うわっ…私のサーヴァント、強すぎ……? 作:あんどぅーサンシャイン
長い通路を渡り、洞窟の最深部にたどり着いたマシュ一行。
その途端、大きく息を吞む。
「どうやら、白ひげさんの予感は当たっていたみたいですね」
「え、ええ、そのようね……。けれど、こ、これが大聖杯……!? こんなの超抜級の魔術炉心じゃない……! なんで極東の島国にこんなものがあるのよ……」
『資料によると、この大聖杯の制作はアインツベルンという錬金術の大家、魔術協会に属さない、
「フッ、正直嫌~な雰囲気めっちゃ漂ってるけど、私達が手に入れる初めての聖杯としては、この上なく相応しいじゃないの。さーて、お願い事は何にしよっかな~ねーマシュ?」
「せ、先輩。そんな悠長な事を言っている場合では無いですよ……」
目の前にドンと大々的に存在する大聖杯を前にし、それぞれが思い思いの感想を述べる。
この冬木の本来の歴史を大きく捻じ曲げ、人間を滅ぼし、街を火の海に変え、永遠と広がる地獄絵図を引き起こしたその最たる原因。大聖杯。
これを回収する事で歴史の歪みは修正され、特異点は無事消滅。カルデアの面々は元の時代に帰還し、任務は終了となる。
「モタモタしている時間は無いわ。早速行きましょう」
「はい。所ちょ―――」
―――だが、その刹那。
「「「ッッ!!!?」」」
空気が凍り付く。
まるで蛇―――いや、大蛇にでも睨まれたかのような唐突な威圧感が全身を一気に蝕み、声にすらならない悲鳴が三者同様に漏れる。
「―――――」
岩山の頂上。そこからマシュ達を無言で見下ろす黒い影が一つ。
「アレは……?」
死人の様に白い肌。綺麗な金髪。冷徹な目つき。
まだあどけなさの残る整った顔立ち。
しかしその端麗な容姿にそぐわない、禍々しさ溢れる漆黒の鎧と剣を纏い、所持している。
「お、女の子……?」
「いいえ、あれはサーヴァントよ。そしておそらく……、あの大聖杯の所有者……!」
『魔力反応を検知……うん。白ひげほどでは無いにせよ、今まで出会ってきたやつとは比べ物にならない程の強大さだ。正にラスボス、といったところだね』
「……!」
そんな圧倒的オーラを放つ女性騎士のサーヴァント。
するとマシュは、彼女の姿を見やると共に自分の中にどうともわからない謎の感情が込み上げてきたのを感じた。
(何かおかしい……。彼女とは初対面のハズなのに、そんな気がしない……。むしろ、親近感のようなものさえ感じる……一体どうして……?)
「―――――違うな」
唐突にその黒い騎士が口を開いた。
「うわ喋った!? さっきから私達を見てもずっと無言だったのに!」
「別に声を発する必要が無かった故な。案山子に徹していた」
淀みのない清澄な声が洞窟内に響く。
「先ほどから感じる身震いするような気配の主は―――お前達の内のどれでもないらしい。アーチャーと交戦中か。だが……」
一息置いてマシュを見る。
「そこなる少女よ。貴様も中々におもしろい力を持っているようだな」
「え? わ、私ですか?」
「ああ、不思議と
「敵意を感じ難いって……何言ってるのよ」
「マシュ。アイツの事なにか知ってる?」
「い、いえ。私は何も……ですが、彼女の言葉は私も同感です」
「どういうこと?」
『うーん、おそらくマシュと融合した英霊が彼女と関係のある人物だったんじゃないか? だとすれば両方の話が通る』
「ほう……そうか。貴様は私と旧知の英霊なのか。もしそうだとするならば―――この手で必ず殺す必要があるな」
「な!?」
フッと軽く笑みを溢す。
そして地面に突き刺すように携えている剣を持ち替え、揚々とマシュに向けた。
「聖杯を求める者よ。おのが願いを手にしたくば全身全霊を以て奪い取ってみせろ! この私―――“セイバー”、アーサー・ペンドラゴンからな!」
高々と名乗りを上げ、セイバーは頂上から降りてマシュ達と同じ地面に着いた。
「!!!」
『アーサー!? 今、アーサー・ペンドラゴンと言ったのか!? あの誉れ高い騎士王伝説の主人公! まずい! だとしたら、あの剣は―――』
ロマニが言い終える前に、セイバーが口を紡ぐ。
「構えるがいい星見屋。貴様等の覚悟がどれほどのものなのか―――この剣で確かめてやろう!」
「ッッ!! 来ます!!! マスター!!!」
