一般人が元勇者パーティのベテラン戦士になったら   作:森野熊漢

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サブタイトル名書いたときに、そして伝説へとつながりそうって思ってしまった。


ゴブリンクエスト3

作戦会議は割とすんなり終わった。

まあ、何故か俺が名乗った時にざわついた気がするんだが、気のせいだと思いたい。

あのボスですら、「お、おう……?マジ……?」と呟いてたように思うが、さすがボスなだけあって、すぐに気を取り直して話を続けてくれた。

ローゼル様からも「義兄さん……」と憐みの目を向けられたんだけど、何がダメだったのだろうか。お兄さん、ちょっと納得いかないよこれぇ!

そんなこともあったけど、私は元気です。

ちなみに、作戦会議の結果、俺とローゼル様で件の場所への偵察へ行くことになった。ゴブリンたちは既に何回か向かったことはあるものの、ほぼ毎回平穏無事とはいいがたい結果らしい。だから危険を冒してまで依頼を出しに行ったというのも納得ができる。

 

「義兄さん、準備は出来てます?」

「ああ、とりあえずは」

 

荷物らしい荷物は特にない。いつも通り装備は身に着けているし、それ以上のものはローゼル様が持ってくれている。

というのも、魔術師だからという謎の理由で問答無用に道具袋を奪われたと思ったら手元から消えていた。何が起こったのかわからなかったし、今でもわからない。きっとこの世界の常識だろうから、下手に突いて俺がグラフさんじゃないということがバレる方が怖い。

 

「じゃあ行きましょうか。確かここからしばらく歩くのよね」

 

目指すはゴブリンの拠点から山頂を目指す途中にあるらしい。

行けばわかるとのことなのだが、詳しく教えてくれなかったのだが何故なのだろうか。

何かシャーマンと自称しているゴブリンがめちゃくちゃ唾を飛ばしながら場所と、持っていた札について力説していたのだが、彼が関係しているのだろうか。

そんなことを考えながら歩いていると。

 

「……ここね」

「……ここだろうな」

 

謎の札が大量にばらまかれている開けた場所が見えた。

きっとシャーマンが必死にばらまいたのだろう。効果のほどはわからないが、目印としては役に立ってくれていた。

 

「何もなさそうだな」

「……ええ」

 

念のために剣を抜いて、その場所に踏み入れる。

割と広範囲に札がばらまかれており、この空き地一帯を囲むようになっている。

まるでこの中に閉じ込めようとしているかのようである。

 

「……義兄さん!」

「ああ」

 

ローゼル様の叫びに、気のない返事を返しつつ、背後に剣を無造作に降る。

 

グシャア、という何かが潰れたような音。

振り向いた先に音もなく背後に立った何者かの倒れ伏した姿がそこにあった。

自然とローゼル様と背中合わせに立つ。続々と音もなく地中から何かが現れる光景がそこにあった。

 

「……これが例のゾンビ、ですね」

「だろうな」

 

数にして二十ほど。しかし、それは地上に這い上がってきた数であり、まだ続々と地中から出てこようとしているのが見える。

 

「背後を取られたらマズいです。離れないでくださいね」

 

すごく頼りになる義妹様に心中で滂沱した。お兄ちゃん、成長を見られてうれしいよ。

なお成長する前を知らないけど、そこのところは今はどうでもいいよね。

 

「まずは……Fウェーブ!」

 

熱波がゾンビを襲い、燃え尽きていくゾンビ。しかし、燃え尽きた後には新しいゾンビが這い出てくる。

ちなみにローゼル様は技名だけを叫んでいるのだが、本来なら魔道士が術を発動するときにはもっと長ったらしい詠唱をしないといけないのだとか。それを一言に込めて放てるローゼル様は規格外の力量を持っているとかどうとか言うのを、エーミルさんがこそっと教えてくれた。ありがとうエーミルさんの知恵袋。

 

「Fフレーム!Fフレーム!」

 

燃えては這い出て、燃えては這い出てを繰り返す。

どうやらゾンビは際限なく出てくるようであり、ローゼル様がこのままずっと続けていてもいずれジリ貧になるのは目に見えた。

なので、動くことにする。

 

「ローゼル、クイック準備。自分にかけろ」

「……!? は、ハイ! クイック!」

 

補助をかけ終わったのを見て、剣を腰だめに構え、足に力を込め始める。

このクエストに出る前に、エーミルさんにグラフさんの技を聞き、時間がない中ではあったが、出来るようになった技を試すことにする。

 

「俺の後に続けよ」

「はい!」

 

そんなやり取りをしている間にもゾンビは迫る。もはや目の前でその腐った両腕を振りかぶり、こちらに叩きつけようとしたところで。

 

「……閃!」

 

横なぎに剣を振るうと同時に足の力を前方移動のために解放する。

目の前のゾンビは、耐久がそこまで高くないのもあってか、上半身と下半身がきれいに分離し、地に着く前に消滅し。

 

俺の移動した範囲にいた、後続のゾンビも同時に分離し、消滅をしていた。

 

消滅した先からまた這い出てきてはいるので、すごく気持ち悪い光景が目の前に広げられているのは仕方ないと思うしかないか。

まあ、俺の予想通りなら、今はこれ以上戦う必要はないとは思うが。

 

「義兄さんでもダメだなんて……!」

「まあダメではあるが……とりあえずは大丈夫だろう、見ろ」

 

