鋼の異世界(世紀末)と自衛隊奮闘録【第3部・多元世界編・完結】   作:MrR

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第三十五話「久々に元の世界」

  Side 緋田 キンジ

 

 気晴らしに。

 

 本当に気晴らしに久々に日本へ戻った。

 

 と言っても境界駐屯地周辺。

 

 訓練に励んでいる自衛官や、完全装備で哨戒任務中の自衛官がいたり。

 

 そして市民団体がゾンビのようにフェンス越しに群がり、無秩序な抗議活動を行っている。

 こいつらは本当に暇だな。

 

 それよりも問題なのは――

 

「ここがキンジの世界――」

 

「何というか綺麗ね」

 

「うわ――何と言うか空気すら違う感じがするね」

 

 リオ、パメラ、パンサーの順に周囲をキョロキョロとしている。

 

 服装も向こうの世界で元の世界から持ち込んだ物を購入した奴を着ているので違和感はないが、自衛隊の基地に私服姿の少女三人は目立つ。

 

 なんかのラノベかよ。

 

「つかよくあの条件で納得してくれたな」

 

 キョウスケの言う通りだ。

 血液検査とか諸々の検査をパスしたのはともかくその条件で難色を示すかと思えばキッチリ説明すれば納得してもらえた。 

 

 それだけ行きたかったのだろうか。

 

 ちなみに他の隊員にも休暇言い渡してこの世界に来ている。

 中々休みも取れなかったし激戦も多くあった。

 バチはあたらんだろう。

 

 問題は――

 

「この包囲網をどう抜け出すかだな――」

 

「ああ・・・・・・」

 

 ゾンビみたいに群がる市民団体。

 キャンプや仮設トイレまで持ち込んでいる惨状だ。

 反対活動が激しいと言われている地域もこんな感じだろうか。

 

『戦争はんたーい!!』

 

『自衛隊は話し合いで解決しろ!!』

 

『核武装をするな!!』

 

『原爆被害者は黙っちゃいないぞ!!』

 

 などと言いたい放題だ。

 核武装云々に関してはパワーローダーの事を言っているのだろう。

 それに関してだけは議論の余地はあるが、それ以外は全くの的外れだ。

 

 戦争は相手側から問答無用で生中継で布告したし、核兵器を保有して必要とあらば使う連中にどう話し合えと言うのだ。

 

 いっそ向こうの世界に送り込んでみたいと思った。

 

「どうもヴァネッサです。いや~ここが緋田さん達の世界ですか」

 

「まだ自己紹介続けるんかい・・・・・・つかアナタも来たのか」

 

 俺は呆れながらOLみたいな格好をしたヴァネッサを見た。

 

「ヴァネッサさんは努力を怠らない人ですから。それと私もこっちの世界には興味あったんですよね」

 

「正直言うと、実はこの世界の住民でしたって言われても俺は納得するぞ」

 

 キョウスケも「俺もだ」と続いた。

 

「しかしゾンビみたいに群がってますね。あいつら自衛隊がいなくなったら米軍に守ってもらうつもりでしょうか? 銃を持って戦う度胸もないくせに」

 

「ほら見ろキンジ! この姉ちゃんこの世界の事情に詳しいじゃねーか!」

 

「本当に何者なんだ・・・・・・」

 

 日本のローカル事情に詳しすぎる。

 明らかに不審な点が多い。

 ヴァネッサさん本当に何者なんだ。

 

「まあともかくアレだ。あれこれ考えて問い詰めても煙たがられるのがオチだ。ここは放置するぞ」

 

「そうだな。あいつら検問とかして毎回毎回警察が追い払ってるって聞いたぞ」

 

「ああ、ウチの家族がいないか別の意味で心配だ」

 

「冗談抜きでいそうだな。探してみるか」

 

「あいつらに関わるぐらいならあの世界に戻ってサメと殺し合った方がマシだ」 

 

 本当にどうして俺は親ガチャ失敗したのかね。

 

「外出手続きするから取りあえずバスに乗って取りあえず基地から離れるぞ」

 

「そこまでしないと外に出られないんだよな」

 

 生身の人間の出入りは禁止なので基本、外に出る時はバスを使用する事になっている。

 

 バス停にもその手の集団がいるのだが、もうそこは諦めるしかないだろう。

 

 

 俺とキョウスケたち第13偵察隊。

 そしてリオとパメラとパンサー。

 なぜかヴァネッサのメンバーでバスに乗り、外へと向かう。

 

 バス停でもやはり待ち構えていたが基地周辺程ではない。

 ヴァネッサさんはすっかり三人のツアーガイド状態だ。

 だからなんで詳しいんだよアンタ。

 

「さて、ここから自由行動だな――金降ろしてあの三人の嬢ちゃん+1と一緒に俺の家に来るか?」

 

 と、キョウスケが言う。

 まあ行くとこそんぐらいしかないだろうしな。

 キョウスケも俺の家庭の事情を鑑みてそう提案してくれている。

 ここは有り難く乗っかっておこう。

 

 

「平和だけど何か変な人が多いわね」

 

 と、パメラが言う。

 変な人と言うのは反日団体の連中の事だ。

 どうやら境界駐屯地周辺を我が物顔で闊歩していてコンビニでも見掛けられた。

 

 その上、「このコンビニは自衛隊に物を売ってるんじゃないのか?」とか完全にヤクザの地上げか何かかみたいな光景だ。

 

 今の政府は左寄りだし、たぶん放置なんだろうな。

 

「どうして自衛隊に物を売っちゃいけないの?」

 

「「「あ」」」

 

 リオが極めて常識的な事を尋ねる。

 俺とキョウスケとヴァネッサの三人の声がハモった。

 

