一般人が元勇者パーティのベテラン戦士になったら 作:森野熊漢
なので途中から久々に手を付けた部分もあるので結構無理やりなところもあったりなかったり。
まあ待ってくれてた人がいるのかも不明なわけですが。
「Fボール!Aボール!」
「……む」
盾で飛来する属性弾を振り払う。
「Sボール!Wボール!」
先ほどと違う属性弾を半歩踏み込むことで避ける。
今日持っている盾は金属製とのことで、電気を通してしまうとのことでこのように動いている。ちなみに昨日の盾は何らかの絶縁体が含まれているのか、電気を通さないものだった。知ったのはさっき。グラフさんがきちんとそのあたりを配慮した装備をしてたことに感謝した。
「Hウェーブ!」
間髪入れず襲い来るのは熱波。おそらくヒートウェーブだからHね。
というか、おそらく波系魔法使い続けられるだけで俺負けそうなんだが。
盾で防いではいるけど、下手したら少しは食らうぞこれ。
まあその分、向こうも魔力とかを大幅に使うと考えると、そこまで連発できないと考えて良いだろう。
「Iウェーブ!」
氷混じりの冷気の波。引き続き盾で防がざるを得ない。
先ほどの熱波と違い、バシバシと盾に当たり音を立てて氷が砕ける。
「クイック」
ギリギリ聞こえた。次に繰り出してくる攻撃につながる布石になる術の名前。
どう動いてくるか、なんてのは相手しかわからない。だから俺は。
「うっそ、また防がれる!?」
自分の勘を頼りに身体を反転させ、盾を突き出した。そこには昨日と同じく毒針を突き出した姿勢のローゼル様。
昨日と違うのは俺が回避ではなく、防御したというところ。だから。
「……」
「!? あっ!」
横なぎに盾を振り、針を弾き飛ばし距離を詰め、ぶつかる直前で制止。
「参り、ました……」
「ふむ、とりあえず今回はこんなものでいいだろうか」
盾を背負い、弾き飛ばした針をローゼル様に返却すると、むうとむくれていた。
「今日のは決まったと思ったのに、簡単に対応されたのは悔しいわ」
「まあなんとかってところだがな」
自分でも驚きだったのだが、どうやら俺はグラフさんに憑依したとかではなく俺の身体ごとこちらの世界に来ていたらしい。最初にこちらで気づいたときには気づかなかったのだが、どうやら俺の一般人身体能力でもこちらの世界では騎士団隊長レベルに匹敵するようである。
仮に俺の世界にグラフさんが移動していたとしたら、一般人レベルに収まってしまうということになるのだろうか、とか考えたけど、俺にはどうしようもないから早々に考えるのをやめた。
「義兄さん、そのなんとかってところをきちんと教えてほしいんだけど?」
「そういっても、勘としか言えないんだが」
これは本当だ。ただ、一般人レベルの勘ですらこちらでは通用するようになってるあたり、助かっているが。
「むうう……」
「むくれないでくれ……本当のことしか言ってないんだから」
ぽんぽんと頭を撫でながら言うしかない。割と撫で心地が良いため、癖になってしまいそうである。
「まあ、義兄さんが今はそういうことにしときたいならそうでいいけど。でもいつか教えてよ?」
「いや、教えるも何も今全部言ってるんだが」
またまたーという反応をされた。え、俺そんなに信用ないの?
