えっ、自分ステイゴールド産駒なんすか?   作:えびんす

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 しばらくウマ娘パートは書かないつもりだったんですが筆が乗ってしまったので仕方ありません。


Side pretty Ep.00 ー『あたし』はウッドストックー

(どうして)

 

 

 どうも皆さん、なぜか競走馬になってしまった元人間のウッドストックです。今日も今日とて大変よいお天気。雲一つない、抜けるような青空に燦然と輝く太陽が眩しいです。

 

 

(どうして)

 

 

 そんな俺が今どうしているかというと、現在日の光差し込む実家のベッドの上でごろ寝しております。

 

 え? 実家のベッドって言うけど厩舎の寝藁のことだろって? いやいや本来の用途で使われる正真正銘の人間用のベッドでございますよ。

 

 馬なのにベッドで寝れるのかって? いやいや、実は馬ではないんだな今の俺。人間だったころと同じように二足歩行で手も使えて、肉も魚も問題なく食せますよ?

 

 

 

 

(ウマ娘ってなんだよ…………)

 

 

 

 純粋な意味での人間ではないんですがね。人間の身体に馬の耳と尻尾が付いたような、いわゆる「擬人化」のような形で馬から生まれ変わってました。そんでさっき前世と前前世を思い出しました。

 

 なんなん? ウマ娘ってなに?

 

 

 ああいや待て、そういや俺に競馬を教えた先輩と上司がウマ娘だなんだって言ってたような覚えがあるぞ? 競馬談義の合間にチラッと出た程度だから完全に記憶から抜けてたが。

 

 なるほどこれがウマ娘ちゃんですか? 確かにウマで女の子で、読んで字のごとくウマ娘と。ほほーなるほど、確かにこりゃあ分かりやすいなってやかましいわ。なんで普通に人間にしてくれなかったんだよ。もう馬関係のあれやこれやはしばらく腹一杯だよ。

 

 しかも女の子だぞ? 俺人間時代も馬時代も男だったんですけど? 牡馬も牝馬も関係なしかよ、生まれ変わったら訳あって女の子ってか、最高に笑えねえ冗談だぜこんちくしょう。

 

 

「はあ…………」

 

 

 声に出して溜め息でも吐きゃあ自分の物とは思えん高い声だしよぉ。いかんちょっと泣けてきた。

 

 なんなの? 神様が居るかは知らんが、居たとして一人の人間の人生をこんなに弄んで何がしたいの?

 

 何かしら意味があるのか? それとも暇潰しか? はたまた愉悦に浸りたいがだけに俺をこんな目に遭わせてるのか? どういう理由にせよ地獄に堕ちても構わんから一発顔面ぶん殴らせてくれ。

 

 

 

 

 ……でも、今のこの姿にほぼ違和感がない自分が居るのも確かなんだよなあ。魂が過去を思い出したとしても、この身体でそれなりの年月を過ごしてきたから馴染んでしまったのかもしれない。

 

 

「よいしょ」

 

 

 ベッドから起き上がり、部屋を見回す。そこまで広くはないが綺麗に整頓されている。自分がキレイ好きなのが半分、今世の母上の腕が半分。手が届かないところは母上の独壇場だ。

 

 勉強机の横には、6歳の誕生日に買って貰ったギター。当時は何故か解らなかったが、漠然とギターを弾いてみたいという欲求が出てきて、父上に無理をお願いして買って貰ったものだ。

 

 今なら解る。人間の男だった時にかじった事と、音楽大好きだった事が無意識に影響したんだろう。今でも大事に手入れして、時間を見つけては練習している。

 

 

 部屋の入り口には、壁に掛けられた大きな姿見。立ち上がって姿見の前に立つと、映るのは小学生ぐらいのかわいらしい女の子。記憶では今は11歳。

 

 どちらかというと美人系の顔立ちだろうか。切れ長のつり目と右曲がりの流星が、年齢の割に高めの身長と相まって、どこか大人っぽさを感じさせる。

 

 

「…………はぁ」

 

 

 これが今の俺かあ……いや不細工に生まれるよりは全然いいし、事実人間の頃よりも顔立ちは整ってはいるんだが、如何せん女の子なんだよなあ……。

 

 

 なんだっけ、確かこの世界だとJRAならぬURAっていう組織があって、そこが俺の記憶にある競馬に相当する「トゥインクルシリーズ」っていうウマ娘レースがあるんだよな。

 

 こんな姿に生まれ変わったっつーことは、アレか? 四足歩行の時にも思い浮かんだ、「この姿になった意味」を模索する系のアレなのか?

 

 つまりトレセン学園に行けと? そこで走れと? 己が存在する意義を走って走って見つけ出せと?

 

 

「……………………だるいけどやるかあ」

 

 

 こうしてウマ娘として生まれ変わっちまったからには、やっぱり俺の想像の及ばんところで何かしらの意味があるんだろう。

 

 そのためには、とりあえず勉強だな。トレセン学園ってそれなりに偏差値高いらしいし、今の学力だとちょっと心許ないし。

 

 あ、その前に母上に許可を貰うのが先か。こんな大事なこと子供の俺だけで完結して良い問題じゃないしな。

 

 

 

 

 

 

「ポケちゃんのやりたいようにやんなさい」

 

「はあ」

 

 

 秒でOKが出た。

 

 

 いやいや母上、もうちょっときちんと話し合おうよ。トレセンだよ? レースだよ? 子供の将来を左右する超重要事項だよ? 

