うわっ…私のサーヴァント、強すぎ……? 作:あんどぅーサンシャイン
特訓、といってもその内容は至極単純だ。
互いに得物をぶつけ合い、どちらかが力尽きるか負けを認めるまで永遠に続ける。いわゆる実践型の方法を用いていた。
「フンッ!!」
「!? ぐがァッ!?」
豪腕から放たれる薙刀の一閃。
その一撃は地面を容易く抉り取ってしまう程の強烈なパワーをもち、マシュの強固な盾を以てしても完全に防ぎきることは不可能だった。
「くっ……くぅッ……はあっ!」
「ッ!!」
負けじとマシュも反撃を試みる。
しかし白ひげの強靭な肉体には、彼女の攻撃ごとき傷一つすらつけられない。
「どうした。そんなんじゃおれは倒せねェぞ」
「!?」
最初に立香が言っていた通り、白ひげは全力を出さず、ある程度力を抑えて彼女と立ち合っている。特訓とはいえ流石に本気でやってしまうと彼女を殺しかねないからだ。
しかし―――そんなハンデがあっても尚、二人の力量が雲泥の差である事に変わりはない。
「ビビってる暇はねェぞ!」
「こはッ……!」
今度は武装色で黒化した拳で盾ごとマシュを殴り飛ばす。
「ゲホッ……ゴホッ……!」
倒壊した建物に激突し、衝撃のあまり嗚咽が漏れる。
呼吸が苦しい。目が霞む。胸が痛む。
びっしょりとした嫌な汗が顔面中を伝う。
肉、骨、内臓、神経。その全てが悲鳴を上げている。
まるで心臓に直接杭を打ち込まれたかのような苦痛が全身を駆け巡り、少しでも気を抜いたら今すぐにでも意識を刈り取られそうなほどであった。
「もう終わりか」
「っ! まだ……ですっ!!」
だが、それでもマシュは必死に食らいついた。
いくら吹き飛ばされようと、いくら殴り飛ばされようとも、決して折れず、弱音も吐かずに立ち上がる。
その脳裏には、先ほどシャドウ・ランサーから言われた言葉が深く染み付いていた。
―――弱い、弱いですね貴女。とても同じサーヴァントとは思えない……。
―――これで終わりです。可愛くて儚い英霊くずれさん。
(もう二度と……あんな不甲斐ない真似は……!)
「マシュ……」
(私は……、私は……………!!)
「私は―――逃げない!!!」
「!!」
「もう一度……お願いしますッ!!」
「……ああ。かかってこい!」
「てやァァあああ!!!」
「グラララララ!」
―――そして、その刻は訪れた。
「……フン」
「ッ……!! く、は、はァ……………! コホッ……!」
「……………あれが」
「マシュの、宝具……」
「グララララ。なるほど……そいつが宝具ってヤツか。……手加減したとはいえ、おれの拳を真正面から受け止めるたァ、大したもんだぜ」
笑いながらそうマシュを褒める白ひげ。
そして満足といわんばかりにむら雲切を下げる。
「目的達成、って事でいいんだよな?」
「ハァ……ハァ……は、い……!」
そんな余裕綽々な彼とは真逆に、激しく息を切らしながら白ひげを見上げるマシュ。
限界ギリギリまで魔力を消費したのだろう。視界はぼやけ、足取りもおぼつかない。
「あっ……か、かはっ……」
「っ!? マシュ!」
「大丈夫!? ほら、しっかりして!」
離れていた所で見ていた立香とオルガマリーが彼女に駆け寄り、寄り添って肩を貸す。
「す、すみません……先輩、所長……」
「いいのいいの! それよりもさ―――」
申し訳なさそうにマシュが言うのを遮り、立香はとても嬉しそうに言った。
「やったねマシュ!! 本当に宝具を使えるようになったじゃん! すごいすごい!」
「せ、先輩……!? か、顔が近いです……」
「いいからいいから!」
「ほら、所長も何か言ってあげなよ!」
「えっ!? えっと、その……ま、まァ、そうね! 多少やり方は強引だったけど、結果的には良く頑張ったと思うし、今回は素直に褒めてあげるわ! ……………お疲れ様、マシュ」
「……あ、ありがとうございます。所長……、先輩……。これで私も、ようやく一人前のサーヴァントとして、戦う事が出来、ますね……」
「ほら、無理に喋らないの。バイタルがひどく乱れてるし魔力も枯渇しかけてるわ。少し休みなさい」
「は、はい……。あ、ですがその前に……し、白ひげ、さん……」
「なんだ」
「……ご指導ご鞭撻、ありがとうございました……。白ひげさんが立ち合って下さったお陰で、こうして宝具を発動する事が出来ました……」
「気にすんな。それよりもさっきの感覚、忘れんじゃねェぞ」
「はい……!」
マシュを休ませている間、白ひげは近くの岩に座り込んでいた。
(ったく、あんなガキの我が儘に付き合うなんざ、柄にもねェことしちまったモンだな……)