……ないな。グラフさんの振りしてる時点で嘘ついてたわ。
「そういや今日もその針使ってたんだな」
「あ、うん。ちゃんと危険はないようにしてるし」
そう、この間使って来た毒針であるが、なんとアレは致死性の毒が込められていたとかではなく、軽度の痺れ薬だった。ソースは俺。
いや、さすがに目の前でローゼル様が自分に毒針を刺して証明してきたし。持っていた毒針全部をエーミルさんにも確認してもらって痺れ薬ってわかったし。
正直毒針云々より、証明のためと言って自分に毒針を打つ姿を目の前で見せられた俺のメンタルを心配してほしかった。唖然としたし。
「さて、今回はこれで終いだな。戻るとするか」
「そうね……義兄さん、明日もやりますからね!」
笑顔でそう言い残すとローゼル様は走り去っていった。なんだろう、昨日よりもだいぶ雰囲気が柔らかくかなったのだが、いつどのような理由でそうなったのかがわからない。
「……いや、さすがに一般人に毎日相手させるのは酷だと知ってほしいんだけどなあ」
ただし一般人と言い出せないため、相手に自分が一般人ということを気づいてもらわないといけないという条件がつくので、望みがかなり薄いことに涙しているのが現実である。
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部屋に戻った俺を待ち構えていたのは、
「討伐、ですか」
「ええ!そうですよ!」
とってもいい笑顔で一枚の依頼の紙を持ち込んできたエーミルさんだった。
どうやら俺のいるところは、近隣の討伐依頼などを請け負うことなどもしているらしく、度々掲示板にそういったものが張り出されている。騎士団を抱えているってのでそういったことをしているのはなんとなく理解できるものの、それが自分に直接回ってくるなんて考えていなかった。
「しかし、そういうのって普段掲示板に貼られてるものですよね? 何故俺に?」
ざっと見る限り、貼りだされているものとそう大差のない依頼だったように思う。だからこそ、俺に直接持ち込む理由が見当たらない。
「隊長もこういう仕事があり、どのように達成するかを知っておいた方が良いと思いまして」
「……はぁ、そりゃそうでしょうけど」
「……隊長が考えてそうなことはわかるので、先に聞きますね。今の隊長がいきなり重要人物の護衛だったり、高ランク設定されている討伐任務などを回されて、自信をもって受けられますか?」
「無理です、なるほど全て理解しました」
つまりは、軽めの仕事で雰囲気を掴む機会をくれたということだろう。
しかし、逆にこういうので「グラフさん」としての立ち居振る舞いとかが崩れて周りにバレてしまわないだろうか。
「ああ、そんな心配そうな顔をしないでも大丈夫です。しばらくは私も同行するようにしますし」
「エーミルさんが? しかし、それって大丈夫なんですか?」
「ええ、視察も含めて軽めの依頼を私と隊長が受けているということにできますので」
それって、実質俺のお守りをしながら騎士団の仕事ぶりを見るってことじゃないか。エーミルさんが過労で倒れないか心配になってきた。原因の俺が心配するのも変な話だろうか。いや、おかしくはないか。
「わかりました。ああ、それとなんですが」
ぺらっともう一枚持っていた紙を見せつけてきた。
「ローゼル様が隊長の隊に入りたいと正式に申し込みされてまして……」
「はあ、そうなんですね」
「……どうします?」
いや、俺に聞かれても困るんだが。俺は別にいいと思ってるよ。最初こそ棘のある接し方をされたけど、今は割といい子だと思ってるし。
「……じゃあ今回はお互いにお試しということで加わってもらいますね」
なんでエーミルさんはため息をつきながら書類に書き込みをしているのだろうか。
首を捻りながらその様子を見ていたが、まったく理由がわからなかった。
「隊長!失礼します!」
ドバーン!と轟音を上げて扉が開かれたと思ったら、二人の男女が勢いよく入室してきた。
なんだなんだ、騒がしいな。
「隊長! ローゼル様が隊に加わるというのは本当ですか!」
「ちょっとアキ、落ち着きなさいって!」
アキ、というのは今俺に何か言っている男の名前だろうか。必死に腕を引きながら、エーミルさんや俺にすみませんすみません、と謝っている姿にこっちが申し訳ない気持ちになる。
「アキロウ、一体ノックもせず何の用です。まず礼儀はしっかりとすべきでしょう」
エーミルさんが先ほどまでと打って変わって厳しい態度をとる。おお、これが副隊長の風格というやつなのか。もはや俺と隊長を変わってもらった方が良いと思うんだがどうだろうか。
「隊長からもここは言うべきかと」
えぇ、俺からも必要なの? エーミルさんだけでいいだろ?
俺の渾身の視線での訴えも、「早く」という視線返しによって棄却される。あれぇ、やっぱり彼女の方が隊長なのでは?
「そうだな、エーミルさn「失礼、手が滑りましたわ」あいたぁ!?」
「「隊長!?」」
俺が話し始めると同時にデコにペンが飛んできた。飛んできた方向には投擲後のフォームの副隊長。
いや、手が滑ったとかいう問題ですらなくないですか? 思い切り狙って投げたの隠すつもりないですよね?