セイバーが叫ぶとともに突撃。マシュがそれに同じく声をあげて盾を構え、迎え撃つ態勢に入る。
まるでショットガンのような爆発的加速。二人の距離が一気に零地点まで縮まる。
「はァッッ!!」
「グッ……!!」
セイバーの剣とマシュの盾が激しい音を立てて激突する。
威力は互角……というワケにはならず、最初の一撃はセイバーに分が上がった。更に剣を押し込みマシュを吹き飛ばそうとする。
「! く、ぐゥゥゥ……!」
なんという剣圧の重さだろうか。
辛うじて耐えてはいるがジリ貧だ。腕からは骨の軋む音が聞こえ、両足が地面にめり込んで後方に下がっていく。
少しでも気を抜いたら間違いなくトんでしまうとマシュは改めて思った。
「ほう……タフだな」
「この程度では……倒れません!」
「よかろう、ならば―――ッ!」
「!?」
瞬間、セイバーが消える。
否、超高速でマシュの背後に移動したのだ。しかしマシュにはその行程が見えなかった為、いきなり姿を見失った事で間の抜けた表情になった。
「どこに……カハッ!!?」
「がら空きだ!!」
強烈なセイバーの
さすがにガードが間に合わず、モロに食らったマシュは身体がくの字に曲がり、地面に這わされた。
「マシュ!!」
「が、がはッ……、け、蹴りを……?」
「フン。剣だけがセイバーの攻撃だと思ったか? 短絡的だな」
そう吐き捨て剣を振り上げるセイバー。
「ハァッ!」
「―――!!」
それを間一髪で避けるマシュ。
そのままの勢いで立ち上がり、背部に走る痛みを堪えつつ盾を力強く薙ぐ。
「やァッ!!」
「フン」
再び互いの得物がぶつかり合い火花を散らす。
すると今度はセイバーはつばぜり合いはせず、目にも止まらぬ連擊を繰り出してマシュを追い込む戦法を取り始めた。
「どうした? 守ってばかりでは勝てんぞ?」
「まだまだ……、貴女を倒して、私は聖杯を必ず取り返してみせる……! 仲間の為にも……!!」
「仲間だと? ……笑わせるな。そんな
「!!!」
――ゴミクズ。
そんなセイバーの口から発せられた暴言に対し、マシュは少しだけ眉をひそめた。
「……それはどういう、意味ですか」
「そのままの意味だ。仲間などというものはただの邪魔者でしかない。煩わしく、汚らわしく、不愉快極まりない。目的を果たす上での害にしかならん。それが弱者であれば尚更だ。守るべき価値すらない」
「ッッ!!」
「仲間なんていう下らない馴れ合いに興じているヤツなど、無様に死んで終わりだ。―――
「!?」
『なっ!? なんで彼女がその事を知ってるんだ!?』
ロマニは驚いた。
つい先ほど起こったカルデアの原因不明の爆発事故。それを知っているのは自分や立香含めて内部の人間のみのハズなのに。
まさか……と嫌な予感に駈られる。
「おっと、少し喋り過ぎたな……まァいい」
「忠告してやろう、マシュとやら。仲間なんていうものは即刻切り捨てるがいい。そんなものに気を取られていてはいつか我が身を滅ぼすぞ」
「……………そんなの」
「?」
マシュは言い返す。
「―――仲間がただの邪魔者だなんて……そんなの、私は思いません!!!」
「なに……?」
「先輩、所長。カルデアの職員の皆さん。そして私に力を託して下さった名も知らぬの英霊方……。死ぬハズだった私に優しく手を差しのべ、地獄の淵から救い出してくれた。もう一度人間として立ち上がり、戦う為のチャンスをくれた。私にとっては、そのどれもがかけがえの無い大切なものなんです! それをゴミクズや邪魔などと罵るのは……彼らや彼らの行為そのものに対する最大の侮辱です!! そんなことは、私は許さない!!!」
「……………」
自分がいるのは皆のおかけだ。誰一人として欠けてはならない。だからこそ、仲間というものは大切なのだ。守らなくてはならないのだ。
マシュは嘘偽りなく、心からそう思って答えた。
「マシュ……あの子」
『うぅ……、僕らの事をそんな風に思ってくれていたなんて、やっぱりいい子だなァ……』
「ぼんどうだねぇ~~ざずがわだじのごうばいだよォ~~」
「って、なんで泣いてるのよ貴女達……」
彼女の言葉を聞いて思わず感動にうちひしがれる立香とロマニ。それを見てやれやれと微笑を浮かべるオルガマリー。
しかし、セイバーだけはまるで苦虫を噛み潰したような表情でマシュを強く睨んだ。
「―――そうか。それが貴様の定見か。ああ、なんとも――吐き気がする下劣な答えだ!!!」
