「私、芸術は苦手でした」
--みほちん------------
新「艦娘」グラフティ7
第5話<演奏技術習得計画>
---------(第18部)---
「ふう」
廊下で、ため息をついた。
「手探りだが少しずつ前進するしかない」
制帽を被り直した私は講堂へと向かう。
(少なくとも響の腕前は確かだろう)
歩きながら、こうなった原因を考える。
『艦娘ニヨル演奏技術習得計画』
それは数年前に発令された。機密性は皆無だ。
だが計画の運用が始まると脱落者が続出した。
そのような状況下でも響は特訓に耐え抜いた。
そしてこの計画の語感が妙にソソラレるのだろうか。ことある毎に各方面からは誤解を受けた。
(まぁ青葉とその周辺が面白がって不必要に煽った影響もあるが)
それに、この計画の発端は私にも原因がある……そう思った瞬間、私を呼ぶ声がする。
「司令かぁ~ん」
後ろから手を上げて走って来る駆逐艦がいた。
「吹雪か」
立ち止まると、ちょこまかと走り寄って来た彼女が追い付いた。
「これから響さんの所ですか?」
「あぁ」
吹雪は少し恥ずかしそうに言う。
「あの、同行しても宜しいでしょうか」
「構わんよ」
「ありがとうございます!」
律儀に敬礼する。気のせいか会議の時よりも砕けた感じだ。
私たち2人は並んで改めて講堂へ向かう。
吹雪が聞く。
「司令官、響さんは何処で楽器を覚えたのですか?」
「アア、海軍立案の計画があってね」
「計画?」
不思議な表情の彼女。
「そうか、アレを知らない子も居るか」
「アレ?」
私は説明する。
「ここに楽団を作るに当たって技術習得の為に何人かの艦娘を欧州へ送ったンだ」
「あ、あの時の選抜ですよね」
(知っていたか)
「私も行きたかったけど」
頭の後ろに片手を廻して恥ずかしそうな顔をする彼女。
「やっぱり私、芸術は苦手でした」
テヘッと少し舌を出して肩を竦める。駆逐艦らしい仕草だな。
「確かに何人か送った中でもソリストの域に達したのは響だけだったが」
私は慰めるように言った。
吹雪は目を輝かせる。
「響さんって凄いですね」
「あぁ」
そんなやり取りをして居るうちに私たちは講堂の入口に到着した。
「どうぞ」
駆逐艦が私に先立って扉を開けた。
中では響が舞台に立って軽やかにヴァイオリンを弾いている。
「ヴィバルディか」
恐らく「四季」の主旋律だ。
ここはホールでは無く鎮守府の講堂なので音が不必要に反響する。
だが、さすがは響だ。芯の通った存在感の有る演奏を聴かせてくれる。
(まるでイタリアのそよ風のようだな)
そんな煌(きら)めきが彼女のヴァイオリンから紡ぎ出されていた。
舞台の手前には折り畳みイスが並べられて数名の艦娘達が聴いていた。
六駆の面々に、駆逐艦娘。それに最近、着任した海外艦だった。
「ほわぁ」
吹雪も小声で感嘆の声をあげた。
舞台のソリストは暗譜なので眼を閉じていた。流れるような軽い弓運びには、何となく慣らして奏でているような印象を受けた。
それに恐らく彼女の演奏は譜面通りではい。各パートから主旋律を中心に適宜、即興でアレンジしているのだろう。
やがて、一つの楽章が終わったらしい。同時に艦娘達の拍手喝采。
「凄いのです」
「なかなかデスね」
賛美の声に響は漸(ようや)く眼を開けて軽く会釈をした。
ただ無表情なのは、いつも通りだった。
彼女は改めてヴァイオリンを構えると暗譜のまま次の曲を奏で始めた。
今度はバッハのブランデンブルグ協奏曲だった。
再び豊かな音色に満たされる講堂。
だが先ほどの協奏曲とは趣(おもむき)の異なる曲想だ。講堂の響きを確認しているのだろうか。
(ここで練習している曲はロシア限定じゃ無いんだな)
私はふと、そう思うのだった。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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