一般人が元勇者パーティのベテラン戦士になったら   作:森野熊漢

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期間空きすぎて話の流れも戦闘描写もわかんない。


バイトと人生辞めました6

「義兄さんと、いっしょに?」

 

あの後、午後に外の演習場で鍛錬という名の「ローゼル様の入隊を認めさせるの会(仮)」を行うことを約束した直後。

何故かローゼル様が部屋の外に都合よくいたため、すぐに事の次第を話すことが出来た。勿論、アキロウくんの腹の立つ物言いは俺の言葉でソフトに言い換えておいたから問題はないはず。

 

「ああ、嫌かもしれないが、こうしないとどうやら角が立ちそうでな。今日はたまたま直接部屋に突っ込んでくるやつがいたからわかりやすかったものの、ああいう意見があるということは他にも思ってるやつがいると思うからな」

 

だから申し訳ありませんが魔道士さんとの共闘をするために力添えをしていただけないでしょうか。

そういう思いを込めつつ、口では「ローゼルが隊に加わるには力を示さねばならぬ」的なことをなんとか伝えていく。

いやマジで、勝手に啖呵切ったのは申し訳ないので協力してくださ……いや、よく考えたら俺はローゼル様が隊に加わるかどうかなんてどっちでもいいんだったわ。

 

「わかった、やるわ。だから義兄さん、しっかり力、貸してね」

「……ああ」

 

どこまでできるかわからないけど、やれるだけはやってみようと思います。ローゼル様以外とは訓練すらしたことないので無様を晒さないようにしたいと思います。

……隊長だから元々無様なんて晒せないじゃないか。後でエーミルさんにあの二人の情報を少しでも聞き出しておこう。

そう心の中で今後の算段を付ける俺に背を向け、ローゼル様は部屋の扉を開けた。

 

「あ、そうそう義兄さん」

「……うん?」

「さっき義兄さんがアイツに怒ってくれたの、嬉しかった」

 

じゃあまた後でね、と言い残し、廊下に歩き出した。

……やだなあ、啖呵切ったあたりのこと、全部聞かれてたってことですかこれ。恥ずかしいな?

 

「で、エーミルさんはさっきから何を笑ってるんです?」

「いえ、何でも?」(ローゼル様、嬉しいのを必死に隠して隊長に素っ気なく接していたけれど外から見てて全部わかってしまうのが面白かったなんて言えませんわ)

 

さっきからローゼル様とやり取りしている間、ずっとニコニコしていたんだが。俺があたふたしているのがそんなに面白かったのかちくしょうめ。

美人がとてもいい笑顔で楽しそうに笑ってくれているのなら別にいいか。

 

「さて、エーミルさん。アキロウくんとユミカさんについての情報を貰えます? あまりにも初見丸出しの動きをしてしまうのもマズいでしょうし」

「それはそれで面白……いえ、そうですね。騎士団内にバレてしまうのはまずいですから」

「おい今面白いって言いかけたよな?」

 

なんてことだ。自分から役を崩すなと言い聞かせ、時に物をぶつけるという暴挙にも手を出した本人が面白さを理由に必要な支援を放棄しかけましたけども!?

 

そこから時間になるまで、クスクス笑い続けるエーミルさんから二人の情報を引き出した。

にしても、別に食べ物の好き嫌いとか教えてもらう必要はあったのか?とか思うところはあったものの、6割方は必要な情報だったことをここに記しておく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さて、いけそうかね、ローゼル」

 

時間直前になり、ローゼル様と合流した俺の第一声がこれである。すごく歴戦の猛者感を出しているが、その実態は元々は喧嘩のけの字も体験したことがないような奴である。

……おっかしいな、なんでこんなことに巻き込まれてるんだろう。

 

「あら、義兄さんこそ大丈夫かしら? 私に合わせられるのかしら」

 

不敵な笑みでローゼル様は言い返してきた。……敢えて言う。大丈夫じゃないです。

 

「出来るだけ合わせられるようにするが……ローゼルも合わせられるところは合わせてくれよ。個人の力を示すのではなく、魔道士と共闘が可能かどうかというのを示すのが目的なのだから」

「私だけでもしかしたら終わってしまうかもよ?」

 

実際ありそうなんだよなあ。

 

「まあ? ここは義兄さんが取り持ってくれた機会だし、出来るだけ合わせるわ」

 

謎に気合いを感じることにむしろ恐怖を覚えてしまうんだが何故。

 

「……ローゼル様、準備はよろしいようですね」

「……隊長も余裕そうで」

 

俺たちが話していると、アキロウくんたちが話しかけてきた。なんだろう、さっきよりも顔が怖いんだが。ちなみに先に話しかけてきたのがユミカさんで、後がアキロウくんである。

 

「ええ、いつでもいいですよ。そちらこそ準備はよろしいのかしら?」

「当然です。隊長の横に並び立つ準備も貴方よりも整えられていますので」

「……へぇ?」

 

え、ユミカさん? なんかさっき会った時よりも雰囲気怖くない?

