一般人が元勇者パーティのベテラン戦士になったら   作:森野熊漢

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なかなか続きを書くことが出来てないあたりほんと力無いなって。


ゴブリンズクエスト

例の日記を見た。

何かを言われたわけでもなく、本当になんとなく。

何かをメモしようとか、そんなことすらも考えていないというのに、気が付けば開いていた。

そこには、前に読んだところの次のページに、

 

「名前を書いておこう、忘れないうちに」

 

ただ、それだけが書いてあった。

書かれている通りに、名前を書く。

俺の名前は……。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「義兄さん、これなんてどうですか?」

 

妹であるローゼル様がニッコニコしながら一枚の依頼書を見せてくる。

うむ、可愛い。兄弟とかじゃなければ結婚を前提にお付き合いしたいと思うくらいには可愛い。いや、そんなこと申し込む度胸なんてあるはずないんだが。

そして可愛い顔を輝かせながら、

 

「ブラックドラゴン討伐(クエストランク爆高)なんて私たちにピッタリでしょう?」

 

軽い感じで死刑宣告にを宣って来た。

あれ? なんでこんなことになってるんだっけ?

とりあえず「ふむ」と納得したような声を出しつつ、自然な動きで死刑宣告になりかねないそれを元に戻しておく。やらされてたまるか、こちとら素人だぞ?

 

「ローゼル、今回はあくまで騎士団との連携の練習なんだ。無闇に格上と戦うような依頼は無しだ」

 

冷静に伝えると、「ええー」と返される。いや、こっちがええーって言いたいよ?

あくまで連携の確認なんだから、どのようなことが出来るのかを確認して持ち帰るのが主であって、土壇場で失敗したら死なんて環境でやるものではないんですが。よくある話なら巻き込まれる形でそういう状況になることはあれど、避けられるものは避けるに限るだろう。

 

「ちぇ、それなら…」

 

そう言って再び掲示板で依頼を探し始めた。その姿を見つつ俺も依頼を確認する。彼女に任せておくだけにすると、ヤバめの依頼だけになりかねん。

そう思いつつ目を走らせていると、

 

「…ん?」

 

何やら他の依頼と何かが違う依頼の紙を見つけた。思わず手に取り眺める。

 

『緊急の依頼。ギルドは通していませんが、受けられる方募集。報酬は相談させてください』

 

「うーん?」

 

何が違うのか、と頭を悩ませていると。

 

「義兄さん、何を見てる…何、それ? 何て書いてあるの?」

(書いてあることが読めていない…?)

 

思わずローゼル様の持っている紙と見比べる。

 

『墓場の暴走グールを止めてくれ。同胞が何人も犠牲になっているんだ』

 

こっちが俺の持っている方で、

 

『湖の神殿の奥に潜む不死鳥の涙を回収してください(超高ランク向け)』

 

これがローゼル様の持っている方。また何て依頼を手にしているんだこの人は。

いや、問題はそこではなく。

 

(文字が違うが……俺には問題なく読めている?)

 

いうなれば、日本語と英語でそれぞれ書かれているという感じだろうか。俺は英語は苦手ではあるが、多少の文章ならつっかえながらだが読めるには読める。今は二つの言語が目の前にあるが、英語以上にスムーズに読めているというわけだ。

ただ一つ、俺が驚いたとすれば。

 

(ローゼル様の読めない方が、日本語で書かれているってことなんだよな)

 

こっちの公用語が日本語ではないことはわかってはいたものの、問題なく文字が読めていたため、何も疑問に思わなかった。今この時疑問に思わなかったことに疑問を覚え始めるという奇妙な現象が起きているのだが、一体これはどういうことだ。

 

「義兄さん?」

「あ、ああ……これか? なんだローゼルは読めない……のか?」

「ええ、私が他の言語に触れてこなかったというのもあるけど、こんなのわざわざ貼っておくものかしら」

 

確かに、公用語を使っていない依頼なら公用語に直した方が以来としては受けやすいだろう。ここから推測するに、この依頼は「この文字を読める者にあてたもの」か、「依頼を管理している者が気づかない間に貼りだされたもの」のどちらかである。もしくは、このどちらも当てはまっている可能性はある。

 

「誰も気づかなかったのかしら、これ」

「もしくは気づいてたとしても、わざわざ報告しなかったってこともあるな」

 

そのあたりは依頼者に聞いてみるのも一つかもしれない。本来ならきちんとギルドを通さないといけないものだが、今回のようにギルドを通さず、個人交渉で依頼を貼りだすことも稀にある。そういうのは大体人目を避けたい後ろ暗いものか、緊急でギルドの申請を待っていられないか。

 

「え、これ本当にいくの? ギルド通ってないのよね?」

「……本来なら俺も避けるべきだと思うんだがな」

 

なぜ日本語で書かれているのか、とか。気になる要素の方が大きい。

しかし、危険性もあるというのは十分にわかっている。

 

「だから、ローゼル。お前は誰かと別の依頼を受けたらいい。俺のは……万が一があるからな」

 

俺の都合でローゼル様を巻き込むのは違う。

そう思って言ったのだが、

 

「……ふん!」

「っっっ!? いったぁ!?」

 

靴のかかとで小指を思い切り踏まれた。靴の上からでも痛いんだが!?

