鋼の異世界(世紀末)と自衛隊奮闘録【第3部・多元世界編・完結】   作:MrR

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第七十一話「驚異のカーマン」

 Side 緋田 キンジ

 

(このフェンサー、違和感がないな)

 

 身に纏っている以前使っていたフェンサーとの違いが分からない程に違和感がない。

 

 リオが言うにはパメラは腕が良い整備士だ。

 それも俺もよく知っている。 

 

 更に日本から持ち込んだ素材や部品なども使っていて以前使っていたフェンサーは格段にグレードアップされている。

 

 にも関わらず差が感じられないと言う事は、部品の質と整備の腕が良い場所なのだろう、この町は。

 

 今の自衛隊なら即戦力だ。

 

(気持ちを切り替えて今は――)

 

 そうこうしていくうちに正面ゲートと壁。

 その先には住宅街に繋がる二車線の橋があるが――正面ゲートの激しい銃撃戦を見る限り自分の判断は正解だった。

 

 町の防衛部隊が――パワーローダーや各種ロボット、タレットがリビルドアーミーに向かって攻撃を行っている。

 

 中々に優秀な防衛部隊と防衛設備である。

 

 下手に前に出ると後ろから誤射されかねないと思い、バリケードの上まで登って味方の傍に並び立ち、空を飛ぶ敵のパワーローダーに銃撃を浴びせかけた。

 

『シズクさんからある程度話は聞いてます――』

 

 と、パワーローダーを身に纏った警備部隊の人間から状況報告がきた。

 

『緋田 キンジだ。状況はどうなってるか分かるか?』

 

『概ね此方が優勢ですが――』

 

『あいつらの事だ。まだ何か手があるぞ』

 

 そう言って発砲を続ける。

 

 こう言う優勢な状況の時に限って嫌な事が起きるのだ。

 新戦力を投入してきたりとか思わぬ戦術を取ったり――とにかくただのやられ役では終わらないのだ。

 

『アレは――ヴァイパーズが保有していた大型戦車か!?』

 

 一度目のシップタウンの滞在でヴァイパーズが嗾けてきた全高5mの戦車を思い出す。(第十五話「シップタウン防衛戦」)

 カラーリングや細部などは異なるがアレと同型の大型戦車だ。

 

『不味い!! ゲートから離れろ!!』

 

 主砲が此方を狙っている。

 このままではあの時と――

 

 瞬間、爆発が起きた。

 赤い二門の大砲を背負った砲撃機体。

 

 キョウスケのバレル・リヴァイヴ。

 二門の背中のビームキャノン。

 両腕のアームガン。

 両足のミサイルコンテナからミサイル。

 

 パンサーのジェネⅢもビームマシンガン、両腰部のレールキャノンで上空から畳みかける。

 狙いは戦車の上面。

 背後のエンジン部分。

 

 二人の攻撃が面白いように着弾していく。

 特にパンサーの攻撃が効いたのか戦車は黒煙を挙げ、火花を散らしてその場で停止した。 

 

『一両だけじゃない!! 二両、三両――近づいてくる!!』

 

 何がなんでも強引に突破したいのか、更に三両程追加で来る。

 敵が全方位から攻撃を仕掛けているのはこれを突入させるために町の警備を薄くさせるための――つまりは陽動だったのだ。

 

 キョウスケとパンサーの二人は別れて攻撃を浴びせながら背後に回ろうとするがリビルドアーミーの兵士たちがそれを阻止しようと抵抗してくる。

 

『なら――!!』

 

 俺は空中にブースターを吹かしてジャンプ。

 一気に川を飛び越えながら上空の敵へ射撃を浴びせる。

 リオも続いてくれた。

 

『キョウスケ!! 今のウチに――』

 

『少しは息のいい奴がいたわね!!』

 

『ッ!?』

 

 背筋がゾワッとした。

 女口調の男の声。

 そして全身ピンクの奇怪なパワーローダーを身に纏う。

 どこが奇怪かと言うとまるで複数のパワーローダーからパーツを寄せ集めて作ったかのような――そんなパワーローダーなのだ。

 

『私はリビルドアーミーのカーマン!! この特別のパワーローダー、カーマンスペシャルでお相手するわ!!』

 

『キンジ! なんか変なのがいる!』

 

『ああ! なんなんだあのオカマは!?』

 