「あの、副隊長。今思い切り隊長をねら「手が滑ったんです」、狙って「手が、滑ったんです」、はい、何でもありません」
こっわ。あのアキロウくんとやらが俺の代わりに尋ねてくれたけど一瞬でなかったことにされたんだが?
むしろこれ以上踏み込んだら存在がなかったことにされそうな感じなんだが?
ちなみに、さっきエーミルさんからペンが飛んできた理由はなんとなく察した。あれだな、部下の前でグラフさんをちゃんと演じろっていう意味合いだな。唐突にあの二人が部屋に来たから意識から外れてたから仕方ないね。
「エーミル、その辺にしておけ」
「……はっ」
きちんと「グラフさん」を意識し話す。エーミルさんが、微笑を浮かべて返答したのでおそらく正解だったのだろう。
「それから、先の……なんだ、ローゼルさ、ローゼルのことだが、これから正式な通達を行うつもりだ」
ですよね? こちらでは決めたけどまだ本人にこれから伝えるところだから間違ってないよね?
エーミルさんに目線を送ることで確認をとる。いや、取らないと不安で俺の胃が死ぬから仕方ない。
「アキロウ、それにユミカ。今隊長が仰った通り、これから通達となります。全体通知はその後となるので今は控えてください」
「……しかし!」
「わかりました。お騒がせして申し訳ありませんでした」
なおも噛みつこうとするアキロウくんをユミカと呼ばれた女性が抑え、こちらに頭を下げてきた。
ユミカさんは悪くないよなあ。アキロウくんを止めようとしてただけだし。
「ユミカ!なんで止めるんだよ!」
「今副隊長が仰ったでしょう。後から正式に通達されるんだから、何かあるならその時で構わないでしょ」
「しかしだな……!」
だからアキロウくんはユミカさんを見習って反省してほしい。とりあえず落ち着け。エーミルさんの視線の温度が段々と下がり始めようとしてるぞ。
「…………」
いや、俺への視線の温度が下げなくても……え? これ、もしかして俺に何とかしろっていうこと?
知らんがな。もう適当に騒がせておいてよくない? うるさくなったらつまみ出したらいいでしょ?
「隊長! なんでローゼル様が隊に入るなんて話が出てるんですか!」
おっと、直接こちらに噛みついてきたんだが、俺は一体どうしたらいいのかね。
「そもそも、うちの隊に魔道士なんて邪魔でしかないんですよ! どうせあいつら、魔道士以外と連携なんてすることなんてないんですから」
「……いや、そんなことないんじゃないか?」
「そうなんです! 魔道士なんてみんな同じだ!」
「……………………」
なんだろう。俺は正直ここでの騎士のあり方とか魔道士のあり方とか、そういったものは全く知らないけれど。
無性にこいつの言い分には腹が立った。
「なら、その目で確かめてみるがいい」
「隊長……?」
エーミルさんはおそらく俺の考えていることがわかっているのだろう。だが、止められても俺は止める気はない。
「貴様が魔道士が嫌いなのはわかった。だが、隊に入れるか入れないかは俺とエーミルが決める。それに何かしら反対したいというなら、それだけの根拠を示せ。……お前の言い分ならそうだな、俺とローゼルの連携が、お前とユミカに渡り合えればよかろう」
「そんな、隊長に勝てるわけ」
「お前はさっき、魔道士との連携なぞ不可能といったな。なに、俺はローゼルと手合わせはすれど共に戦ったことは皆無だ。そして別に俺たちに勝てとは言っていない。俺たちが連携を取れているかどうか、お前たちから見てどうなのかを実戦の中で判断してみろと言っているだけだ」
「なるほど……それなら確かに無理に勝ちに固執する必要はない、というわけですね」
エーミルさんは、おそらく勝ち負けでの決定を懸念していたのだろうか。俺の言葉に、それならば大丈夫でしょう、と納得してくれたようだった。
「……わかりました。怪我しても後悔しないでくださいよ、隊長」
「……お前は後ろから刺されないようにも気を付けておけよ」
「……一人で勝手に突っ走った挙句、巻き込まれた……これ、私は悪くないよね? アキロウを刺してもいいよね?」
なんせ、ユミカが暗ーい目をしてぶつぶつ呟いていたのだから、そりゃそんな言葉も送りたくなるわな。
さて、ローゼル様には申し訳ないがご足労願うとしますか。
そのうち、なろうとかにもマルチ投稿とかしていきたいなあって。