 

「ほんっとーに……なんだから……」

 

屈みこんで悶え苦しんでいると、ボソボソとローゼル様が不機嫌そうに呟いていらっしゃった。

何で私めはそんな不機嫌な態度で小指を攻められたんでしょうか。

 

「あのね、義兄さん。私と義兄さんがどうしてここに来たのか、理由を覚えてる?」

「そりゃあ、ローゼルが騎士団員と連携を取れるようにするための練習だろう?」

「そうよね。なのに何故いきなり団員と組ませようとしているのかしら? お義兄様には人の心というものはないの? ん?」

「……そんな責められることか?」

「いきなり初対面の人と話したり、ましてや連携なんて取れるはずがないでしょう!?」

 

そんな堂々とコミュ障宣言されても困る。こちとら気づいたら周り知らない人どころか知らない世界だったんだぞ。誰とでも上手く付き合えるような奴でもないのにいきなり隊長とか担ぎ上げられて色々させられてるんだぞ? 見習え?

 

「いや、まあ、そう、だな」

 

だがまあ、言いたいことはわかる。俺も無理だわ。ローゼル様とはやらないといけない状況だったからやったし、それきっかけで今組んでいるようなものだからな。

……あれ? そう考えたらローゼル様も同じじゃないのか?

 

「でもローゼルもこの間、俺と初めて組んで上手くいったんだ。他の人とも出来るだろうに」

「…………初めて?」

 

何か小声でボソボソ呟き始めたんだが、さっきと様子が違いすぎて話しかけにくい。

 

「いや、でも……なら、納得は出来るけど……」

「……うん、まあそのうち元に戻ると信じるか」

 

仕方ないので、再度依頼書に目を落とす。依頼文は見た通り。

場所は……街の裏手の山、だと? しかも登山口から少し離れたところ、と。

街中でとかじゃないあたり、本当にローゼル様を連れていきたくない。

とりあえず話を聞きに行くだけ行ってみることにしよう。ローゼル様は別行動してもらえるよう頼みこむとするか。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結論から言うと、無理でした。

 

「義兄さん、本当に私に別の人と組めと、そう仰るんですか」

「出来るならそうしてもらえると助かるが……どうしても無理というなら今日は休みにしたらどうだ」

「義兄さんも当然休むのよね?」

「いや、だから俺はこの依頼をした人に会いに行ってみようと「私も行きます」いや……」

 

以下、無限ループ。

キリがないので、仕方なく付いてこさせることにした。

指定された街の裏手の山。指定された場所まで足を運ぶとそこには。

 

「ほう、上手く見つからないように隠されてたんだな」

 

洞窟の入り口があった。

 

「こんなところで依頼のやり取り……本当に?」

「俺もどうかと思っている。だからローゼルには戻ってほしかったんだが……」

「却下よ。それに私の心配してくれるのは嬉しいけど、義兄さんだって危なくないわけではないでしょう?」

 

否定できないのが困る。

 

「……ん、何か奥から来てる」

「どうしてわかった?」

「探知魔法だけど……エーミルさんに昨日教えていただいたばかりで出来るか不安だったけどできて良かった……」

 

脳筋だと思ってたけどそうじゃなかったんだな……何かエーミルさんがどうとか聞こえたけど。

そんなことを考えていると、ローゼル様が言った通り、洞窟の奥から近づいてくる足音が聞こえた。

よくよく目を凝らして見ると。

 

「人……じゃないな」

「……! 義兄さん! 構えて!」

 

若干人間よりも小柄な体躯。粗雑な衣服を身に纏った緑色の表皮。

鋭い目つきに手に持った木製の棍棒。

 

「ゴブリン!」

 

俺がよくゲームでプレイしたり漫画で読んで知っている「ゴブリン」だった。

 

『ヒト……か。俺たちの依頼は結局誰にも届かなかったというわけか』

(依頼……? それにこの言葉って)

「……義兄さん! どいて! 私がやる!」

 

ローゼル様が俺の前に立ちはだかり、杖を構える。

ゴブリンの方もそれを見て何かを諦めたような顔をしてから、棍棒を構えた。

 

『仕方ない、荒らしに来たというのならそれ相応の対処はしないといけねえからな』

『いや、ここに来いって言われたから来ただけで荒らすとかそんなつもりはないんだけどなあ』

『!?』

 

ついつい聞こえた言葉に反応してしまったところ、何故かこちらにグリン!と顔を向けた。

 

『おい、今あんた「Fボール!」……っちぃ!』

 

火球がゴブリンの頭のあったところを通り過ぎていく。どうやら咄嗟に屈んで避けたようだ。

 

「Aボール! Sボール!」

『くっそ、おい! そこのあんた! 俺の言葉わかるんだろ!?』

 

なんかゴブリンがこっちに向かって必死に叫んでいるんだが。

 

『え? ああ、聞こえてるが』

『やっぱりか! 頼む! この嬢ちゃんを止めてくれ! 話をしたい!』

『それはいいが、俺も聞きたいことがある。答えてくれるか?』

『とりあえず落ち着いて話をしてからな!』

 

それもそうだ。今のやり取りの間に、ローゼル様の魔法弾を5発は回避しているわけだしな。

 

「っちぃ! ゴブリンがちょこまかと……義兄さん! 手伝って!」

「少し待て、ローゼル」

 

盾を構え、ゴブリンを庇うように杖の先に立つ。

 

「な!? 何をしてるの義兄さん!」

「待てと言っている。このゴブリンと話をしたい」

「はぁ!? 話!? 出来るはずないでしょ! ゴブリンは魔物よ!?」

「それも含めて確かめたいことがあるんだ」

「少しでも怪しい動きをしたら問答無用でアイツを燃やすわ」

 

そこまで言って、ようやく杖を下ろしてくれた。一安心したところで改めてゴブリンと向かい合う。

 

「あー、すまんかったな」

『…………?』

 

首を捻られてしまった。あれ? さっき話せてたよな?

 

(……あ、もしかして)

 

言語に意識を向けて。

 

『これで言葉が通じてるか?』

『あ、ああ!』

 

どうやら通じたらしい。

しかし、驚いた。

 

どうやらゴブリンの言葉というのは、俺のよく知る『日本語』だったらしい。

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