「!!!?」
怒りを込めた一撃が、盾を弾き飛ばした。
そのままマシュを斬る―――かと思いきや、手を伸ばして彼女の顔面を鷲掴みにし、そのまま乱暴に地面に叩きつけたのだ。
「うがはッッ!!?」
「ああ……! まさかこんなにも他人の言葉で憤慨させられるのはいつぶりか……。それもこんな戦闘のせの字も知らないヤツになァ……!」
セイバーは彼女に対して深く嫌悪感と苛立ちを覚えた。
「救いがたい……! なんという救いがたさだ貴様は!! いいや……貴様と
「ッッ!! アーサー王! 貴女は一国の王として多くの臣下と共に生き、彼らと共に数々の武功を為し遂げ、英雄となった方です。ならば仲間という存在がどれほど大切で尊いのか……私に言われなくとも、なにより理解しているハズでしょう!!」
「ッ……黙れ! 星見屋の犬風情が知った様な口を叩くな! 確かに私は生前は貴様の言う通り仲間というものを強く信じていた。だが……ヤツらはそんな私を裏切り、国を裏切り、あまつさえ守るべきハズの民草さえも裏切った!!」
セイバーは怒りのままに吠えた。
かつて選定の剣を抜き、ブリテンの王として君臨した彼女。そこから最期を迎えるまでに自分の身に降りかかった不幸、災厄の数々はまさに筆舌に尽くしがたいものばかり。
そんなサーヴァントとして復活を遂げた彼女が出した結論だった。
「―――今思えば、あの頃の私は愚かで無知だったのだ。あんな連中に背中を預け、共に国の平和と秩序を保とうなどという幻想を抱いてしまったのだからな」
「だが、世の中には上には上がいるな。
マシュを持ち上げる。
「たかがド素人な寄せ集め集団の
「!!?」
「マシュ!!」
セイバーの膝蹴りがマシュの鳩尾に深く突き刺さる。
五臓六腑に衝撃が走り、吐瀉物をブチ吐きながら激しく地面を転がった。
「あ、がご……ごばァッ……!」
「マシュ! マシューー!!」
「あっ!? ちょっと、待ちなさい!」
『駄目だ藤丸君! 行くんじゃない!!』
マシュが予想以上に打ちのめされている姿に我慢できなくなったのか、立香は二人の制止も聞かず彼女のもとに駆け寄る。
「マシュ! 大丈夫!? ああ、血が口からいっぱい……」
「せ、せん、ぱい……。だ、駄目です……近くに、来ては……」
それを冷たい目で見下ろすセイバー。
「フン。貴様も難儀だな。そんな役立たずのサーヴァントに頼るしかないのだから」
「……役立たず? マシュが?」
「そうだ。ろくに戦えもしない分際なのに仲間だのかけがえの無いだの口だけは一丁前。それを役立たずと言わずしてなんと呼ぶ? 雑魚は雑魚らしく早々に死んでいればよかったものを。まァ、そんなゴミクズをサーヴァントに選んだ貴様らも似たようなものではあるがな」
「……………」
人間は、本当に激怒している時は声を張り上げず、また表情にも出さないのだろう。
まるで可哀相なものを見るかのような視線をセイバーに向ける。
「ふざけるな。あの場にいなかったクセに……この子がどんな思いで私をマスターに選んでくれたのか知らないクセに……、マシュやカルデアの事を偉そうに語るなよ。このクズ野郎」
「!」
「お前みたいなヤツにマシュは負けない。私はこの子のマスターとして……最後まで諦めずに信じる! いいや、私だけじゃない……! 所長も、ドクターも、白ひげもだ!! わかったかバカ!!」
「……なるほど。サーヴァント共々、聞き分けの無い愚図だったか」
そう言い、セイバーは剣を高々と振り上げた。
「ならばその血迷った思考を是正し、現実に引き戻してやろう!! よく見ておけ!! 目の前で、自分のサーヴァントが無惨に死ぬ姿を―――!!」
「!!」
「!? せんぱ―――」
ザシュッッ!! という鋭い音がその場にこだまする。
ポタ……ポタ……、
「! 貴様―――」
「ッッ!!!」
『そ、そんな……!!』
「あ、ああ……、ああああ―――!!」
「いやああああああああああああああああああ……………!!!」
「―――――がフッ!」
セイバーの剣は―――マシュをかばった立香の身体を貫いていた。
セイバーをオルタらしく更に闇堕ちさせてみました。賛否両論あるかと思いますが所詮は素人の浅知恵なのであまり深く考えず『こういうのもあるのか』程度に思っていただければ。