろんまだ全然強ェとはいえねェぞ。技術も力量も足りなすぎる。ずっとそのままじゃあ呆気なく死ぬだろうな。だが―――」
「!」
「―――二人を何がなんでも守る、そんな気概を強く感じた。他人の為にてめェの命はれるヤツなんてなァ滅多にいねェ。ましてや年端もいかねェおめェみたいなガキにはな。そしてそういうヤツほど―――
「……………」
「だから自信持ちな。おめェはまだまだ強くなるぜ。いずれその宝具ってのも使えるようになるだろうよ」
「白ひげさん……」
「白ひげ……」
ポン、とその大きな手でマシュの頭に手を置く。
「ま、せいぜい頑張りやがれ。そこのマスターの為にもよ」
「……は、はい! ありがとうございます!」
さっきまでの顔が嘘のように晴れやかになるマシュ。
「へ~、あの白ひげがあんなに褒めるなんて珍しいね。もしかしてマシュの事気に入っちゃった? ん~~?」
「なんだそのうぜェツラは。バカにしてんのか」
「えへへ」
「……おれァただ好きなだけだ。今のコイツみてェに大事なモンの為に全力であろうとする。そういう若くて無様なバカ野郎がな」
白ひげの脳裏にとある光景が思い浮かぶ。
かつてこの少女と同じく、自分の実力を顧みず“強大な敵”に挑もうとせんとした男二人の姿を。
―――仲間達は逃がして貰う……!!! その代わり―――おれが逃げねェ……!!!
―――おれはおれのやりてェようにやる!!! エースはおれが助ける!!!
「でも、その為にはもっと沢山経験を積まないといけないですよね……」
「うーん、あ! ならこういうのはどうかな?」
突然立香がポン、と手を打つ。
すると彼女の口から信じられない言葉が飛び出した。
「マシュ。今から白ひげと戦えたりする?」
「……へっ?」
「はァ!?」
「何を言い出しやがるんだ、おめェは」
「あっ、もちろんガチの勝負じゃないよ。そんなことしたらマシュが死んじゃうし。特訓をつけるとかそんな感じかな」
「白ひげレベルの相手なら絶対今のマシュにとっていい経験になると思うし、宝具獲得の為にも役に立つと思うんだよね。素人の私が言うのもなんだけどさ」
「どう? 二人とも?」
「……まァ、おれァ別に構わねェが」
「いや無いわよ。藤丸、それはいくらなんでも発言が無茶苦茶だわ」
「えー。私なりに考えたつもりだけどな」
「ほら、マシュからも何か言ってやりなさい」
「……………」
「マシュ?」
「ごめんねマシュ。急に変なこと言って、もしかして怒ってる?」
マシュは思う。
確かに彼女の言っていることはメチャクチャだし、根拠も確証も何もない。もしかしたらただその場の思いつきだけで言っているのかも知れない。
―――けれど、これだけはハッキリとした確信を持てる。
「……………やります」
「へ?」
「……私、やります! 白ひげさん! どうか私と手合わせをお願いします!」
彼女は決して―――
彼女は私を信じてくれている。ならばその気持ちに応えてこそ……彼女のたった一人のサーヴァントとしてすべき事ではないだろうか、そう思ったのだ。
「ちょっ、マシュ!?」
「……おめェ、本気か?」
「はい! 少しでも得られるものがあるのなら、頑張りたいです……!」
「……………」
その瞳に迷いはなく、強い意志を見せている。
それを見た白ひげは、
「……クソ生意気な目ェしやがって。グララララ」
そう笑みを溢しながら、むら雲切の刃をマシュに向けて言った。
「少しでも泣き言ほざいたら承知しねェぞ、ハナッタレ!」
「はい! よろしくお願いします!」
そうして、白ひげによるマシュへの特訓が始まった。