「お嬢ちゃん、自衛隊は向こうの世界で人を沢山殺しているんだ。そんな連中に物を売るなんてますます状況が酷くなるんじゃないか?」

 

「どうして状況が酷くなるの? 基本自衛隊の人達から仕掛けた事は無かったよ? この目で見たから」

 

「冗談はいけないなお嬢ちゃん。あいつらはそうやって戦争がしたいだけの集まりなんだ」

 

「自衛隊の人達って女やギャンブルで破滅したり犯罪起こしたりする人はいるらしいけど、私が観た感じだとそこまで好戦的な人はいなかったよ?」

 

 アチャーとなった。

 

「つーかオジさんら日本人でここは民主主義の国で国民の投票で決めるんでしょ? 投票権持ってる国民に訴えって変えていくのが普通なんじゃない?」

 

 何か話にパンサーが入っていった。

 見た目は軽薄そうな爆乳の黒ギャルだが言ってる事は今時の学生でも答えられないような模範解答だ。

 相手が恐くないのか――いや、恐くないよな。

 必要とあらば生身で銃撃戦かます連中だし。

 

「リオ。たぶんこの人達相手にしても無駄な連中だから」

 

「でも――」

 

「でもじゃない。アンタもこんなバカな事してる暇があったらもっと人の役に立つ事をしなさい」

 

 パメラが一番言ってる事キツいんですけど!?

 

「お嬢さん達、我々をバカにしているのかね? そんなことしたらタダじゃ置かないぞ」

 

 相手側も煽り態勢が低いのかケンカ腰になってくる。

 他のメンバーが止めようとするが――

 

「タダじゃおかないってどう言う意味よ? 殺すって意味? それなら対応も変わってくるけど」

 

 パメラが睨み付けながら言う。

 

 この三人娘にタダじゃおかないとかヘタな脅迫は通用しない。あの世界でヘタな脅しは逆に引っ込みがつかなくなる。

 

 てかパメラは大人しそうな印象があるがなんだかんだであの世界の女の子なのだ。

 女の子だからこそ、舐められない相手にはこう言う強気な態度で、暴力通り越して殺人すら厭わない覚悟が必要になるのだろう。

 

「お、お嬢さん達――大人の冗談を」

 

 流石に身の危険を感じ取ったのか譲歩を始める。

 所詮は弱い物いじめしか出来ないチンピラみたいな連中だ。

 あの世界で命のやり取りをしてきた女子とは潜ってきた修羅場のレベルが違う。 

 

「冗談で殺すつもりだったの? 冗談で殺してもいいんなら私も冗談で人を殺してみようかしら? そんだけ生きてそんな事してるんだからそれぐらいの覚悟はあるわよね?」

 

 と言ってパメラが銃器ような物を取り出そうとして――

 

「もう十分だろ? おさがわせしてすいません」

 

「キョウスケ?」

 

 パメラの前に立ち塞がるようにキョウスケがたった。

 

「もう良いだろう? 相手にするだけ無駄だ。行こうぜ」

 

 そう言って立ち去ろうとする。

 俺もリオの手を引いて立ち去ろうとした。

 

「いいの? あいつらアンタラの事、バカにしたけど」

 

 あっ――

 

「お、お嬢ちゃんたち、その人達とどう言う関係かね?」

 

「私達は向こうの世界の住民で自衛隊は大切な仲間だから。それで十分?」

 

 リオが代表してそう言った。

 

 あの――ちょっと――リオさん

 

「向こうの世界の住民――核兵器を平然と使って人を殺しまくるあの――?」

 

「どうしたのよ突然?」

 

 パメラの疑問ももっともだろう。

 

 今度はオジさんの方が震え出した。

 よく見ると他の連中も何やら騒がしく感じている。

 こいつらにとっては初めて見る向こうの世界の住民なのだ。

 

「う、嘘だろ? 見掛けは普通の女の子だぞ?」

 

「だけどあの子達の様子見た――」

 

「き、きっとそう言う風に洗脳されて――」

 

 などとコソコソと話し合い、やがてこう言った。

 

「き、君は人を殺したことがあるのかね?」

 

「この世界ではまだないけど、向こうの世界では沢山。もっと小さい子供でも人を殺せるぐらいじゃないと生きていけないから」

 

 直感的に何かを悟ったのかオジさんは「ひ、人殺し!! 人殺し!!」と叫んで出て行った。

 

 他の連中もばつが悪そうにその場を去って行った。

 

「て言うかアンタいい加減にそれ向けんのやめてくんない? なんなのソレ?」

 

「ひぃ!?」

 

 そしてパンサーがキレてスマフォ持った人の胸倉を掴み挙げた。

 物凄い怪力で持ち上げてる。

 

「ヤバイヤバイ。落ち着いてパンサーさん!!」

 

 そう言われてパンサーは「たく、このタマ無し野郎が」と強引に降ろしてツバを吐きかける。

 

 降ろされた人は悲鳴を挙げてスマフォを落としてその場を立ち去った。

 パンサーはそのスマフォを踏みつけて破壊した。

 

「たく。同じ日本人でもどうしてこうジエイタイの人達と差が出るのかね――ああ、でもジエイタイの人達でもクズはいるのか」

 

「あの店員さん」

 

 俺は店員さん目をやった。

 

「いえ、本当はこんな事を言っちゃいけないんですけどあいつらが幅を利かせるようになって困ってましたから、何とか誤魔化しておきます。アナタ達は早くこの場を立ち去って」

 

「分かった――」

 

 そう言って俺達はコンビニを後にした。

 基地を出て一時間もしないウチにこれとか前途多難にも程があるぞ・・・・・・

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