「優くん、大ファンです。ハグしてもらえませんかぁ?」
「あ、はい……」
「やったぁ嬉しい、愛してます。これからも応援してるから、頑張ってね?」
「あはは……ありがとう……」
ロサンゼルスへと帰って来てから三日経過した。
羽田発の飛行機はテレビ局が用意してくれたロサンゼルス行きの普通の便。その飛行機のファーストクラスで帰って来たわけだが空港についたら色々と大変でした。一言で言うならニューヨーク以上に
帰ってきてからの事について一から順に話したいのだが、ぶっちゃけ困り事はナンバーツーはこれ。
「握手してもらえませんか……?」
「はい……。応援ありがとう……」
「嬉しいです……! ありがとうございます! 大好きです!」
字面だとモテモテだろ? これ皆男なんやで。
私より一回りも大きい、筋肉モリモリマッチョマンの変態が腰をくねらせて握手とハグを求めて来てるんやで。
おかしくない?
何故?
私悪いことした?
どうして?
どうしてホモくせぇ男からモテないといけないんだ? 日本で言った男にモテろってそういう意味じゃねぇよ馬鹿、どうして性的な意味になるんだよ。
若い頃のショワちゃんやドゥェインジョンソンのような男がノッシノッシ歩いてきて、ハグをせがんで手を差し出すんだ。そしてこいつらやっぱり手の力がおかしい。腕なんて丸太のように太い、胸筋もパツンパツンである。
抱き付かれられたらもう恐怖でしかない。ちょっと良い匂いするのも悔しい。
良い身体してるんだからもっと男らしく、いや女らしくになるのか? なよなよしないでハキハキ話せや。
ファン故に無下に扱う事も出来ないのも、胃がやられる一方である。物理的にケツを狙われている訳でないが精神衛生上宜しくないのが困り事一つ目。
二つ目の前に、例の性的搾取問題は長らく引っ張った結果、世界と日本は何とかなりました……が完全に鎮火は出来てません。
日本の方は火種は小さくなった、テレビ中継が効いたのかはわからないが同様に男のホモくせファンが増えた。
っていうかこっちの方が頭が悪い、SNSでエゴサしたところ私のケツの穴の話をしてたのでガチだと思う、もう暫く日本には行かん。
残ってるのは真に女性嫌いな男と私のアンチ。まぁあとは知らん、母数減ったから無視である。アンチ零の全肯定ご都合主義になるわけない、ファンタジーではないからね。
さてさて問題は世界、というかアメリカロサンゼルス。
ロサンゼルスは二つに、いや九対一くらいに分かれた。多いのは反マスキュリズム。正直外を出歩けるのかと不安であったが、前世の女性によるデモ宜しく男性による暴行はない。専らこの世界で暴行を行うのは女性であるのが起因するだろう。
正直油断は出来ないがロサンゼルスはお膝元。制作会社からの通達で無視でとの指示を頂いているので、私は無視する。私は、だが、私の教徒が許すかな。
とまぁ世界情勢はこんなことろ、目下の話題を無視すれば無事映画も公開できそうで何よりである。
三下の捨て台詞のような冗談はさておき次に日本のテレビ局だが、私がドラマ出演やテレビ出演があったときは他局でも収録が行われることになった。受けるかはさておき他局も撮影する権利をもらった訳である。
これは客観的に見てテレビTKが独占を手放したことになるが、風の噂ではお国のなんちゃら省から独占し過ぎはいけませんよと遠回しに言われたらしい、これは大本営発表である、戦略的撤退である。
要は今回のでちょっと、がっぽり稼ぎ過ぎちゃったとのこと。
今回で作られた私のテレビTKへの貸しは優先的に収録して欲しいという扱いで撮影を行える立場にする、ということに落ち着いたが今までの付き合いがあるのだからそれくらいは、というところではある。まぁ無くなった物は抱えなくても良くなったので肩の荷は降りた。
個人的にボロクソ言ってくれたコメンテーターに笑顔で手の平ドリルかよと突っ込みを入れたいが出禁になりそうなのでやめておこう、第一に暫くはゆっくりと過ごしたい。
そして困り事ナンバーワン。土産楽しみにしてたミラーシャとアンジェ。