アキロウくんはアキロウくんで俺から視線を外してくれないし。

 

「……何か言いたいことでもあるのか?」

「まあ、色々とありますが……とりあえずは終わってからでいいっす」

 

なんだ? なんかすごく冷めたような、それでいて何かしらいろいろと込められているような視線を向けられているんだが?

ユミカさんとローゼル様に至ってはずっとお互いに煽り合っているし。なんだなんだ一体。

 

「二人とも、そろそろいいか。盤外戦術も大事だとは思うが今日のはあくまで鍛錬という名目だ。そこまでにしておけ」

「……はい、隊長」

「……そうね義兄さん。」

「この二人が煽り合っていることに関しては全て盤内の話なんだよなあ」

 

アキロウくんが何か言っていたが全く意味がわからなかった。

 

「「これから思う存分潰します」」

 

いや潰したらダメだろ。

そう思ったが、怖くて声に出せなかった。出来たのは、今回立ち会ってくれる団員に「早く始めてくれ」という思いを込めて目で訴えかけるくらいだった。無力な隊長を許してくれ。

 

「そ、それでは始めます! 両チーム構えて、はじめ!」

 

すごく早口で始められた。気持ちはわかるよ。早く離れたかったよね。出来るなら俺も君についていきたいんだけどダメかなダメですよねわかる。

 

アキロウくんはオーソドックスな剣と盾。ユミカさんも同じく剣だが、盾を持っておらず背中には弓を背負っている。近接オンリーと近接と中距離どちらもを担えるというのはエーミルさんの情報通りである。

 

「いきます! いつも通りいくぞユミカ!」

「うっさい邪魔!そこどいて!」

「……え?」

「どっせえええええい!」

「うおおおおおおおぉぉぉぉ!?」

 

「さて、どういくか……」

「義兄さんは下がってて。負けられないから」

「は? え?」

「Iウォール!」

 

どう連携するかなーと考えていたら、いきなりペアが勝手に前に出たでござる。

言われた通り下がったら、ローゼル様が氷の壁を展開し、ユミカさんの剣劇を防いだ。

しかし聞いてない。ユミカさんの叩きつけた剣とローゼル様の繰り出した氷の壁がぶつかり合い、尋常じゃない衝撃がこちらにまで伝わってくるなんて聞いてない。あの衝撃はどう考えてもユミカさんの腕力によるものだろ。狂戦士か何かなのか?

これには味方のはずのアキロウくんも呆けてしまっていたようだ。どうやら彼も俺と同じく戦闘からはじき出されてしまったらしい。

お互いに顔を見合わせたところで、おもむろに頷き。

 

「……ユミカはいつもこんな感じだったか?」

「いえ、俺も初めて見たっす」

 

戦闘そっちのけで感想を言い合っていた。

そんな俺たちを放っておいたまま、二人の戦いは続いていく。

 

「だあああああああああ!」

「Rシールド!」

 

巨大な岩の盾に叩きつけられる剣。ガァン!と轟音を立てつつも砕けることなく岩の盾はその斬撃を防ぐ。

 

ガァン!ガァン!ガンガンガンガン!

 

「この岩!鬱陶しいわね!」

「あんたの攻撃の方が!鬱陶しいわよ!」

 

ユミカさんの剣が連続で叩きつけられることで岩の盾が徐々に砕け始める。

それに対しローゼル様も力を込め盾を維持しているが、だいぶ苦しい状況。

 

ガィン!ガン!ガン!ガン!ガン!ドゴォ!

 

「っく!砕かれた……!」

「ぜぇ、ぜぇ……」

 

そして遂に岩の盾が砕かれる。が、ユミカさんも消耗が酷いようで肩で息をしている。

……うん。これ完全に二人ともこの鍛錬の主旨を忘れてるよな。

 

「アキロウ!何もしてないなら加勢して!」

「お前が邪魔だって言ったんだよなあ!?」

 

アキロウくんがすごく理不尽な目に合っていて可哀想になってきた。

 

「義兄さん!魔道士を前線に出すなんて何を考えているんですか!」

「下がっていろと言ったの、誰だったか思い出してもらっていいか?」

 

アキロウくんの気持ちが即座に理解できた俺だった。

 

 

 

「あのゴリラ女の攻撃をあたしだけで防ぐのは厳しいから、義兄さんよろしく」

「よろしくって……とりあえずお前には攻撃がいかないように出来るだけ立ち回ってみるが……」

 

あの威力を俺は防げるのか? いや、おそらくいけないことはないんだろうが、アキロウくんもいることを考えると真正面から立ち向かうのは愚策だろう。

 

「ローゼル、確認だが……」

 

 

 

「ローゼル様とやり合ってみて、どうだったんだ?」

「さすがといったところね。全然攻撃が通じなかった。でもあちらにも何もさせなかった」

「……ほう」

「アキロウ、次はあんたが前でいつも通りに。私は後ろからいくわ」

「わかった。だが隊長にはすぐバレるぞ」

「だからこそ私が後ろなのよ。隊長だからおそらく大丈夫。任せて」

 

