男と女の貞操観念が逆転した世界では男女の役割や単に性的な価値観が逆転しただけではなく男女比の乖離も見受けられる場合もある。
一対十、一対百と従来の一対一からかけ離れている世界は男性という存在ステータスに値段のつけられない希少価値を与える。
しかし悲しいかな、人間はカタツムリではない。繁殖には男性と女性が必要となる。
繁殖の為、踏まえて人類存続の為、男女比が狂った世界では男性というだけで特別な扱いを受けるだろう。
一方で男女比の乖離は女性への正しい男性との距離感への理解、及び適切な性知識を与えることを阻害する場合も多い。
女性が幼年から男性と接する機会が無ければ、年頃になったとしても適切な距離感や接し方が理解出来ないのではと考える。
本や映像の記録の中にしか住んでいない男性と会って、どうして年頃の女性は同性と同様に接することが出来ようか。
また男性比率が著しく狂った世界で男性へと与えられる希少価値は時に枷ともなるだろう。
籠の中の鳥、一対十五の世界ならば……籠の中の鶏? そんなに作って出るわけないだろ。死にたくないからチキってしまうわ。
おほん。そもそも女性が中心となっている世界では基本的に有権者は女性となるわけで、男性に基本的な人権があるかも怪しい。それが先ほど述べた枷にも繋がる。
男女比が違うなら尚のこと、性行為や男性が一人となる自由行動、はたまた自由恋愛や異性交流も制限されるのではと考えてしまう。
年頃の男性諸兄に分かりやすく言えば簡単にはシコれん。
仮に自由恋愛や異性交流が強制されるのであれば、好きでもないブスと子作りしなければいけない展開もある。絶対ある。
希少な男子に美女を宛行う余裕のある環境や試験管ベイビーを作る環境があるのならまだしも、男女比に違いがある世界での自由恋愛は選ぶという観点から生産性の低い行動と見なされるのではないだろうか。
いやぁ色々
男と生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見るハーレム。かくいう私もハーレムを築きたいと一度は思った事もあるが、そんな世界でのハーレムはディストピア。牧場にいる家畜と変わらない。
ん……? 顔面偏差値が超絶高い女が超絶ブスになる世界、美醜逆転世界も忘れるな?
今のブス…………えーと、顔面偏差値がX軸とネンゴロな女性を見ろ、性格が神ってる女は多いのか? つまり、そういうことなのだ。
幼少期からの外見に対する周囲の環境はその者の性格を形成すると個人的には思う。
ブスに性格がいい子が居ないとは言いません、だけどトラックとキスして転生するにはちょっとリスキー過ぎやしませんかね。
そもそもそんな世界でモテるには自分がクソブスじゃないとモテないし。
つまるところ男性比に乖離がなく単に貞操観念だけが逆転したこの世界は、縛られる事もなく割と好き放題出来る幸せな世界であるということ。
因みに私は男女比が違う世界の物もスコである、貞操逆転チョワヨー。性価値観逆転チョワヨー?
ではでは、そんな話題が何の話に繋がるかと云えば、そういう面倒なデバフのない世界で四年に一回見ていたオリンピックでの女性同士の健全な試合、競技内容はエッチなのか、否かって話よ。
前提としてオリンピックはスポーツマンシップに準じた真剣勝負、勿論ポロリもない。そんな試合なんて邪な視点で見ようという発想がそもそも沸かなかった。
もっと分かりやすく言えば股間にうんともすんとも響かない訳である。
女性の競技水着に対して性的興奮を覚える者が見る水泳などの特殊性癖は勿論除く。
で、この世界におけるオリンピックの試合はエッチなのか。
スポーツマンシップに則りスポーツマンシップとエロスが勝負した結果、勝利したのはエロスであった。エッチ万歳。
だが前世での女性競技者の競技にエロスを感じたかと言われれば、答えは否。微塵も感じない。
この世界のオリンピックも協競技内容に差異はない。
前世では酢豚のパイナップル同様、おかずには適さない存在にも関わらず性的興奮を覚えることができるがこの差はなにか、大多数の頭に浮かんだ答えは布面積であろう。
女性が肌を晒すことに対する羞恥が前世より少ないためか、機能的な性能を求め選手たちの服装、布面積も変わっている。
今日はそれを説明する…………が、いつも布面積や服装ばかりでごめんね。オリンピックはそれくらいしか違いないんだわ。
あ、別にパンツは脱がなくていいです。
布面積の話から始めればそもそも第一に身体を動かすと云う事に対して一番機能的な服装とは何か。ジャンプした時に足を防護するための靴やら衝撃を逃がす用途のサポーターが云々はさておき、正解は全裸ではなかろうか。
