うわっ…私のサーヴァント、強すぎ……? 作:あんどぅーサンシャイン
謎の声がこだまするのと、それらが現れたのはほぼ同時だった。
「なっ……何よアレ!!?」
突然上空に剣や槍などといった武具が無数に出現。
しかもそれら全てが瞬く間にこちらめがけて一直線に突っ込んで来ていたのだった。
「ま、まずいッ! 皆さん! 私の後ろに―――」
「待て! 下がっていろマシュ」
「白ひげさん!?」
マシュが盾を構え戦闘態勢に入ろうとするのを制し、白ひげは一歩前に出て拳を握り締める。
「フンッッ!!!」
そのまま虚空を殴り付けて大気を粉砕。衝撃波を発生させて降り注ぐ武具を一網打尽に吹き飛ばした。
「いきなりトばして来やがって……」
「うぉー! いいぞ白ひげ! 私達に出来ない事を平然とやってのけるッ! そこに痺れる憧れるゥゥうう!!」
「アホな事抜かしてねェで離れてろ! マシュ、そいつらを敵に殺らせねェよう気を付けな!」
「わかりました! 先輩、所長。私の盾の後ろに!」
立香とオルガマリーを連れてマシュは白ひげから距離を取る。
グラグラの実の能力をフルに使う為には余計な被害を与えないよう、味方は誰一人として近づかせない事が何よりの鉄則だ。
むら雲切を構えて戦闘態勢に入る。敵らしき姿は見えない。どうやらどこかに身を潜めているようだ。
しかし見聞色の覇気を極限までマスターしている白ひげにはその様な行為など全くの無意味である。意識を集中させて敵の気配を探り、的確な位置情報を割り出す。
「それで潜んでるつもりなんだろうが―――甘ェんだよ!!」
刀身に地震のエネルギーを纏わせて振りかぶり、勢いよく縦に薙ぐ。
それは巨大な飛ぶ斬擊と化し、大地を削りながらその方に突貫。洞窟の一部分を大きくブッた斬り、派手に崩壊させた。
「あ、あんな巨大な岩がまるでリンゴみたいに……!」
「ちょ、ちょっと白ひげ! 揺れてる揺れてる! やり過ぎると洞窟ごと崩れちゃうわよ!」
「分かってらァ。だからある程度力は抑えて撃っただろうがよ」
「え、あの規模で手加減したとか、嘘でしょ……」
「でも今の一撃なら、確実に倒したよね!」
「いや、まだだ。気配が全く死んでねェ」
「―――あの数を一気に蹴散らすとは。さすがは“怪物”といったところか」
「あァ?」
その声の主は唐突に姿を表した。
これまでのシャドウ・サーヴァントと同様、黒いオーラを身に纏ってはいるが、そのただならぬ雰囲気は他とは一線を画している。
褐色の肌にみすぼらしい赤の外套。両手には対になる双剣を携え、まるで歴戦を潜り抜けてきた戦士かの如く物怖じを感じさせない鋭い目つきで白ひげ達を見据えている。
この冬木にて召喚されたサーヴァント―――シャドウ・アーチャーだ。
「あれは……!」
「ようやく姿見せやがったか。つまらねェ真似しやがって」
アーチャーと真っ向から対面し、盾を構えて再び戦闘態勢に入るマシュと余裕の微笑を浮かべる白ひげ。
それに対し、アーチャーが口を開く。
「いやはや……まさかこんな大物がサーヴァントとして現界しているとはな―――大海賊エドワード・ニューゲート。通称“白ひげ”」
「!」
「え、なんでアイツ白ひげを知ってるの?」
「真名看破のスキルでも持っているのでしょうか……?」
「いいや、私は生前この国で生まれ育った身でね。
「えぇ? ということはアイツもワンピ読者なの? 英霊なのにそれっておかしくない?」
そう、ワンピースの連載が始まったのが1997年。たかだか十数年前の事だ。彼がワンピースを読んでいたというならば少なくともそこから近い時代に生まれていないと時間軸的に辻褄が合わないのだ。
しかしその時代において、英霊として召喚されるような人物が存在したという記録は歴史上に一切存在しない。つまりは―――
『おそらくあれは僕達が生きるこの現代よりももっと先で英雄となった存在……つまり未来の時代から召喚されたサーヴァントなんだろう。過去、現在、そして未来問わず英霊は喚び出せるからね。それならば、彼がワンピースの記憶を持っていることにも説明がつく』
「そういう事だ。しかし、私がよく知る姿よりも随分と若々しいじゃないか白ひげ。それが貴殿の全盛期の姿なのか?」
「……まァな。そういうてめェは随分とみすぼらしい格好をしてやがるじゃねェか。まるで死人だな」
「死人とは言うじゃないか。まァ、あながち間違いではないがね」
厳しい言葉を浴びせる白ひげに、アーチャーはそんな軽い感じで返してみせる。