 若干涙声になっているリオに同情しながら俺はカーマンに。

 

『あらやだ、失礼ね。このカーマンに向かってオカマ呼ばわりなんて』

 

『どっからどう見てもオカマだろうが!?』 

 

 俺はキレながらパワーローダー用ライフルを発射する。

 

『そんなボウヤは私自らの手で躾けてあげるわ!』

 

『もういい!! お前はもう黙れ!? 背筋がゾワッとする!?』

 

 お互いに銃火を交えながらそんなしたくもないやり取りをしていた。

 

『あらやだ、戦いの中で興奮してるの?』

 

『黙りやがれ!!』

 

 こいつはこの場で可及的速やかに殺さなければいけない。

 俺はそう思った。

 だが相手のカーマンスペシャルと言ったか――は鈍重そうな外見通り

 

 背中の二門のビームキャノン。

 両腕のアームガン。

 右腕にはビーム薙刀。

 左腕のシールド。

 両脚のレーザーバルカン

 

 と重火力でありながら

 スピードも併せ持っている。

 

 体感的な強さはリビルドアーミーの敵の指揮官にして空中戦艦の艦長自ら操ったあのアインブラッドタイプぐらいかそれ以上だろう。

 

 まあ中身の色々な補正とかもあるんだろうが……

 

『ンフフフフフフ! 惜しいわねボウヤ! 敵でなければ部下として可愛がってあげたのに!』

 

『誰がなるか!?』

 

 泣きそうになりながら俺は必死に応戦する。

 もう無我夢中だった。

 なんなんだこのオカマは。

  

 リオも『この人恐い……』とか呟いている。

 

『あーその、お取込み中なの悪いけど――』

 

『ぱ、パメラさん?』

 

 パメラが通信を開いてきた。

 

『あのパワーローダーは無茶苦茶な外観だけど、どう足掻いても、どんなに頑張って整備されていても無理な継ぎ接ぎなのは変わらない! つまり長期戦に持ち込めば――』

 

『そういう事か!』 

 

 パメラの言いたい事は分かった。

 俺はリオに『とにかく回避をしまくって狙いを定めさせるな!』と指示を出す。

 

『まさか――この短時間でカーマンスペシャルの弱点に気づいたの!?』

 

『仲間のおかげでな!』

 

 あのオカマのパワーローダーは確かに高性能のパワーローダーだ。

 だが子供の発想のようなカスタムをされた機体ではどうしても機体のバランスや構造に無理が生じる。

 武装にしたってそうだ。

 

『このままこの人の相手をしていてもいいの?』

 

『それよりも敵部隊と連携されると厄介だ! 今の状況を続けて2対1の対決に持ち込んだ方がいい!』

 

 キョウスケやパンサーの元に向かわせるワケにもいかない。

 敵部隊と合流されて合流されるのも厄介。

 それにこいつをこのまま放置するのは危険だ。

 

 だから無理をしてでも、本当は関わりたくもないがこのオカマと相手をしていた方がいい。

 

 そのまま二対一の戦いを続ける。

 敵はアレだが腕は確かだ。

 その上、防御に徹せられて攻めきれない。

 下手に攻撃の手を緩めれば即座に反撃されそうだ。

 戦いの様相は狙い通りの持久戦ではあるが、神経がとても磨り減る程の戦いだった。

 

『カーマン、何をしている!?』

 

 すると金色のリビルドアーミーのパワーローダーが現れた。

 造形的にはアインブラッドタイプである。

 声からして成人男性か?

 

『あらやだ。成金の坊やってば――』

 

『お前がダラダラしていたせいで戦車部隊は全滅だ!? どう責任をとる!?』

 

 言われてみると確かに敵の戦車三両は全滅していた。

 キョウスケとパンサーがやってくれたらしい。

 

『アナタの采配にも問題があると思うけど――まあ私はここで退かせてもらうわ。楽しかったわよ、ボウヤ。また機会があれば会いましょう』

 

『もう二度と会いたくねーよ……』

 

 リオも『同感……』と漏らしていた。

 

 そしてカーマンは去っていった。

 なんで何処となく嬉しそうな声なんだよ。

 敵も引き上げていく。

 

『今迄戦った中で一番強かったかもしれん――色々な意味で』

 

『うん――とにかく、パワーローダー返しにいこう?』

 

 リオに『そうだな』と返して俺はガレージへと戻った。

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