アメリカへ入国の翌日、制作会社のリラックスルームで人の顔を見るなり土産は? と言ったミラーシャと何食わぬ顔でおかえり、土産は? と言ってたアンジェリーナ。
お土産のことなどすっかり忘れ去ってしまっており、ヤベッと汗をかいたのと共にベッド云々忘れてて良かったと安堵した。
今回の件を制作会社に確認する際に、電話口で二人が彼女らなりに真剣に情報収集と火消しに回ってたのかを聞いて二人のそれが冗談なのだと理解している。
買うのを忘れていた件について、埋め合わせとして個別にデートを求められ、それは二つ返事で引き受けた。
アンジェが12月24日、ミラーシャが1月7日。12月24日はクリスマスイブで理解できるが1月7日はなんぞや。まぁ二人ともセッティングするとの事なので楽しみである。
私はクリスマスにはケンタッキーが食べたい、アメリカにその文化があるかは知らん。
さて当の私はそれまで暇である。収録も無い、仕事があるわけでもない、趣味という趣味があるわけでもない。何かしてないと本当価値のない生活を送ってるなと自棄になりそう。
そういえば最近髪が伸びてきていた。家にある鏡で確認すると肩に触れていた髪は今では肩甲骨くらいまで長くなっている。正直、前世から言わせてもらえれば丸坊主にしたい、ソフトモヒカンくらいまで刈り上げたい。
繁々と自分の顔を見るが中性的な出で立ちを通り越し6:4から人によれば7:3で女性寄り。
お高いリンスのお陰か黒髪は艶っ艶であるし水平に切り揃えられた前髪は和人形を思わせる。分かりやすく言えば女装物の男の薄い本位出てそうな顔、初月くんとかそこらへん。前世なら女装物コスプレで天下取れた。
しっかし自分でもエロい顔してるなぁと見るが、自分の顔なんだよな。自分の顔で性的興奮はしない、生まれたくてこの顔であるわけでもなく、自分でキャラクリしたわけでもない。
ナルシストではないのだが、エロ同人やCG集に居そうな顔だとちょっとこう、ね?
因みに、海外ではむだ毛を処理するのはエチケットというかマナーである。そして私も勿論処理している、方法はブラジリアンワックス。上も下もツルンツルン、初回はどちゃクソ程痛かった。泣きそうになるほど痛かった。
そして冒頭で説明したムキムキの男性が女の様にくねくねしたりする理由、それは女装はオシャレであるという価値観が浸透しているからと思われる、決してホモなわけでは無いと思いたい。
前世で女性が男装をするようなものだ。逆に一般的に女性による男装は変態という烙印が押されている。男装女子をメスへと分からせ物、良いのにな。
男装ではないが前世の男のようなボーイッシュ女子は問題なく存在する、代表的な例がアンジェリーナだろう。
彼女は女性の象徴たる胸が大きいだけで顔付きは完全にボーイッシュのそれ。ミディアムストレートの髪型だが毛先を遊ばせて胸を張る様に立てば身長の高さと脚線美、腹筋と相まって今世では実に女らしい。
女らしさは前世の男らしさとは強さの表れであり、それに近づけるボーイッシュ系女性は人気のビジュアルテーマ位置に居座っている。
なのに彼女は中身初心であり、そのことのギャップが個人的にはたまらないのである。
それに対を成すような美しい系も存在しミラーシャが該当するだろう。
強さよりも男性を受け入れるような包容力を強調させる出で立ちもビジュアルテーマとして中間に位置していたが彼女の手によって上から数えた方が早いまでに押し上げられている。
包容力という強さと対成すものでありながら高い人気があるのは当の本人の中身はパリピの皮を被った脳筋野郎だったから。
片手で腕立て伏せってなんだよ、逆立ちして片手で支えるって何だよと突っ込みを入れたくなる彼女の所業。彼女の腹筋を撫でさせて貰ったのだが板チョコもびっくりなくらいバッキバキだった。
蹴りでバットをへし折るのもおかしい。
個人的には縦線があるくらいが好きなのだが、どうして周りの女はゴリラなのか。