流石に全裸で露出するのは犯罪。その為、この世界のオリンピックの女性の衣装は競技で指定されている柔道着や競泳水着を除けばスーパーハイレグのパンツと腹出しアメリカンアームホールのトップスという競技服である。
上下一体型もあるが中には乳房を隠す程度しか覆っておらず、下乳丸出しの胸下で見切れているトップスを着る者も居て健康的な腹部やプリケツ部は丸見え。
全員がそのような格好をしている競技大会は一周回って企画AVのようであるが、見麗しくスタイルの良い欧米、欧州各国の外人美女のスーパーハイレグ集団はとても扇情的。
これの起源がギリシャなんてゼウス神はとってもスケベなんやなって、日本も負けていられんね。
日本人はどうなのかって……? 同じ格好してるけど、いや、まぁ……外人女性ってだけでエッチやん? ステータスやねん。
ほら、日本人のアスリート女性はさ、なんか……見え方の偏差値的にね? なんかブス多いっていうか…………。ぶっちゃけ中国や韓国人の方が可愛い人多いよね。
因みに競泳水着は水の抵抗を防ごうとする意図から海女さんなのかって感じの全身水着であり、扇情的ではない。ビーチバレーは別。
柔道着? 聞くな馬鹿。何も見えんわ馬鹿、投げ飛ばすぞ。
ごほん。そして何よりハイレグ、まぁ……谷と云いますが割れ目にグイっと食い込むらしく下腹部の生地と素肌の隙間に指を入れてジャストフィット食い込みに直す仕草が結構な頻度で見受けられる。
自然に行われるその行為も堂々とお目見えすることが無かった故に、それがまた新鮮かつ生々しくてエッチである。
それでいてスジポジションチェンジはチンポジションチェンジ的な扱いなのかと言われればそうでもない。
扱い的にはズボンの向きを直すとか服の乱れを直すとかそんな感じかと思われる、ズボンの正面が斜めを向くってあまり無いが?
それと服の中の汗の熱気を服の端を揺らして逃がす行為。お茶の間に映し出されるテレビで男性競技者が遠慮なく行っていたように女性競技者も行っている。
そうするとどうなるか。揺れるんだな、パイが。おっぱいが。
乳は脂肪。そんな脂肪をも削り鎬を削るアスリート選手であるが、スカンジナビア半島の西海岸宜しく断崖絶壁な選手はあまり居ない。つまり必ず膨らみはある。
外人美女はそんな胸部を隠す布地を引っ張り、パタパタと揺らすわけだ。揺れない筈がない。
まさにその光景はおッぱいぷるんぷるーん。閣下でなくても鉛筆をへし折り机に叩き付け叫ばずにはいられない。
日本人……?
勿論エロいのは夏季だけな、冬季はエロくない。流石にこんな世界でも雪山で薄着にはならない。
因みに男性は陸上競技でも競泳水着のような全身タイツで競技している、センシティブ対策だね。
◆◆◆◆◆
男女の貞操観念が逆転した世界で中世時代をモチーフとした場合、女性が履くのはスカートなのでしょうか。
その際、私はズボンを着用し気高さや逞しさを前面に押し出した令嬢説を提唱したい。
男女の貞操感が入れ替わるということは男性と女性の「公」と「私」の役割も現実とは逆転しているということ。
女性が血統や爵位、財産、職責を受け継ぎ政治や社会の主軸を担う一方、男性は家庭や共同体において慎み深い美徳、貴族社会においては貞潔を保つことが最上の価値とされるのではなかろうか。
恋愛や結婚の場でも女性が主導権を持ち、求婚や贈り物、告白も女性側から行われるのが通例。男性はその身と名誉を厳しく守られ、貞操や名節を汚すことは一族の大きな恥と見なされる。
それが私の考察する貞操逆転世界の中世世界観である。
まず前提として、スカートを女性的であるという発想自体が貞操が逆転していない世界の考え方。
しかしながら裾をヒラヒラさせた服装が優雅さはさておき、凛々しさや逞しさを感じるかと言われれば首を傾げてしまう。
であればピチッとズボンを履いた俗に言う男装令嬢のような装いこそが凛々しさと逞しさを感じる。
性格も同様、慎ましくなった男性をリードするような王子様気質な貴族女性が溢れる。
しかしそれを男装令嬢と称してしまうのも世界観を損ねてしまう。
何故ならば男性の装いをしている令嬢という概念は、貞操観念が逆転していない世界にしか生まれない。
では男性はスカートを履いているかと問われれば、それも難しいところ。個人的には女好きのノーマル性癖なので女装男子はパスしたい。
どちらにせよ貞操観念が逆転した世界というのは単純であるようでいて妄想のネタに尽きないのである。
貞操観念逆転はいいぞ。もっと流行らせていけ。
◆◆◆◆◆
「おはようエンジェル諸君」
「「「おはよう監督」」」
新居への引っ越しは本人の意思に関係なく滞りなく進んだ。
