鋼の異世界(世紀末)と自衛隊奮闘録【第3部・多元世界編・完結】   作:MrR

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第三十一話「もう一人の皇太子」

 Side 緋田 キンジ

 

 被害状況や、避難民の確認。

 

 戦死者の埋葬作業をこなしつつ、仲間達と村人達をどうするかの相談をする。

 

 勿論そこにはフィアの兄もいた。

 フィアは中性的な美少年みたいな感じだ兄の方は体格が若干よく、ちょっとワイルドな雰囲気が漂っていた。

 

「アルク・バハムス――まあ反乱の首謀者の一人だ」

 

「どうも日本の陸上自衛隊の緋田 キンジ一尉です。弟さんにはお世話になりました」

 

 実際、皇帝自らが襲来して来た時なんかはヤバかった。

 

「しかし、民衆の受け入れ先でこうも悩むとは、一々これでは体が持たんぞ」

 

「まあそれが自衛隊なもんでして――」

 

「ドラゴンを倒した男がやる事とは思えないな」

 

 アルクはフィアと比べて言葉遣いや態度がかなり違っていた。

 ある意味では皇太子らしいと言えばらしいかもしれないが。

 

 そんなアルクと休憩中に二人話す事になった。

 

「異世界ではこれが普通なのか?」

 

「いや、違うと思いますよ――」

 

 自衛隊は世界的に見て変わった組織だ。

 うつろ自衛隊とかがおかしいのだ。

 

「変な連中だ」

 

「そう言われるとそうですね」

 

「――まあいい。正直色々と探ってはいるがどうしても分からんことがあったな。それを確かめておこうと思ってな」

 

「分からないこと?」

 

「基本国家が軍隊を差し向けるのは何かしらの利益を得るためだ。まあ中には大義のためだの何だので動く事もあろうがな」

 

「ウチの政府は火中の栗を拾ってまで得られる利益をどうするか、考えが纏まってない感じですがね」

 

 と、思い出す様に俺は言った。

 

「君はどうなんだ?」

 

「先日、世界が滅びそうな程の戦いがありまして――このままだとそうなる可能性がありますから嫌々戦ってるだけです」

 

 これに関しては嘘はついてない。

 不良軍人やるのも平和があってこそだ。

 

 それを言うとアルクは虚を突かれたように固まった。

 だが少し間を置いて笑い始める。

 

「何だかんだで弟と同類か君は――いや、それ以上か。まさか怠け者やるために世界の危機に立ち向かうとは」

 

「正義だの平和だので飯は食えませんけど、平和じゃないと飯は産まれませんから」

 

「成る程、それは道理だ。まさかここでそんな正論を聞く事になろうとはな」

 

 ツボに嵌まったのかさっきから笑ってる。

 大丈夫かこの子。 

 

「正義だの大義だの答えたら意地悪な質問でもしてやろうかと思ったが、想像以上に変わり者だったとは。気に入ったよ」

 

「はあ――そんなに変わってますかね? だけどああ言っておいてなんですがこの世界に来る前には修羅の土地でドンパチしてたんですよ?」

 

「報告者にあった他の異世界と言う奴か?」

 

「この世界が控えめに言って天国に感じるような世界です。まあそんな世界でも人は逞しく生きてましたけどね」

 

 正直あの世界は地獄だ。

 だが地獄でも人は逞しくて生きていた。

 

 悲しい事は沢山あったが、あの世界があったからこそリオやパメラ、パンサー達と知り合えた。

 

 だからあの世界の全てを否定する事はできない。

 

「このまま長々と雑談するのもいいかも知れんが本題に入ろう」

 

「本題?」

 

「もう聞いているかもしれんが、クーデターは短期間のウチに終わらせるつもりだった。だがこの世界に起きている異常事態のせいで長期化しているのが現状だ」

 

「まあ確かにあの世界(世紀末)の連中やら、他の世界の人類の天敵(ゼレーナ)やらいますしね……もしかして他にも厄介な連中がいるかもしれないし」

 

「そして皇帝陛下はあろう事か、異世界への侵攻と言ういらぬ野心を抱いてしまった。恐らく其方の世界に繋がるゲートを作って直接進行するつもりだろう。これ以上の収拾がつかなくなる前に動くつもりだ」

 

「ちょっと待ってください。ゲートを作れるんですか?」

 

「異世界の侵攻は一見すると場当たり的でもあるが、かなり前から計画が練られていたようだ。それが派生して異世界から強力な戦士を呼び出そうとし――失敗して今の状況に至るワケだがな。必要なデータは揃いつつある。少なくとも日本と間違えてアメリカ辺りにゲートが開くなんて言う喜劇には期待せん方がいいぞ」

 

「最悪だ……」

 

 報告する事が増えた。

 同時にタイムリミットもあるようだ。

 

「皇帝は底無しの野心家だが、同時に戦争屋でもある。流石に異世界進行となると念入りな準備が必要なのは分かるだろう。だが準備は整うまでの時間はそう長くはないだろう」

 

「どんどん問題が増えてるな」

 

「だが同時に帝国を討つだけを考えれば好機でもある。皇帝は異世界の連中を手中下に収める事を考えたが思ったよりも上手くは行ってない。逆にその対応で手一杯になっているのが現状で、他国の攻撃や占領した領土で反乱の恐れがある」

 

「つまり帝国本土は手薄になっているのか」

 

「不本意ながらな。此方も仕掛けるが準備が必要になるだろう。その前に片付けられる問題は片付けておきたい」

 

「つってもどうすればいいのか分からないですね」

 

「そのために弟と一緒に一旦学園を目指せ。あそこなら情報が集まっている筈だ」

 

 俺はハァとため息をついて「何時になったら休めるかな……」と言った。

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