鋼の異世界(世紀末)と自衛隊奮闘録【第3部・多元世界編・完結】 作:MrR
Side 緋田 キンジ
『突然出て来たかと思えば、リビルドシティの人間を見捨てるだと!? なに考えてるんだ!?』
俺は雨のように降り注ぐ相手のビームをかわしながら言う。
『君達、自衛隊やプレラーティ、ヴァネッサなどが出張って来なければ私もこんな真似をしなくても済んだ』
『散々自分の好きなようにこき使っといて役に立たなくなったらポイか!? ふざけんじゃねえ!?』
『元々リビルドアーミーの崩壊は予定されていた事だ。ただ世界の理想を実現するために修正が必要になっただけの事だ』
『こいつ、とんでもない事実をいけしゃあしゃあと!!』
会話していてとんでもない気味の悪さと邪悪さを感じた。
同時に――短いやり取りの中で分かった。
こいつはこの世界の敵だ。
『僕も願いのは恒久的な平和だ。それを成し遂げるためには手順を踏まなければいけなかった』
『その手順のために何人殺すつもりだ!? それだけの力や汚いやり方をする覚悟さえあればもっと違う選択は出来ただろう!?』
『どんなやり方でも犠牲は付き物さ。ならいっそ大局的に物事を見据えて計画的に犠牲を出した方がいいとは思わないかい?』
『お前は何様のつもりだ!? 神にでもなったつもりか!?』
この手で始末をつけたい気持ちに駆られるが思いのほか相手のガードが堅い。
空中から背中のバインダーを複数飛ばして全方位からのオールレンジ攻撃を仕掛けてくる。
一緒に出て来た他の無人機も同じようにバインダーを飛ばしてオールレンジ攻撃を仕掛けて仲間達とやり合っている。
『先も言った通りリビルドシティはなにかしらの対抗勢力を作るように仕向けて滅ぼすつもりだった。同時に理想的な世界を作るための研究材料としての側面もあったのさ――ある意味では当初の計画通りに動いてくれた君達には感謝しないといけないね』
言ってる事はとても腹が立つがどうしても聞かなければならない事があった。
『じゃあどうして今こうしてしゃしゃり出て、フォボスと手を組んでまで俺達と戦う道を選んだ!?』
『僕の結論はこうだ。人が人を支配する限り人の争いはなくならない。なら人の力を越えた絶対的な力で支配する』
『小難しく言ってるがようはリビルドアーミーに見切りをつけて、今度はフォボスの力を利用して支配を目論んでるだけじゃねえか!?』
ここでキョウスケが口を挟んだ。
言ってる事は乱暴だがキョウスケの言い分が正しい。
『第三者的に見ればそうなるだろうね』
そしてリビルドアーミーの、リビルドシティの支配者であるノアはそれをさも当然と言わんばかりに肯定した。
『よく聞け皆の衆――これがリビルドシティの真実じゃ』
ここでリビルドアーミーの代表者の一人。
自分達に協力してくれている少女、アーティスから全周波で通信が流れ始める。
『皆戸惑っておるじゃろう。突然過ぎて何が何だか分からないのかも知れない。私も正直どう言ってよいのか分からん。じゃが今迄のやり取りの中で少しでも迷いを感じたのなら、どうか銃を下げて欲しい。真に我々が戦うべき敵は中枢府におる』
と、アーティスは演説する。
『さすがアーティス。君には反乱軍のシンボルとして動いてもらう計画に据えていたが、その目に狂いはなかったようだ』
『まるで何もかもが自分の計算のウチみたいな言い方しやがって――』
適当に言って実はその場の思い付きでそんな風に言ってんじゃないかと思いたくなる。
『実際その通りだ。そして君では僕に勝てない。フォボスにもね』
『そのフォボスだがお前を裏切らない保証はあるのか?』
俺は攻撃を回避しながらもっともな指摘をぶつけた。
『なるほど、中々いい質問だ。確かにフォボスは僕を裏切るかもしれない。だがそれがどうしたと言うんだい?』
『なんだと?』
『僕は目的の達成のためなら手段を選ばない。この身を犠牲にしてでもね』
言葉どうこうで止まるとは思っていなかったが、感覚が人間のソレとは隔絶している。
力強い意思を感じたとかじゃない。
まるで死ぬのが当たり前のような気軽さで受け入れている。
『さて、今回はこの辺でお暇させてもうらおう』
『逃げるつもりか!?』
『決着をつけたいなら来るがいい、ロストエリアへ。そこにフォボスと僕は待っている』
『ロストエリア――』
グレイヴフィールドが可愛く思える程の危険地帯。
フォボスがいるとされていた場所だ。
『アレは――ゲートか!?』
境界駐屯地に現れ、リビルドシティに来る際にも作ったゲートが新たに現れる。
そこにノアは逃げ込んだ。
『キンジ、分かってるとは思うが――』
キョウスケが引き留めるように言う。
『ああ。ここを収めるのが先決だよな』
ノアが残した手駒を片付けるのが先だった。