 

 

おもむろに俺がローゼル様の前に出ると同時に向こうもアキロウくんが前に出てきた。

ということは、ユミカさんが狙撃体勢に入ろうとしていると考えるべきか。

まだ剣を持ったままだから判断がつかない。弓で攻撃してこれる距離だから剣はないと断定するには恐ろしい絶妙な距離である。

 

「ローゼル、二つともだ」

「えぇ……と言いたいけれど、義兄さんがそう言うなら任せて」

そう言うなら傷つくから最初からそんな声をあげないでほしかった。

 

「ふ、ぅう!」

「むっ」

 

そんなやり取りをしている間に仕掛けてきたアキロウくんの攻撃を捌く。盾でどうにか捌き続けられているが、元々の俺の身体能力でも十分動ける世界で良かったと改めて思う。出来るなら戦う必要とかも全くないのが一番理想的だったとかはそんなことは少ししか考えていない。

 

「今だ」

「……オーガアーム!」

 

アキロウくんの攻撃が止んだ一瞬、合図を送る。予定どおり、一つ目の補助をかけてもらえた。

 

「なん……うわぁっ!?」

 

轟っという音と共にぶつけた盾にアキロウくんが吹っ飛んでいく。

オーガアーム。効果はそのままの通り、鬼の腕になる、というわけではなくあくまでそれに近い腕力を一時的に得られるというものらしい。すごいなファンタジー世界。俺が今までやってきたゲームとかでも攻撃力強化の補助呪文ってこんな感じだったのかもしれない。

 

「……今の、は……!」

「っし!」

 

呆然としているアキロウ君の横をユミカさんの弓から放たれた矢が通り過ぎる。狙いは……俺か。

腕力強化したことで普段と若干感覚のズレを感じつつも盾で防ぐが。

 

「っす!!」

 

俺の右横を抜けつつ、走りながら射撃。……え、補助魔法とか使ってないのにその速度で来てるのかよ。

左手の盾で防ぎにくいようにご丁寧に右側を抜けてくるのもかなり意識している。

先のやり取りから、ユミカさんの落ち着き方からやり手であるとは思っていたが、正直ここまでとは思っていなかった。戦闘素人でも身体能力で全てなんとかなると舐め切っていた俺が悪いのだが、正直ここまでとは。

 

「っく!」

 

防げないことはない。だが、正直ギリギリではある。俺の周りを走り回りながら矢を射かけてくるため気を抜けない。手を出そうにも俺の攻撃はおそらく躱されて致命的な隙を作るだけだろう。かといって、悠長にしているとアキロウ君が復活してくるだろう。

……仕方ない。一応頼んでおいたが、いけるか?

 

「ローゼル!」

 

声をかける瞬間に初めてユミカさんに剣を当てに行く。最短距離で鋭く最速の突き。

 

「……そこです!」

 

当然のようにバックステップで躱され、反撃の矢を放たれる。腕は伸び切った状態で、距離は先より少し離れたものの盾を今から構えるには間に合わない。避けるにも完全に躱しきるには至らないだろう。

当然そうなるよな。

 

「クイック!」

 

だからこそ、それが致命的な隙となる。

補助呪文がかけられたことを身体で感じ取ってから足に力を込める。一歩左斜め、もう一歩を右斜めに踏み出す。

 

「……嘘っ!?」

 

わずかに目を見開くユミカさんに剣で斬りかかる……のは気が引けたので、勢いのままにタックルをかます。そういえば一時期悪質タックルとかいう言葉が流行ったなあ。

クイックによる加速度の増加もあり、思ったよりも遠くまでユミカさんは飛んで行った。ちなみにアキロウ君はローゼル様が岩を檻のようにして閉じ込めていた。

 

「そ、そこまで!」

 

先ほど開始の合図を出した団員が慌てたように試合終了を告げた。見れば他にいる団員の中には呆然としている者もいる。視線の方向的にユミカさんへの心配といったところが多数だろう。

 

「初めての共闘としては及第点、かしら?」

「……まあ、そうだな」

 

最後は連携したけど最初はワンマンだったんだが。完全にお互いのチームメンバーを無視してたから、無視された同士謎に話してたし。

言わないけどね。余計なこと言って、わざわざご機嫌な状態を崩す必要もないだろうし。

 

「ユミカさんは……うん、完全に伸びてるな」

「まああれだけのタックルなら納得ね」

 

岩の檻を解除したローゼル様がアキロウ君を引きずり出した。

あれ? 俺が最後に見た時よりボロボロなんだけど、ローゼル様ともしっかりやりあってたのか?

なんとか歩けているからそこまで問題はないと思っていいか。

ユミカさんを抱きかかえて、アキロウ君を引き連れたローゼル様と医務室へ二人を運び込むとしよう。




新年度がこれまでよりしんどいのって害悪ですね。
次話できるだけ早く作りたいですね。
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