彼方ちゃんが好きって君が言うから付き合ったんだよ?   作:裏面が下駄

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第四話

家に帰り、明日の準備を済ませると、しずくに言われた言葉が頭をよぎる。布団に入っても、そのことがずっと頭に残っていた。

こんなこと、絶対に彼方さんには聞かれるわけにはいかない。

そもそも彼方さんに告白したのは自分からで、少し冷めた気持ちがあるとはいえ、彼方さんのことは大好きだ。もっと彼方さんのことを知りたいし、一方的な理由で別れるなんて彼方さんに申し訳なさすぎる。

そんなことを考えているうちに、俺は徐々に眠りに落ちていった。

 

 

 

 

「凪くーん!朝だよ〜起きろ〜!」

 

うるさいなぁ。まだ目覚まし鳴ってないじゃん。母さん、もう少し寝かせてくれよ…。

 

「…うるさいなぁ…」

夢うつつの中で呟くと、そのまま再び意識が遠のいていく。

 

「そんなこと言ってもいいのかな〜?早く起きないと、彼方ちゃんすごいことしちゃうぞ〜!」

 

「ッ!?!」

 

聞き慣れた声に、俺は勢いよく飛び起きた。眠気が嘘のように吹き飛び、横からの視線を感じて振り返る。そこには俺のベッドに横たわる学生服姿の彼方さんがいた。

 

「えっ?!かっ、彼方さん!?」

 

起きたばかりで状況が飲み込めない。なんで俺の部屋に彼方さんがいるんだ?!

動揺する中、彼方さんはにやにや笑みを浮かべてこう言った。

 

「ん〜、凪くんはどんな想像しちゃったのかな〜?凪くんってえっちだなぁ〜」

 

とんでもない発言。

 

「違いますよ!びっくりして飛び起きただけです!そんな想像なんてしたことないですから!」

 

どうにかして話を変えなければ。とんでもない誤解をしている。訂正しなければ、ただの変態になってしまう。

 

「……え?彼方ちゃんとそういうことするの、考えたことないの…?彼方ちゃん、凪くんの彼女なんだよ…?」

 

一転、彼方さんは泣きそうな表情を浮かべてきた。

あれっ?おかしいな?紳士的に振舞った方が好印象だって、なんかの本に書いてたのに。嘘じゃん!というか、その聞き方ずるい。どうしよう…。

そんなことを考えている間に、彼方さんの目には透明な雫がどんどん溜まっていく。まずい。恥ずかしいが言うしかないのか…。

 

「…い、いや、その、ちょっと考えたこと…あります…」

 

「…ちょっと?」

 

なんだか彼方さんの口角が上がっている気がする。

 

「……いえ、結構考えたことあります…」

 

その言葉を聞くと、さっきの泣き顔はどこへやら、彼方さんは満面の笑みを浮かべて俺に抱きついてきた。

 

「ふふっ♪凪くんもやっぱり男の子だもんね。近いうちに、ね?」

 

耳元で囁かれる。

 

「…」

 

呆気に取られる中、彼方さんの顔を見ると、彼方さんは満面の笑みで

「てへっ☆」

 

そういうの、よくないと思いますけど!?

 

これから毎日、彼方さんが夜ご飯や身の回りのお世話をしに来てくれるらしい。

どうやら俺の両親が出張で数か月家を留守にするため、1人で留守番をさせるのが心配だったらしい。そんなとき、たまたま今日の朝彼方さんが家にやってきて、「彼女ならぜひ!」とトントン拍子で話が決まったのだとか。

俺抜きで勝手に話を進めないでほしい。

とはいえ、彼方さんと一緒にいる時間が増えるのは、正直楽しみでもある。

 

朝食を終え、学校へ行く準備をする。着替えの際、彼方さんがなかなか部屋から出て行ってくれなかったので、無理やり追い出した。

時間になり、家を出る。彼方さんと一緒に家を出るなんて不思議な感覚だと思いながら、学校へ向かう。

 

「そうだっ!昨日は夜ご飯作ってあげられなくてごめんね。昨日の夜、何食べたの?」

 

突然思い出したように彼方さんが聞いてくる。

 

「もちろん、いつものファミレスですよ!」

 

「へぇ〜、凪くんあの店好きだねぇ。」

 

「…で、誰かと行ってたの?」

 

「…え?」

 

昨日の件が頭をよぎり、隠す必要はないと分かっていながら、咄嗟に嘘をついてしまう。

 

「いや、その、クラスの友達と、、、」

 

「ふ~ん。」

 

彼方さんはにこやかに頷くが、その視線は俺をじっと見つめている。

 

「それって女の子?」

 

「っいや、男だよ!」

 

焦りながら、なんとか取り繕うように答える。彼方さんがそれ以上追及しないことを祈りながらも、冷や汗がじわりと滲む。彼方さんは一瞬真顔になった気がしたが、すぐにいつもの柔らかい笑顔になりこう言った。

 

「そっか~。あの日、ごはん作ってあげられなくてごめんね~。じゃあ今晩は彼方ちゃん特製シチューをごちそうするよ~。」

 

そう言うと、彼方さんは急に思い出したかのように「学校で用事思い出したから先行くね」と言い残し、走り去っていった。

彼方さん、どうしたんだろう。でもバレてなくて良かった。。俺は安堵の溜息をつき学校へと向かった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

彼方side

 

(なんで、しずくちゃんと行ったことを隠すんだろうね?)

(しずくちゃんと行ったなら、隠す必要なんてないのに…。どうして隠したのかなぁ?)

 

私は微笑みを浮かべながら、心の中で凪くんの言葉を繰り返していた。彼の顔、声、しぐさ、全部が大好きなのに――それなのに、どうして嘘をついたんだろう。

 

(やっぱり、しずくちゃんに入れ知恵されてるから言えないんだね…。)

 

「あ~あ、凪くん。彼方ちゃんに嘘つかないって信じてたのになぁ…」

 

小さく呟いたその声は、自分でも驚くほど冷たい響きをしていた。




前回から、3年経ってました…
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