が、そんな柔和な口調、態度とは裏腹に彼の心情は穏やかなものではなかった。この状況は全くもって予想外。サーヴァントという器に果たして収まるのかどうかすら分からない様な超大物が敵として対峙している。自分はともかく、奥にいる
仮に付き添っているあの人間二人と大きな盾を携えたサーヴァントだけなら自分だけでも平気で事が足りるだろうが、そんなこちらに圧倒的有利な状況にさせてくれるワケはない。
しかし、だからといってこのままおめおめと引き下がれるほど、自分は潔い人間ではないのも事実だ。
「さて、お喋りはここまでにしよう。私にも職務があるのでね。アレに近づく者は誰であれ―――この場で始末するッ!!!」
「ッ!」
その瞬間。
アーチャーが地面を蹴って猛スピードで白ひげに肉薄。自らの得物である双剣を振り切り、肉体ごと心臓を斬り裂かんとする。
が、対して白ひげはそれをむら雲切で容易く受け止めた。
「奇襲の次は不意討ちか? 随分と余裕が無ェみてェじゃねェか」
「出し惜しみをして勝負できるほど、貴殿が矮小な人物でない事はよく知っている。天下の白ひげ相手に私ごときの全力でどこまで食らいつけるか……試させてもらおうッ―――!!!」
「クソ生意気な……上等だ。かかってこい若造!!」
そう叫びながらむら雲切を振り上げ、アーチャーを上空に高く吹っ飛ばす。するとヤツは吹き飛ばされながらも一切の動揺を見せず、今度は弓を出現させて構えた。
「次こそ撃ち落とさせてもらう!」
「またアレをやる気か」
「ッ! 来ます!」
先ほど同様無数の武具の散弾が放たれ、白ひげ達に襲いかかる。
その一つ一つが宝具に勝るとも劣らない物ばかり。並大抵のサーヴァントでは対処の仕様がない程の技と衝撃を誇っている。
しかも恐ろしい事にこの武具には際限が無い。つまり相手を確実に仕留めきるまで、攻撃が止むことは絶対に無いのである。
「……………!」
「ぐ、ぐゥゥううう……ッ!」
白ひげはむら雲切を高速でプロペラの様に回転させて弾き飛ばし、マシュは盾で防いで対抗した。
驚異的なタフネスを持つ白ひげは余裕で耐えれているが、そうではないマシュにとっては決して優しい攻撃とはいえない。盾に衝撃が走る度に苦悶の声をあげている。
(……あんな吹けば飛んじまう様な身体でよくこの猛追に耐えられるモンだ。だがあの様子じゃあ、そう長くはもたねェか……)
(それにおそらくだが、コイツの後にもまだデカい敵が控えてる。ここで無駄な体力を使わせちまうのは得策じゃねェよな。仕方ねェ)
「……おい、耳は聞こえるかマシュ」
攻撃を弾きつつ、マシュに声をかける。
「ッ……! は、はい。なんとか……!」
「ならよく聞け。俺が今からアイツに反撃して隙を作る。その間におめェは藤丸達を連れてあの洞窟まで一気に走れ。絶対に止まるんじゃねェぞ」
「えっ……。で、ですが白ひげさん。それは……」
「危険ですってか? 心配なんざ要らねェよ。それにおれの能力は周りに余計な野郎がいたんじゃ実力を十分に発揮出来ねェ。それともおめェ……おれがあんな小僧に遅れをとるとでも思ってやがるのか?」
「! い、いえ……、そういうワケでは……」
「ならグダグダ言わねェで黙っておれに従え。それになマシュ」
「―――おめェが今その力を使うべきなのは、あんな小物相手にじゃねェだろうが」
「えっ? 何を―――」
「二度は言わねェ。わかったら―――とっとと行けガキ共!!!」
「!!」
「ッ! 斬擊で返してきたか―――ッ!!」
「耐えれるモンなら耐えてみろ!」
むら雲切に地震のエネルギーを纏わせ、アーチャーのいる方角に打ち放つ。それは先ほどとは比べ物にならないほどの威力で、数々の武具は弾くどころか衝撃の波に飲み込んで跡形も残さず消し飛ばし、空間すらもねじ曲げんとする勢いと風圧でアーチャーに迫っていく。
仮にこの一撃を空中ではなく地面に向けて放っていたのなら、間違いなく大地を大きく真っ二つに斬り裂いていただろう。
「!!!」
急いで回避行動を取ったアーチャーであったが―――それに至るまでの思考が遅過ぎた。
辛うじて直撃は防いだものの、その斬擊の余波まではかわすことが出来ず、肩から腰にかけての右上半身を一気に刈り取られてしまった。
サーヴァントは霊核を破壊されない限りはある程度肉体の損傷を受けても行動は可能だ。とはいえそれでも四肢の一つを欠損したのは相当な痛手である事に変わりはなく、また彼のようなシャドウ・サーヴァントは通常のサーヴァントよりも全てにおいて劣るジャンク品的な存在な為、自己回復や霊体化といった手段が使えず、英霊としての能力以外はほぼ普通の人間と変わらないのだ。
