彼方ちゃんが好きって君が言うから付き合ったんだよ?   作:裏面が下駄

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第二話

 

ガチャ

 

扉が開き中から満面の笑みのしずくが出てきた。

「おめでとう凪くん!彼方先輩!」

 

「おまっ!盗み聞きしてたのかよ!っていうか鍵閉めたのお前かよっ!」

 

「だって凪くんがいくじなしなんだもん!それより私のおかげで付き合えた様なものでしょ?感謝の言葉1つ2つあってもいいんじゃない?」

 

左手を腰に当てながらドヤ顔でビシッと右手の人差し指を俺に突き出す。

 

悔しい。しずくの思惑通りに事が進んでしまった。

 

「…ありがとうございます」

「えー?なんてー?聞こえないんだけどー?」

 

絶対嘘だ。聞こえてて楽しみやがってる。

あのしずくのニヤニヤした顔!腹立つわぁ、うざっ!

 

 

 

「…ねぇ?凪くん?付き合って早々浮気してるの?」

 

背中に寒気が走る。…え?今の声って近江先輩?聞いた事ない声の低さだったんだけど…

恐る恐る振り返る。

 

近江先輩の目に光が灯っていなかった。

 

「っち、違いますよ!いつもしずくとはこんな感じなんで浮気とかじゃないです!」

 

「そうです!凪くんとは昔から揶揄いあうのが普通で好きとかそんな気持ちは全くないですから!」

 

俺としずくが慌てて訂正を入れる。しばらくして目に光が戻ってきた。

「そっかそっかぁ、しずくちゃんと凪くんは凄く仲がいいんだねぇ〜」

 

よかった。いつものおっとりした近江先輩に戻ってくれた。しずくもこんな近江先輩を初めて見たのだろう。少し脚が震えていた。

 

「しずくが余計な事するから…」

「んなっ!?私のせいって言いたいの!?」

 

再びギャーギャー言い争いが始まる。

 

「むぅ…しずくちゃんには名前呼びなのに、彼方ちゃんには苗字のままなの?」

むすっとほっぺを膨らませながら聞いてくる。

 

ほっぺ膨らませる近江さん可愛いなぁ。

いやいや違う。頭を振り邪念を追い出す。

 

「えーと、近江彼方さん…?」

 

「……」

 

「彼方さん…?」

ほっぺの膨らみがしぼみ、そして彼方さんはニコッと笑う。

 

「うんっ♪凪くん!よくできました〜♪」

 

眠ってしまいそうなほど優しい声。

彼方さんがゆっくり近づき、背伸びをして俺の頭を撫でる。その瞬間フワッと柑橘系の甘い香りが鼻の奥を刺激する。不思議だな。なんで女の子ってこんないい匂いがするんだろう。ものすごく落ち着くなぁ…。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ちょっと!彼方先輩もいつまでそうやってるんですか!」

痺れを切らしたしずくの声で急に現実に戻される。

 

「はっ!ごめんね〜、凪くんが可愛くて撫でるのに夢中になってたよ〜」

 

数分の間撫でられていたみたいだ。嘘だ。数十秒しか経っていないはずなんだが?

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

その後しずくは職員室に用事があるからと別れ、彼方さんと2人中庭にやってきた。どうやら彼方さんお気に入り、秘密のお昼寝スポットに連れて行ってくれるらしい。

 

「あー、彼方先輩!やっと見つけましたよー!」

向こうから2人の女の子がやってくる。1人はベージュのセミショートヘアに星形の髪飾りを付けた子と外国人かな?三つ編みでそばかすが特徴的な子だ。

少し息が上がっているから随分と探したのだろう。

 

「どこに居たんですかっ!ずっと探してたんですよ!

……えっと、その、隣の方は誰ですか?」

 

首を傾げながら俺を見てくるショートヘアの子。

どこかで見たことある様な…あ、しずくとよく一緒にいる子だ。

 

「ふっふっふ〜、よくぞ聞いてくれました〜!

実は彼方ちゃんの彼氏なのだ〜!」

「「……………………………………………………」」

「「えええええええええええええええええ!!!!」」 

一瞬の沈黙の後、2人の声がハモる。

 

「えっ?彼方先輩?ほんとに?ほんとにですかっ?」

 

「quando? Dove? Da quale? Cosa hai detto? Dove ti piace? Come vi chiamate l'un l'altro?」

 

怖い怖い怖い。恋沙汰になった途端食い付きがすごい。2人とも目がガチだ。ましてや片方はなんて言ってるのかさっぱり分からない。

 

「…すみません、取り乱しましたね…。コホンッわたしは〜中須かすみって言いまーす!かすみんって呼んでくださいっ!それで、お名前はなんていうんですか?」

 

「えーと、蒼山凪です。よろしく…?」

「蒼山…?あー!しず子の幼馴染の人っ?」

「うん」

「そっかぁ、なら同じ一年だねっ。よろしくね、なぎお!」

「な、なぎお?」

いきなりのあだ名に困惑する。なぎおって…普通に凪って言った方が言いやすいんじゃ…?