 

 一歩間違えたら放任主義通り越して子供に興味ない親みたいな感じになるじゃんもっと一杯お話ししようよ。あといい加減ポケちゃんって呼ぶのやめて。

 

 

「子供の行く道は親が決めるものじゃないからね。ポケちゃんがやりたい、やってみたいと思った夢が、親である私の夢よ」

 

「お母さん……」

 

 

 前世の母上もまあまあ豪快な性格だったけど、今世の母上はなんというかそれに輪を掛けて肝っ玉が据わっている。

 

 母上自身はレースに出てた訳じゃなく、普通に就職して普通に恋愛結婚した普通のウマ娘だ。走るよりもやりたい夢があったとかなんとか言ってたけど深くは聞かなかった。

 

 そんな人だけど、競争の世界は甘くないってことは重々承知だろう。それなのに娘をこんな気持ちよく送り出せるのか。

 

 

「…………響子」

 

 

 母上が俺の名前を優しく呼ぶ。競走馬の名前でも、幼名でもない、今世での俺の本名を。

 

 

「あなたが何を思ってレースに出たいと思ったのか。何を目標にしているのか。お母さん深くは聞かないわ。その夢を真に理解できるのはきっと、あなた自身しかいないでしょうから」

 

「…………」

 

「……今までずっと無気力で、将来の夢もなにもないなんて言ってた子が。初めてやりたいことを言ってくれたんですもの。嬉しくないわけないじゃない」

 

 

 母上は、ただ優しく、柔和に笑った。心の底から、本当に嬉しそうに。

 

 ああ、放任主義だなんて、そんなわけがない。この人は、何よりも自分の子供の幸せを一心に願っている。

 

 どこまでも、この人は「母」なんだ。

 

 

「…………ウッドストック」

 

「……えっ?」

 

「さっき()()()()()の。あたしの名前」

 

 

 ウマ娘は、遠いどこかの世界に生きた生物の魂を宿して産まれてくると言われ、その自身の魂に刻まれた名前を、ある日突然雷に打たれたように思い出すのだという。

 

 俺の場合前世と前前世の記憶つきだからちょっと特殊だけど、こうして実際に思い出したんだからまあ正解と言って差し支えないだろう。

 

 

「そう、ウッドストック…………良い名前ね」

 

「うん」

 

「……やるなら悔いは残さないように。大人になって、「もっとああしていれば、こうしていれば」なんて悩まないように、胸張って全力でやったんだって自慢できるようになんなさい」

 

「……うん」

 

 

 母上が俺の頭を優しく撫でる。

 

 その顔に浮かんだ笑みは、どこまでも優しくて……少し、寂しそうでもあって。

 

 そういえば、最初は厩務員のおっちゃんの笑顔が見たくて頑張ったんだよなあ、なんて四足歩行時代の事を思い出したりして。

 

 今世でも、頑張ろうって。今度は、母上が笑顔で、自慢の娘だって言ってくれるように頑張ろうって思えた。

 

 

 

 

「…………とりあえず勉強ね。あそこかなり偏差値高いから死ぬ気で頑張んないと受からないわよ」

 

「はい…………」

 

 

 問題は俺自身の学力なんですけどね。まさか精神年齢おっさんになってから勉強に悩むとは思いもしなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 それから数年が経ち、俺…………いや、()()()は、中央トレセン学園の校舎の前に立っていた。

 

 もう、すんごい大変だった。勉強は一度通った道だからなんとかなるかと思ったら全っ然覚えてないし、試験当日になって道に迷うし。受験票忘れなかっただけ偉いと思いたい。

 

 

 いやーしかしホントでけえなこの学園。JRAは公営、つまり国が資金出してるから分かるんだが、URAはどこから資金捻出してるんだろうな。

 

 ウマ娘レースは賭博禁止とされてはいるけど、それじゃあチケット代とグッズ代で諸々の運用費賄ってることになる。学費も食堂も無料とか絶対金足りないだろ。ただでさえよく食うウマ娘が2000人は集まってるんだぞ。

 

 

 ……一生徒のあたしが考えても仕方ないか。この事は深く考えないようにしよう。

 

 

「…………さて、行くか」

 

 

 今日からあたしは、トレセン学園の生徒として、トゥインクルシリーズを走る。

 

 なんの因果か知らないが、ウマ娘なんてものになっちまったからには、その意味を模索してみるのも一興だ。なあに、四足歩行の時に一回通った道だ、探すことには慣れてるさ。

 

 

 

 

「…………なあ、君!」

 

「ん?」

 

「突然すまない、少しトモを触らせてくれないか!?」

 

「ナンパならもっと発言考えた方がいいぞ」

 

 

 少なくともこの変質者紛いの男に脚を触らせるのが運命、なんてのは御免だが。

 

 

 

 

 これが、あたしと、チーム「スピカ」のトレーナーとの出会い。

 

 この男と共にレースに臨むことになるとは、この時のあたしは思っちゃいなかった。

 

 

 




 沖Tってウマ娘に蹴られたい疑惑ありますよね。
 正直私もカレンチャンにゴミを見るような目つきで踏まれたいです。
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