ゾンビは再び群れを成して俺たちの元へ殺到するが、とある地点を境にして、消滅をし始める。

その場所というのが。

 

「お札……ですか」

「まさかあのシャーマンが本物だったとはな」

 

あの札が、さっきのシャーマンが撒いた封印だったのだろう。通りで力説していたわけだ。

 

「なるほど……ですが、これなら特にもう私たちが関与する必要もないのでは? 封印されているならもう問題ないでしょう?」

「いや、そうもいかないだろう」

 

おそらく、というかほぼ確実にあの結界は破られるだろう。

遅かれ早かれ、だ。

 

「とりあえず、みんなのところに戻ろう。ゾンビの出現傾向と対策を考える必要がある」

 

あのうさん臭いと思ったシャーマンが一番力を借りないといけないだろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「お前ら、無事だったか!」

 

アジトに戻るやいなや、ボスに迎えられた。

場所と起きたことを簡潔に話し、メンバー全員と話す時間を設けてもらえるよう頼んだところ、快く頷いてくれた。

一旦休んでからにしよう、ということで重い防具を外してから手ごろな空間に腰を落ち着ける。

ローゼル様も魔力の消費が激しかったからだろう、文句も言わずに俺の隣に腰を落ち着け、ため息をついていた。

 

「疲れたか?」

「……そうね、さすがに」

 

なんとなく訊いてしまった俺に、律義に返してくれた。

見ると、壁にもたれて半分目が閉じかかっているローゼル様。

 

「今のうちに寝ておけ。時間になったら起こす」

「……ん」

 

こてん、と。

腕に頭を預け、ローゼル様が寝入っていた。

頭の位置を調節し、首が痛くならないようにしてやっていると、近くに二人ほどのゴブリンが毛布を持ってきてくれた。

礼を言って受け取ると、そっと離れていった。

おそらくボスが数ある中で綺麗なものを持たせてくれたのだろう。

少し汚れはあるものの、酷くはないそれを掃ってローゼル様の肩から羽織らせようとするものの、上手くいかない。

ならば、と思い、頭をゆっくり膝に下ろし、極力変なところに触らないように気をつけながら身体を仰向けにしてやり、毛布をかけてやる。

 

「……後で怒られるかなあ」

 

まあ怒られたときはそれはそれで仕方ないと諦めよう。

変な体勢で寝て、調子を崩されるよりはよっぽどいいだろう。

俺自身も後に備えて、気は張りつつも脱力し身体を休めることにした。

こんなことしたことはないのだが、休むコツをグラフさんは身に着けていたらしく、エーミルさんに話を聞いて試したことで出来るようになったのはありがたいものだ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

兄さんの肩にもたれかかったところまでは覚えていたのだが、気が付けば仰向けに寝かされ、頭が膝の上にあるという状態だった。

ぼうっとした頭でそれだけを理解する。

 

「……起きたか?」

 

義兄さんが私が起きたことに気づいた。

頭に優しく手を乗せ、撫でてくれているのが気持ちよく感じる。

 

「ん……」

「まだ時間はある。まだ寝ていてもいいぞ」

「うん……」

 

そう言ってくれたから、ありがたく再び目を瞑る。

寝ぼけているようにここまで振舞えたのは、我ながら偉いと思う。

 

(待って待って待って!? 義兄さんの膝枕!?)

 

ただ、内心はそうでもなかったのだが。

頭は完全に状況を理解し、若干覚醒している。それどころかオーバーヒートを起こしかけている。

顔が熱くなっているのがわかるんだけど、バレてないわよね!?

 

(あ……毛布もかけてくれたんだ)

 

毛布をかけるために寝かせてくれたのか、と理解する。

それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのだが。

 

(これは……たまにはいいわよね)

「う……ん……」

 

寝入ったふりをして、義兄さんのお腹の方に寝返りをうつ。

義兄さんのにおいや温かさを顔で感じる。

 

(なんだろう、すごく安心する……)

 

義兄さんのことは正直苦手だった。

魔術師はいらないと、にべもなく騎士団に入ることは断られ続けた。

いくら訴えても、義兄さんは顔色一つ変えることをせず、淡々と切り捨てられた。

その頃あたりからだろうか。義兄さんが苦手という意識が怒りに変わり始めたのは。

ずっと義兄さんに勝てたら入団を認めてもらうという条件をつけて喧嘩を吹っ掛け続けるものの勝てることはなく。

そんな日々が続いたある日、義兄さんの雰囲気が変わった。

いや、()()()()()()()()()()()()といってもいいだろう。

頑固一徹だった義兄さんが影も形もなくなったかのよう。

本人は今までと変わりないように振舞おうとしているのはわかる。

実際、その努力があって騎士団の人にはほぼバレていない様子である。

気づいているのは、エーミルさんくらいか。あの人は勘がいいし。

しかし、隠しきれていない部分が今までになく優しいのだ。

言葉、表情、態度。

これまでの義兄さんの言葉を借りるなら「甘さ」が出ているのだろう。

実際、騎士団長という立場にしては致命的な甘さが戦闘訓練にも見え隠れしていた。

だが、私はそれを好ましく思っている。

義兄さんが、私の知っている義兄さんに戻ってきた感じがして。




最後すごく適当になった感じがするので、気が付いたら追記されてる可能性があります。悪しからず。
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