「クッ……、当たっていないのにも関わらずこの被害……、わかってはいたが、なんという恐ろしい能力だ……!」
「グラララララ……耐えてみろと言ったろう。だが多少の加減はいれたとはいえ、
「中々やる、か……褒められている気が全くしないなッ!!」
そう吐き捨て、アーチャーが再び白ひげに仕掛ける。
片腕を失った分、彼自身の技の精度や手数は大幅にダウンした。しかし彼には『投影魔術』という上記のハンデを余裕で補える術を持っている。
これは先ほど白ひげ達に二度に渡って披露した攻撃の正式名称で、頭の中でイメージしたものをそっくりそのまま複製し、本物とほぼ同じように使用することの出来る魔術だ。これを使えば例え剣による攻撃を防がれても、至近距離で武具を投影させてそのまま高速で発射しブチかますといった戦法が可能。
回避や防御の時間を与えずに思うがまま連擊を叩き込める、まさにチートに近い技と言えよう。
「グラララララ……小癪な真似ばっかしやがって。だが―――面白ェ!!」
「ッッッ!!!」
「白ひげさん……!」
「マシュ、行こう」
「先輩、ですが……」
「心配いらないよ。だって白ひげは泣く子も黙る世界最強の海賊なんだから。あんなヤツに負けるなんてありえない」
「……………」
「私はそう信じてるよ。ね、所長?」
「え、私!? えっと……え、あっ、そ、そうね! 私もそう思うわ。というか、あんな化け物サーヴァントに勝てるヤツの方がそうそう思い付かないわよ」
「所長……」
「それにせっかく宝具を使えるようになったんだよ。こんな中途半端な場面じゃなくて相応に見合った所で初披露した方がなんか映えるじゃん。ストーリー的にも絵面的にも」
「映えるってなによ。そんなの今考えることじゃないでしょう」
「まァまァ所長。そうやって細かい事気にしてると禿げますよ」
「禿げないわよ馬鹿!!」
「痛いッ!?」
「ったく、隙あらば余計な一言を挟むんだから……。それで、どうするのマシュ」
「…………はい、決めました。先輩や白ひげさんの言う通り、私は私の戦うべき場所に行こうと思います。彼が私を信じて送り出してくれるのなら、私も同じように彼を信じたいです」
「……そ。ならそれでいきましょう」
「よし、それじゃあ三人で聖杯を取りにいくぞー!! えい! えい! おー!!」
「お、おーー!! ですッ!」
「全くもう……お気楽なんだから」
立香の後押しでようやく決心がついたようで、マシュはアーチャーの相手を白ひげに任せ、立香達を連れて洞窟へと走っていく。
(頼んだよ白ひげ! あとずっと言いそびれたけど、この戦いが終わったら……絶対私と契約してよね!)
その様子を攻撃をいなしつつ遠目に確認した白ひげは、これで邪魔者はいなくなった、心置きなく能力が使用出来る、と心の中で呟き、ニヤリと笑みを浮かべた。そんな彼にアーチャーが問いを投げる。
「マズイのではないか? あの者達を先に行かせてしまって」
「何がだ」
「惚けは要らん。この奥にいる存在とあの出来損ないのサーヴァントでは
「……………」
確かにな―――と白ひげは思う。
見た事はないにせよ、アレほどの雰囲気を放てるのは疑いようのない“強者”の証だ。つまり実力も相応に持っているに違いない。
アーチャーの言葉通り、特訓によって宝具が使えるようになったとはいえ、今のマシュでは勝つことは相当難しい。それどころか最悪何も出来ずに殺されてしまう可能性だって十二分に考えられる。それほどまでに、戦闘前の段階で両者の間には大きな差があってしまっているのだ。
―――だが、
「……………グララララ」
「ん?」
「グラララララ!!! ハナタレ坊主が随分と知ったような口を叩くじゃねェか!!! やっぱりまだまだそういうところはヒヨッコなようだな、おめェは!!」
「……何だと?」
「確かにおめェの言ってる事は何一つ間違っちゃいねェ。今のアイツじゃあ十中八九その野郎に敗北するだろうな。それァおれも同感だ」
「っ、ならば尚更―――」
「けどそりゃあ―――
「!?」
「いいか若造。一つだけ教えておいてやる」
「―――窮地に立った人間の爆発力ってのァ、どうにも油断ならねェモンなのさ」
そう言い放ち、白ひげは拳を構えた。
「さて、余計な野郎はいなくなったな。これで少しは―――本気が出せそうだぜ」
すみません。リアルな諸事情で投稿がいつもより遅くなってしまいました。そしてネタが、ネタが悲しいくらい浮かばない……。
小説投稿って、難しいな……。