 

「chao〜エマ・ヴェルデです!よろしくね!」

 

今度は三つ編みの子が挨拶を始める。スイス出身で日本のスクールアイドルに憧れを抱き、1人で渡日したらしい。

エマさんの故郷スイスには大自然が広がっており、みんなのびのび過ごしているそうだ。

 

通りでエマさんのどこがとは言わないが、のびのびと成長している。ダメだと思いつつも男だからどうしても見てしまう。一瞬ならバレないよね…?

 

 

「彼方ちゃんね〜この2人と今ここにはいないんだけど、天王寺璃奈ちゃんっていう1年生と一緒に4人でユニットも組んでるんだ〜」

 

「そーなんですよっ!QU4RTZって言うんです!みんな可愛くて魅力的ですよー!

まぁ?1番かわいいのはこの!かすみんですけど!

かすみんの魅力で、彼方先輩よりかすみんの虜にしちゃうんですからね!」

ニシシと不敵な笑みを浮かべる。

 

「は、はぁ…」

このとびっきりぶりっ子は養生なのか、はたまた天然なのか。見た感じ悪い子ではなさそうだが…。

 

 

「かすみちゃん?」

 

さっきの不敵な笑みは何処えやら、彼方さんを見るなり急に青ざめた表情になる。

 

「ひぃっ!ごめんなさいっ!嘘だからそんなに睨まないでください〜」

 

そう言うとエマさんの後ろに素早く隠れる。

 

「めっ!だよ〜凪くんは渡さないからね〜」

 

そう言うと2人に見せつける様に彼方さんは俺にぎゅーっと抱きついてきた。

 

 

 

その後しばらく4人でたわいもない話をしたのち、俺は彼方さんと帰路につく。

 

やっと2人の時間ができた嬉しさで、我慢していた俺は彼方さんに一方的に話しかける。

 

「……」

返事が一向に返ってこない

 

「あの、彼方さん…?なにか怒ってます…?」

 

「……ねぇ?彼方ちゃんがどうして怒ってるかわかる?」

 

何か怒らす事をしただろうか。記憶を辿ってみるが何も心当たりが見つからない。

「…いえ、分からないです。」

 

 

「さっきエマちゃんのお胸みてたよね?」

「…凪くんは彼方ちゃんの胸よりエマちゃんの胸の方がいいの?ねえ?ねえ?」

 

さっき一瞬見たのがバレていた

低い声から発せられる淡々とした物言いと全身から滲み出る黒いオーラは威圧感を植え付け、謝罪以外許さない雰囲気を作り出す

 

 

「ごめんなさいっ!エマさんの見ましたっ!でも1度だけです!信じてくださいっ!」

 

 

「知ってるよ?ずーーーーーーーっと凪くん見てたんだもん。もしあと1回でも見てたら彼方ちゃん何してたかわからないなぁ」

 

 

 

「ねえっ!」

 

突然の大きい声にビクッと肩が跳ね上がる。

 

「凪くんは!凪くんは彼方ちゃんのものなのっ!

彼方ちゃんだけ見て、彼方ちゃんのことだけ考えて、彼方ちゃん以外の他の女の子なんて見ないで!」

 

そう言うと彼方さんは両手で俺の顔を挟み、有無を言わさず無理矢理キスをしてきた。そしてまるでマーキングするかの様に舌が口の中を蹂躙する。

「んっー!」

俺は抵抗しようと身を引こうとするが、彼方さんは俺の身体を押し込むように前進してくる。

やがて塀に身体が当たり、彼方さんは逃げれまいと、更に貪るような口付けを繰り返す。

執拗に舌を舐め、吸い上げられて呼吸が苦しい。だんだん俺の意識が朦朧としていき、ストンと途絶えた。

 

ペロリと自身の唇を舌で舐める。凪くん美味しかったなぁ♡

「ふふっ♡気絶するほど彼方ちゃんのキスが気持ち良かったんだね♡」

 

凪くんはちょっとでも目を離したらすぐ他の女の子に目移りしちゃうんだもん。そんな凪くんには、彼方ちゃんしか見えなくなる様にしてあげないとね♡

 

 

彼女は恍惚とした表情を浮かべ彼を見つめた

 

 

 

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