もう少し脂肪をつけてまな板といっても過言ではない胸に還元してほしいところではあるが、本人の前で言うとサンバだかマンボだかという格闘術をかけてくる、本人は一応少しは気にしてるらしい。
しかし需要はしっかりとあり、二人の人気は凄まじい。間違ってもこの映画は私で支えてるんだわなどとは言えないし言うつもりはない。皆で出来上げた代物である。
すまん、一作目は正直思ってます。皆で作ったけど、あれ私が脱いだからじゃね?って思ってます。
さて何の話だったか、そう私の髪の話。
煩わしいので後日切りにいかないと行けないだろう。
であれば今日は何をするか。
こんな日は昼間から呑むに限ると私の肝臓が訴えている。昼間から酒を呑んで酔っぱらえるという至福の時間、前世では考えられない。精神的に疲れてるから、呑んだくれて爆睡したい、そんな気分。
クラフトビールの缶を開けると、脳汁と唾液が出る音が聞こえる。開いたそれを口につけてチビりチビり呑みながらパソコンのカーソルを滑らせた。馬鹿みたいに酔いたいときは馬鹿になれるコンテンツに限る。
選ばれたのは、vtuberでした。
馬鹿って言ってごめんなさい。違うんです、vtuber総統閣下が馬鹿なのではなくて何故性癖が未発達なのにお前ら居るんだよって意味です。
小説は二世代前のサイトで、エロゲだって純愛しかないのにどうしてvtuberなる者が居るのか、これがわからない。
一応調べるが前世のvtuber程稼ぐ者も居なければスパチャも中々飛ばない、あまり開拓できてない証拠だろう。
取り敢えずなんだ、色々言うとするならば。
男同士の絡みはてぇてぇくないです、ただのホモです。
狂ったように流れるてぇてぇコメントに白い目を向けるのは私だけ。若干私によって狂わされつつあるvtuber界の猥談はシコシチュ語りではなく好きな体型であったが、その対象も男。
語れるほど性癖が無いのだから仕方無い、生み出してはいるが全て私に対してなのはよくない傾向だ。第二、第三の私も現れて欲しいところである。
そして男が男の好きな体型を話してるのは何も面白くないです、だがそれがいい。
現実から逃げるためのお酒のツマミにはそんな目を背けたくなるくらい雄臭い物でいいのだ。
視聴ページを開くと画面の中央に赤い髪の男と、保育園で働いてそうなお兄さん、角生えたオスガキ、男性教師が現れた。とてもキャラクターが濃い。
『最近良いなぁって思った人いる?』
『小生はぁ……やっぱり優くんであるな』
『『『わかるぅ』』』
「わからんで良い」
『もう、再認識した。マジイケメン、小生は優くんになら舐められても構わない。寧ろ小生がしゃぶりたい、金払うから舐めさせて欲しい』
『優くんって意外とこう、さ。押しに弱そうだよね』
『押し倒したら潤んだ目で見て来そう』
「ちょっと、やっぱり本当に頭おかしいなこいつら」
正直男の娘なら全然あり。女装してドチャクソ可愛いのもイケる。ガチなのと掘られるのは勘弁願いたい、あと口に入れるのもちょっと……。
イカンイカン、馬鹿過ぎて酒が捗る。でも…………こいつらに赤スパ投げたらどんな反応するだろうと、脳内の悪魔が囁いてしまう。
アカウントにクレジットカードを紐つけてスパチャをぶん投げてみる。
「SNSで投稿…………っと、五万行ったれ」
彼らのコメント欄に赤いチャットが表示された。
『わ、凄い赤スパありがとう』
『えー……ロサンゼルス住みの俳優(ほんもの)さん』
『え゛?』
『ははは。冗談だろ冗談』
『私ノンケやぞ? SNS見てみ、だって』
『えー………………黒木優公式アカウント投稿30秒前!! 私はノンケやぞ!!』
『終わったあああぁぁぁ!! ま゛あ゛あああぁぁぁぁ!!』
『なんで!? なんでなんでなんで!? なんでこんなの見てるの! こんなのッ!!』
『い、いえーい。優くん見てる?』
『こら! こら!!』
『認知されたあああぁぁぁ!!』
「……くそおもしろ。追い銭しよ」
そうして、ちょっぴり投げ銭に沼ってしまうのは別のお話。クリスマスまではこうしてゆるりと過ごしていたい。