(……………おれも、まだまだ甘ェな)
「白ひげっ! なに一人でたそがれてんのさ」
「ん?」
そんな声と共に隣に立香がやってきた。
「隣いいかな? ま、勝手に座るけどね」
「いいのか? アイツの下にいてやんなくて」
「大丈夫。今は所長が見てくれてるから」
「そうか」
「……ありがとね白ひげ。私が言い出しっぺだけどさ、わざわざマシュの宝具の獲得に付き合って貰っちゃって。あの子のマスターとして改めてお礼を言うよ」
「やめろ。おれァただ頼まれたから仕方なくやっただけだ。手伝ってやる義理もねェしな」
「そうなの? ならなんで?」
「……まァ、ただの気まぐれだな」
「……ふーん? 気まぐれにしては結構真面目そうにやってた気がするけど? それにまさか
「あのタイプにはあれぐれェの起爆剤が必要だと思ったからな」
「ふーん……」
「……………」
ニヤニヤと楽しそうに白ひげを見上げる立香。
「もしかして、マシュになにか感じるものがあった?」
「……かもな。さっきも言ったがああいうヤツは個人的に嫌いじゃねェ。てめェの為じゃなく他のヤツの為に強くあろうとする……今はまだ未熟だがな。将来戦士としても人間としても良い女になるぜ、アイツは」
「随分褒めるんだね、あの子の事」
「昔似たようなヤツがおれの船に乗ってたからな。アイツも良い女だったよ」
「ふ~~ん……良い女、ねェ……」
「なんだその目は」
「……まさか白ひげ―――マシュのこと
「……はァ? おめェなに言って」
「い、いやァ~~良い女かァ。確かにマシュは可愛いし、見ての通りおっぱいも大きいからそういう目で見ちゃうのも分かるけど、白ひげとマシュじゃちょっと年の差がありすぎるし世間的にも色々問題が」
「そういう意味で良い女って言ったんじゃねェよアホンダラ!」
「まァまァ! そう無理に否定しなくてもいいよ! 世界最強の怪物とはいえ白ひげも一人の男なんだから、そういう感情があっても何も不思議じゃ」
「つまらねェ戯れ言吐いてんじゃねェよ!」
「あはは! 白ひげからかうの結構楽しー!」
「チッ、クソ生意気なマセガキが……」
思わず彼女に口々とツッコんでしまった白ひげ。
女性、しかも自分よりも二回り以上年下の子供からかわれるなんて事は彼にとってもはじめての経験だろう。
「あ、でももし仮に私だったらちょっと考えてあげてもいいよ? マシュには全然劣るけどそれなりに容姿とスタイルには自信があるから! なんなら―――」
「ねェな」
「否定!? アッサリ否定!? しかも鼻で笑われた!?」
「仮に
「ションベン臭いって、それが年頃の女の子に言う言葉かな!? 私もう16なんだけど! 法律的には結婚出来る年齢ですけど!? 子供産めますけど!?」
「そうムキになってる時点でガキな証拠だ。せめてあと10年は年を食ってから出直しやがれ」
「む、むき~~! 好き放題言ってくれちゃって……!!」
「おめェもさっきおれに言いまくってただろうが。おあいこだろ」
「私の受けたダメージの方が大きいよ!」
「知るか。自業自得だ」
「ぐぬぬぬぬ……!」
「おれをおちょくろうなんざ100年早ェぞ、藤丸」
「こんのー! ならお望み通り色気ムンムンな大人になって絶対堕としてやるんだからね!」
「フッ、期待しねェで待っててやるよ。グララララ」
「だから鼻で笑うなー!! うがー!!」
マシュの回復も終了し、再び四人は白ひげの案内で歩を進める。
そして到着したのは大きな洞窟の前―――ロマニ曰く、この冬木に異常をもたらしたとされる原因が潜んでいるであろう場所だ。
『ここが君のいう場所なのかい? 白ひげ』
「ああ。この奥からずっと嫌な気配を感じやがる……これがおめェらの言うヤツなのか? オルガマリー」
「ええ、その通りよ白ひげ……ここから漏れているこの異常な魔力濃度。間違いなく、聖杯よ……」
「なんか、ここだけ空気がどんよりしてる感じがするよ……」
「この奥に、聖杯が……」
この不快感漂う空間に、それぞれが思っている事を述べる。
そんな中、白ひげは………、
「さァ、早速行きましょう」
「そうだね。マシュ、体調はもう平気?」
「はい。バイタル、魔力共に正常です。いつでも戦えます」
「オッケ、白ひげは?」
「……………」
「白ひげ?」
「どうかしましたか? 白ひげさ―――」
とある方に視線を向けて、こう言い放った。
「―――どうやら、すんなりとはいかねェみてェだぞ」
「えっ―――」
―――その刹那。
「
16歳とはしてみたが、藤丸の年齢ってホントは何歳なんだろ……?