場所はほぼ変わらず旧住所から少し移動しただけのロサンゼルス郊外の住宅街、そこに新築したピカピカの一軒家。
生活圏内が変わらないのは大変素晴らしい事である。しかしながら新居を挟む両隣の土地の所有者のケツを各々札束でひッ叩き、同じく家を建てて引っ越してくるのはパーソナルスペースの侵害だと思うんですよね。
住居を簡単に買うな馬鹿と庶民精神が抜けていないこちらとしては思うのだが、別荘的な感覚でポンポン買うのは普通のことらしい。金持ちって凄いな。
そして引っ越しも落ち着いた頃、次の作品の打ち合わせということで制作会社に呼び出された我らズッコケ三人組。
打ち合わせ室には監督の他、高いスーツを着た制作会社の偉い方も居た。
「今日君たちに来てもらったのは次の次の作品の件で大幅な変更があってね、まぁそこまで重要なことじゃないわ。失敗したら続編が出なくなるくらい?」
「んー……? 相当ヤバい?」
「話す話題と部屋の雰囲気が合ってないじゃない……?」
「珈琲片手に話す内容じゃないと思うんだが?」
「ジョークよ監督ジョーク、ここはジョークアベニュー」
ミラーシャとアンジェが疑問を口に出すが御尤もである。
「私達の会社の名前がここまで広がったのは貴方達が主演の作品のおかげ、そして素晴らしい演技のおかげだからね。私達も役員も足を向けて寝られない訳なのよ」
向けられるのであれば羨望の眼差しとケツだけで結構である。私は足フェチではない。
「知ってると思うけど前作は原作のナンバリングで言うところの七で、三と四の間のお話。映画は次は四の撮影になるんだけど、原作のままで行くと優君が開幕離脱するのよね。それも六では動いてましたってなるんだけど……次の作品は四と六のハイブリッドで行くわ。撮影場所も同じ場所」
「次のナンバリングが成功したら五かな? どんな話なんだっけ」
「三人で色々あって大団円ね」
実に今まで通りである。
「会社と私の考えは映画は六作品目をもって最終章にする。八を映画化することは絶対にないわね」
「IF展開で関係性は一から、三枚看板のリュドミーラは居ないし、お約束になっているセクシー要素はなし、おまけにBADEND。今こんなの映画化したら暴動よ暴動。オリジナル展開で日常みたいなのを映画化した方がまだファン受けもいいわ」
原作の八番目のナンバリングは一から七までがバイオレンス要素はありつつも良作の漫画に君臨する一方で、八だけは拭き心地の悪いトイレットペーパーや公式が勝手に書いた同人誌という扱いを受けている。
まぁ映画化しないのならネタバレしても構わないか。
アンジェが演じる殺害を伴う依頼を受けず不殺を心掛ける何でも屋女性と、私が演じる見敵必殺で拷問すら行う殺し屋男性が相容れずともパートナーとなるのが二、一はそれの顔合わせであり、前日譚。
八は一のIF展開であり、パートナーにならない世界を描いたもの。
ひと悶着、ふた悶着の後の最終場面で二人きりになった男女だが女性は男性を殺すことを決意し、男性に馬乗りになり手で絞殺。その殺害が彼女の人生に黒い影を落とし、別ベクトルで忘れられない存在になるという内容。
姦しく和気藹々としていた一から七、その続編として発表された真反対な作者の性癖開示フルスロットルな内容にその評価は荒れに荒れた。
個人的に男性が女性を曇らせる展開、大好物である。ファンタジーの世界で不死になってたら仲良くなっては死んでを繰り返すロクデナシになる自信がある。
女性を曇らせる展開と水面下でギスり合う展開から得られる栄養は、世界から戦争を無くす力を秘めている。
しかし性癖のきのこたけのこ、純愛過激派とNTR過激派は今日も戦争をしているからイーブン、世の中から争いは無くならないのであった。
私がNTR保守派閥であればNTRのラレ側は最後まで無自覚であるべきと、NTR世論を纏めるのだが。
そんなニッチな性癖をお持ちな作者とは良い酒が飲めそうではあるが、実際のところ関係性リセットはちょっと趣味ではない。アンジェとミラーシャ、二人にとって大切な存在になった今くらいで呆気なく死んでガッツリ曇らせておきたいところ。勿論妄想の中でのお話だ。
そんな事を頭のなかで考えていれば目の前で行われているのは次作の撮影についての打ち合わせ。具体的な時期や場所まで説明されていたようで若干置いてけぼりである。
後ほど確認しなければいけない。
「ってことで撮影場所はフロリダ、マイアミに行くからね、準備しておいて」
「あー……初マイアミなんだけど、何が有名?」
「デッカいビーチよ。だから、水着買っておいてね。皆の視線を釘付けにするようなやつ」
オゥイエス!! セックスオンザビーチイエス!!
映像やインターネット越しの画面しか存在を確認していない外人水着を生で確認できるのは実に喜ばしい。この世界ではこちらが目の保養になる対象であるが知った事ではない。
その言葉を聞いた瞬間、二人の視線が交差してギラつき始めたのは見なかった事とする。
◆◆◆◆◆
「ねぇ監督」
「あらどうしたの? まだ何か気になる事でもあった?」
作品の終着点が見えた打ち合わせのあと、帰路につこうとする二人を外に待たせ監督へと話し掛けた。
会議室には私と監督の二人きりであり、製作会社の重役も既に席を立っている。
六作品で構成される映画で世界にはエロスを、性癖を生み出し続ける。
だが一つだけ、その作品群ではどうしても生み出せない性癖があった。
それは私が一番好きな性癖であり、シチュである。
この世界に来てエロスの先駆けとなり、突っ走ったその性癖の集大成とも言える物。
「全部終わったら映画を作りたいんだよね」
決して終わりではなく、それもまた新たな道へと踏み出す一歩になる。映画の撮影が残すところ二作品で終わるとはいえ、そこで立ち止まるわけにはいかないのだ。走れエロスというわけだ。
「どんな内容なの?」
「プロットはね。ある日起きたら世界の男女の役割、性的な価値観が180度変わっていた。男性が働き女性が家を守り、女性が子供を育て、性犯罪は男性が起因とするのが当たり前。男性が有権者となる世界で、女性の社会進出も少しずつ進んでいる、今の男と女の性価値観や労働状況、常識の全てが真逆の世界で」
「それで?」
「その世界に、元の世界の性価値観をもった二人の女性が迷い込む。色んな男性に求められる二人は最初は物珍しさから楽しさと興奮を見出だすけど結局は何故その世界に迷い込んだのか、何をしたら良いのかわからなくなる。あとはホームシックかな? 歪な体験をした自分の理解者が欲しくなる。でもそんな時にとある男性と出会う」
「ふむふむ」
「二人はその男性が彼女達の元の世界に居る男性の雰囲気を纏ってるのを感じ取り、その世界で愛を深めていく、なんてのを考えてるのだけど」
監督は目を閉じて聞き込んでいた。そこまで言うと、少しの思案のあと彼女は口を開いた。
「んーだめね。ラブコメは総じてハッピーエンド。男性一人と女性二人なら片方は結ばれないし、男性を増やすか、それならいっそ付き合わないで友達以上恋人未満のままで居続けた方が見る側が都合良く想像出来るわね」
「うーん、ごもっとも。耳が痛いなぁ」
勿論その役者はアンジェとミラーシャで考えている、その男性役は勿論私だ。
悩みに悩んだが彼女らどちらかの手を取ることを選べずにいて、故の苦肉の策であるが流石は監督。甘い考えはばっさり切り捨てられる。
本当に耳が痛い。
「それに設定の割りにはキャラクター設定が漠然としているのもナンセンス。でもまだまだ荒いけど世界観の発想は面白いわ、可能性はあるわね」
「例えば?」
「二人の女性がいた世界をA世界、逆転した世界をB世界だとして男は元々Bの世界の住人だった。でもある日A世界に来てしまい、またある日にB世界へと戻ってしまった。そしてB世界で迷い込んだ二人と出会うとか。あとは三人揃ってB世界に行くとかね」
「わぉ」
彼女の話した内容に心臓が飛び跳ねかけた。
だがしかし、こちらはプロ俳優、それを表情に出すようなことはしない。
「少しSF要素が絡みそうだけど、設定的には現実世界の方が楽しそうね。何より想像欲を掻き立てられる。いいわねぇ……性の価値観が違う世界って」
「前向きに検討してもらえるって事でいいの?」
「えぇ、その世界の設定とかを文字にして持ってきてもらえる? 諸々仕上がったら上の人のところに持ち込みましょうか」
今日から少し寝不足になることが確定した瞬間だった。熱が冷めない内に書き起こさなければいけない。
「因みにタイトルは決めてるの?」
「邦題でだけどね、決めてるよ。昔のLe Voyage dans la Lune、って映画あるじゃない。映画の始まりとなった映画? その邦題タイトルをオマージュして、この作品が新たな文化の始まりになってほしいって考えてるタイトルがあるんだけど」
「あら、そこまで決めてるのね。何ていうタイトル?」
「貞操逆転世界旅行ってどうかな?」
貞操概念が逆転した世界で私は貞操観念逆転を広める。
貞操観念逆転はいいぞ。
貞操逆転の学園物に手を出してみました、対戦よろしくお願いします。